シュートを防いだ円堂のスローインが逆サイドの土門、そして一之瀬へと繋がっていく。
やはり白恋の実力はお粗末なもので必殺技を使わせることすらなく突破されていく。
「よし!染岡…っ!?」
雪野を抜いた一之瀬が染岡へとパスを出そうとするが、そのパスは通らなかった。
吹雪が急接近してパスをカットしたのだ。
「なんて速さだ!」
「居屋君!」
吹雪からパスを出されたのはウィンタースポーツ用のゴーグルをつけた少年、居屋だがトラップに失敗しこぼれ球を栗松が拾う。
すぐに帽子をかぶった少年、目深がブロックしようとするが栗松はそのまま勢いに任せて加速する。
「『ダッシュアクセル』!」
必殺技で目深を吹き飛ばし喜ぶ栗松だがその目の前にいつの間にか乙女乃が回り込んでいた。
「うわわ!?」
「ほらほら、突破した直後に油断しちゃダメじゃん?」
揶揄うような口調で再び雷門陣営に切り込んでゆく乙女乃。
シュートブロックのために壁山と塔子が先程よりも下がっており、その分風丸、そして土門までもが止めにかかってきた。
吹雪と乙女乃以外のメンバーがそこまでではない分、二人に全力でぶつかるのがいいと考えたのだろう。
「『クイックドロウ』!」
「ここだね。」
「まだだ!『キラースライド』!」
「ほっと。」
居合のような構えから一瞬で加速してボールを奪おうとする風丸を最適なタイミングでターンすることで回避。
立て続けに繰り出された土門の連続スライディングをヒールリフトを利用して突破する。
どちらも習得自体は簡単な技で、それゆえ対策もとりやすい。
しかし持ち前のスピードを生かした通常より精度の高い風丸の『クイックドロウ』に、帝国一軍メンバーと遜色ない実力の土門の『キラースライド』を連続でかわすのは至難の技であり、それこそ世宇子やエイリアのようなごり押しで行くのが最適解のようなものである。
それを正攻法で突破した乙女乃の実力をベンチから瞳子は高く評価していた。
(スピードも技術も日本トップクラスとみて間違いないわね。ストライカーとしてはもちろんだけれども、それ以上に鬼道君のような司令塔、いえ、一之瀬君のようなテクニカルなプレイヤー寄りね。何よりも堅実なプレー…敵味方一人一人を冷静に分析して確実に一手一手を封じていく。引き入れられれば非常に強力な戦力になるわ。)
二人を突破し残るはキーパー円堂とディフェンス二名。
さっきよりも強力な布陣で守りを固めていく雷門。
「壁山!塔子!頼むぞ!」
「はいッス!」
「任せてよ!」
ボールを宙に浮かしシュート体勢に入る乙女乃。
その目線はしっかりとゴールを捉え、左足を振り下ろす。
「いくよ!…喜多海君!」
「なっ!?」
「ええ!?ボク!?」
なんとゴールのほうを見つつ土門が外れたことでフリーとなっていた逆サイドの喜多海へとパスを渡す乙女乃。
まさかのフェイントに意表を突かれてしまい、必殺技のモーションに入っていた壁山と塔子は喜多海のほうに対処できなくなる。
もっともパスを出された喜多海本人もまさか自分にパスがくるとは思ってなかったのだが。
「『フリーズショット』!」
「止める!『爆裂パンチ』!」
喜多海のシュートは地面を滑るように進みながら氷塊へとなっていき、ゴールへ突き進む。
『フリーズショット』は威力は低いものの、スピードがある上滑るためキャッチしづらいという性能がある。
しかし、円堂相手にはその程度の技は通じない。
目にも止まらない勢いで連続で繰り出されたパンチが氷を削り最後ははじき返す。
へへっと笑う円堂だが、直後鬼道から「油断するな!」と声が上がる。
なんと弾いたボールを乙女乃がカットしていたのだ。
「今度はこれでいくよ!『ツインベアインパクト』!」
右足で一撃、逆側から左足で一撃、最後に両足同時にキックを打ち込む。
蹴り出されたボールはまるで熊の親子のような勢いをもって突き進む。
「『ザ・ウォール』!うわぁ!」
「『ザ・タワー』!きゃああ!」
サイド出現する巨壁と巨塔。
しかしさっきのフェイントが原因で発動、解除、再発動を絶え間なくすることになり、一瞬発動が遅れてしまう。
その結果本来よりも威力が落ちて、あっけなく崩れてしまった。
「くっ!『ゴッドハンド』!」
円堂もまた『爆裂パンチ』を使ったことで態勢を十分に整えられておらず、『マジン・ザ・ハンド』では間に合わないと判断し、原点の技『ゴッドハンド』で対抗する。
