腐女子、イナイレ世界に転生する。   作:楓/雪那

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戦人さん、たくさんの誤字報告ありがとうございます。


腐女子、勧誘される

多分、青ざめた表情っていうのは今の私みたいな顔のことを言うんだろう。

 

この先の人生、私の願ったように進んだとしたら波乱万丈になることは間違いない。

 

けど、そうだとしても、私の場合は原作知識があるから前もって身構えることはできる。

 

 

 

だから、今日みたいに、今日以上に「肝が冷える」ことはこの先ないかもしれない。

 

 

 

 

「乙女乃スピカ君、君の才能を見込んでの申し出だ。私の元でサッカーをする気はないかね?」

 

 

 

いやです(鋼の意思)

 

 

 

 


 

 

 

 

あ…ありのまま今起こったことを話すぜ!

全国トーナメント一回戦で木戸川に敗北して、悔しさを感じながらも帰る準備を終えて出発っていう時に少年サッカー協会副会長を務める『だいたいすべての元凶』こと影山零治からサッカー協会の応接室に呼ばれていきなり勧誘を受けていた。

な…何を言ってるのかわからないと思うが(いや、わかる(反語))私も何をされたのかわからなかった…

頭がどうにかなりそうだった…

鉄骨落としだとかキンダンノワザだとかそんなチャチなもんじゃねぇ…

もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…

 

 

というわけでまさかの影山教への入信勧誘を受けました。

なんでや…

 

 

まあ思い当たる節がないわけではないんだよなあ。

本戦始まって、FFスタジアムで開会式行われた後に実はサッカー雑誌用の個別インタビューに選ばれてたり(会ってはいないけど、豪炎寺や鬼道なんかも同じく取材を受けてた)、それ以前にも二つ名が知らないうちに広まってたし。

極めつけは木戸川戦で豪炎寺のファイアトルネードを撃ち返したことが原因だろうね。

原作だと豪炎寺を脅威に感じて夕香ちゃんを事故に遭わせてた。

その豪炎寺以上の力を持っていることは否が応でもわかるだろう。

基本的には迷いがないしね、この人。

 

 

「……なんで私なんですか?私はリトル時代の経験もないし、さっきの試合も負けちゃいましたよ。39年間無敗を誇る帝国学園の監督のお眼鏡に適うような選手じゃないと思うんですが…」

「ふむ……それでは一つずつ説明をしていこうか。まずリトルの経験の有無だが、これは関係ない。私は実力で選手を判断したいと思っている。『名門帝国だから優勝して当然の選手』ではなく『優勝して当然の選手がいるが故の帝国』、と言えば伝わるかな?それに何より今まで公式試合の記録がない無名の選手がいきなりフットボールフロンティアという伝統的な大会でその名を広めたんだ。私は君みたいな才能のある選手をより良い環境で育て上げたいと思っている。」

 

 

とりあえず謙虚に下手に出て聞いてみたけど、まあそうだよねえ。

脚力ゴリラだし。

自分で言うのもなんだけどやっぱり金の卵なんか私。

 

 

 

「そして次の点だが、もし君が私の用意した環境でサッカーをしてくれるのであれば、君の所属するチームは帝国ではない。」

 

 

 

……は?

 

 

 

「というよりかは君は帝国サッカー部には入部できないのだよ。私が帝国学園サッカー部を設立してから立てた方針の一つでサッカー部には女子生徒がいないのでね。だが少し前に君と同じく非常に優秀な才能を持った少女を発見し、彼女のために帝国とは別のもう一つのチームを創設した。こちらは男女混合だからぜひとも君に入ってもらいたい。」

 

 

 

……影山の下にいた女子選手?真・帝国の小鳥遊ちゃんか?いやでも真・帝国は不動含めて二流呼ばわりされてたし……まじで誰のことだ?

頭の中の記憶を探っているとき、部屋の扉をノックする音が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

「来たか、入れ。乙女乃君、同じ女子同士話が弾むだろうと思って、件の彼女を呼んでおいた。仲良くするといい。自己紹介を。」

「はい、総帥。初めまして、亜風炉照美です。よろしくね、乙女乃さん。」

 

 

 

 

 

「………………はえ?」

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

まさかのTSアフロディのこととは思ってもいませんでしたよええおかげで一瞬気を失いかけました。

いや…まじでええ?(困惑)どうなってんやこの世界…あ、今更かHAHAHA。

え、てかまじでリアルアフロディ可愛すぎんか?なんだそのサラサラの髪は!まるでウン百万する絹のようじゃないか!なんだその真っ白な肌の色は!視覚だけでサラサラ感分かるぞ!

