影から現るは4人目のウォルコット家、ターナー   作:無名リンクス

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 作戦の内容を説明する

 雇い主はBFF。目標は大規模コジマエネルギー施設【スフィア】の防衛を務める【サイレント・アバランチ】の支援だ。敵勢力はオーメルサイエンス。スフィアを狙っている事から、恐らくBFFの擁するコジマ採掘能力を求めての事だと予想されている
 敵の戦力はオーメル製飛行型ノーマルばかりだと予想されているが、ひとつ不審な点があってな。偉いさん、はっきりとは言わなかったが、今回の強襲勢力には鹵獲されたGA製アームズフォートが存在しているって話だ。ランドクラブが控えてるって話が本当なら、かなり厄介な話だ

 まあ今言ったAFの事もあるんだろう、今回は偉いさんから直々に作戦が提案されている。ようはBFFらしさってやつだが......まあ、聞いてくれ。【サイレント・アバランチ】の主兵装は肩部マウント型の、大型スナイパーキャノンだ。これを利用し、敵ノーマルを排除する。防衛ラインを二つ設定し、一つ目をサイレント・アバランチが。二つ目を君が担当する。ノーマルにはAFの相手は務まらんから、敵ノーマルを殲滅した時点でサイレント・アバランチを離脱させ、これをネクストである君が叩く
 欠点のない作戦という訳では無いが、だが正面からひたすらぶつかり合うよりはマトモなはずだ

 ああそれと、最後にもう一つ。偉いさん、サイレント・アバランチの生還率にボーナスを設定している。まあ面倒かもしれんが、稼ぎ時だと考えようや

 こんなところか
 悪い話ではないと思うぜ。連絡を待っている



壱話 サイレント・アバランチ支援

 

 猛吹雪という悪天候に晒されながら、24機のノーマルAC【サイレント・アバランチ】が補助脚を展開し、スナイパーキャノンを構える。誰かが敵を捉え、狙撃砲を撃ったのを皮切りに、吹雪いているこの戦場で十数発の大口径弾が発射されていく。

 

「壮観だな、この光景は。まるでかつての強行上陸作戦だ」

 

『違う点を上げるとすれば、敵側が厄介な兵器を持ち出しているっていうところだがな。その為に雇われたのだ。お前もリンクスなら、アームズフォートの一機程度、破壊して見せろ』

 

「了解」

 

 雪に覆われていた一機のネクストACが熱を持ち始め、機体に覆いかぶさっていた多量の雪が機体の持つ熱によって一瞬で溶ける。そして、ACの各部に搭載されたプライマルアーマー整波装置から新緑色の薄い膜が形成されていく。雪を弾くその防御シールドは、コジマによる狂気の産物だ。

 戦闘準備が完了したのを見届け、オペレーターを務める女性、セレン・ヘイズが言葉を発した。

 

『ミッション開始』

 

 ネクスト【ヘリックスIII】の、暗かった目元に3つの光が灯される。赤い瞳を吹雪の中に凝らすように、ひたすら前方を凝視している。

 

「視界良好。......とは言っても、こんな吹雪の中じゃあな」

 

『文句を言うな。......今回の目的は【サイレント・アバランチ】の支援だ。奴ら、敵飛行型ノーマルを圧倒しちゃいるが、経験上こういう時は大抵敵の追加戦力が隠されている。アームズフォートも、恐らくいるだろうな。......留意しておけよ』

 

「わかった」

 

 四脚のACが浮かび上がり、オーバードブーストで戦線まで高速移動する。目標まで30秒ほどかかると思われるこの道程を、ひたすら集中力を切らさず低空飛行する。

 

『迎撃ッ!撃ちまくれ、サイレント・アバランチの威信を見せろ!』

『第二波、確認!対空攻撃を継続してください!』

『予想以上に数が多い......!こちらの援兵はどうなっているんだ!?』

 

 戦線は、ターナーの思うより上手くいっていないようで、それはどうやら敵戦力が想定よりも数を上回っていることに起因しているらしかった。

 後方からACの反応を確認したサイレント・アバランチのオペレーターが、部隊に確実に聞こえるよう通信域を上げた。

 

『AC、確認!ヘリックスIII、味方です!』

『ヘリックスIII?......例の、新しいリンクスか!ありがたい、来てくれて助かったぞ!すまんが、劣勢だ。加勢頼む!』

 

 前方を見渡す限り、敵機の数は数十以上、数だけ言えばサイレント・アバランチのざっと3倍はくだらない。......だが、その数もネクストにかかれば大した障害にならない。その圧倒的な火力によって。

 

『畜生、BFFのネクストだ!奴ら、予備の戦力を用意していやがったぞ!』

『構うものか、アレを前進させろ!ネクストごと踏み潰せ!』

 

 空虚な戯言を吐くオーメル製ノーマルの部隊を排除していく。左後部のミサイルを撃ち、空いたその隙にスナイパーライフルを構え、飛んでくるノーマルに向けて射撃する。可哀想なことに敵ノーマルの装甲は飛行特化のため脆弱極まりなかったようで、ライフル弾の一撃で爆炎を吹き墜落していく。

 そのまま立て続けに落とし続けた後、サイレント・アバランチが前進して来、残った飛行型を全て撃ち落とした。後には残骸が転がり、冷たい氷の地に少しばかりの温もりが宿った。

 

『あの......サイレント・アバランチのオペレータを努めます、レイチェル・リリーと申します。今回は来てくださって、ありがとうございます』

 

