腐女子、イナイレ世界に転生する。   作:楓/雪那

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武方三兄弟は無印初代の中だと結構好き。
クソダサZも割と好き。
アレスの爆熱ストームは許さん。


腐女子VS炎のストライカー

ーーーー試合開始10分前・星之宮学園ベンチーーーー

 

「全員もちろん知っているでしょうけど、木戸川の選手の中で最も警戒すべきは10番・豪炎寺修也です。ジュニア時代からその得点率は高く、今大会も初参戦ですが早くも向こうのエースストライカーとして活躍しています。ですが今までの試合を分析したところ、彼の強みはシューターであると同時に中盤の司令塔であるというところです。豪炎寺同様に新入部員である三人のFW・武方三兄弟、彼らがスターティングメンバーとして出場している試合は必ず三人揃ってです。おそらくは三つ子故の連携テクニックに目を付けたからでしょうね。」

 

「豪炎寺はともかく新入生4人に攻めをすべて任せているのは、チームメイトとの連係ミスを起こしにくくするため……ってことか。」

 

「その考えで間違いないでしょうね。実際に地区予選とそれ以前の練習試合では独断専行で連携もうまくいってませんでしたし。さすがに少しくらいは改善されてるとは思いますが、それでも三兄弟のスリートップにするか豪炎寺を前線に上げて中盤を多めに配置するかのどちらかがあちらの定石でしょう。それはつまり豪炎寺が木戸川メンバーと武方三兄弟を結ぶルーターであり、武方三兄弟が2,3年生よりも攻撃面では強力ということです。」

 

 

新人マネージャーの佐曽利 アン(スコピウス)が淡々と相手チームの情報を纏めたデータを話していく。

同じ1年生なのにもうこんなに情報集められてるとか有能すぎひん?

てかこの子、ゲームだとキーパーだったけどこの世界だとマネージャーなのね。

 

 

「佐曽利が集めてくれた内容からわかるように、木戸川は武方三兄弟を起点とした速攻を仕掛けてくるはずだ。そして三人に注意が高まったところを豪炎寺が追加点というのが向こうの理想だろうな。豪炎寺か武方か、どちらかに注意を寄せすぎるのは悪手、MFとサイドバックは両方に警戒して状況に応じてマークを変えるように。」

 

「武方三兄弟はだれか一人でもマークについて動きを止めておけば選択肢はかなり削れるはずです。単独シュートは連携よりも得点率は低いので脅威度は落ちるかと。」

 

「その通りだ。逆に豪炎寺は単独が厄介だから、柵木、水瓶、シュートブロックは頼むぞ。」

 

「「はい。」」

 

 

監督から作戦を聞きそれぞれのポジションにつく。

さて、どんな試合になりますかね。

 

 

 

 


 

 

 

 

星之宮学園・フォーメーション

 

 

  ーー乙女乃ーー獅子谷ーー  

  ー鶴賀ーー射手ーー二面ー 

  ーーーーー樫御ーーーーー 

  ー羊家ーーーーーー七美ー 

  ーーー柵木ーー水瓶ーーー   

  ーーーーー魚勝ーーーーー     

 

 

 

木戸川清修・フォーメーション

 

 

  ーー友ーーー勝ーーー努ーー

  ー跳山ーー豪炎寺ーー茂木ー

  ー西垣ー中井ー光宗ー黒部ー

  ーーーーー軟山ーーーーーー

 

 

試合開始のホイッスルが鳴り響く。

先行は木戸川からであり、中央の勝から三男・努へとボールが渡る。

彼は自分の正面に位置する少女、乙女乃に向かって勢いよくドリブルしていく。

 

 

「さっきの喧嘩、ここで返させてもらうぜ!!」

 

『木戸川FW・武方努!勢いよく星之宮陣営に攻め込んでいく!対するは背番号11番・乙女乃スピカ!!どう動くか……おぉーっとぉ!?なんとブロックせずに素通りしました!』

 

 

まさかのガン無視、意外なプレーに観客も木戸川陣営も動揺する。

そして無視された努含めた三兄弟は憤っていた。

 

 

(俺らの事なんて眼中にないみたいな!?)

(なめやがって!)

(目にもの見せてやりましょう!)