右手から生み出された神の手がボールを受け止めようとするも、破られてしまった。
ついに白恋側が初得点、一歩リードする形となった。
「円堂!大丈夫か!?」
「ああ、平気だ風丸!それにしてもすっげぇシュートだったぜ!」
「シュートだけじゃない、攻守の技術や戦略も強力だ。フェイントとシュートブロックのライン回避に時間差での速攻、恐らくは円堂が『爆裂パンチ』を使うことまで予想していたんだろう。」
「彼女と白恋のメンバーは初対面だよね。にもかかわらずあそこまで連携をとれるなんて…」
「連携、というよりは利用だな。なにが弱くてなにが強みかを理解して勝つための筋道を立てている。どっちにしろ初対面でそれをやっている以上、天才的なことには変わらないがな。」
「全部あの子の手の上で踊らされているってことでヤンスか!?」
いままでのプレーを冷静に分析している鬼道ですら動揺を隠しきれていない。
一之瀬や栗松もキャラバンで鬼道の話を聞いたときにすごい選手だと思ってはいたものの、実際のプレーを目にすると桁違いだと感じてしまう。
そんななか風丸と染岡の二人は乙女乃、そして吹雪のほうを睨んでいた。
(宇宙人どころか、同年代の女子にもあっけなく負けてしまう……俺の持ち味で勝てないなんてどうしたら…)
(くそっ…いくらあいつらがすげぇ奴だからって豪炎寺の代わりはいねぇんだよ!)
ここで白恋側が選手とポジションを交代する。
MFの氷上と入れ替わりで女子選手の真都路がイン。
吹雪がFWの乙女乃の位置、乙女乃がMFの氷上の位置、真都路がDFの吹雪の位置へと移る。
雷門ボールで試合再開。
先程同様に鬼道から染岡へとボールが渡り、またもや吹雪へと突っ込む。
対抗心から同じ行動をとる染岡だが、吹雪のほうは違った。
「出番だよ……」
誰にも聞かれないくらい小さな声で呟き、マフラーに手をかけると彼を包むようにブリザードが発生して染岡を吹き飛ばす。
やがてその中から出てきたのは髪が逆立ち瞳はオレンジ色に輝いた吹雪士郎。
その表情は穏やかなものから獰猛な笑顔に変わっていた。
「この程度かよ!甘っちょろいやつらだぜ!」
口調も雰囲気も何もかもが別人のように豹変した吹雪。
そのプレーは凄まじく、一之瀬、鬼道、風丸、土門のディフェンスをすべて力押しだけで突破する。
さっきの華麗に舞うようなプレーとは真逆の強引なプレーはその体つきからは想像もできないほど力強い。
そのまま吹雪はボールを両足で挟んで回転、そのボールを中心に冷気を吸収していき巨大な氷塊と化す。
「吹き荒れろ!『エターナルブリザード』!」
氷塊となったボールに回し蹴りを叩き込む吹雪。
その勢いは途轍もなく、しかも打ち出されてからも冷気を纏い大きさと威力を増していく。
「はあああ!『ゴッドハンド』!」
再び『ゴッドハンド』を発動する円堂。
しかしシュートを受け止めた瞬間にオーラの手は凍り付き、砕け散る。
そしてボールはゴールネットを揺らした。
「いいかよく聞け。俺がエースストライカー、吹雪士郎だ!」
尊大に言い放ち自陣へと戻る吹雪。
吹雪のシュートを受けた手のしびれに笑みを浮かべる円堂。
試合開始直後とは真逆のプレイングに感嘆する鬼道やマネージャーたち。
悔しそうな顔で睨む染岡。
三者三様の反応を浮かべる中で瞳子の試合中断を促すホイッスルが鳴り響く。
しかし吹雪の事を認めたくない染岡はその指示を無視して吹雪に対してシュートを撃つ。
「お前に負けるわけにはいかねぇんだ!」
「やる気か!おもしれぇ!」
染岡のシュートをダイレクトで宙へ蹴り返す吹雪。
そのボールの落下地点目掛けて二人は同時に走り出し蹴り込む。
押し合いに競り勝ったのは吹雪のほうだった。
「その程度か。話にならねぇ。」
染岡の事を見下しながら、そう吐き捨てる吹雪。
さらにそのまま円堂目掛けて再度必殺シュートの構えに入る。
「『エターナルブリザード』!うぅぅらあぁぁ!」
猛吹雪を巻き起こしながら突き進むシュート。
円堂は体を捻って『マジン・ザ・ハンド』の構えを取り、壁山と塔子もシュートブロックのために行動する。
「よっと。なんでみんなそんなに喧嘩っ早いかなぁ。」
が、それよりも早く乙女乃が間に割り込みシュートを宙へ浮かしてトラップする。
再三の驚愕、この時点で吹雪より乙女乃のほうが格上であることが証明された。