こんな美少女が本来は男の娘だったなんて……許せる!!

 

 

「……?ボクの顔になにかついているかい?」

「あ、いえ、とてもかわいい顔をしているのでつい……スミマセン」

 

 

やべ、あまりにもかわいいからじろじろ見ちゃった。

女という生き物は視線に敏感だからね。

 

 

「私は一度席を外すとしよう。亜風炉、お前が練習の様子などを伝えてやれ。乙女乃くんは彼女の話を聞いて考えるといい。結論が出たら教えてくれたまえ。」

 

 

影山さん、なんて空気の読める大人なんだ…

なんて冗談は置いといてマジでどうしよか。

正直影山の部下にはなりたくない。

どうあがいても獄中生活まっしぐらか身体ぶっ壊れるかのどっちかはほぼ確実だからだ。

女の子アフロディのチームはつまりは世宇子、ドーピングで強化された一期のラスボス。

現実世界だったら間違いなく逮捕されてサッカーなんてさせてもらえないだろう。

まあ超次元時空なら大丈夫かもしれんが、私はドーピングとかは嫌だ。

 

かといって影山の誘いを断った場合は間違いなく物理的なやり方で排除されるだろう。

オルフェウスメンバーやかつて円堂大介が率いたイナズマイレブンのように、私本人を消しにかかるか。

あるいは夕香ちゃんや真・帝国のときの佐久間と源田みたいに近しい人間に危害を加えて、揺さぶってくるか。

つまりは影山に目をつけられてしまった時点で人生ハードモードになってしまうんだよ。笑えねぇ。

 

 

「…そんなに悩むことかな?総帥の元に来れば恵まれた環境でサッカーができるんだよ?君もボクと同じサッカー選手なら行きたいって思うはずじゃないかな?」

「うーん……そうなんだけどね…影山さんの方針は私には合わない気がするというか……」

 

 

ハッとした。

初対面のアフロディからもわかるレベルで悩んでしまっていたらしい。

それだけならともかく、影山に心酔してる彼女の前で敵対発言ともとれるようなことを言ってしまった。

 

 

 

「ごめん!今のは聞かなかったことにして…」

 

 

 

「いや、乙女乃くん。それなら君はやはり()()()()には来ないほうがいい。」

 

 

 

いきなり、彼女の眼が真剣になった。

敵意や怒り、そういう感情ではなくて『警告』。

なんだ……なにが彼女に引っかかった?

私はそんな変なことを言ったか?

 

 

「……急にどうしたの?私なんか変なこと言ったかな?」

「いや、変なことでは言ってないよ。ただ私はアドバイスしただけだよ、君は()()に従うべきじゃないってね。」

「……どういうこと?言ってることがわからないんだけど」

「隠さなくてもいいよ、君は『私』と同じ転生者なんだろう?」

「っ!!……そういうことね。」

 

 

なるほど、まさか同じ境遇の人がいるとは思わなかった。

それでこの子からしたら『神のアクア』の犠牲者を増やしたくないから、いきなりこんなことが言えるってわけね。

確かに原作だと二期で雷門に加入する前はナルシストだったもんね。

こんな他人の事を心配できるキャラじゃないもんな。

 

 

「ちなみに、どこで気づいたの?」

「気づいたのはついさっきだよ。いくら帝国によくない噂があるにしても、悩み具合がおかしいと思ったからね。うちのチームメンバーもさっき言ったみたいに環境と力に目がくらんで加入したからさ。」

「なるほどね。それで乗り気じゃないからおかしいかも?って感じか。」

「うん、あとは君は元の私とは違って原作に絡まない上、出てくるのは世界編からだからさ。雑誌やFF参加のときはあれ?くらいだったけど、影山がスカウトしようとしたときにまさかと思ったんだよ。それで影山に頼んで君と話す場を作らせてもらったんだ。」

 

 

た、助かる~~~~~

私一人だとイレギュラー起きたときに対策できないみたいなこととか逆に起こさなくて済むイベント発生させないとかありそうだもんなぁ。

具体的に言えばダンペラ。

シナリオ的に見たら感動モノなんだけどメンバーギリギリでできた裏ボス的存在だからジェネシスで完結できるならそれに越したことないよね。

ジェミニ初戦で抜けたメンバーはともかく、染岡さんとか栗松くらいはどうにかできると思う。

ま、希望的観測に過ぎないんですけど。

 

