システムとは、何か? 作:no w here
その制限時間を打破する為に何らかの行動をしなければいけない。白織と若葉さんの心配をしようにも、制限時間が迫っている事を把握してしまうと脳裏によぎってしまう。
過程は違えど、このままでは結末は同じだ。
然し何をすればいいのだろう。
分からない。高校までの知識を用いても、この現状を打破できる何かが何一つ思い浮かばない。…クラスメイトの事を思い出し、独りである現在と独りではない過去で涙した事も一度や二度ではない。
そして、何の成果もあげられないままさらに時間が過ぎた。
目を覚まし、周囲を見る。
…制限時間を迎えつつある。剣を杖に体を起こす。洞窟の中に限れば目が見えずとも走ることはできるようになっていた。それほどまでに慣れ親しんだ道だが、前に目を覚ました時よりも歩き辛い。
ぽきん、と体から音が響いた。どうやら足の指が折れたらしい。でも、もう慣れた痛みだった。
ただ、その指で最後だった。故に、体は洞窟へと打ち据えられる。
複数、硬質な物体の壊れる音が
「ッ…ぁ…か、ふっ…」
息を吸い、血を吐き出す。全身が痛みで悲鳴を上げる。然して声にしようとしても出せるものは血ばかり。打ち据えられた衝撃からか、全身の治りかけの傷が一斉に開き、血で皮膚の感覚が満たされていった。…焼いて塞がれたはずの左腕からも血が流れ出ていく。
偏った栄養価によって引き起こされたビタミン欠乏症。蜂も、蛇も、蜘蛛も。何れも他の奴らや共食いによる食生活である事が観察によってかなり前から分かっていた。だからこそ植物を探し続けていた*1が…この広大な洞窟を隈なく探しても見つかることは無かった。藻類ですらも、見つからない。
故に、自分がこの洞窟で活動できる時間は
聴力が捉えたのは振動する大地の音。狼龍とは別の、尊大な何かが此方に迫っている。腹ばいのまま、その気配から離れようとする。したところで、
「が、ぁ…ッ」
腕の骨が折れながらも片腕でどうにか腹ばいに進む。下半身と上半身を糸のようにつなぐ内臓が、
何も映さない視界の中へ、自分の意識は落ちていく。
「…」
目を覚ます。
…流石に二度*2も起こってしまえば、認めるしかない。
「…死を起因とした…
>>
二度目の岩盤を見た地点で、この可能性には至っていた。あり得ないと、一蹴するために予知夢という仮の回答へ逃げた。
二度目で生き延び続けて、現代世界の動物をモチーフとした奴らが
そして、今。
三度目に見た岩盤が、現実を突きつけてきた。二度目の最期―――ビタミン欠乏症による行動不能からの下半身プレス。あれが、洞窟で生き延び続けた結果。上も、下も行ける場所が無いというのにあの結末は、あんまりに過ぎた。
「…は、は…ッヅゥ…」
乾いた笑いが、背中の傷に響く。体の一部を失う痛み*3と比較してしまえば、ましに過ぎる。苦悶の声を上げるだけに留め、静かにその場を離れていく。
…二度目で経験した事を、肉体は覚えている様子が無い。小さく舌打ちをする。左腕を動かす感覚に異和を覚えた。時間間隔を完全に失っていたが、左腕を失った期間の方が長かった。かなりな時間を彷徨い続けたのだろう。
「…二度目の、記憶なら…」
―――あった。
二度目の時と同じように、学ランを反対に着込む事で簡易的ながらも背中の血を止める。紐で抑えていない以上、学ランに血が沁みていくが―――もしも、二度目と同じなら。小さく期待をしながら進んでいく。
そして、期待は裏切られなかった。
止める。
止める。
小さく、呼吸を1度。
止める。
止める。
呼吸をしようとし―――
見つかった?