自身のシュートが止められたことで今度は吹雪が対抗心を燃やすが、グラウンドに介入してきた瞳子によって完全に中止されたことで、初めて会った時の雰囲気へと戻る。
「吹雪君、乙女乃さん。あなたたち二人に正式にイナズマキャラバンへの参加を要請します。一緒に戦ってくれるわね?」
「もちろんですよ。彼らとなら思い切り楽しいサッカーができそうです。」
「私も同じくです!そのためにここに来たんですから!」
新戦力の参加、それを瞳子は新ストライカーの誕生と宣言するが染岡は歯ぎしりをしてどっかへ去って行ってしまった。
そして直後、ジェミニストームキャプテンのれーぜから白恋中への襲撃予告が来るのだった。
どうも、雷門に加入しました乙女乃スピカです。
試合の後は原作通りみんなでスノボーしてました。
ちなみに私はスノボー未経験なんだよなぁ。
まあ筋がいいから割とすぐできたんですけど(自画自賛)。
「そういえば乙女乃も北海道育ちなんだよな?どんな特訓してたらそんなスピードになったんだ?」
「え?雪山ドリブルとパルクールだけどやる?あまりお勧めはできないよ?」
円堂から特訓方法聞かれたから教えたらドン引きされたり(ちなみにお勧めできないのはガチ。初心者は遭難してもおかしくない)
「吹雪、俺と勝負しようぜ。」
エースストライカーの座をかけた染岡さんと吹雪の対決があったり(勝者は染岡さん)
なんやかんやあってジェミニ襲来当日の朝です。
私は朝のルーティンとして北ヶ峰で練習中、これやらないと落ち着かないんだよねー。
やっぱり一日でも練習抜くとなまってしまうって感じる。
私だけかな?違うよね?
「ん~、試合当日だしこれくらいで今日は切り上げるかなー。……ん?」
無理は禁物として白恋に戻ろうとしたとき、雷門メンバーが練習で使っていたスノボ―コースに青い人影を見つけた。
それがだれか気づいたときついため息を漏らしてしまう。
「マジかぁ……風丸かぁ…」
雷門の疾風ディフェンダー、またの名を腐女子の餌こと風丸一郎太。
こんな時間から練習してる時点でやっぱり彼はすでに鬱丸絶望太の片鱗を見せている。
彼はスノボー練習に否定的だったメンバーの中で最初に吹雪に賛成していた。
それは自分より速い人間への嫉妬からの行動。
「ここで放っておくのはしたくないけど……めんどいんだよなぁ、性格。」
いや、いい子なんだけどね?
ただ抱え込みやすいから非常にめんどくさいというかなんというか。
…まあ闇堕ちしないに越したことないし?ここはね、私がなんとかしますか。
「や、風丸君。おはよ。朝早くから練習?」
「あ、あぁ、乙女乃か。おはよう。そういうお前こそ。」
「スピカでいーよ。てか雷門に入ったときにみんなにそう頼んだのになんで円堂君と塔子ちゃんと音無ちゃんしか名前で呼んでくれないかな~?」
「いや、塔子もそうだけどお前も距離感が近いんだよ…」
星之宮にいた頃は最初に頼んで名前呼びにしてもらったから雷門でもそのテンションで行こうと思ったんだけど中々受け入れてもらえないなぁ、悲しみ。
「今日、襲撃予告日だよ。練習するのはいいけどさ、速めに切り上げないと本番きついよ。」
「ああ、忠告ありがとうな。でも俺はもう少しやっていきたいからさ…」
「そんなに吹雪君が羨ましい?」
「……っ!」
うん、知ってたけど図星か。
「彼、ストライカーとしてスカウトされたけどディフェンダーとしても優秀だもんね。スピード自慢って点からポジションが同じ風丸君からしたら意識せざるを得ないんでしょ?」
「……その通りだよ。俺はさ、元々サッカー部の助っ人って形で陸上部から転部したんだ。だからサッカーの経験は壁山や栗松と同じ…いや、あいつらよりも短いかもな。けど壁山はシュートブロックで円堂を支えて、栗松も『トリプルディフェンス』って連携技で円堂たちとゴールを守ってきて……なのに俺はディフェンスとしては全然活躍できなくて、だったらスピードを活かして守備と攻撃両方を支えようって思ったんだけど、世宇子にもエイリアにも通用しない……ついには攻守両方を完璧にこなせる吹雪が加入。……ははっ、俺って雷門にいる意味あるのかな…」
…まあ、気持ちは分からなくもない。自分の特技が通用しない相手が現れるのはギリギリ納得できるだろう。けどその相手に自分と同じ戦い方で勝てるやつが味方になったら?
