芸術家の英雄教室   作:那由多 ユラ

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第十話 体育祭の芸術障害と竜騎取材

001

 

 

 

『さーて、それじゃあ早速第一種目に行きましょう! いわゆる予選よ! 毎年ここで多くの者が涙を飲むわ(ティアドリンク)!』

 

『泣き虫ヒーロー?』

 

皆の涙を独り占め(ティアドリンク)! って違う黄彩くん! 今は「架空ヒーロー」の時間じゃないわ!』

 

《架空ヒーロー》

 黄彩が考案したテーブルゲーム。

 本やテレビなんかで適当に単語を選んで、それをモチーフにヒーローを作り出す遊び。一人一つ、ヒーローネームや個性など設定を即席で作り、行き詰まれば負け。

 

 皆の涙を独り占め(ティアドリンク)はきっと、誰よりも泣くことで力を発揮し、誰一人として泣かせず救うヒーローだ。

 

「有製ちゃん、楽しそうでよかったわ」

 

「美術展の審査員とかよくやってるけど、いつも大体あんな感じ」

 

「ケロ、今この瞬間、この体育祭から緊張の二文字が消え失せた気がするわ」

 

『ま、まぁともかく、運命の第一種目!今年は……、障害物競走(コレ)!!』

 

 スクリーンにデカデカと『障害物競走』の文字が現れる。

 

『計11クラスでの総当たりレースよ! コースはこのスタジアムの外周、約4km! 我が校は自由さが売り文句! コースさえ守れば何をしたって構わないわ! さあさあ、位置につきまくりなさい……』

 

 スタジアムのゲートの一つが音を立てて開かれていく。11クラス、約220名の生徒がゾロゾロとスタートラインへと向かう光景が、上空の黄彩のカメラに映る。

 

『障害物の設置はボクも参加してるから楽しみにしててね!』

 

 黄彩のセリフに、オールマイト戦を見ているA組に緊張感が走る。

 

 その緊張感はだんだんと広まり、生徒達が静まり返る。

 そして信号機の明かりが消えた。

 

『『スタート!!』』

 

 黄彩とミッドナイトの合図と共に走り出した。

 

 

 

002

 

 

 

『ついに始まったぜ、雄英体育祭1年部門! 実況はボイスヒーロー、プレゼント・マイク! 解説は抹消ヒーロー、イレイザーヘッド、芸術家の人間国宝、有製黄彩の三人でお伝えしていくぜ! 解説のミイラマン、現地のドラゴンライダーボーイ、アーユーレディ!?』

 

『オーケィ! マイクの人!』

 

『無理やり呼びやがって……』

 

『キュアー!』

 

『おっと、ワリィワリィ! イエロードラゴン、じゃなくて道徳的な龍もよろしくなぁ!』

 

『キュイ!』

 

『ウフフ、観客のみんなもよろしくー!』

 

 陽気な声のプレゼント・マイクと黄彩に対して、無理やり呼ばれたらしい相澤と、無視された道徳的な龍の機嫌は悪い。

 

『さぁ! スタートダッシュで先頭に立ったのはA組の轟だ! 更に氷結攻撃で後続を妨害! しかし、実力者たちは見事に躱して轟を追いかける!』

 

『ウフフフフフ! そんな真っ直ぐには進ませないんだよ! 作品No.20《土塊(つちくれ)大蛇》』

 

『さぁ! 先頭に立ちはだかるは巨大な土の蛇! 凍らせようが燃やそうが粉々にしようが地面の土から修復する不死身の障害物だぁ!! すぐ先に第二の関門ロボ・インフェルノも待ち受けている! やり過ごしても立ち止まったらサンドイッチだぜぇ!!!』

 

『おい、……俺、いらなくねぇか』

 

『キュイー!』

 

 氷を背後に生成しながら走る轟は大蛇を前に面食らうが、しかし立ち止まることなく正面から突き進んでいく。

 

「待ちやがれ半分野郎!!」

 

 前方に蛇、後方に爆弾。轟は氷の道を作りだし、蛇の頭上を通り過ぎて行った。

 続くように爆豪が爆発で空に跳び立ち、空を舞うことで突破した。

 

『こいつぁシヴィ!! 空中散歩に爆発二段ジャンプ! ロボ・インフェルノもそのままスルー! なんかもう、ズリィな!!』

 

『ウフフフ、かっこいいよね可愛いよね! でもでもこの土塊大蛇、感覚器官どころか意思もないから最短ルートも軽々行けたんだよ!』

 

『オイ有製、そんな軽々攻略法言っていいのかよ』

 

『言われずにクリアした方がカッコいいよ! ほらほらみんな! もっと頑張ってー! じゃ無いとボクが答え言っちゃうよ!』

 

『……おいイレイザーあれ』

 

『わかってる。俺のよくやる教育と同じだ』

 

『ちゃんと教育できてるようで俺ぁ一安心だ!』

 

『キュキュキュイー!!』

 

『おっと、悪りぃな! 実況、実況……、黄彩! 一旦後方を映してくれ!』

 

『はーい!』

 

 レース後方も大半が土塊大蛇を超え、ロボ・インフェルノに差し掛かっていた。

 

 轟がついでと言わんばかりに凍らせたロボが倒れ、コースを塞いでいた……。と、ここで黄彩のカメラがロボの一部をズームする。ひび割れ、盛り上がるように出てきたのは人間。

