仮面ライダーエグゼイド異伝 パラドックス・ゲーム   作:たんぺい

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一話

-西暦2024年某月-

 

 

「パラド、何か言いたい事が有るなら言えよ」

 

聖都大学附属病院小児科医勤務の医師である宝生永夢は、目の前にいる黒尽くめの青年パラドに向かって苛ついた様な口調で話しかける。

白衣を着た大人しそうな医者らしくないラフな語り口の永夢に応えるよう、パラドも同じぐらいに馴れ馴れしく苛ついた口調でこう返す。

 

「エム…お前こそブレイブの結婚式から様子が変じゃないか。

俺はバグスターウイルスだから結婚式なんて美味しい料理が出る食事会、ぐらいにしかわからないけどさ。

少なくともめでたい席だったじゃないか。なんであの日からお前の心は滾っているんだ?」

 

と、純粋な瞳でパラドから聞き返された永夢はどぎまぎした顔になり慌てた雰囲気で視線を背ける。

 

 

…少し、経緯を説明しなければならないだろう。

パラドの言うブレイブ、つまり仮面ライダーブレイブである鏡飛彩は百瀬小姫と祝言を挙げたばかりだが、そこまでに至る道は苦難の連続である。

 

かつて起きたバグスターウイルスによるパンデミックであった『ゼロデイ』による集団消滅事件による被害者であった小姫は、つい最近までデータの海の中で消滅状態に陥っていた。

しかし、彼女は肉体的には消滅してもあくまで死亡した訳ではなく、人格データや身長体重の容姿は確実にプロトドラゴナイトハンターのガシャットに残されていた。

それを正宗や黎斗の良いように利用された事はあったが…とにかく、少なくともデータを現世に『取り出す』技術は既に2016年には完成されていた、あとは人の身体へと変換し安定させる技術が必要になっていたのだがそれがなかなかに難航していたのだ。

 

九条貴利矢という消滅からバグスターウイルス化を経て人に戻れた前例にて特異点は、人間として蘇った経緯が特殊すぎてサンプルにならず、それ故に何年かかっても再現可能な実験ができずうまく行かないジレンマがあったのだが…

『裏技』とでも言っておこうか、永夢は宣言した事象に対し自分を中心に観測できる未来を決定する能力を偶発的に身に着けた。

例えば「俺は宝クジが当たる」と言えば買った宝くじが数億円の札束に変わる、「お前はドブ川に落ちる」と宣言すれば相手はその通りの不幸に苛まれる。

そういう能力の応用で『CRは再生医療のきっかけを掴む』と宣言したらどうなるか、まあそういう事だ。

全ての悲劇はゲームから始まったのならば、それを攻略するのもゲームの力を借りるというのも悪く無い…永夢は自分にそう言い聞かせている。

流石に効果範囲が余りにも無差別な上に冗談抜きで世界を支配し気まぐれに崩壊させかねないそのガシャットは、衛生省最高責任者の小日向に頼み秘密裏に厳重ロックをかけた金庫を5重に保管して封印しているが…まあ、それはともかくも。 

 

話が大幅にそれてしまったが、とにかく消滅の被害者達は次々へと開放されていき、リハビリの末にバグスターウイルス化から人にもどりつつある小姫が飛彩と結婚式を執り行った。

実にめでたいことなのだが…パラド曰く『心が滾る』、つまり永夢はその結婚式に出席した事で苛ついたり怒っていたりするらしい。

…_が、当のパラドに全く心当たりがない。

飛彩は相変わらず偉そうな奴だが悪いやつではないし、小姫という女性も良い人そうだ。

お似合いのカップルだろうし、彼等は永夢に対し別に結婚式の際やその前後に嫌な態度一つ取らなかった。

怒る理由や苛つく理由がさっぱりわからないのだ。

 

 

「ポピ?どーしたの、エムもパラドも?」

 

そんな二人の妙な空気を掻き消すように甲高く間抜けな声が小児科医の部屋に響く。

ピンクのボブカットの髪に音符やお菓子を模したようなキャッチーでポップな衣装のそれを着た少女の名前はポッピーピポパポ。

『ドレミファビート』の案内人を司る良性のバグスターウイルスであり、陽気で優しく人懐っこい性格でCR関係者達の心強い味方でもある。

…が、どうにも頭の回転が悪いというか間が抜けてる脳天気なタイプであり、若干空気が読めてないというか空気を読まないのが玉にキズだ。

 

「相変わらずだな、ポッピーは…

いやさ、エムが何だか最近調子がおかしくてよ。そんで、俺とエムは一心同体だろ?

向こうが何だかイライラしてるのか気に入らないのか知らないけど、そう言う気持ちだけが俺に伝わってきて俺まで心が滾るから困ってたんだ。

兎に角、話ならエムに聞いてくれよ」

 

と、そんなモヤモヤした気持ちをそのままぶつけるかの様にパラドはポッピーに伝えるや否や、彼女は血相を変えて永夢を質問責めにする。

痛い所はないかとか、何か嫌な事があったのか等、語彙力が少ないなりに一生懸命に。

そんなポッピーの顔を見て永夢は赤面しながらも、先ほどのようなじんわりした心の滾り方とは違う暖かな心が踊る感触がパラドにも伝わり、なんとなくパラドは理解した。

 

(エム…要するに、ブレイブに妬いてたのか)

 

と、シンプルに結論付けるなり、パラドは内心続ける。

 

(言われて見たら、エムはハナから可哀想なヤツなんだ…

ワガママである事を殺して『良い子』で在ることをずっと続けて、ホントは誰より悲しくて寄り添って欲しかったから『俺』なんてバグスターウイルスとマイティブラザーズなんて産み出すぐらい寂しかったのに。

その解決策もわからないまま大人になってむしろ人に寄り添い続けるなんて、普通は誰にもできないだろーにエムはずっとがんばってたんだ。

なのに31にもなって、ワガママになるやり方がまだまだエムはわかんねー…シャイなやつだもんな。

だから曝け出すように…ポッピーが好きなのにそれを伝える事が出来なくて、それで『結婚』って形で恋愛の差を見せられて自分にもブレイブにも苛ついてたってか)

 

そうパラドが心のなかで思うや否や、一つアイデアを思い付いた。

まあ、アイデア実行は今日明日の話では無く一週間後だ、少し長く期間があった方がかえって永夢だって心の準備が効くだろう。

新作ゲーム販売に合わせて取った相棒のせっかくの有給をむりやり潰すマネをするのは気が引ける。

だが正直な話をしたら、事情を理解してさえしまえば31にもなって中学生未満の情緒しかして無いような永夢を焚き付けるには少々強引な手を取った方が都合が良い…少なくともパラドはそう考えた。

 

「あー…ポッピー、ちょっと良いか?もしかしたらエムが心が滾っていた理由がわかったかもしれねー」

 

永夢を心配するポッピーに割り込むように語りかけるパラドはこう続けた。

 

「駅前にある遊園地だっけか、そこの町おこしだかなんだかの一貫で男女一組の割引チケットもらったんだが持て余してたんだよエムは。

一人で行くのも大人の男二人でってのもアレだし、かと言ってブレイブやレーザーに渡すのもシャクだしな。

悪いがポッピー、エムに付き合ってやってくんねえか?今度の土曜日の昼ぐらいにさ」

 

そういたずらっぽい笑顔をポッピーと永夢にむけながら…

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