影から現るは4人目のウォルコット家、ターナー   作:無名リンクス

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 ミッションを連絡します。

 ラインアークに展開する守備部隊を排除してください。
ご存知の通り、ラインアークはクレイドルに賛成しない反体制勢力の本拠地です
 我々は、平和的な話し合いを求めていますが、彼らは頑なにこれを拒み攻撃的な態度を崩しません
 このミッションは、話し合いのための示威行為です。力をちらつかせた交渉は我々の本意では無いのですが、この際は仕方ありません
 なお、ラインアークの主戦力【ホワイト・グリント】は離れた地域で活動中です。心配はいりません
 失礼ながら、これは貴方の試金石でもあります。確実なミッション遂行を期待しています




零話 ラインアーク襲撃

『高度6000メートル。ターゲットはラインアーク守備部隊。目的はそいつらの排除だ。......まったく、王小龍から秘匿通信が来たから一体なんだと思えば、リンクスのお守りとはな。しかも、家名からしてウォルコットの次男坊か。...........まぁいい、この作戦で成果を挙げてみせろ。お前のお守りをするに値するか見極めねばならんからな』

 

 高高度から一機のネクストACが投下される。四脚型の、特徴的な見た目のACは名を『ヘリックスIII』と言い、搭乗者はターナー・ウォルコット...........ウォルコット家の秘匿された4人目のリンクスである。

 リリウム・ウォルコットがリンクスとして活躍を重ね、ランク2に収まったところで王小龍から、新たなリンクスを見出そうと躍起になっていたセレン・ヘイズへ連絡が届いたのだ。

 

 その内容とは、ウォルコットの秘蔵っ子を預けるから、一ヶ月で一人前のリンクスに仕立て上げろというものだった。正直なところ、セレンにとっては願ってもない話だった。自身の望んだリンクスを貸し与えるというようなものなのだから、まさに棚からぼたもちとでも言うべきだったろう。

 

『では、始めろ』

 

「了解。ヘリックスIII、目標視認。作戦開始」

 

 ラインアークの高架橋上に、重々しい音を立てて着陸する。コンクリートがひび割れ、衝撃を脚で吸収する。安定性能が高くリカバリーが早い四脚の特長を活かし、即座にクイックブーストでその場を離れる。

 レーダーに突如現れたネクスト反応を見たのだろう、通信機から傍受している敵の無線通信が聞こえてきた。

 

『企業のネクストだと?』

『畜生、こんな時に限って...!』

 

 通信終了と同時に、散開して展開している敵部隊への攻撃が開始された。その圧倒的な攻勢を前に、MTやノーマル機に乗っているだろうパイロット達の悲痛な叫びが聞こえてくる。

 

『ノーマル機、撃破。...........いや、待て。敵増援を確認。...ノーマル部隊か、油断だけはするなよ』

 

「了解」

 

 オーバードブースト機構を起動し、時速1500を越える程の速度で敵部隊へ迫っていく、ヘリックスIII。通りがけに目測でスナイパーキャノンを敵ノーマル機に命中させ、その後オーバードブースト機構を停止、浮遊し殲滅を開始する。

 ライフルとスナイパーライフルを構え、破壊されるまで弾を撃ち込み続ける。一発、二発とライフル弾が撃ち込まれ、残骸と化していく。

 

『クソッ、オレたちをゴミのように...なんなんだ、あいつは...不公平だろう......!』

 

 ミサイルを撃ってくる最後のノーマル機を狙撃で破壊し、ミサイルをフレアで回避する。

 

『終わったな......やはり、ウォルコットの名、伊達ではないか』

 

「くだらない任務だった......次はネクスト戦を頼む。どうせ戦うのならば、刺激的にやりたいんでな」

 

『...まあ、ひと月でお前を立派なリンクスに育てろと、王小龍からのお達しなんでな。言われなくとも、あれば対ネクストの依頼を受諾させてやるさ』

 

 それを聞いたターナーは、満足そうに笑いながら踵を返し、オーバードブーストで速やかにラインアークを離脱した。

 後のラインアークに残ったのは放置された架橋と、僅かばかり残り、コジマに汚染された広大な海に沈まずに済んだノーマル機やMTの残骸だけだった。

 

 ネクストの持つ力は絶大だ。MTはおろか、ノーマル機ですらネクストの相手をするには性能不足すぎる。それを決定づけている要素のひとつが、コジマ技術の有無にある。

 

 まず、コジマ粒子を機体周辺に展開、吸着させる【プライマルアーマー】。コジマによる高い防御力を発揮し、まあコジマ粒子によって引き起こされる深刻な汚染を発生させないため、機体の気密性を高め、またその恩恵によってネクストACの装甲も非常に堅牢なものとなっている。この点が、ノーマルとの装甲の決定的な差である。

 続いて、機体の機動力を高めた【クイック・オーバードブースト機構】。ブースター出力を一瞬のみ大きく増幅させ、物理法則をすら無視するかのような超機動を可能とする。

 そして、これらふたつを併用することで生まれる【空気抵抗の無い高速飛行】。プライマルアーマーによって、空気抵抗による速度減衰を完全に克服、機体重量とブースター出力によってのみ機動力が決まると言っても過言では無いほどの速度で飛行が可能なのだ。

 

 これらを兼ね備えた最強の兵器こそがネクストであり、それを覆し得るのは同じネクストでしか成し得ないと言われている。......いや、実際そうなのだ。ネクストに代替する戦力を生み出した企業も、ネクストそれ自体こそが最大の戦力と認識している。

 

 そしてそれを駆る天才たちこそが【リンクス】であり、リンクスとして能力的に優れている者は、たった一人だけで世界を壊しうる力を持っている。

 

 セレンは、このターナー・ウォルコットという男に可能性を感じていた。

 人情を持たない冷酷な性質、物怖じしない戦闘向きの性格、そして戦いを楽しむ残虐性......そのどれも、リンクスとして一流になる以上はあって困らないものばかりだ。それをこの男は全て兼ね備えている。

 それ故、セレンは思わずにいられなかった。この男は、人として──

 

「イカれてるよ、お前は......」

 

 そう言い放つが、当の本人は意に介さず、そればかりか──

 

「それの何が悪い?」

 

 くっくっ......と喉を鳴らして笑った。

 

 




 とりあえず投下
 続くかは未定。でも続きはある
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