影から現るは4人目のウォルコット家、ターナー 作:無名リンクス
作戦を説明する
雇い主はGA。目標は、インテリオル勢力と交戦するGAのネクスト戦力【ワンダフルボディ】の援護だ。ワンダフルボディが生存さえしていれば、それで充分だ
ワンダフルボディ、【ドン・カーネル】はGAのニューサンシャインプロジェクトによるネクスト戦力として活動するリンクスだ。元々ノーマル乗りで装備の扱いには長けてはいるが、まだ対ネクスト戦を経験していない、そんな所だがな
さて、肝心の内容だが、旧ピースシティ南部でインテリオルの物資輸送部隊が、多量の資材を輸送しているとの事だ。......とはいえ、これを馬鹿正直に受け止めるほど俺達も阿呆じゃない
囮と考えていいだろう。恐らくは、インテリオルのネクストチームが差し向けられる可能性が高いだろうな
よって、インテリオルの輸送部隊をGA製ハイエンドノーマル部隊【インファントリーズ】に追跡させ、それに更に食いついたネクスト戦力を、君とワンダフルボディが撃破する。インファントリーズは、オーバードブースト機構を備えたハイエンドノーマルで構成された部隊だ。すぐに離脱する為、誤射などの心配は必要ない
無論、ネクストでない可能性もある。その場合、敵勢力を殲滅して作戦は終了、報酬も応分に支払われるそうだ。ネクストが出撃している場合は、敵ネクストチームを殲滅、あるいは撤退させればいい。重要なのはワンダフルボディの生存だからな。多分だが偉いさん、ニューサンシャインプロジェクトの成功をアピールしたいんだろう
気をつけろよ、相手は十中八九EN兵器を使ってくる。GA製フレームやBFF製フレームを使うネクストにとって、致命的な弱点になる装備だ。そうでなくとも強力で、いくら君とはいえ、油断はできないぞ
とまあ、こんなところか
相応に危険だが、見返りは充分に大きいぞ
連絡を待っている
三発、四発とレーザーやプラズマが放たれ、数機のノーマルが爆発する。今まで戦ったノーマルと違い、旧世代の遺物であるはずのハイエンドノーマルだった。高度なブースト出力や、オーバードブースト機構を備える古いAC。何故ここに、と思ったが、数機撃破の後にノーマル部隊がオーバードブーストを用いて撤退していくのを見て納得がいった。
《GAのノーマルが、撤退していく......?...........チッ、そういう事ね。気をつけて【ストレイド】。撒き餌に掛かったのはこちらのようよ》
《構わない、作戦通りだ。GAのネクストを撃破する。よろしく頼むよ【カリオン】》
蜘蛛の子を散らすように逃げていくGAのノーマルを後目に、2機のネクストは旧ピースシティ南部を見つめていた。
カメラが起動し、視界が明瞭になっていく。270度は見渡せるこの広い視界の端に、彼は映っていた。今回のパートナーたるネクスト【ワンダフルボディ】だ。
『お前が俺の相棒か。よろしくな。まだ若そうだが、まあ俺に任せておけ。どんな奴が来ようが、俺がどうにかしてやるよ』
ドン・カーネルは豪快にハッハッハと笑う。自信に満ち溢れた笑い声が旧ピースシティの中央部で響いた。「よろしくな」と返すと、ドン・カーネルは『おう』と返事をした。
「......ま、見てわかる通り俺のヘリックスIIIは後衛向けのAC、危険な前衛はあんたに任せる事になる。しっかり援護はするから、よろしく頼むよ」
そう告げると、ワンダフルボディの左手の拡散バズーカが微かに動き、少し傾いた。通信妨害の激しい戦地に赴いた際に使われるハンドサインのひとつで、意味は《了解》らしい。
『そっちこそ、俺を頼れよ。アームズフォートが来たって、俺の敵じゃあないんだ』
彼はまた笑った。
静かになった戦場に、無線による通信がこだました。どうやらノーマル部隊【インファントリーズ】の撒き餌に何かが掛かったらしかった。
『こちらインファントリーズ!予想通り、インテリオルのネクストだ!機数、2!!ランク29、カリオン!もう一機は正体が掴めん!圧倒的な攻勢だ、他の隊員は離脱、俺もオーバードブーストで離脱する!あとは任せたぞ!!』