 

 

乙女乃への対抗意識を燃やす三つ子、その意欲は今までになく高まっており星之宮イレブンにとっては厄介になりかねない気の上がりようだ。

だがそれは仮に後半以降、スタミナが落ちてくるころに自分自身を奮起するものだったらの話。

試合開始直後、たった一人の選手に、しかもFWの三人全員が意識を向けてしまうとそれは大きな隙になる。

 

 

「勝っ…!?」

 

 

長男にパスを返そうとする努だったが、彼のほうを見て足を止めてしまう。

いつの間にか彼を挟むように射手と樫御がマークしていたのだ。

さらに逆サイドの次男・友も二面からマークを受けている。

こうなってしまってはパスは出せない、そう考えた努は意識を切り替えドリブルしようとするがすでに遅かった。

 

 

「『スプレッドウイング』!」

「うおっ!?」

 

 

努の視界に入らない上空へと飛んだのは三年の鶴賀。

十数枚の白い羽を自分の周囲に呼び出し、努めがけて射出し、地面に当たると小さく爆発する。

巻き起こった土煙に視界が封じられているうちに鶴賀はボールを奪う。

 

 

「よしっ!スピカ!」

『星之宮三年・鶴賀眞白!華麗にボールをカットしました!そのまま乙女乃につないでいく!!』

 

 

受け取ったボールをトラップする乙女乃、その正面に立つのは豪炎寺。

両者は間合いを保ったまま睨みあう。

 

 

「最初のプレイングで武方達を挑発し、チームメイトが注目されず接近できるようにするとは、考えたな。」

「そりゃあもちろん、名門木戸川はこれくらいやらないと止まってくれませんからね。」

 

 

乙女乃の策は単純なヘイト管理である。

作戦中にも言われたように三兄弟の連携は厄介である。

それこそ全員でかかっても止めるのは困難だろう。

それを止めるには初動が一番のタイミングと考えた彼女は、三兄弟の負けず嫌いかつ沸点の低さを利用して出鼻を挫いた。

当たり前だが何度も通じる手ではない。おそらくこの一回とあってもう一回くらいか。

だが、だからこそこの手は出合い頭に最適であり、強豪相手に先制点を取ることは重要である。

 

 

(そんでもってこっちの考えお見通しって…さすがだなー)

 

 

予想外だったのは豪炎寺が乙女乃の速攻カウンターを警戒していたことである。

正直なところは2割1割くらい、豪炎寺ならもしかしたら予想してるか?とは思っていたもののほんとに来るとは思っていなかった。

だが()()()()で乙女乃は動揺しない。

右側へと鋭くボールを蹴り飛ばす。

ミスキックか、そう思った豪炎寺だが着地したボールが勢いよくスピンして自分の背後に飛んでいき驚く。

 

 

「何…!?」

「『ひとりワンツーV3』!」

 

 

彼女が最初に習得した『ひとりワンツー』は初歩の技であるため認知度は高い。

が、彼女はそれを何度も練習し強化させたことで通常とは比べ物にならないスピードと角度で使えるようにさせた。

豪炎寺が抜かれた、その衝撃は武方三兄弟を止められたことも合わさって木戸川陣営に後れをもたらす。

 

 

『星之宮1年・乙女乃!素晴らしいプレイングだ!木戸川のエース豪炎寺を抜き去りディフェンス陣も必殺技を使わせずに次々突破していく!残るは木戸川の守護神・ゴールキーパーの軟山のみだーーーー!!』

 

 

臆病そうな顔つきをしているGK・軟山だが、2年生として他のメンバーより落ち着いている彼は動揺からの立ち直りも比較的早く、DFの中井が抜かれた段階で顔つきを引き締め準備をしていた。

 

 

 

しかし、目の前の少女、乙女乃スピカはそんな彼の覚悟を一瞬で崩すような妖しい微笑みを浮かべていた。

 

 

右の回し蹴りでボールを上空に打ち上げ、彼女も跳躍。

そして()()()()()()()左足でのボレーを、彼女の背後に顕現した戦士風の男のオーラとともに叩き込んだ。

 

 

「『リゲルオリオン』!!」

「『タフネスブロック』ぅぅ!!……っうおおおお!?」

 

 

自身の胸部に前身のエネルギーを集中させてシュートを防ごうとする軟山だったが、シュートを止めることは叶わず、ボールはゴールネットを揺らした。

 

 

 

『ゴォォォォォォォォォォォル!!!先制点を決めたのは世代最強の女子選手!『北国のヴァルキュリア』こと星之宮学園1年!乙女乃スピカだぁぁぁぁぁ!!!』

 

 

 

「~~~~~~~っっし!!」

 

 

 

スタジアムが揺れたかと感じるほどの熱狂と。

歓喜で思わずガッツポーズをする乙女乃。

心技体、自分のすべてで臨むこの状況。

今までの試合とは比べ物にならない高揚感を彼女は感じていた。

 

 

(これだよ!この感覚!いま私は全力を出せている!本気のもっと上で舞える!!)

