不思議な少女と出逢った名無虚は、その少女を言葉も無く見つめていた。
ラヴィ)......
虚)あの、ここは何処なのか...ごふっ。教えてくれないか?
ラヴィ)あぁ、分かった。だが、その傷ではもう...
虚)助からないじゃない、生きるんだよ。まだくたばっちゃダメらしいから、な。
そう言って、身体を起こそうとするが身体が言うことを効かないようだ。見かねた私は下人に肩を貸し、共に小屋から脱出する為歩き出した。
ラヴィ)ここを脱出すれば近くに救急室がある、そこで君を治療しよう。
虚)なんでそんなにっ...助けようとしてくれるんだ?
ラヴィ)君を下人と侮った事への謝罪の気持ち...とか、色々とあるんだけれど、何よりも。君は僕の命の恩人なんだ、だから生きて欲しいんだ。
私の言葉に何か感じる物でもあったのか、少し黙る下人。ややあって...
虚)ありがとう。
そう礼を言われた。
ラヴィ)そういえば、此処がどこか言い忘れていたな。
ここは...見世物小屋さ。そして。
虚)そして?
ラヴィ)私が産まれ、私の母親が目の前で殺された場所でもある。
虚)----!!!
少なからぬ衝撃を受けたようだ、無理もない。私だって
こんな酷い事があるものか!!と時折叫び出したくなるのだから。
虚)---許せない。
歯軋りする音が聞こえ、下人が怒っているのが痛い程伝わってきた。死に体の雄とは思えない程の純粋な怒りと威圧だった、思わず竦みかける。
ラヴィ)...怒ってくれるんだな、君は。
虚)...怒るかは人によるだろうけど、嫌悪感は少なからず抱くよ。
ラヴィ)歩きながら話そう、どうしてか分からないが君には話しておきたいんだ。
そして私は語り始めた。私の産まれた瞬間、歩んだ日々を。
私は、産まれた時には下界の人間の母親をあろうことか
私の父親に当たる月の兎に殺された。
母親の肉は知らぬ間に料理に混ぜられていたらしく、私は母の肉を食して生きていた。
知った時は当然吐きそうになったし、死にたいとさえ本気で思った。
だけど、それは母に...母上にあまりにも顔向けできないじゃあないかと思ったから。
必死に生きてきた。
そもそも、私は人間の女性と月の兎の交配によって産まれた兎人と呼ばれる種族だった。
その兎人の種族にある階級のせいで、私は更なる地獄を見ることになってしまう。
どうやら私は兎人の中でも最低クラスの能力しか与えられなかったらしかった。
そのせいで、兎人の仲間達から虐められた。
なまじ再生力が高いからって痛覚の繋がっている耳を引きちぎられたり(兎人の耳はアクセサリーとして使えるので商売に使えるらしい。)単純に暴力を振るわれたり、服(体毛)を破られて辱められた事など数知れない。
そんな人生を十五年も生きてようやく、初めての任務が与えられた。それが...
ラヴィ)君との、出逢いだったんだよ。
虚)---そんなのっあんまりだろっ!!?
ラヴィ)あぁ...本当にそう思うよ。だからこそ、君の存在がとても...キレイに映ったんだ。
虚)綺麗に映った?
ラヴィ)君の死にそうになってなお面識もない相手を助けようと足掻くその姿に僕は...とても惹かれたんだ。
虚)...そうか。
ラヴィ)君の、名前は?
虚)虚、名無虚だ。
ラヴィ)ナナシウツロか、うん。よろしく頼むよ、ナナシ。
そうして酷く孤独な二人の戦いが始まった。
三十九話でした!眠たみ...