 

「ただ、君もわかっているだろうけど影山に敵対するのは危険な行為だ。おそらく周りにも被害が及びかねない。私だって助言を出したり情報共有はできるけど、影山の監視の目がある限り実質不可能に近い。それでもやれるのかい?」

 

「ん~……でも実際覚悟決めるしかないよ。影山に出会っちゃった時点で逃げの手段考えてたからさ。私は私のサッカーをしたい。そのためにも影山のやり方には従わないよ。」

 

「……そうだね。私もそれがいいと思うよ。君はこれから円堂守たちと関わっていくんだろう?」

 

「ん?もちろん。せっかくこの世界で生きていられんだしね。」

 

「ふふっ、やっぱりそうだよね。それならそのうち一緒にサッカーすることもあるかもね。」

 

「確かに。その時は手加減しないよ?照美ちゃん?」

 

「……!ああ、もちろん。逆に手加減させないでよ?スピカちゃん」

 

 

 

 

初対面、だけどまるで昔からの仲のような感じ。

そんな雰囲気で私とアフロディ……いや、照美ちゃんとの会話は〆られた。

ついでに連絡先も交換した。クソ嬉しい。家宝にするわ。

 

 

あと、影山からの誘いは丁重に断った。

あたりまえだよなぁ?

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

影山零治は困惑していた。

彼をよく知らない人物からしたら明らかに困惑している様子ではないため気にも留めないような変化だが、彼をよく知る人物からしたら非常に珍しいことである。

何日、何か月、何年も先の事を計画し、その通りに味方も敵も駒のように利用し、意にそぐわないことが起きたら始末する。

さながらチェスのような機械的にすら見える人生計画。

そんな彼が動揺、困惑を浮かべるなど非常に稀なことであった。

 

 

「引き続き奴を探せ。捜索範囲を東北まで拡大しろ。もちろん奴の住まいの周辺の人員をゼロにすることはないように。」

 

 

昨年のフットボールフロンティア本戦第一試合後、彼は木戸川清修相手に敗北した星之宮中の一年生にしてエースである少女、乙女乃スピカをスカウトしていた。

それも彼が監督として育て上げた帝国学園ではなく、秘密裏に作り上げた帝国を倒すためのチーム『世宇子』へと。

そもそも乙女乃をスカウトしたこと自体、側近たちからしてみれば異常な話だ。

勝利に強く執着しているこの男にとって、負けたチームの選手など才能があっても無価値のはずだからだ。

しかし負けたという事実を差し置いても彼女は手元に置いておきたい選手だった。

 

 

結論から言うとスカウトは失敗した。

 

『影山さんは完全な勝利を好みますよね。その象徴があの帝国学園の経歴。でも私は心技体全てを出して、魂がギリギリまですり減るような戦いをしたいんです。だからあなたのお誘いは嬉しいですけど、お断りさせていただきます。』

 

 

そう理由を告げ彼女は去っていった。

この時はまだ面白い少女、それくらいにしか感じなかった。

だがしかし同時にどこかシンパシーのようなものを感じてもいた。

自身の内のわずかな感情には気を止めず影山は、次の手を打った。

自分に従わないのであれば周りを排除していき、手中に収める。

影山零治の定石である。

 

 

しかし実際はどうだ。

何一つ事が上手く進展しないではないか。

 

 

なんと星之宮の選手たちが北海道に戻った直後、彼女は失踪したというのだ。

 

 

『武者修行してきます。心配しないで大丈夫だヨ♡』

 

 

この置手紙を残し、親や教師、チームメイトに一言も告げず、消息を絶った。

北海道にエージェントを送ったが全く情報が入らず、どこで暮らしているのか、何をしているのか、まるで分からずじまい。

唯一分かっているのが、星之宮を退学しているわけではないということ。

 

 

ならば周りに危害を加えれば、彼女をおびき寄せることができるか?