 

 

 

木戸川ボールで試合が再開。

勝から努へとパスされ、再び勝へと戻される。

やはり乙女乃はブロックせずに通り過ぎていく。

勝は内心腹を立てるものの、先ほどよりかは怒らず両側の弟たちがマークされていることを把握し、前線へ一人上がっていく。

 

 

「一点くらいすぐに俺が取り返してやるぜ!みたいな!『グレネードショット』!」

 

 

青いエネルギーを内包した強力なシュート。

初心者でも使いやすいシュートであるため威力は低いが、モーションの短さゆえに多くの選手がシュートの基礎として習得する技である。

勝は三兄弟の中でも特に脚力があり、技術面や戦略などでは劣るもののストライカーとしては豪炎寺にも並ぶほどであり、『グレネードショット』の出の速さも併せてまさに切り込み隊長とでも言うべき選手である。

しかし、その速攻は弟たちと連携が取れない今、単純なものになってしまい星之宮のディフェンスにも読まれてしまう。

 

 

「『シェイブカッター』!」

「『ハイドロカーテン』!」

 

 

柵木が右脚を大きく振り上げ刃型のエネルギーを三つボールにぶつけ威力を落とす。

さらに水瓶が放った水の幕がシュートの勢いを落とし、失速したボールは水瓶にトラップされる。

 

 

「樫御さん!」

「双子!」

「獅子谷先輩~!」

 

 

カウンターとばかりの連続パスが繋がり、ボールは木戸川サイドの中盤にいた獅子谷へと渡る。

シュートを撃とうとする獅子谷だが、そう何度もチャンスを作らせるほど古豪のディフェンスは甘くはない。

 

 

「っしゃあ!今度は俺の番…」

「「「通すか!『ハリケーンアロー』!」」」

「うおおおお!?」

 

 

光宗、黒部、中井の三人が獅子谷の周囲をぐるぐると回ると、巨大な竜巻が彼を包む。

強風で宙に浮かばせられた獅子谷に追い打ちとばかりに彼のボールめがけて三人がスライディングアタックを仕掛けて吹き飛ばす。

 

 

「跳山!茂木!このまま前に行くぞ!」

「「おう!」」

「「「『ブーストグライダー』!」」」

 

 

獅子谷からボールを奪った黒部がチーム一小柄な跳山の身体を上空へ投げ飛ばす。

ボールを器用にも頭でキープした跳山を茂木が空中でキャッチし、さらに勢いをつけて投げ飛ばす。

すると跳山はきりもみ回転をしながら星之宮のディフェンスを搔い潜る。

 

 

「決めろ!豪炎寺!」

 

 

右サイドに位置する水瓶の裏に着陸した跳山は間髪入れずに少し後ろへセンタリング、そこにタイミングを合わせた豪炎寺が回転しながら跳躍する。

 

 

「『ファイア…トルネード』!」

 

 

炎を纏った一撃。

『ブーストグライダー』に翻弄されたディフェンス陣はシュートブロックに入れず、キーパーの魚勝が構える。

 

 

「『サラディンアーム』!うわぁっ!?」

 

 

どこからともなく表れた大量のイワシが魚勝の右腕に集まり巨大な腕を形成、シュートを抑え込むが勢いを殺せずボールごとゴールに押し込まれる。

 

 

『ゴォォォォォォォル!!!!!木戸川が誇る炎のストライカー、豪炎寺修也!!早くも一転を取り返しました!これで1対1!同点です!!』

 

 

ゴールを守りきれなかったことを謝る魚勝や、それを励ましたり悔しさを表すディフェンス達。

ミッドフィルダーの面々は如何にあの連携技を攻略するか話し合っており、乙女乃も射手や獅子谷と共に作戦を練っていた。

しかし彼女の胸中の思いは悔しさなどではなく、悦びだ。

 

 

(あれが生で見るファイアトルネード…今まで見た必殺技も十分超次元なのに、あの技は迫力が違う!撃っているのが豪炎寺だからなのかな?それとも原作でも主要な技だから?やばい笑いが止まらなさそう!こんなに楽しいのはやっぱり初めて!)

