システムとは、何か? 作:no w here
どうしてこうなったのか。分からない。先ずは一度、朝の記憶から今に迄遡る事及び自分について再度確認しよう。
朝、目を覚ます。
本当の親は既に亡くなって親戚に引き取られた身である以上、何らかのメリットを示し続けなければいけない。遺産だけが欲しいという親類など珍しい物ではないだろう、誰が好き好んで血も繋がらない赤の他人の世話を焼こうと言う物か。
だから自分は親戚の家事を高校以外では引き受ける。中学の家庭科でよい成績を取る事が出来ていたのが幸いし、4年続けた今では主婦ぐらいにはできるようになっている。流石にこの歳でバイトができない事は親戚も分かっていたのだろう、特に何も言わず食費の6万は月初めに準備してくれた。
学費免除のある高校で特待生になった。親戚はそれを大層喜んでくれたが、特待生というよりは特待生の制度によって学費が免除されることを喜んでいるのかもしれない。
故に日課の家事である掃除から始める。毎日やっている関係、目立つ汚れと言う物は特にない。30分ほどで掃除が終わった。
続いて朝御飯及び弁当の準備。下拵えは既に昨日の夜に出来ている。常備菜の補充も2日前にやった以上余裕はある。1時間ほどで片付けまで済み―――現在時刻は06:00、高校の始業は09:00だが剣道部の朝練が7:00からある。準備し、高校へ。
「いってきます」
返答は、今日も無かった。
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日課の朝練を熟し、解散後そのまま教室へ向かう。疎らながらも大半の同級生が揃っていた。軽く挨拶をすれば相手も返してくれる。一通り挨拶をした後、机の引き出しに教科書やノートを入れていく。暫くすると隣の席に独りの美少女(本当にそうとしか言えない)が座った。
「おはよう」
声をかける。小さく肩を震わせた後、彼女*1から小さな声で「おはよう、ございましゅ」と返される。気だるげな美少女という見た目に対して反応は何処か小動物じみた可愛らしい物。既に2年目の付き合いだというのに、挨拶に慣れていないのは…まあ、自分の顔が良いとは言えないからだろう。声をかけられても迷惑なのかもしれない。
「…前も言ったと思うけど、もしも嫌だったら遠慮なく言ってね…なんて言ったら逆に言い辛いか」
彼女はそれに反して首を横に振る。どちらの意味なのか分からず、首を傾げて居る中彼女が言葉をつづけようとし―――
始業の鐘が、鳴り響いた。
直後に来る先生に、彼女は恨みがまし様子を向け、さらに時計にも同じように目を向ける。どうにも彼女の間は悪いらしい。
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古文の授業。
自分は、窓際の席だった。だからこそ―――山田俊輔の視線の先にあった
「―――、ッ!」
「え」
若葉さんから驚きを含んだ声が一言。岡崎香奈美先生の朗読の声も、透き通った若葉さんの驚きの声で途切れる。ゆえに彼を除く同級生たちの注目を集めてしまった。
「逃げろッ」
それだけ声を上げ、窓から飛び降りる。二階の窓から混凝土の路面は当たり所が悪ければ即死だろう。
だが、空間の亀裂から感じた悪寒はそれ以上に「死」を連想させた。飛び降りたほうが、その死よりもまだまし。咄嗟ながらも、近くにいた若葉さんも飛び降りに巻き込んだのは申し訳ないと思い―――
今に至る。
故に見えるべきは空の筈だ。何故岩盤が見える。
あの高さから背中を叩きつければ自然と頭も打ち付けられる。それに反して背中の皮膚だけが岩肌にくっついたような痛み。
それを認識し直すことで―――脳には嘗てないほどの
自分の口から発される叫び。とにかく、この痛みから逃げたかった。