『来た......!若いの、いけるか?』
「舐めてもらっちゃ困る、俺もリンクスだ」
ワンダフルボディがオーバードブーストを使用して、旧ピースシティ外れへと突入する。ヘリックスIIIもそれに続いて、街を飲み込む砂漠を高速で進んだ。
『ミッション開始。ワンダフルボディと共闘し、襲撃してくるインテリオルのネクスト戦力を叩く。一機はカリオン、もう一機は詳細不明のイレギュラーネクストだ。気を抜くなよ?何が起こるか、わからんのだからな』
セレンの通信が終了し、前方に集中する。500メートル先に、ワンダフルボディが先行しており、その後ろをヘリックスIIIが追従していく形だ。
レーダーにネクスト反応が2機ぶん表示された。
『見つけたぞカリオン、ワンダフルボディだ』
『了解よ。...........オマケも混じっているようだけど。ランク28、ヘリックスIIIね』
『ヘリックスIII......例の、BFFの王子様か。油断するな、あれの実力は並大抵じゃないらしい』
2機のACが浮かび上がり、左右に分散する。挟撃する作戦だろうか。ワンダフルボディは咄嗟にヘリックスIIIに指示を出した。
『お前は二脚を!俺は四つ足を相手する!』
「オーケー、死ぬなよ!」
ワンダフルボディも地上を走行し、ロックオンし次第ミサイルをひたすら撃ち続ける。ライフルで牽制しながら旧ピースシティの廃ビル群に紛れてカリオンを相手する一方、ヘリックスIIIとイレギュラーネクストが対峙していた。
「あんた、誰だ?イレギュラーとは、随分ときな臭いじゃあないか、なあ」
『俺が誰だろうと、どうでも良い。傭兵同士が戦場で会えば、血みどろの殺し合いになるのは必須さ。さぁ、ダンスと行こうか』
「けっ、キザな男だ」
イレギュラーのネクストACが飛び上がり、上からマシンガンとレーザーキャノンを撃ち下ろしてくる。マシンガンの速射弾がいくらか命中し、プライマルアーマーが減衰していく。レーザーを機体に当てられないよう回避しながら、お返しにスナイパーキャノンを叩き込む。
『おっ...と、良い動きだな。AMS適性には恵まれたか』
「避けたか......」
軽快なクイックブーストで大口径弾を避けられ、思わず舌打ちが出てしまう。苛立ちを隠そうともせずに、次弾の装填が完了するまで武装を切り替え、ライフルとミサイルで牽制を仕掛けていく。イレギュラーネクストはフレア系兵装を装備していないようで、ライフルは避けるがミサイルには当たっている。
『流石に当ててくるか...そうでないとな』
イレギュラーが呟くと右手のグレネードを向け、放ってくる。「チィッ!」咄嗟に回避行動を取るが、爆風がPAを貫通して来、少し機体に損傷を負ってしまう。追撃のレーザーキャノンと散布ミサイルを機体の切り返しとフレアで回避しながら、ライフルと狙撃銃の同時射撃でイレギュラーのPAと機体装甲を削る。
「まだまだ...!」
『これが、ネクストの動きだと......!?』
『遅いわね、貴方。無理をしてリンクスになったのかしら?』
一方、ワンダフルボディは限界までAMSを働かせてカリオンの戦いに喰らい付いていた。カリオンは機体速度こそ早いがフレア系兵装を持たない点を活かし、ミサイルを多用していた。
『じゃあ、俺は......』
しかしミサイルも速度に振り切られ、着弾前に失速してしまう。敵のプラズマキャノンをどうにかビルに当てさせて回避するが、戦況は芳しくなかった。敵の方が、実力は間違いなく上。着実にダメージこそ与えていたが、万が一近くの建物が無くなれば、戦闘中に咄嗟に回避することができるほど余裕が無いワンダフルボディからすれば致命に成りうる。
『なんだ...?動きが遅いな、ワンダフルボディ』
『う、うるさいぞ!今集中してるんだ!』
ヘリックスIIIに付いているオペレーター......名前をセレンと言ったか......が、こちらの動きの悪さを嘲笑うような口調で話しかけてきた。自分の子飼いに集中すれば良いものを...こちらに話しかけてくるとは。
