芸術家の英雄教室   作:那由多 ユラ

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第十一話 体育祭の巨手地獄と龍騎乱走

001

 

 

 

『おっしゃ着いたな轟、爆豪! 映ったな第四関門! そのパワーは平和の象徴オールマイトのお墨付き!』

 

『作品No.06安全版(ピースフル)《苦難の左手》No.07安全版(ピースフル)《裕福な右手》! 材料は紙粘土だから軽いし脆いけど、オールマイトよりデカイし多いよ!』

 

 それはただ真っ直ぐの広い道。しかし上空には無数の巨大な手。握り拳の左手と、平手の右手が縦横無尽に飛び回っている。

 

「なめんなクソガキ! テメェの策に嵌るかよ!」

 

『相変わらず可愛くないなぁ、爆破の人。さあアピールタイムどうぞ!』

 

『ああ? 何言ってんだぶっ殺すぞ!!』

 

『次は氷の人! どうどう! ボクの作ったコース!』

 

『軽いが厄介極まりない!』

 

『やったーボクハッピー! アピールどうぞ暫定一位の人!』

 

『はあ? ……親父由来の指名はいらねぇ。他のやつにしてやれ』

 

『クゥー!! シビれるぜ轟ぃ!』

 

『合理性に欠けるが、まあモテるだろうな。こういうやつ』

 

『キュッ、キュイー!』

 

 

 余裕に話している風だが、爆豪、轟共に苦戦していた。

 進もうにも巨大さ故に回避が難しく、空中から進もうと思ったら踏ん張りが効かず、殴り飛ばされる。

 

『さぁ、次はいつの間にか先頭に追いついてきてる緑の人! ねぇどうやって来たの?』

 

『えっ!? えっと、がんばりました!』

 

『そっか! 喋る余裕ある!?』

 

『ありません走るので精一杯です!』

 

『それじゃあアピールどうぞ!』

 

『話聞いてくださーい!!』

 

『えぇ〜』

 

『オイオイ、露骨につまらなそうな顔するなよ黄彩』

 

 プレゼント・マイクが軽く叱ると、黄彩は緑谷に並走を始める。

 

『それじゃあ代わりに、緑の人と仲良しなすじ肉の人、何か一言どうぞ!』

 

『おい有製何言って『ぬおー!? いきなり誰だい君は! あ、これマイク?』……オールマイト、せっかくなんでなんか喋ってください』

 

 黄彩の急な振りに、相澤の呆れた様子とオールマイトの情けない叫びが全国に響いた。

 

『急だな!? えっと、声だけ私が来たぁ!! 優勝の可能性はその場の誰にでもある! がんばれ! もちろん緑谷少年もな!』

 

『はい!!』

 

 返事と共に、緑谷は黄彩をと歓声を置き去りにして加速した。

 

『行っちゃったー。えーっと、それじゃあ次は……、カエルの人! アピール頂戴!』

 

『ケロ!?』

 

 カエルの跳躍力と粘液で飛来してくる手を回避していた蛙吹にカメラとマイクが向く。

 

『ねぇねぇ! カエルの人ってカエルの歌、得意?』

 

『今は喧嘩買う暇ないわよっ、有製ちゃん!』

 

『ウフフッ、じゃあヒーローへのアピールどうぞ!』

 

『あまり余裕ないのだけど、……指名よりも今日は一人でも多く応援してくれると嬉しいわ! ケロ!』

 

『ファンサービスのケロまでありがとう! 可愛い! ボクも応援してるよ!』

 

『健気! がんばれカエルの子! シヴィー!!』

 

『蛙吹は屈指の優等生だ。優良物件だとは俺も思う』

 

『あの〜、相澤くん。このマイクどうしたらいいかな』

 

『暇なら俺の代わりに実況してくださいよ、オールマイト』

 

『ええ?……まあ、それなら。……がんばれ蛙吹少女!』

 

『嬉しいけどオールマイト、それじゃあ実況じゃなくて応援だわ』

 

『なに!? しまった〜!』

 

『えーっと、次は……透明の人!』

 

『ええ!? なんで私のこと見えてるの!?』

 

 蛙吹の次に黄彩がカメラとマイクを向けたのは、透明人間の個性を利用して手が襲ってこないのをいいことにリードしようとしている、葉隠。

 

『ボクに見えないものはキモい虫だけなんだよ! 全裸でカメラに映るのってどんな気分?』

 

『この透明感ある肌に恥ずべきところなんてないんだよ!』

 

『そっか! ちなみに化粧水なに使ってるの?』

 

『ハトムギ!』

 

『意外と庶民派! でもいいよねハトムギ! ボクとお揃い!』

 

『いえーい!』

 

『いえーい! それじゃあ見えてるかわかんないけどアピールどうぞ!』

 

『頑張る私をいっぱい見て!』

 

『うんわかった!』

 

『黄彩くんはダメだよ!? エッチ!』

 

『裸で汗流して頑張ってる女の子ってかっこいいよね!』

 

『さては黄彩くん、結構いい趣味してるな! 終わったら覚えといてよね!!』

 

『うん! えーっと、次は……、いた! 潰されてた赤い人!』

 

『俺か!? もうちょっといい呼び名なかったのか!? トマトみてぇじゃん!』

 