剥がそうと藻掻けばブチブチと嫌な音が聞こえる。千切れる度に突き刺すような痛みに襲われ、徐々に動く気を失っていった。動けるが、現代では感じたことのないその痛みに自ら向かうだけの精神はなかった。
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数分後。
声を出すだけの気力も失い、背中の痛みに慣れた頃。漸く、自分は自分以外の皆の事に意識を馳せる事が出来た。
「…皆、は…」
死んでいる、だろう。自分以外で教室から出ようとするだけの余裕はなかったように見える。
だが―――一緒に連れ出せたはずの若葉さんが居ない。少なくともあの悪寒から遠ざけるように、抱きかかえた彼女は一緒に居てもおかしくはない。
彼女は無事だろうか―――無事でなくとも、一命はとりとめていてほしい。
そう思いながらも、痛まない範囲で首を動かし―――何かと、眼があった。息をのむ。それは、骨だった。恐らくは大人の―――
その骨の先から、何かがじっとこちらを見ていた。複数の複眼は、恐らく蟲だろう―――相手も気付いたのか、一匹が此方へ向かって飛びつく。蜘蛛―――それも、自分の体の半分以上もありそうな。
呑んだ息が、小さな悲鳴として吐き出された。それを期に、周りから複数の足音が漸く耳に入り。それが、近づいてくる。それも、恐ろしい速さで。
その音が無くなると同時、
「ッ?」
左脇腹、右腕、左脚、左腕に突き刺さる何か。刺さった後になにやら液体らしきものが浸透していく。だが、それ以上に突き刺さったそれが引き抜かれることによる失血の方が、速い。
「ぎ…ィァ…―――」
枯れたはずの声が喉から再度響かせる。
だが、これはただの悲鳴ではない―――断末魔だと、自認した。巨大な蜘蛛たちの牙が、無造作に突き刺さっていき穴を穿つ。穿たれた穴からは自身の体温と共に血が流れ出ていき―――右膝からの痛みで頭が一瞬真っ白になる。
微かに頭を上げれば、離れた場所に誰かの足を引き摺って行く巨大な蜘蛛。―――足を持っていかれた、それに気づき背中の皮膚を岩肌に置いて行きながら身を起こす。
このままだと、食われる。自分は獲物で、彼らは狩人。既に右脚は持っていかれたため立つことはできない。もっと早く、身を起こすべきだった―――!
後悔をしながらも―――それでも、今はまだ生きている。穴が穿たれた場所から先は何れも反応を返さない。動かない左腕を、強引に振り子の容量で叩きつけると、巨大な蜘蛛の1匹は剥がせた。蟲は巨大になりすぎると足が自重を支えられなくなる、なんて話があったような気がする。巨大な蜘蛛たちは体内を軽くすることでそれを克服したらしい。
「キシャ!?」
「キシャー!」
抵抗する獲物に驚く1匹と、それを追いだすように此方を囲む2匹。獲物の分け前が少なくなる事を、恐れたのだろうか。返すように左腕を叩きつける事でもう一匹引きはがす。
「死んで、たま…ッ?」
あげていた上体から、力が抜ける。その際に、水に沈む感覚―――ああ、血を失くしすぎた。動かそうとしても、動かない。だからこそ、残された五感が鋭利になるわけで。
生きたまま3匹の巨大な蜘蛛に貪られて行く。悲鳴を上げるだけの能力も無く、ただ霞む視界で貪られて行く自身だった何かを見る事しかできない。
警戒されたのか、両腕から引っ張られ穴から先の両手が千切れる。痛みで気を失いたかったのに、存外自分の精神は強靭に過ぎたらしい。次は残された左脚。千切られた後、白い糸を巻いていた。保存食だろうか。
蜘蛛たちが行う自分の解体ショーは、下半身と上半身を千切り内臓を引き摺り出されるまで見続けていた。…最後まで見守るのは当事者である蜘蛛2匹と―――石化した、人の骨だけだろう。
微かに繋がっていた意識が、プツリと音を立てて落ちた。
対象が死亡しました
権限:Dにより[固有スキル:蘇渡の死甦]を適用します
適用、成功しました
次の貴方は、上手くやれるかもしれません