『そっちこそ、随分と余裕そうじゃないか、え?お前のとこのリンクスは大丈夫なのかよ......うおっ!』
『おしゃべりとは、余裕そうね?』
『畜生、お前のせいだぞ、セレン・ヘイズ!』
話している途中にプラズマキャノンが直撃し、機体内部にアラートが鳴り響く。GA製フレームでは、エネルギー系兵器相手に全力を発揮出来ないのだ。
PAが大幅に削げ、額を冷や汗が流れていく。ランク29の相手に、ここまでやられるのかと思っていたのに、実力差がありすぎると感じて、ようやく一つの、しかしとても重要なことを思い出した。
『........お、思い出したぞ!カリオンって、オリジナルの一人じゃあないかよ!......どうすりゃあいいんだ...』
オリジナル。それは、20年前の【国家解体戦争】の立役者。たった数十人で、文字通り国家を壊した、新時代の主役、カリオンはその生き残りだった。本名は【ミセス】マリア・テレジア、国家間戦争で夫を亡くし、進んで国家解体戦争に加担した一人である。
ドン・カーネルも国家解体戦争に従事した一人とはいえ、あの時は駆け出しのGAノーマル兵。部隊指揮官になってからは大小様々な戦果を挙げはしたが、元ノーマル乗りと生粋のリンクスとでは雲泥の差とでも言うべきだった。
『クソッ、俺がやられるはずが...負けるはずはないんだ......』
多連装ミサイルを撃ち続けながら、ライフルでカリオンを近付けさせない。幸い弾だけは豊富にある。FCSのロック機能が死なない限り、射撃は続けられる。だが、耐える事は難しいだろう。更に言えばライフルもミサイルも効いているかと言われると、そうでもない。【アルギュロス】と呼ばれる重装甲コアパーツと、重厚と珍しさで知られる【旧GAE】の四脚によって、実弾、EN双方において装甲の硬さを発揮させているのだ。
切り札の拡散バズーカも、当たらなければ意味は無い。一度命中させたが、その後は火力を警戒してか遠距離からミサイルなどで牽制を続けている。ハンドミサイルの方はさしたる驚異ではないのだが、本当に恐ろしいのは【トーラス】脅威の科学力を存分に発揮した新兵器【コジマミサイル】の存在である。
EN系の重火力兵器としては凡庸な威力を持つだけだが、その本質は爆発時に散布されるコジマ重金属粒子の存在にある。PAが大幅に減衰させられるコジマ粒子汚染を引き起こし、周囲のネクストACのPAを剥ぐのだ。
『む、無理だ...どうすりゃいいんだ!』
ドン・カーネルがヤケになって叫んだ時、イレギュラーと戦っているはずのヘリックスIIIから通信が来た。
「ワンダフルボディ、聞こえるか?こちらに逃げ込め、援護する!」
『......!?ヘリックスIII、相手は!?まさか、倒したのか!?』
「そんな訳ないだろう、良いから来い!お前の火力が要る!」
『わ、わかった!』
コジマミサイルが放たれ、残り少ないフレアを射出してから、オーバードブーストを使ってヘリックスIIIのもとへ向かった。
2分前───
『しぶといやつだ...!』
「こっちのセリフだ!狙撃機に前衛など、無茶をさせる!」
ヘリックスIIIとイレギュラーの戦いはまだ続いていた。火力と連射力を両立させた機体構成のイレギュラーと、狙撃から射撃、牽制と幅広い汎用性を持つヘリックスIIIの差し合いは止まらず、両方のネクストACに、着実にダメージが蓄積されていた。
『そこっ!』
マシンガンによってPAが削り切られたところに、ハンドグレネードが撃ち込まれる。防御力に富む四脚とはいえ、グレネードの直撃は機体に大きく刺さった。
「く......マズいな...!」
イレギュラーには、有澤製のグレネードという強力な切り札がある。対するこちらには目立つ武装は無く、ライフルやスナイパーキャノンといったPAを貫徹して攻撃するようなものしかない。爆発する武器を当てられれば強いのだが、PAを剥がす為の装備が皆無だった。
「コイツを倒すための火力が...俺の機体じゃ......ヘリックスIIIじゃ出せない...!」