 硬化の個性で受け流しながら突き進む切島に並走しながらマイクを向ける黄彩に、名前にふさわしい切れ味あるツッコミが入る。

 

『じゃあトマトの人! ……その頭って石頭?』

 

『おう! 岩より硬いぜ!』

 

『いいのかA組切島? トマトの人になってるぞ?』

 

『いいじゃないかトマト! 私も好きだぞ!』

 

『トマト農家から指名があっても例年なら弾くが、お前なら弾かないでおこう』

 

『相澤先生までなに言ってんすか!?』

 

『ウフフ、それじゃあアピールどうぞ!』

 

『おう! 俺はトマトより肉が好きだ! 熱血根性が欲しいヒーローは俺を指名してくれよな!!』

 

『ちなみにボクはトマト嫌ーい』

 

『だろうな!』

 

『えっと、次は……』

 

 

 それからというもの、ここまで先頭付近を走って(飛んで?)いたものほど苦戦し、一番先頭が第四関門を抜け出すまでの間、黄彩は片っ端からマイクとカメラを向けて行った。

 

 

 

002

 

 

 

『来た来た来た来たぁ!! 巨大な手とドラゴンライダーの取材を真っ先に乗り越えて来たのは! 最初に突入して個性のゴリ押しで攻略して来た爆豪、轟! 続いて透明の個性で唯一の無傷攻略したハトムギ! じゃなくて葉隠! すぐ後ろには健気なカエルの子、蛙吹!! どうやってここまで来たんだ緑谷!』

 

『まだ苦戦してる人に攻略の答えを教えちゃうね! 足音! 足音を察知して襲いかかってくるから、音を慣らさないように、裸足で動けば襲われないよ!』

 

「「ウグッ」」

 地面より響く氷の上を走っていた轟と、爆音を鳴らしていた爆豪が思わず膝をついた。

 

「あ、だから私だけ襲われなかったんだ!」

 現状攻略した葉隠だけが個性を活かすために裸足で、唯一正攻法で攻略した形になっていた。

 

「裸足はともかく、足音を殺せばよかったわね……」

 

『そんじゃあ行くぜ最終関門! かくしてその実態は、びっくり仰天! 一面地雷原! 怒りのアフガンだ!! 地雷の位置は見りゃ分かる仕様になってるから目と足、酷使しろ!!』

 

「さっきのと比べたら拍子抜けだな」

 

「ソッコーで終わらせてクソガキ殴る!」

 

「いやでも、これは一段と走り辛いぞ。爆破を食らう覚悟で突っ込めば我慢できるかもしれないけど、それで体力が持つかどうか――

 

「緑谷ちゃん、怖いわ」

 

「……あれ? 私、服着ないとゴールしても気がついてもらえなく無い?」

 

『それくらいはサービスしてもいいよね! 透明の人、これあげる!』

 

「え、ありがと! ……って、これスク水? 靴は私のだ」

 

『第四関門の前に脱ぎ捨てられてた体操着と下着と靴下、誰かに盗まれてたからね。靴だけ残ってたけど。スク水はボクの趣味』

 

「いい趣味してるなぁもう! 着るけど! 靴も頂戴!」

 

『誰が盗んだか、ボクは見てたからね。あることあることないことあること、言いふらされたくなかったら本人かおっぱいの人に速やかに返してよね』

 

『急げよ葉隠ぇ!! もうどんどん進んでるぞ! こいつぁキチー!!』

 

「後で峰田ぶっとばーす!!」

 

 変態への怒りを胸に、スク水を着た葉隠は遅れながらにスタートした。

 

『……いや、決めつけるなよ』

 

『まあ、あってるんだけどね』

 

『峰田少年、自重せねば、いつか不味いことになりかねんぞ!』

 

 そんなこんなあれど、黄彩はスク水が宙を浮いているという怪奇な映像を無事収めた。スク水の内側を映さなかった腕前は流石芸術家と言えよう。

 

 出遅れた葉隠を尻目に第四関門を抜けた面々は次々と地雷原を駆け抜け、緑谷がなにをしたのか爆音と共に一位でゴールした。

 

 

 なお、ネットでは一位をとった緑谷よりも、レース全体を飛び回り続けたカメラマンへの注目の方が集まっていたとか、なんとか。

 

 

 




キャラ紹介
有製 (あおい) 女 年齢不詳
個性:人形劇
 有製黄彩の母親。
 個性で縮めている黄彩と違い、天然物の子供体型。プライベートでは髪を下ろしているが、仕事中はツインテールにする。
 響香曰く、黄彩以上の天然。
 人形のような可愛らしい容姿と、人形を操る個性を駆使して子供によく好かれる。
 海外の子供に劇を披露するためだけに、誰にも言わずに日本から飛び出すことがままあり、幼少期は蒼にくっついていた黄彩も世界を巡ることになった。

 夫の彫像家として面のファンでもあり、交際以降劇に使っている人形は一つを除いて全て彼の作品。その一つは、全盛期の黄彩の傑作の一つで、滅多に使われることはなく大切に保管されている。

 響香を娘のように溺愛しており、黄彩と合わせて姉弟の扱うことが多い。

 黄彩が初めて女体化したときは夫婦揃って黄彩を着せ替え人形にして、返って黄彩の男としての意識を強めさせた。
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