そう考えたものの一度たりとも成功はしなかった。

彼女の家族を事故に遭わせようとしたり、エージェントに暴行を加えさせようとするも、どこからともなくサッカーボールが飛んできてエージェントを気絶させる。

それを何度も繰り返され、これ以上の人員削減を防ぐため、周囲への攻撃は断念せざるをえなかった。

間違いなくボールを蹴ったのは乙女乃なのだろう。

だがすぐにまた行方をくらまし、発見にはいたらない。

他にもサッカー部がある中学にいきなり謎の少女が現れ1VS11で試合を行い、完敗するチームが多発するなど彼女の存在を匂わせる出来事があっても決して彼女にたどり着くことはできなかった。

つい最近も守備力だけなら帝国にも匹敵する東北の強豪、千羽山が敗れたという噂が伝わってきていた。

 

 

そして影山は今になって彼女の恐ろしさを感じ取った。

 

 

 

なぜ私が勝利に拘ることを知っているのか。

なぜここまで警戒していきなり姿をくらませたのか。

なぜ私の目的に気づいたのか。

 

 

補足しておくが、目的に気づかれたと確定しているわけではない。

しかし彼女の行動を顧みる限り、高い確率で気づいているのだろう。

 

 

そしてあの時感じ取ったシンパシーの意味に気づいた。

 

 

彼女の求めているものは私とは異なる。

だがその戦いへのあくなき渇望、戦闘欲は自分にも並ぶ狂気を秘めている、ということに。

 

 

目下の悩みは多数ある。

彼のかつての師、円堂大介の孫である円堂守率いる雷門中の快進撃。

同じくスカウトし損ねた、『炎のストライカー』こと雷門中のエース豪炎寺修也。

自身の最高傑作と認める『天才ゲームメイカー』鬼道有人からわずかに漂う離反の雰囲気。

 

しかしこれらすべて、『世宇子』と同じく影山が生み出したドーピング薬『神のアクア』の力があればすぐ始末できるもの。

 

 

だが、彼女だけは。

 

 

ひとりで世宇子を倒してもおかしくない。

その『恐怖』といえる感情が珍しく影山を焦らせていた。

 

 

何としても雷門と戦う前にあの娘を手中に置いておかねば、と。

 

 

 


 

 

 

亜風炉照美は困惑していた。

いつの間にか『イナズマイレブン』の世界に転生していた彼女は、原作のように諸悪の根源、影山零治の支配下に入れさせられ、世宇子中のキャプテンとして何十人もの選手を蹂躙させられてきた。

 

彼女は独りぼっちだった。

あの男のせいで家族とも友達とも引き離され、スポーツマンシップに反する行為をさせられ、圧倒的な力を使い他人を壊すよう命じられてきた。

 

 

 

だが彼女の心は死ぬことはなかった。

彼女もまたイナズマイレブンという作品が大好きだったから。

ゲーム画面でしか見れなかった憧れのキャラたちと本気の楽しいサッカーをできることを夢見ていた。

FF編が終われば、その願いを叶えられる。

その一心で彼女は本来ならあり得ないことに、『神のアクア』を使用することなく『神のアクア』を使用した状態の世宇子メンバーと同等以上の実力を身に着けた。

 

 

長年願い続けた夢のために。

そして、自分と同じ立場、もともとはこの世界の人間ではない、明るくてあっけらかんとして、それでいて星のような静かな優しさを持った不思議な親しみやすさがある友人と戦えることを望み、全力でぶつかるために。

 

 

 

だが実際はどうだ。

アフロディは乙女乃は原作と関わりを持つために、雷門に転入するんだろうと想像していた。

故に原作通り決勝戦で戦うことになるだろうと思っていた。

しかし彼女は雷門に転入することなく、約一年影山の目をくらまし続けながら失踪しているではないか。

 

 

上司である影山は、自分が彼女と連絡先を交換していることに気づいており、私の居場所を突き止めるよう指示してきたことがあったが、まじで連絡がとれなかったのだ。

 

 

そして迎えたフットボールフロンティア決勝戦。

やはりというか乙女乃はいない。

フィールドにも、観客席にも。

 

 

 

この世界で初めて出来た親友との勝負ができないことに不満、そして行方が知れないことに心配を抱きながらも、アフロディ、いや照美は意識を切り替える。

 

 

今はこの試合を、伝説のゴールキーパー、円堂守との戦いに全力を尽くそう、と。




主人公、まさかの失踪。



TSてるみんが第二の転生者


やぶのてんや先生ばりの爆速展開すまんぬ。


初期案では星之宮と帝国の試合とか書こうとしたけど、あってもなくてもいいかなとか思ったし、それやると主人公強化が難しくなるのでカットしました。


帝国メンバー見て「ア!ゴジョウサンオルヤンケ!」みたいなことをやれなかったのは心残り。
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