かなり絶体絶命の危機に瀕している状態だったが、一つだけ打開策があるにはある。あの男を頼らねばならない。
「......ッ!背に腹はかえられんか......ヘリックスIIIだ!ワンダフルボディ、聞こえるか?こちらに逃げ込め!援護する!」
『ヘリックスIII!?相手は...まさか、倒したのか!?』
「そんな訳ないだろう、良いから来い!お前の火力が要る!」
『わ、わかった!』
ワンダフルボディがこちらに来る間、このイレギュラーを引き付けておかなければならない。この男からは悪魔的な何かを感じる。残虐な本性か、何かを隠すためなのかはわからないが、とにかく一人ではじわじわとなぶり殺されるだけだ。協力するしか、生存し、かつワンダフルボディを生還させる術はない。そしてその鍵は、全てドン・カーネルの経験が握っている。
『どうした、動きが止まって見えるぞ?』
「くそ、強いな...」
グレネードを当てられないよう、砂丘を使って身を隠すなどしてマシンガンの速射弾を回避する。既に
「チッ......お前は俺が倒さないと、気が気でないんでな。ケリをつけさせてもらうぞ」
スナイパーキャノンを構える。イレギュラーは左右にゆらゆら動き、二次ロック射撃への対策を怠らないが、こっちはブラフだ。
「......ロック完了、死ね!」
『...なに?』
ミサイルを発射する。三発のハイアクトミサイルはイレギュラーに向かわず、上空まで一直線に飛んで行った。スナイパーキャノンを撃ち込むが、クイックブーストで避けられる。キャノンの残弾を確認した後、ライフルに構え直す。
『......何をするかと思えば、焦ってロックもせずに撃ったのか?......呆れるよ。素養を感じたが...どうやら偽物だったか』
「チッ......」
『......先の言葉、そのまま返すよ。...........死ね』
レーザーとグレネードがこちらに向けられる。ターナーのこめかみを汗が伝っていったが、その口元は笑みを浮かべていた。
『喰らえッ!』
『なっ...!?』
突如視界外から20発を優に超える大量のミサイルが飛んで来、慌てて後方に下がるも、減衰したPAを無視するような火力を機体上部にぶつけられる。
『これは...拡散バズーカ!?ワンダフルボディか!』
ワンダフルボディが弾数の切れた連装ミサイルをパージし、拡散バズーカを下げ多連装ミサイルとライフルを構えながら、ヘリックスIIIとの協働でイレギュラーを追い詰める。
『よう、ターナー!どうだったよ?』
「ナイスタイミングだカーネル!」
機体から火花が散り始めたイレギュラー。更にワンダフルボディの後方からカリオンが迫ってくるが、そちらに狙撃砲を向け発射する。既に幾分かワンダフルボディに削られていたのだろう、被弾を嫌いサイドブースターによる高速移動で一定距離を開ける。
『遅かったのね......ストレイド、下がって』
『やれる』
『......わかったわ』
ワンダフルボディとストレイドが、ヘリックスIIIとカリオンが相対する形となった。ワンダフルボディの動きが、どことなく磨きがかかってきている。目に見えてクイックブーストを多用するようになっており、速度の早い中量二脚【アリーヤ】を駆るストレイドを上手く捕捉しているのだ。
そして、対するストレイドは動きが鈍くなっている。
『......参ったな、今のでAMS接続機器の一部をやられたらしい...........上手く動かん...』
『て、手応えを感じる......俺でも殺れるのか、ネクストを!』
『そっちを見ている余裕はあるのかしら?ヘリックスIII』
「ないさ......だが、相棒の成長を見るのは楽しいだろ」
『相棒ねぇ......どう見ても親子くらいの差よ、貴方達』
スナイパーキャノンとスナイパーライフルによる同時攻撃を掛けながら後退し続ける。時折飛んでくるプラズマキャノンを避け、コジマミサイルやハンドミサイルをフレアで攪拌する。バズーカを撃ってくるが、切り返しの得意な四脚型ACには脅威ではない。