そりゃあコンプレックス抱えるわな。
しかも私は画面越しに見てたことあるから初めましてではないけど、向こうからしたら初対面の相手にここまで相談するくらい追い詰められてて、さらにジェミニ以上に強いやつらがまだ何チームかあって…
うーん、闇堕ちが妥当に感じてしまう。
「なあ…乙女乃はさ、すぐに力が入る道具があったら使おうって思うか?」
「……それはドーピングって意味でとらえていいのかな?」
「ああ…世宇子のメンバーが使っていた『神のアクア』。エイリアから地球を守るためになら使ってもいいんじゃないのかな…」
「……地球を守るっていう大義名分があれば、確かにいいのかもしれないね。
でも、私は風丸君には使ってほしくないな。」
「…どうしてだ?」
「戻れなくなるからだよ。君は今の自分がチームにとって力不足だと思っていて、そんな自分が嫌だから強くなりたいって思っているんでしょ?そんな心で『神のアクア』なんてものに頼ったら、君はいよいよ君自身を好きになれなくなっちゃう。弱い自分を認められず強さだけを求めたら、君だけのサッカーができなくなる。君はかつての帝国学園や世宇子中みたいに他人を再起不能なまでに痛めつけるために、サッカーをしているの?」
「違う!俺はただ……円堂や、みんなの力に…」
「そうだよね。だったら君は君自身の力で何ができるかを考えよう?君だけができるサッカーでエイリアを倒そうよ。」
「俺のサッカー……通じるのかな、エイリアに。」
「…ここだけの話ね、私と照美ちゃん…あ、世宇子中のアフロディのことね。私とあの子、友達なんだ。」
「え!?」
「だからね、『神のアクア』や世宇子の他のメンバーのことも彼女伝手に聞いたことあるんだけど、実は彼女だけ唯一『神のアクア』を使ってないって知ってた?」
「……そういえば、あいつだけハーフタイムに何も飲んでなかった。」
「彼女は自分のプレーを見失いたくないから『神のアクア』を拒んだ。けど影山に目をつけられている以上、切り捨てられるわけにはいかなかった。だから自力で『神のアクア』を使用した選手と同等以上の実力を身に着けたの。私も似たようなもの。去年のFFで豪炎寺君がいた木戸川に負けて、そのあとに影山に目をつけられたんだけど断ったの。価値観の違いってやつでね。けど変に意地っ張りでさ、『スカウトは受けないけど、受け続けられるくらいの実力を持って影山を倒したい!』って思ったんだ。だから必死で練習した。だからさ、風丸君だって強くなれるんだよ。」
「……」
「吹雪君やほかの人を目標にしてもいい。けど焦って自分を見失わないで。風丸君の力を私は信じてるよ。」
「…………ははは!参ったな、初対面のやつにこんなに励まされるなんて。ありがとう、乙女乃。少しは気持ちが落ち着いたよ。」
よかったああああああ!!!
思いつく限りの言葉羅列したらなんとか鬱丸フラグ壊したぞ!見たかワレェ!
あ、でもイプシロンとかジェネシスとか出るたびにまた病み期に入るのかぁ(遠い目)
いやでもダンペラ戦やらずにすむなら全然構わない!
まじであのクソダサタイツ集団は見たくないんだ。
ごめん嘘、風丸だけは若干見たい気がしないでもない。(手のひらドリルスマッシャー)
「ふふっ、それならよかったよ。さっきよりいい顔してる。」
「ああ、それじゃあキャラバンに戻ろうぜ。」
「うん!…………ああ、そうだ。二つくらい風丸君にアドバイスあげるよ。」
「ん?アドバイス?」
「うん。一つ目、君は信頼を集まること、仲間との連携、特に後輩との連携はうまいはず。付き合いの長さってところもあるけど仲間からの信頼は絶対吹雪君よりも厚い。これはこの先もきっと同じ。二つ目、吹雪君は風になるのは上手だけど、『風』を駆使するって見方をすれば君のほうが格段に得意だよ。」
「……言ってることがさっぱりなんだが」
「ふふっ、少し考えてみてよ。私、人の素質見抜くの得意なんだ!」
教えられることは教えた。
あとは風丸次第だね。
ダンペラフラグは果たしてほんとに折れたのか