 

『A組切島、潰されてたー! ウケる!!』

 

『もう一人、B組の鉄の人も潰れてやんの! ウッケるー!』

 

『仲良いなお前ら……』

 

『キングビンボー十年の恨みは忘れてねぇがな! っと、後方から巨大な影が! なんだー!?』

 

『見て見てみんな! ボクのきょーかがすっごいの! ねえそれどうやってやってるの? ボク知らない!』

 

『キュアー!?』

 

 黄彩のカメラに映されたのは、土塊大蛇の動体部に耳のイヤホンジャックを突き刺し、乗りこなして勢いよく突き進む響香の姿。

 道徳的な龍が響香に近寄り、黄彩が直接マイクを向けた。

 

『え、っちょ、黄彩なに!?』

 

 響香の声がマイクを通り、電波に乗って全国に流れる。

 

『ねぇきょーか! それどうなってるの!?』

 

『えっと、コレ? いや、あんたのデタラメに動く奴って地面の振動で動くんでしょ? それをウチの心音で塗り替えてやれば、直進とカーブくらいは操作できる!』

 

『マジで!? じゃあせっかく凄いからきょーか、テレビの前のヒーローに一言!』

 

『ハァ!? えっと、ウチのことよろしく!!』

 

『シンプルにしてクレバー! 状況を利用するのもヒーローとしてときには必要だぜ! ……一応聞いとくけど黄彩、八百長じゃねぇよな?』

 

『もちろん! 動くやつのカラクリだってほとんど教えたことないよ!』

 

『聞いた感じ、わかったところでできる奴は限られる。個性がありならルールの範疇だ。知らないのは知らない奴が悪い。飛べないのは飛べない奴が悪い』

 

『だってよ参考にしろよな特に後方! 個性の工夫次第で先頭に追いつけ追い越せぇ!!』

 

『キュイー!!』

 

『っと、急げドラゴンライダー先頭だ! 轟、爆豪が次に行っちまうぜ!』

 

『キュイー!』

 

『またねきょーか! 愛してる!』

 

「はあ!?」

 

 雄英体育祭は生放送。先頭後方を自在に行き来する怪物カメラマンの公開ラブコールは瞬く間にネットで話題になった。

 

 

 

003

 

 

 

『さあさあ行くぜ第三関門! 落ちれば一発アウトだ気をつけなぁ! ザ・フォール!!』

 

 ざっくり言えば、それは大規模な綱渡り。大きな断崖の向こう側まではいくつかの柱の上を綱渡りで進まなければならない。

 

『轟、爆豪は空中戦を繰り広げながら楽々突破! オイオイどうすんだコレ! 第四関門は黄彩だがどうだ!』

 

『叩きのめすよ!』

 

『そいつぁ楽しみだ! ここで注目すべきは、サポート科の彼女だな! 黄彩!』

 

 黄彩はプレゼント・マイクの言う、綱渡りをせず、自前のアイテムを用いターザンロープの要領で谷を超えるサポート科の生徒に近寄り、カメラとマイクを向ける。

 

『わー! カッコいいなあ可愛いなあ! ボク君たち大好き!』

 

 サポート科の少女は突如現れた黄彩に驚きつつも、しっかりカメラに目線を向けて笑顔を見せた。

 

『今度遊びに行くね! ついでにカメラの先へどうぞアピールタイム!』

 

『素敵な機会をありがとうございます! 私はサポート科の発目(はつめ)(めい)! モニターをご覧の皆さん! 今日は発目明と、このドッ可愛いベイビー達をよろしくお願いします!!』

 

『……なんだコレ』

 

『企業どころか人間国宝を一本釣りしやがった!!』

 

『パンドラの箱と玉手箱を核融合みたいなことにならなきゃいいがな』

 

『私もあなたとは気が合いそうです! 今度合作しましょうよ合作!』

 

『うん! 楽しみ!』

 

『……おい有製いつまで並走してんだ。先頭も映せ』

 

『またね! めーめーさん!』

 

『はい!』

 

 この出会いは、実は黄彩が心を許すまでの最速記録であった。

 

 

 

 

 




キャラ紹介
耳郎 響香 女 十五歳
個性:イヤホンジャック
 外見は原作通りだから省略。
 本作のメインヒロイン。
 黄彩とは、生まれる前から親同士が出会っている。
 小学校低学年までは黄彩からは『耳の人』と呼ばれており、最初から近しい仲ではなく、むしろ人形劇の個性を持つ黄彩の母親、蒼によく懐いていた。
 他人から距離が縮まったのは十歳、黄彩が『傑作No.10《道徳的な龍》』を作ったころ。黄彩以外になつかなかった道徳的な龍が、偶然通りかかった響香になついたときから今の関係が始まる。

 恋仲ではなく親友と二人揃って言うが、その仲は二人の親四人が認める相思相愛。
 黄彩が響香の家によく遊びに行くように、響香も黄彩の家やアトリエに遊びに行く。
 響香は人間も芸術の材料として見る黄彩が『最高の材料』と認めた人材で、黄彩の傑作の頂点、『傑作No.999』の席が約束されている。

 原作の音楽趣味は健在で、身近に趣味人の頂点のような人間がいるおかげで響香も趣味に全力で、技術、センス共に向上してる。

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