――緊急警報発令、アークスシップ一番艦「フェオ」市街地にて、多数のダーカー出現反応。アークス各員は至急出撃し、これを殲滅してください。繰り返します――
街を包み込むいつもと変わらない空が、警告とともに赤く塗り替えられていく。
「今日、この場所でダーカー出現ですか...」
少女は怪訝そうな顔をしながら、赤く染まった空を見る。
「文句を垂れていても、ダーカーは消えてくれませんよ。襲われている住民もいるのですから、急がないと」
「えぇわかっています、クーナ先輩は避難してください。貴女の無事を知って落ち着く方も少なくないのですから。私はこのまま現場へ向かいます」
空よりも深く美しい赤色の瞳を持つ少女は、微笑みながらクーナの方を見る。
「...はぁ、貴女の目には敵いませんね。わかりました。ですが、くれぐれも無茶はしないでくださいね。応援が駆けつけるまで、決して深追いはしないように。それから――」
「はいはい、わかっていますよー、では行ってきます。」
少女はいたずらっぽく微笑みながら、被害の出た現場へと走り去っていった。
「全く、少しは落ち着いて欲しいのですが...行ってらっしゃい、アリス...いや、イム」
赤い瞳の少女、イム=アウフトラークは、ビルの上を飛び越えながら呟く。
「全く、段々保護者みたいな事言うようになったなぁ...誰に似たんだか」
「さて、状況は大体見えましたね。よし、あそこから行きましょうか。」
移動の合間にダーカーの出たポイントと被害状況を『目視』したイムは、最短ルートで現場へと向かう
「あぁいけない、グレンは今ジグおじさんに預けてたんだった...まぁいいわ、代わりにくれたコートサーベルで対処しましょう。」
ビル群を飛び越えながら手馴れた動きで指を動かすと、喪服から黒と青を基調とした戦闘服へと変わる。
「先輩のくれたシランスリート、ぴっちりしていてムズムズするわね...でもオドが落ち着いている...この服ちょっといいかも....っ!いけない!!」
微笑んでいた顔を強ばらせたイムは、直ぐにコートサーベルを装備し、すぐさま居合の構えをする。
プレディカーダが幼い男の子に迫っていた。
イムが全身に力を込め、急加速をし突撃する。
「唯式・紅蓮鉄閃!!」
左手に力を込め、神速で切り抜ける。
炎を纏いながら地面へと着地し、少年の前にいたプレディカーダが、燃えながら真っ二つになる。
「怪我はありませんか?」
血切りをしながら納刀し、振り返りながら少年に微笑む。
「あ、あの...お母さんが...」
「母親が...あそこか、まだ息があるようですね。任せてください、直ぐに助けますから。よく頑張りました、いい子ですね。あの陰に隠れて、少し待っていてください。直ぐに貴方のお母さんを助けてきますから。」
「わかった」
「うん、偉い子です!お姉さんに任せてください!」
「私は――アークスですから!」