システムとは、何か? 作:no w here
坂を上るにつれ、通路が小さくなっていく。それに合わせて奴らとの遭遇が途端に亡くなった。…何故だろう?
ぽたり、と頬から汗が地面に落ちていく。
…汗が流れる。脱水症状となる前に水を口に含める。汲みたてでは冷たかったそれが、温くなっていた。…嫌な予感がする。
だが、進まなければ。
1歩1歩進み続けていくと、先が眩しい通路を見つけた。何時以来の光だろうか、少しばかり眩しい。その光の中に、
嫌な予感は、既に確信へと変わりつつある。
「…いや、まだ…見ていない…」
微かな期待に縋るよう、祈りながら歩いて行く。その確信が外れてほしい―――それは、辿り着いた後の熱気で全てを焼き尽くされた。
光の先に広がっていたのは、広大な溶岩地帯。ぽたりと落ちた汗が、地面で蒸発する。この服装で向かうにはあまりにも過酷にすぎた。心なしか白織の糸も熱でよれてきているような気がする。
「は…はは…」
その光から自ら離れる。否、離れざるを得なかった。羊皮紙に書き込んでいったマップを思わず握りつぶす。洞窟から出られるかもしれない、そんな期待は砕かれた。
否、
熱いにもかかわらず、背骨に氷柱を突きさされたかのように悪寒を覚えた。
「…」
光から名残惜しく思いながらも目を逸らす。…向けた先は今まで歩いてきた道。その先は一度光を見たせいか、猶更に暗く見える。
だが、自分が探せる場所はこの暗闇の中しかない。…心が悲鳴を上げるが、それを無視するように駆け下りていった。
>>
地底湖に引き返す。此処まで来たら温度は比較快適だ。少なくともあの溶岩地帯よりは。
人の死体の衣服はどうだろうか。そう思ったが首を横に振る。革で出来た鎧と、麻布のズボンではとてもじゃないがあの溶岩地帯を抜けられるとは思えない。たぶん、別の場所から来たのだろう。
「…」
羊皮紙に書き連ねたマップを広げる。1歩を距離として簡単ながらも測量した結果、白織の巣跡地から地底湖迄20000歩。自分の背丈からして歩幅はだいたい0.9mなのでおよそ18km。地底湖から溶岩地帯に繋がる出口迄14000歩なので12.6kmあたり。これだけでも、とてもじゃないが広大すぎる。奴らがうろついている中で若葉さん或いは若葉さんへ繋がる痕跡を虱潰しに探すのは無謀だろう。
…でも、自分にはそれしかできない。地底湖の水を水袋へ汲みなおし―――後ろから、地面を這う音が聞こえた。長剣を引き抜き逆手*1に構えながら振り向く。
目の前に映るのは巨大な牙。伏せて回避しつつ、切っ先で突き上げる。空中であったが故に回避する事も出来ず、蛇の胴体に裂傷が出来上がった。そのまま地面へつき刺す。前に蛇が捻ることで自ら切り口を広げながらも離脱した。胴体半分が斬られていながらも、特に問題なく動いている辺りやはりというか奴らの1種類なのだと実感する。
鞘へ長剣を納めると同時、蛇が尾を振るってきた。蛇、とは言っているがその姿は自分の3倍以上の巨体。故にそれなりの速さで振るわれる尾も十分に脅威だ。壁を蹴るようにして尾を飛び越す事でやり過ごし、鞄へ手を突っ込みタニシを持つ。手元にぎちぎちと動くタニシが気持ち悪いが、現状最も奴らに負荷を強いる事ができる物だ、我慢する。
振り抜いた勢いのまま、蛇は尾を地面へ叩きつけた。巨体から振り下ろしの一撃を貰おうものなら、巨体と地面に圧殺される。そしてギリギリで躱そうとすれば地面を叩いた際の衝撃で飛ぶ瓦礫に削られる。
故に大きく跳んで躱す。着地の隙を狙うよう、素早く此方へ這ってきた。…その胴体の傷が無ければ、これで勝負はついていただろうが。残念ながらその傷が蛇の初動を遅れさせた。体勢を整え、躱すだけの余裕ができる。
横へ1歩躱し―――
「…っかふ」
息を吐き出しながらも、どうにか前へ走る事で追加で一撃を貰うのを避ける。蛇は、タニシが貪る胴体をどうにかしようと動くが、皮の内側に捻じ込まれたタニシを取り除くには至らない。内臓でタニシの殻が割れようものなら―――タニシの体内に存在する腐蝕の体液が散布される。
前に思いついたこと*2は、大型の奴らに有用だった。小型の奴らはそもそも小柄故の体力の少なさから一撃目で急所を狙った短期決戦となることが多く、タニシを使う必要性が無かった。だが大型の奴らは、体力が多く自分が疲弊してしまう程度には長期戦となりやすい。故にタニシを試用し―――有用性を見出せた。
内臓にタニシの体液をかけられた蛇は、初めはその場でのたうち回るように大きく暴れていた。だが、徐々にその暴れは小さくなっていく。
…蛇の生殺しは人を噛むという。ゆえに徐々に動きが無くなるのに合わせて近づきながら長剣を逆手に抜き―――頭へ切っ先を突き立てた後、体重移動で口を2つに切り開ける。
対蛇は、
息絶えたことを確認し、巨大な蛇の可食部位を長剣で抉り出していく。先程の溶岩地帯で水分を飛ばせば干し肉のような保存食となるのだろうか?…それを試す為に、鞄に入るだけの可食部位を切り分けていく。
>>
切り分けていく。タニシの体液が胴体の傷から広まっている場合、黒ずんでいる為そこは残す。黒ずんでいる中で生きているタニシは再度回収し、鞄の中へ。…タニシも奴らの一種なのだろう、鞄の中に放置されていても特に力尽きる等の様子は見せていなかった。
「…あ、でも鞄はタニシと水袋でいっぱいだ…」
ぽつりとつぶやく。仕方ない、タニシの中でも比較大型の物を選別していく。最終的には5匹まで選別されたが…その5匹が想定以上に大きい。まさか手のひらサイズまで成長していたとは。
「…」
首を横に振る。タニシに名前をつけて、愛でようとする程度に先程の失望は大きかったらしい。
「独りは、嫌だよ」
誰もいない。そう分かっていながらも呟かずにはいられない。睡眠は頑張って取るようにしているが…予知夢のせいで、まともに眠れなかった。夢を見ない位深い眠りに就こうと思っても、この状況下で熟睡できるほどの精神を自分は持ち合わせていない。
…白織と一緒に居た時が、最後に熟睡できた時だろうか。
「…また、会えるかな」
分からない。そもそも生きているのかすらも怪しいこの環境だ。
「白織が。若葉さんが、無事でありますように」
せめて、祈る。自分が1人と1匹にできる事がこれしかなかった。
祈り終えた後、死骸は溶岩地帯とは逆の方に存在する坂道へ転がり落としていく。死骸を転がしてから瓦礫に隠れ。音に気付いた奴らが坂を下りていくのを見送った後に溶岩地帯へと向かった。
蛇「俺、平均防御力Lv1でも320あるのに…」
作者「曲がりなりにも下層を生き抜いて餓死した人の武器だから仕方なし」
灰色蜥蜴「あ、おいらの尻尾が壊れた槍にも関わらず突き刺さったのって其れか」
Q.何で武器を持った主人公は魔物相手に戦えるの?
A.武器の性能を十全に引き出しているからというのが理由の一つ。