最強の戦士   作:うちこ

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すんごい今更なんですけど、ウマ娘の世界って競馬場のことレース場っていうのすっかり忘れてまして、今までの話全て修正しました。これから気をつけます。


13話 走る理由

「そういやお前、皐月賞出んの?」

 

「へ? 出るでしょそりゃ」

 

 

 四月に入り、間近に迫る皐月賞を目指してトレーニングしている私にトレーナーはとんでもないことを聞いてきた。

 

 

「あ、いや……違うな。聞き方が悪かった。何を目標に出るって話だ」

 

 

 トレーナーの言葉に、私は首をかしげる。

 

 

 何が目標。それはもちろん、ウメちゃんと走って、勝つことだ。

 

 

 そう答えようと口を開こうとしたとき、トレーナーは続けた。

 

 

「スプリングステークスでウメノチカラに勝ったわけだ。まあ一回勝っただけじゃ本当に勝ったとは言えないかもしれないが……それでもウメノチカラと走るって最大の目標はある程度達成したわけだろ?」

 

「ああ、そういう……」

 

 

 たしかに、私の目標は皐月賞に出ることだった。それはウメちゃんと一緒のレースで走り、そして勝ちたいという気持ちから定めた目標だったが、曲がりなりにもスプリングステークスでその目標、願いはある程度叶ったとも言える。

 

 

「だから次の大きな目標はあるのかと思ってな。三冠ってのもあると思うが……お前あんま興味ないだろ?」

 

「いや……うん、まあ」

 

 

 正直、取れるか取れないかは置いておいて、三冠という称号に私はあまり興味がなかった。

 

 スプリングステークスを制覇し、三冠候補筆頭などと呼ばれるようになった。四月に入った今でも、テレビでは私のことを特集している番組もあるし、トレーニングを見にくるウマ娘や、取材しに来る人たちがちらほらと現れる。

 

 でも、その呼び名というか、期待というか……そういうものに、私はピンとこないものがある。

 

 

 トレーナーがいつも、レース前になると口を酸っぱくして言う「ハナ差でも勝ちは勝ち」という言葉がある。

 それに影響されたのもあるのだろうが、レコードでの勝利だとか、ほかのウマ娘をぶっちぎりにして勝つ大差での勝利とか。それらは全て勝利した上でのオマケ、みたいな考え方が私の中にある。

 

 だから三冠という言葉に、あまり惹かれないのかもしれない。

 

 

「何のために走るのか……か」

 

 

 言われてみれば、これといって思いつくものもない。

 

 とはいえ、走る気がなくなったとか、そういうわけでもない。皐月賞には出たいし、何より勝ちたい。

 

 

 でも、その気持ちはどこから来るのか。ふと言われてみるまで、考えたこともなかった。

 

 

 

***

 

 

 

「ってことトレーナーと話してさ」

 

「走る理由ねぇ……」

 

 

 あくる日。

 

 食堂でウメちゃんとお昼を食べながら、私はトレーナーに言われた走る目標、理由について話を振った。

 

 

「そんなの簡単だよ!」

 

 

 突然、私とウメちゃんの間に割って入る声がひとつ。あまりに突然すぎて私は思わず手に持っていたお椀を落としかける。

 

 

 私とウメちゃんがご飯を食べている机の横に、自分のお昼ご飯であろう料理をもち、突然現れたのは茶色い髪の、活発そうなウマ娘だった。

 

 

「ふふん、その顔は驚いたって顔ね。どうしてあなたがここにいるの!? って顔でしょ!」

 

「いや、誰? って顔」

 

「えぇ〜!? 私のこと知らないのうみゃっ!」

 

 

 元気よく話していた少女の頭に、ウメちゃんがお味噌汁を飲みながら手刀を落とした。

 

 

「何するのさウメ!」

 

「うるさい。それに、自己紹介くらいしなさい」

 

 