 

 

圧倒的、とまではいわないものの乙女乃は先のシュートから感じた気迫で自分より豪炎寺が上だと直感的に悟った。

普通なら自分より格上だと知ったらネガティブ施行に陥ってしまうのがほとんどのはずだが、彼女はまるで折れない。

どころかこの勝負を楽しみ、ある考えにまで至る。

 

 

あのシュートを止めたい、と。

 

 

 


 

 

 

前半は乙女乃の一点と豪炎寺の一点で同点のまま終了した。

星之宮側のほうがボールキープ率は高かったものの、『ハリケーンアロー』を突破することができずにいた。

対して木戸川は武方三兄弟へのマークを一人に絞り、代わりに豪炎寺と跳山に張り付くことで『ブーストグライダー』の使用を阻止させられており、武方達の単体シュートはシュートブロックとキーパーによって止められてしまう。

どうやってこの状況を打破するか、お互いのチームは悩んでいた。

 

 

「獅子谷。後半開始のキックオフ、俺に回してくれ。」

「あぁ?……策があんのか?」

「ああ。少なくとも流れは持っていけるはずだ。乙女乃もちょっと来てくれ」

 

 

星之宮のキャプテン、射手は同学年のライバル、獅子谷と期待のホープ、乙女乃にある作戦を伝える。

 

「なるほどな。てめーに合わせるのは癪だが乗ってやるぜ。」

「ああ、一点リードできれば何とかなるだろう。」

「ですね。インパクトがある分効果的かと。」

 

 

そして後半が始まる。

キックオフと同時に作戦通り、乙女乃から獅子谷へ、そしてバックパスで射手へと繋がる。

そしてすぐさま射手はシュート体勢に移った。

 

 

「『ソニックボウガン』!」

 

 

スピンをかけたボールを空中に固定し、両足でボールを挟み込んで前後にスライド。

さながら引き絞った弓のような一撃が一直線に木戸川ゴールへと迫る。

ディフェンダーの光宗と西垣の二人はシュートブロックが可能なため迎え撃つ体勢を取るが、それと同時にボールへと迫る二人の存在に気が付く。

 

 

「『ライオネルシャウトォォォォォ』!!」

「『真・あびせげり』!」

 

 

獅子谷が回し蹴りをするとボールは回転しながらその場にとどまる。

が、獅子谷の激しい咆哮に合わせて先程よりも威力を増して再び発射される。

さらに乙女乃が上空にボールを蹴り上げ踵落としを決める。

シュートにシュートを重ねるシュートチェイン。

その威力はもちろん通常の必殺技の何倍も強力であり、『ソニックボウガン』の速度も合わさって軟山に反応さえさせずにゴールに突き刺さった。

 

 

再び歓声をあげる星之宮チーム。

普段は仲の悪い射手と獅子谷も無言でハイタッチをしている。

その様子を見て豪炎寺は、その二人ではなく乙女乃のプレイに驚いていた。

 

 

(後半開始すぐにロングシュート、意表を突き心理的な負担をかけるなら最適な方法だ。だがさらに二度のシュートチェインをダメ押しで掛けるとは…。しかも最後に蹴ったのは乙女乃。普通なら女子は男子よりパワーが劣るだろうから獅子谷がとどめだろうと思ったが、あそこまで綺麗にあわせられるとは……)

 

 

 

木戸川ボールで再び試合再開。

スリートップの武方達が同時に攻め上がるが、今度はディフェンスはボールを所持している中央の勝以外の二人にマークをしていない。

 

 

「シュートブロックのためってことか!みたいな?」

「その通り!」

 

 

いつの間に戻ってきたのか正面に立ちふさがる乙女乃。

いくら血の気の多い勝でも、さっきまでのプレイと今の位置取りでは弟たちにはパスを出せない。

なら後ろの豪炎寺に回すか?