否、見つけたのであれば此方に何らかの行動を起こす―――少なくとも、
止める。
止める。
息が、苦しくなってきた。
この状態から
止める。
止める。
先ほどの感覚がなくなった。少し大きめに、一呼吸。
>>
狼龍が眼を離し、地底湖に続く道へ姿を消したのを目視し―――大きく、一息を吐いた。地面に小さくない血だまりが出来ているが、幸運にも瓦礫に隠れる程度で済んだらしい。
「…、大丈夫?」
白い蜘蛛―――白織へ声をかける。蜂に対して意識を向けていた白織は此方の声に驚いたように反応を示し、こちらを見て体を固めた。
「驚かせたようなら、ごめんね。…自分も、一緒に隠れて良いかな」
少し考え、白織が頷いた。それに対して「ありがとう」とだけ返して隣へ座る。…白織が、此方―――特に背中の傷を気にしているように視線を向けた。
「…できれば、止血だけでもしてほしいな。その代わり、その蜂をこっちに引っ張っておく」
白織が反応を示す前に、糸を通じて蜂を引っ張っていく。暴れる蜂が、自身に対して毒針を向けて突いてきた。る前に毒針と繋がる腹を抑え、最後の武器である
「…白織」
白織が、首を傾げた。
「自分は、君の事を白織と呼ぶけど…良いかな?」
こくりと、小さく頷いた。
「…それじゃあ、よろしくね。白織」
…二度目では呼べなかった名前を、呼べた。それが、少し嬉しかった。
なおその後白織の糸によって背中の傷を全面的に洗われ、激痛に呻くことになった。
>>
白織は自分を追い払った後に簡易的な巣を作り始めた。その間に此方は蜂の甲殻の一部を貰い、瓦礫で大きさを整えていく。彼女が巣を完成させたのか、此方に手招きされたのを期に蜂の死骸と共に入る。
その中で胡坐となって座る。
…白織が、此方の足の間へ眼を向けていた。
「…入る?」
直後、白織が胡坐の足の中へと身を収めた。背中の破れた学ラン、ワイシャツを毛布代わりに白織へ掛ける。
暫くした後、白織の瞼が落ちて小さく体が揺れた。恐らく、睡眠だろう。
「…おやすみ」
寝たのを確認した後、毒針と蜂の甲殻を糸で巻く事で加工した毒針を作り上げていく。二度目の経験が生きているのか、糸の巻き方で小刀の柄のような糸の目を作ることに成功する。
>>
二度目の起床後、白織が巣の拡張をし始めた。その際白織の代わりに上へと意識を向け、蜂を睨むようにして牽制する―――お前らの殺し方は、二度目で分かっている。加工した毒針と、複数の礫を構える。
自分と、蜂のにらみ合い。白織は蜂を食べながら巣の拡張をし続け―――何れもその状態から変わることなく、無事に終わった。
終わった後、白織が足をつつく。
「…?寝る?」
頷かれた。苦笑いしながらも自分は胡坐をする。また白織が収まったのを見た後、同じように学ランとワイシャツを掛ける。…二度目の末期と同じ感覚で動いているが、肉体は何も経験していない時のそれらしく、徐々に眠気が迫ってきた。
白織が起きた後に、蜂の特徴を伝えてから。それから寝よう。
危険感知。
全身の毛が逆立つ。この感じは覚えがある。忘れはしない―――否、忘れるものか。蜘蛛に転生してから初めて味わった本物の恐怖。初めて意識した死の象徴。
そして、彼に恩を返せずに見捨てた屈辱と絶望。
振り返る。
腐狼龍アラバ Lv32
HP:4551/4663-112(緑)
MP:4378/4378(青)
SP:4778/4778(黄)
:4681/4681(赤)
平均攻撃能力:5081(詳細)
平均防御能力:4986-135(詳細)
平均魔法能力:5082(詳細)
平均抵抗能力:4087-129(詳細)
平均速度能力:5079(詳細)
スキル
「地龍Lv4」「天鱗Lv3」「重甲殻Lv2」「神鋼体Lv2」「HP高速回復Lv8」「MP高速回復Lv5」「MP消費大緩和Lv6」「魔力感知Lv10」「精密魔力操作Lv3」「魔闘法Lv10」「大魔力撃Lv2」「SP高速回復Lv7」「SP消費大緩和Lv8」「闘神法Lv3」「大気力撃Lv3」「大地攻撃Lv10」「大地強化Lv10」「破壊大強化Lv3」「斬撃大強化Lv10」「貫通大強化Lv10」「打撃大強化Lv10」「空間機動Lv9」「命中Lv10」「回避Lv10」「確率大補正Lv3」「隠密Lv10」「迷彩Lv2」「危険感知Lv10」「気配感知Lv10」「熱感知Lv10」「動体感知Lv10」「土魔法Lv10」「腐蝕魔法Lv10」「大地魔法Lv10」「浸蝕魔法Lv6」「影魔法Lv10」「闇魔法Lv7」「破壊大耐性Lv1」「斬撃大耐性Lv4」「貫通大耐性Lv3」「打撃大耐性Lv5」「衝撃大耐性Lv1」「大地無効」「腐蝕無効」「火耐性Lv6」「雷耐性Lv8」「水耐性Lv5」「風耐性Lv6」「闇耐性Lv4」「状態異常大耐性Lv7」「腐蝕耐性Lv10」「苦痛無効」「痛覚大軽減Lv8」「暗視Lv10」「視覚領域拡張Lv8」「視覚強化Lv10」「望遠Lv8」「聴覚強化Lv10」「聴覚領域拡張Lv3」「嗅覚強化Lv7」「触覚強化Lv7」「天命Lv3」「天魔Lv1」「天動Lv3」「富天Lv3」「剛毅Lv3」「城塞Lv3」「天道Lv1」「天守Lv2」「韋駄天Lv3」「統率Lv4」
スキルポイント:41100
称号:「魔物殺し」「魔物の殺戮者」「龍」「暗殺者」「覇者」「魔物の天災」「浸蝕者」
…あの時に見たものよりも、随分と変異していたが。それでもあの時と同じように威風堂々としている。私に気付いてか、体中についていた蟲が瘴気を纏って飛び上がった。
だが、そんなことはどうでもいい。
頬に付いたそれは、なんだ。
それが握っている、
―――彼を、殺した。それ以外の回答は無いだろう。
死ね。
感じた恐怖は全て憎悪へ変わっていく。
《熟練度が一定に達しました。スキル『怒Lv1』が『怒Lv2』になりました》
《熟練度が一定に達しました。スキル『怒Lv2』が『怒Lv3』になりました》
《熟練度が一定に達しました。スキル『怒Lv3』が『怒Lv4』になりました》
《熟練度が一定に達しました。スキル『摂氏零』を獲得しました》
新たに得たスキルの影響か、憎悪に染まっても脳内はクリアだ。怒のスキルが発動しているにもかかわらず、狂気が付与される様子もない。
逝けよ。