少しずつではあるが、カリオンの脚部に火花が目立つようになってきた。内部機構を損傷し、動きがぎこちなくなってきている。
『駄目ね......ジリ貧かしら』
そう呟いた直後、スナイパーキャノンの大口径弾による狙撃でバズーカを持つ腕が切り落とされる。ミセス・テレジアの脳内に、右手首を失うような鋭い痛みが走る。
『う...くっ...........限界ね...』
カリオンが膝を着き、機能を停止する。中身はまだ生きているだろうが、今はワンダフルボディの援護が最優先だ。オーバードブーストを起動して早急に向かう。前方の建物の影でグレネードによる大規模な爆発が発生する。生唾を飲み込んだ。
『わっはっは!効かんよ、このワンダフルボディには!』
『......レーザーは切れたか、どうしたものか...』
ワンダフルボディから距離を離そうとしたところに、スナイパーキャノンが撃ち込まれる。プライマルアーマーを貫通し、その弾丸はストレイドのコクピットをも貫いた。
『お......おお、ターナー!無事だったのか!』
「あぁ、なんとかな...これで終わりか?」
『敵ネクストの撃破を確認。......二人とも、初めてのネクスト戦でここまでやるとはな。ワンダフルボディも、ギリギリだがどうにか生きている。協働とはいえ、初のネクスト戦で2機相手に大立ち回りを見せたとなれば、株も大上がりだろう。よくやった』
セレンの淡々とした、しかし喜びの混じった声色を聞いて、ようやく終わったことを実感した。
『ターナー...今回は本当に助かった。どう考えても勝てる相手じゃなかった、俺じゃあ...』
「それはこっちこそさ。あんたの火力がなきゃ、トドメを差し切れずに削り切られていた。感謝するよ」
『......だな、やはり俺は全てが違うんだ。経験も、素養も。何もかも!何もかもだ!』
「......調子に乗らなければ、良い空気だったんだがなぁ。俺は帰る。後でゆっくり話と行こうじゃないか、ドン・カーネル」
『おう、またな!』
ドン・カーネルはその場に残り、GAアームズフォート護衛隊の到着を待ってからGA拠点に帰るらしい。
『......さて、やる事はたんまりあるぞ。依頼もたんまりだ』
「おっと、そうだったそうだった。......忙しくなるな」
『......お前、変わったな。毒が抜けたように見えるぞ』
「そうか?」
ひとしきり笑ってから、ターナーはプラットフォームへ帰っていった。
『......何も、見えないか......テレジア、生きているか?』
『...ええ、なんとか......そっちは?』
『...........やられたよ。腹から下がない。........文字通りな』
『...........』
『離脱しろ。......君まで死ぬ事はない』
『......わかったわ』
『それともうひとつ』
『......セレンに俺の娘の事、よろしく頼むと伝えてくれ』
『.....これで、良かったのだな、ストレイド...馬鹿野郎が......』
夜の砂漠に一人、男の亡骸だけが立っていた。男は名を持たず、ただストレイド(はぐれ者)とだけ名乗った。
No.23。行方不明と言われた男は、イレギュラーネクストの一人として秘密裏に活動を続けていた。
リンクス戦争集結時、わずかに2歳の少女を養子として引き取り、敬愛すべき先輩の名を借りてレオナ・ベルリオーズと名付け、大切に育てた。
やがて娘にもAMS適性がある事を知った男は、娘にリンクスとしての道を歩ませないよう、一層イレギュラーネクストとしての活動を強めた。
やがて娘は父の死を知り、彼のAALIYAHを元にしたネクスト【ストレイド】を駆るようになる。それは父の望まぬ事で、しかしレオナが望んだ事だった。
『ミッション開始。ラインアークの守備部隊を排除する。今回の任務は企業連がお前を試す為の、いわば試金石だ。上手くやってみせろ』
「は、はいっ!」
『力みすぎだ。...ストレイド、私はお前の娘が心配だよ』