「構わない、これも依頼だからな。それよりも、サイレント・アバランチを下げた方がいいんじゃないか?......見ろ、ランドクラブだ」

 

『えっ?.........あっ!?......ラ、ランドクラブ、確認!サイレント・アバランチ各部隊員は、すぐに離脱を!』

 

 レイチェルの焦ったような声の後、サイレント・アバランチ各員が下がっていく。第二防衛ラインにまで下がったのを確認すると、いよいよ来たる巨大兵器【アームズフォート・ランドクラブ】を目視する。

 

『アームズフォート、ランドクラブ確認。図体ばかりの鈍足だが、機体側部に搭載されたハイスピードミサイル、及び上部搭載の三連装355mm砲は、ネクストといえど相応に削られるぞ。注意しろ』

 

 警告の直後に聞かされた三連355mm砲が、ヘリックスIIIに向かって飛んでくる。サイドブーストを強く吹かして回避し、その動きのままオーバードブーストに移行し、急速接近する。ミサイルの接近を感知して、フレアをばらまいていく。見た目は熱源をばらまく飛行物体な訳だが、フレアがBFF製の高性能なものなので、ミサイルに対する攪拌性能は抜群である。

 更に言えば、ノーマル機が確認できない以上ミサイルとマウント砲の射角に入らない下部が最も安全だと思われた。

 

「足元に潜れれば弱点は決まったようなものだな」

『近付ければな......主砲の威力には注意しろよ』

 

 セレンがそう言い放った瞬間、ヘリックスIIIのすぐ真横を通り過ぎるように主砲が着弾する。着弾点に出来上がったクレーターを見て「......了解」と、静かに呟いた。

 風を斬るような速度と圧を、機体越しに感じる。AMS(Allegory-Manipulate-System)によって、機体の感覚が常に脳髄の深くに突き刺さっているような気がするのだ。

 オーバードブーストを用いた接近中に、セレンが警告する。プライマルアーマー濃度やコジマ供給量がHUDを通じて、目に見えて低下しているのがわかった。

 

『オーバードブーストを切れ、もうすぐPA(プライマルアーマー)が消滅してしまうぞ!』

「構わない、当たらなければPAなんて要らんさ」

 

 限界までオーバードブーストを使用する。目測で、あと3秒持つか持たないか。敵との距離、450メートル。機体よりも、パイロットに負荷のかかる方法をターナーは選んだ。

 

「......ッ!!」

 

 オーバードブースト中の、前方へのクイックブースト。

 時速1500kmをゆうに越すそのスピードは圧倒的な推力を発揮し、プライマルアーマーが消滅する前にランドクラブ下部へと侵入する事に成功する。

 

「じゃあ、後はおもちゃだな」

 

 一点を集中的に攻撃し、装甲を削り取っていく。持ちうる火力全てを叩き込み、ランドクラブの装甲に穴を開ける。自衛手段を持たないランドクラブの囁かな抵抗か、少し移動速度が早まったがそれだけだ。

 スナイパーキャノンを、脆弱な装甲内部に撃ち込む。エンジン部分に被弾したのか、穴の空いた部位から火炎が吹き出る。

 ブースト推力を上げ、ランドクラブ下部から即座に離脱する。先程までヘリックスIIIのいたそこは火炎に塗れ、すぐに向こう側が見えなくなった。内部の爆発に耐え切れなくなった箇所から装甲が爆ぜ、剥がれていき、ランドクラブは大きな爆発音を上げて爆煙に飲み込まれた。

 

『ミッション完了だ。......まぁ、こんなものだろう。アームズフォート相手が初めてにしてはよくやった方か。及第点だ』

 

 セレンから労いとは真反対の口調で依頼の終了を告げられる。セレンからの通信が終わった直後、離脱していたサイレント・アバランチのオペレーターが通信を繋いできた。

 

『ありがとうございます。サイレント・アバランチだけでは、アームズフォートを撃破する事は出来ませんでした。スフィアも無事、防衛に成功しています。サイレント・アバランチに被害もありません。......完璧ですね』

 

「それなら良かった。...ヘリックスIII、帰還する」

 

 オーバードブーストを使用し、作戦エリアから離脱する。

 雪と煙に塗れ機体が見えなくなり、視界がクリアになる頃には、ネクストACは跡形もなく消えていた。

 





『......聞いたか。例の、新しいリンクス』
『BFFの4人目、らしいな。ウォルコットの姓を名乗っているそうだが、本物かどうか、わからんな』
『宛ら【BFFの王子様】ってところか?』
『過去の遺物を守ろうとした理由も、存外それかもな』



『聞いたか、メイ!王子様の噂!』
『聞いたわよ。なんでも、リリウム・ウォルコットの兄らしいけど?』
『え!?そうなのか?俺、てっきり親戚か何かかと思ってたぜ』
『......気にかかるところはあるがな。特に、BFFの陰謀屋は』
『有澤のオッサンも、何か考えてるのか?...俺にはよく分からねぇや』



『だ、そうだ。別に、今重要視する問題ではないが、時期もある。モノによっては、首輪を外そうと思う』
『【ハリ】のようにか?それもいいがな、メルツェル。......だが、テルミドールは?まだ帰れんのだろ?』
『そこは気にせずともいい。全て計画の内だ』



「見てみろ、ターナー。今月の【月刊リンクス特集】だ。......フフッ、お前が一面を飾っているぞ」
「勘弁してくれないか、セレン......見るのもうんざりなんだ」
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