いや、それではダメだ。

今しがた自分でも言ったように星之宮の守備はシュートブロックのためのポジションを取っている。

つまりここで安易に豪炎寺に頼ってしまえばカウンターを決められてしまう。

 

 

(…上等っしょ!木戸川の真のエースストライカーはだれか教えてやるぜ!)

 

 

それならば自分が勝負に出るしかない。

そう決心した勝は勢いよく再び駆け出す。

豪炎寺に渡すと読んでブロックに入った乙女乃は虚を突かれて隙が生まれてしまう。

 

 

「『ムーンサルト』!」

「っ!ディフェンス!任せます!」

 

 

まるで新体操選手のような華麗な動きでボールとともに空中を舞う勝は見事に乙女乃を抜いて見せた。

乙女乃は焦り交じりでディフェンスに指示を出すと、自分は再び下がらずに豪炎寺へとマークにつく。

 

 

(ここで豪炎寺に張り付いておけば、バックパスは封じれる!三兄弟単独でなら先輩たちがなんとかできる!問題ない!)

「…俺を止めておけば点は入らないと思っているみたいだが、あまりうちのチームを舐めないでもらいたいな」

 

 

短い間で導き出した最適解を否定する豪炎寺の発言に、乙女乃はある可能性を考えてしまう。

そしてそれはまさに目の前で起こってしまった。

 

「努っ!!」

「おう!友!!」

「っしゃあ!」

「「「『トライアングルZ』!!!」」」

 

長男から三男へ、そして長男を踏み台にして飛び上がった次男が蹴りを入れる。

間髪入れずに兄と弟の手のひらに足をのせて、三角形を模した謎のポーズを取る三兄弟。

観客から見ればなんだあのポーズはと思うだろうが、星之宮のディフェンスはそんなものに意識を割けるほどの余裕はなかった。

 

 

「『シェイブカッター』!ぐあぁぁ!」

「『ハイドロカーテン』…!くっ!」

 

 

柵木と水瓶、二人のシュートブロックを突き破り、ゴールへ突き進むシュート。

しかし稼いだ時間は残されたキーパーの魚勝の準備には十分であった。

 

 

「『サラディンアーム』!!うぉぉぉ!?」

 

 

無数のイワシが集まって形成された巨大な腕が、シュートを包み込む、。

しかしその威力を完全には抑えられず、腕に風穴をあけて決まってしまう。

2-2 試合は再び振出しに戻った。

 

 

 

 

「すいませんでしたっっっ!!無効を侮った結果、先輩方に負担かけすぎて…」

「いや、舐めてたのは俺らも同じだからな…」

「止められなかったのはお前ひとりのミスじゃない。気負いすぎるな。」

 

 

ぺこぺこと頭を下げて謝罪する乙女乃を窘める柵木と水瓶。

この失点は彼女のまさかこの時期に『トライアングルZ』なんてないだろうという先入観から来たミスであり、もしかしたら防げた一点であるという可能性が彼女の罪悪感を引き起こした。

しかし二人からしたら、後輩からの信頼に応えられず、豪炎寺のみに注意を向けていたのも事実なので彼女だけの問題ではない。

 

 

「今は後悔よりもこの後どうするかだろう。三兄弟にマークをつけるのは当然……と言いたいが、豪炎寺をどうするか、になるな。」

「それなら私がセンターバックに下がります。射手先輩にFW務めてもらって、樫御先輩に上がってもらいましょう?」

「けどそれであの連携ブロック崩せるのか?正直きついと思うが…」

「いえ、自分で言うのもなんですけど今『ハリケーンアロー』を突破できる自信がないです。それなら射手先輩のロングシュートのほうがまだ期待できますので。」

「それもそうだな。守備の数増やしてカウンター決めるのがいいか…」

 

 

 

乙女乃の提案通り、射手、樫御、乙女乃のポジションを交代。

そして星之宮ボールで試合再開。

獅子谷から射手、そして樫御へとボールが渡り、攻め上がる。

だが再び『ハリケーンアロー』により樫御が止められ、発動メンバーの一人である黒部がボールを奪う。

MFの鶴賀と二面がブロックに入ろうとするが、それよりも早く黒部がボールごと跳山を投げ飛ばし、茂木が空中でさらに勢いをつけて投げる。

 

 

「「「『ブーストグライダー』!」」」

「行けっ!勝!」

 

 

