落第系騎士の最強英雄譚   作:KBSトリオ

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一話

 

 

 本多総司は目を細めて考える、これはどうした物かと。

そう頭では考えつつも少女の肢体をじっくりと観察してしまう、男のサガだ。

すると下着姿のまま素早い動きで迫りくる少女、その振り上げた右手は確実に制裁ビンタのためだ。

 

総司は下着姿のお礼に一発は打たせてやろうかとも思ったが……やっぱりやめて、少女の手と肩を掴み軽めの関節技を決めた。

 

「いたたたっ!ちょっと何するのよ!」

 

「ごめんごめん、でもまずは落ち着いて欲しい」

 

「変質者にサブミッションを決められて落ち着けるわけないでしょ!」

 

「へ、変質者か……」

 

少女の言葉に少し傷つきつつも総司はゆっくりと技を解いて背中を向けた。

そうされては少女も飛び掛かる真似は出来ず、困惑した顔を作る。

 

「実はここは俺の部屋なんだ」

 

「はあ?ここの部屋は私に割り振られてる部屋のはずよ!2人部屋にしても男女同室なんてあり得ないわ!」

 

「その通りなんだけど部屋の私物をよく見て欲しい、これが女子の部屋に見えるか?」

 

「……」

 

少女は室内を改めて見まわした。

机の上にはロボットの玩具がズラリ、壁には少年漫画系のポスター、テレビ周りには幾つものゲーム機。

これらは入った時から違和感があった……だから着替える前に部屋番号は何度も確認したのだが案内用紙の番号とは合致している。

 

「じゃあこれ、どういう訳よ?言っておくけど私は部屋を間違えてないわよ」

 

「うん、けど俺も間違えてないよ。一年前からこの部屋いるし」

 

「えっ!じゃあアンタ2年生なの!?」

 

「いや、留年したから今年も1年生」

 

「まさかの留年生!?」

 

「だから、事情を知ってるだろう理事長に話しを聞きに行かない?」

 

「ええ、そうしてみましょう」

 

「じゃあ外に出て待ってるから」

 

「あっそうよ!私まだ着替え中なんだから早く出ていきなさいよ!」

 

(だから出てくって……)

 

総司は部屋を出て、扉の前で少女を待つ。

待ちながら思う、なんか変な事になって来たと。

本当に物語が始まったかのような出会いで妙に気が落ち着かない。

もしや自分は物語の主人公なのか?なんて馬鹿げた考えが過る。

そんな事を少し考えて……はあ、と浅いため息をついた総司。

 

(自分が主人公だ、なんて考えを持てる精神年齢じゃないだろ、恥ずかしい)

 

総司が自虐していると扉が開いた、隣部屋のだが。

 

「総司、女の子の声が隣から聞こえたんだけど……なにかあった?」

 

現れて総司に話しかけたのは同学年の友達である黒鉄一輝だった。

 

「ちょっと変な事になったけどそれはいいや……一輝、お前は今年も1人部屋か?」

 

「だと思うけど」

 

「じゃあ一つ聞くが見知らぬ美少女と突然同室だなんて事になったら嬉しいか?」

 

「えーと、あんまり嬉しくないかな。色々と気も使うだろうし」

 

「ならお前はアタリだったな、んで俺はハズレだ」

 

「……よく分かんないけどご愁傷様」

 

面倒くさそうな表情で空を見る総司、そしてそれを苦笑いで見る一輝。

するとまた扉が開いた、今度は総司の部屋から赤髪の少女が現れた。

 

「待たせたわね」

 

「いやいや、全然ですよお嬢様」

 

「えっステラ・ヴァーミリオンさん?」

 

目を丸くして驚く一輝。

 

「知ってるのか、一輝」

 

「し、知らないのか総司、海外の国のお姫様だよ?テレビでも留学してくるって持ちきりだったじゃないか」

 

ギギギっとお姫様に向き直る総司、ステラはジト目で睨み返してくる。

 

「あのー、さっきのってもしかして国際問題とかになりますか?」

 

「なに?して欲しいの?」

 

「いえ、滅相もございません!」

 

奇麗に頭を下げる総司を一輝は珍しいなと驚く、一年の付き合いだがこの男が誰かに及び腰になるのを見たのは初めてだったからだ。

ふとステラが一輝を不思議そうに見つめていた。

 

「ところでアナタは誰?」

 

「僕は黒鉄一輝、そこにいる総司の友達で同じく留年生でもある」

 

「またもや留年生!?」

 

驚いたステラを横目に総司が姿勢を正した。

 

「ちなみにワタクシは本多総司と申します!以後よろししくお願い申し上げます!」

 

「そう言えば名前も知らなかったわね、改めてステラ・ヴァーミリオンよ。よろしく」

 

「ははーっ!どうかよしなに!」

 

(そ、そんなお調子者キャラだったけ君は……)

 

本多総司の弱点その1、国外の権力者。

腕っ節がいくら強くても元はうだつの上がらないサラリーマン、スケールのデカい相手には弱かった。

 

 


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