最強の戦士   作:うちこ

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最近、学校の課題とか勉強が忙しすぎて全然執筆できず、期間が空いてしまいました。すみません。

活動報告の方にも書きましたが、一応最終話までの構想は決まってるので、途中で投げだしたりはしません。楽しみにしてくださってる方々には申し訳ありませんが今後は余裕ある時に書いて、不定期な更新になると思います。


23話 思わぬ難敵

 季節が過ぎるのは早く、つい先日のように感じられる。日本ダービー、シンザンが二冠ウマ娘になったという日も約二ヶ月前の出来事になっていて、現在は七月の下旬。季節は夏になっていた。

 

 今年の夏は特に暑い。なんでも四十年ぶりの猛暑らしく、空梅雨の影響で水不足も発生しているようだった。

 

 夏が嫌いだ、なんて言っていたシンザンも悲鳴をあげながら、十一月の菊花賞に向けて日々練習をしている。夏はトレーニング中心にすすめ、九月から前哨戦となるレースを二度ほど叩いて出走する流れになるだろう。

 

 

 以前まで目標が持てず、どこか危うい印象もあったシンザンも、今では夢を見せるウマ娘になりたいという、立派な目標を持っている。相変わらずトレーニング嫌いで走らないシンザンだが、モチベーションに満ち満ちてはいる。

 

 ティアラ二冠のカネケヤキやウメノチカラ、オンワードセカンドも出走するだろう、例年と比べてもハイレベルと言える今年の菊花賞。始まったばかりの夏をどう乗り切るかが鍵になりそうだ。

 

 

「って……しっかし遅えな」

 

 

 今、俺は部室で座っているのだが、トレーニング開始直前の時間になってもシンザンが姿を見せない。トレーニング嫌いと言ってはいるが、シンザンがトレーニングをサボったり遅刻したことはこれまで一度もない。確かにどこか抜けたところのあるシンザンだが、しっかりもののセカンドが同室にいることだから、寝坊ということもないだろう。

 

 

「おはよぉ〜……」

 

「おう、遅かったな……って、どうした?」

 

「……んぇ?」

 

 

 いつも気の抜けた挨拶をしているシンザンだが、今日は特に気が抜けている……というより、魂が抜けている。

 

 耳もペタリと寝込んでいて、目も開いていない。尻尾もなんだかいつもよりも元気なくしおしおしている。

 

 明らかに、体調が悪そうだ。

 

 

「……病院行くぞシンザン」

 

「んえ? 髪はこの前切ったよ?」

 

「美容院じゃなくて」

 

「打撲とかもしてないし」

 

「接骨院でもなくて」

 

「古代ローマの……」

 

「元老院でもねえ……さてはお前、病院嫌いか?」

 

「そそそそんなことないよ?」

 

「そんなことないやつはそんな狼狽え方しねえんだよ」

 

 

 まるで漫画かアニメのように目を泳がせて狼狽するシンザン。幼い子供じゃあるまいに、どうやら病院が嫌いのようだ。

 

 

「ほら、車とってくるからここで待ってろ」

 

「……は〜い」

 

 

 ドサリと倒れ込むように、シンザンは椅子に座り込んで机に顔を突っ伏した。どうやら相当に参っているらしい。

 

 

 

***

 

 

 

「夏負けですね」

 

「夏負け…‥ですか」

 

 

 車を走らせ、やってきたのは病院。

 

 俺がいるのは診察室内。受診を終えたシンザンは今、待合室でおでこに冷たいジェルシートを貼って横にならせてもらっている。

 

 

 お医者さん曰く、どうやらシンザンは風邪ではなく夏負けだったようだ。

 

 

 ウマ娘と人間は、外見上では耳や尻尾以外全く同じように見えるが、走る速度、力の強さ、などなど実際比べると様々な部分で違いがある。

 

 同様に、ウマ娘と人間とでは平均体温に大きな差がある。人間の平均体温は平熱時で三十六度台……低い人でも三十五度台だろう。しかしウマ娘の平均体温は人間よりも高く、三十七度台から三十八度台ほどだ。人間よりも発熱器官である筋肉に富んでいるウマ娘だからこその平均体温だろう。

 

 

 体温が高いからこそ、ウマ娘は夏、というか暑さに弱い。シンザンは特に、普段から暑いの嫌い、と事あるごとに夏嫌いを口にしていたため、ほかのウマ娘に比べても暑さに弱いのかもしれない。

 

 

「でも夏負けってことは秋には治りますよね」

 

 

 夏負けにはこれといって有効な治療策はない。体を冷やしたり休養したりして、涼しくなるのを待つほかない。

 

 

「普通の夏負けなら、体や部屋を冷やして休養すれば秋を待たずとも治る場合もあるんですが……シンザンさんの場合、かなり重度の夏負けです」

 

「……というと」

 

「十月ごろには、徐々にトレーニングをこなせるほどには回復すると思います。しかし、菊花賞を含め、秋のレースに万全の体調で出走できる……とは言えません」

 

「そう……ですか」

 

 

 十月ごろにようやく体調が上を向き始めるかもしれない。

 

 つまりそれは、九月に予定していた前哨戦を使えないということ。そして七月下旬の今現在から、約二か月と少しの間、シンザンは本格的なトレーニングができないということ。

 

 

 シンザン自身はいまだに、自分が平凡なウマ娘だと思っているようだが、シンザンは非凡で特別なウマ娘だ。

 

 姿勢が良く、スタートも良く、頭も良い。恐ろしいほど切れ味の良い末脚、決め脚も持っている。世代屈指の実力者と言われていたウメノチカラを幾度も下し、チームの頂点……どころか、世代の頂点に立つ現在二冠のウマ娘。担当トレーナーという贔屓目抜きにしても、特別どころか無敵とさえ言っていいのかもしれない。

 

 

 しかし、無敵だからといって負けない訳ではない。実際、以前シンザンの体重が増えてしまった際にはオープンレースで敗北を喫している。

 

 

 今回は、二ヶ月以上トレーニングを行えない。前哨戦も、戦えるにしてもおそらく後ろにずらすことで厳しいスケジュールになるだろう。

 

 

 秋に向け、ほかのウマ娘がコンディションを整え、基礎トレーニングに励む中、シンザンは休養を強いられる。

 

 

 夏に、大きな壁が立ちはだかった。

 

 体重の増加よりも、かなり深刻な問題だ。




長らくお待たせしてすみませんでした! 今後ともよろしくお願いします!
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