二度目の強力な連携ドリブル。

着地寸前を狙ってDFの羊家がタックルを仕掛けるが、跳山は着地する前にヘディングで勝へとボールをつなげた。

 

 

「今です!!次男と三男にマーク!」

 

 

乙女乃の号令と同時に七美と水瓶が友に、羊家と柵木が努に張り付く。

 

 

『トライアングルZ』を封じるための陣形、しかも正面にはこの場面を考えていた乙女乃。

『ムーンサルト』はさっき見せた。

唯一単独で撃てる『グレネードショット』じゃあ力不足だろう。

ならば、信頼するアイツに繋げよう。

 

 

「『グレネードショット』!豪炎寺!」

 

 

正面ではなく、後ろ、正しくは自軍側の斜め上に向けて必殺シュートを放つ勝。

上空へ打ち上げられるボール目掛けて飛び上がるのは、木戸川のエース、豪炎寺。

 

 

「『ファイア…トルネード』っ!?」

 

 

仲間からの信頼が込められたシュートに重ねて炎を纏いながら自分の必殺技を叩き込もうとする彼の目の前に映ったのは、深紅の髪の少女だった。

 

 

「『リゲルオリオン』!!」

 

 

豪炎寺の蹴りに合わせるように反対側から打ち込まれたオリオンの左足。

灼熱の炎と星の煌めきが拮抗する。

ほんの数秒、だがその場にいた者たちからしたら何時間にも感じるほどの力のぶつかり合い。

押し負けたのは豪炎寺のほうだった。

 

 

「くっ…!」

「いっけぇぇぇ!」

 

 

二人とも空中から落下しながら木戸川ゴールへと突き進むシュートを見る。

しかしそのシュートを前に立ちはだかる人物が一人。

 

 

「『スピニングカット』!!」

 

 

西垣守、彼こそが今このグラウンドの中で最初に動けたものである。

豪炎寺を破ったということで乙女乃のことを信じすぎてしまった星之宮。

豪炎寺がプレーではなくシュートで負かされたことで驚愕し、それ故に動きが鈍った木戸川。

しかし西垣のアメリカでのディフェンス経験の長さが予想外の状況から彼をいち早く立ち直らせた。

青い衝撃波がシュートの威力を下げさせる。

しかし西垣は単独でこれを止められるとは思っていない。

本当の狙いは自分たちの守護神を立ち直らせる時間稼ぎ。

 

 

「軟山先輩!あれ頼みますっっ!!」

「!!」

 

 

衝撃波を突き破り西垣を吹き飛ばすシュート。

それを見つめる軟山の表情が、後輩からの願いを受けて一段と引き締まる。

 

 

「うおおおおお!!『カウンターストライク』!!」

 

 

右の拳に青いエネルギーが集まり、勢いよくパンチをボールへとかます。

押され気味の軟山であったが、踏ん張りながらシュートを跳ね返す。

そしてそのままボールは青いエネルギーを纏ったまま、星之宮陣地へと跳ね返っていく。

 

 

「っ!?しまった!」

 

 

名前通りのカウンター。

宙に浮いたままの自分では対応はできない。

両サイドのDFは三兄弟の次男と三男にマークしたまま。

このままマークにつくのが正解か、それとも止めに行くべきか。

彼らの取った行動は、「マークを続ける」であった。

『リゲルオリオン』を跳ね返したとはいえ、キーパーのパンチング程度なら魚勝ひとりでなんとかなる。

乙女乃が動けないのと同じように、豪炎寺もいまだに空中。

それならばこの二人を止めておくのがいいはずだ。

確かに普通ならそう考えるだろう。

しかしそのシュートへ向かって一人走り込む男がいた。

 

 

「『グレネード…ショット』っ!」

 

三兄弟の長男、武方勝である。

ただ一人地上でフリーだった彼が、キーパーからのカウンターパンチにチェインを重ねてきたのだ。

 

 

「やらせるか!『サラディン…』うおおお!?」

 

 

キーパー・魚勝も対抗して必殺技を使おうとするが、向こうのゴールからダイレクトで飛んできたボールくらいなら必殺技なしで止められると考えていた彼の技では、勝がチェイン↓シュートの速さに対応しきれなかった。

 

 

2-3

 

 

ゴールネットが揺れると同時に試合終了のホイッスルが鳴った。

 

 

 

勝者、木戸川清修




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