 ウメちゃんは少女の方を見ることなく、食事を続けながら淡々と答えた。「ぅう〜」と、頭を押さえて不満そうな声を出し、少女は口をひらく。

 

 

「私はカネケヤキ! ケヤキって呼んでね!」

 

「カネケヤキ……って、もしかして桜花賞の?」

 

 

 先日行われたティアラ競走の最初のレースである、桜花賞。それを制覇したウマ娘の名前が、たしかカネケヤキといったはずだった。

 

 

「そう! そのカネケヤキ!」

 

 

 たしか、朝日盃でウメちゃんと一着争いをしていた子だ。その時から、ティアラ競走での活躍が期待されていたが、どうやら評判通りの実力のようだ。

 

 

「えっと……ケヤキちゃん。さっき簡単だって言ってたけど、ケヤキちゃんは何で走るの?」

 

「あれ、そんな話してたっけ」

 

 

 ……どうやら、忘れてしまったらしい。走るのも速そうだが、忘れるのも早いみたいだ。

 

 

「うーん、まあいいや。私が走る理由はね、クラシック路線のウマ娘にも負けないってことを証明するため!」

 

「クラシックの……」

 

 

 皐月賞、日本ダービー、菊花賞。この三つのレースのことをクラシック三冠レースと呼ぶ。

 そしてこれらのレースに出場、そして勝利を目指すことをクラシック路線をとる、などと言ったりする。

 

 反対に、桜花賞、オークスはティアラ競走と呼ばれる。そしてこれらのレースに出場、勝つことを目標にするのを、ティアラ路線をとる、なんて言ったりする。

 

 

 ただ、ティアラ競争には三冠め、クラシック三冠でいう菊花賞にあたるレースが存在しない。そのためティアラ路線にすすむウマ娘、そしてティアラ競争自体、クラシック三冠レースと比べると世間からの注目も集まっていないのが現状だ。

 

 

「だからいつか、ウメもシンザンもまとめて倒しちゃうんだから!」

 

 

 そう言った後、ケヤキちゃんは「あ! 友達待たせてるからまたね!」と慌てたように言ってその場を離れていった。

 

 

「……嵐みたいな子だね」

 

「落ち着きがないだけよ」

 

 

 ケヤキちゃんとは対照的に、ウメちゃんは黙々と食事を続けている。

 

 

「そういえば、ウメちゃんには目標ってあるの?」

 

「……あるわよ」

 

 

 お味噌汁を飲み干して、すでに食べ終わった食器を重ねながらウメちゃんは言った。

 

 

「勝ちたい相手ができたのよ」

 

「へえ、ウメちゃんにもそういう相手いるんだ」

 

 

 私が相槌のように言った言葉に、ウメちゃんはキョトンとした表情で、目を丸くした後呆れたようにため息をついた。

 

 

「え、私なんか変なこと言った?」

 

「……いや、直接言わないと伝わらないのかと思って」

 

 

 再びため息をついて、ウメちゃんは続けた。

 

 

「まあ、走る理由なんて小難しいこと、シンザンは考えなくてもいいんじゃない?」

 

「えー、なにそれ。まるで私が単純みたいじゃん」

 

 

 ぶーっ、と頬を膨らませていう私に、ウメちゃんは「実際そうでしょ」と、微笑むように言った。

 

 

 でも、たしかにそうかもしれない。

 

 

 ウメちゃんだけじゃない。アスカやヤマニンスーパー、他にもレースで好走を見せている強豪ウマ娘たちが多数出走する、皐月賞。

 

 今は、目の前のレースに集中しよう。




イギリスで、ディープ産駒のスノーフォールが歴史的大差勝利を記録しましたね。ディープのことは大好きなんですが、レースの勝利馬を見るたび、またディープ産駒か……という、ちょっと寂しい気持ちもあります。まあ強い血統があるからマイナーな血統の馬が活躍すると盛り上がるので、なんとも言えない気持ちもあるんですが。

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