芸術家の英雄教室   作:那由多 ユラ

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第十三話 体育祭の英雄帰還と殺戮四駆

001

 

 

 

 黄彩と相澤は、途中黄彩のアトリエを経由し、雄英へと戻って来た。

 

 相澤がプレゼント・マイクの元についた頃には騎馬戦の結果発表が終わり、もうすぐ昼休憩というところ。

 

『あー、……雄英勤務の抹消ヒーロー、イレイザーヘッドだ』

 

 ミッドナイトの話が終わった頃に、相澤はマイクを繋いだ。

 

『お、おう。おかえりイレイザー、どうした?』

 

『黙ってろ。……観客席だかテレビだか知らねぇが、体育祭観てるヒーロー共。非番を満喫するのもいいが、お前らがそうしてるせいで小物が付け上がる。さっきも小さな店で強盗があった。……プロなら遊んでねぇで仕事しろ、うちのサボり魔が真っ先に動いたぞ』

 

 さっきまで騒々しかった会場が静まり返る。

 

『……、騒いでばっかな俺だけどよ、イレイザーに同意だぜ。こんな時こそパトロールして、普段動かねぇ小悪党とっ捕まえようぜ!!』

 

 暗にサボり魔以下だと言われた観客席のヒーローは顔を俯かせるだけだが、それ以外の人間からの歓声が上がる。

 

『水を差すようで悪かった。飯にしよう』

 

『お、おう。お前、ゼリー以外も食えるのな』

 

『当たり前だろ』

 

 

 

002

 

 

 

 帰還した黄彩は、真っ先に響香の元へと向かった。

 

「きょーかー! ただいま!」

 

「あ、あー、黄彩。うん、おかえり……。」

 

 久方ぶりの再会を喜ぶかのように抱きついた黄彩を、響香はどこか暗い表情で受け止めた。

 

「うにゃ? きょーか、どうかした?」

 

「アハハ……。ごめん、騎馬戦、負けちゃったよ」

 

 響香はギュッと黄彩を抱きしめながら、懺悔するように言う。

 

「うん、ボクもごめんね。応援するって言ったのに、居られなかった」

 

「黄彩にかっこいいとこ見せられるって、思ったんだけどなぁ」

 

「うん。まあ、なっちゃったものはしょうがないよ。それよりみてコレ! あげる!」

 

 黄彩がポケットから出した、手のひらサイズの箱を響香に渡す。

 

「ケロ! ちょっと有製ちゃん! それよりって言い方……」

 

「いいよ、梅雨ちゃん。……これって、ペンダント?」

 

 それは、黄彩がヴィランを退治し、絵を描いたお礼として宝石店の店主が黄彩に渡したもの。

 

「きょーか、八月生まれだったよね。だから八月の誕生石の、……なんだっけ、ペンドリル?」

 

「ペリドット、ね。どうしたのこれ」

 

 ペリドット、八月の誕生石で、ライムグリーンの宝石。別名、ハワイアン・ダイヤモンド。

 

「えっとね、ボクの絵を買ってくれたお店のおじさんがね、助けてくれたお礼にってくれたの!」

 

「ケロ、急にいなくなったと思ったら、そんなことがあったのね」

 

「えっと、本当にもらっていいの? これだって安くないでしょ」

 

「たった五万円くらいだよ? 付けてみて付けてみて」

 

「有製ちゃん、五万円は安くないわよ」

 

「まあ、黄彩の絵って一枚何億だし、それと比べたら安いかもね。どう? ウチ、こういうのはあんまり似合わないと思うけど……」

 

「そんなことないわ。かわいいわよ」

 

「ウフフ、きょーかにはやっぱり微妙だね。作り直すからちょっと貸して」

 

「やっぱりか……。はい。ありがとね、梅雨ちゃん」

 

「ケロ。……二人って喧嘩にならないのかしら」

 

「お店に置いてなかったけど、きょーかにはチョーカーの方が似合うと思うんだよね。……うん、出来た。付けたげる」

 

 黄彩の個性で、ペリドットのペンダントは宝石だけ形を残し、全く別物のチョーカーへと変貌した。

 姿勢を低くすると、黄彩は響香の首に手を回す。

 

「大きさ大丈夫?」

 

「うん、平気。どう、似合う?」

 

「ええ、さっきよりずっと似合うわ」

 

「かわいい! ねぇ、ボクお腹すいたし、ご飯食べに行こ! 外にね、焼きそばとかたこ焼きとかりんご飴とかっ、いっぱいお店あったんだよ!」

 

 

 

003

 

 

 

「ギャハハハハハ!! ギャハッ、ギャハハハハハ!! やっと見つけたぞ! キーロゥ!!」

 

「……誰だよ、きみ」

 

 雄英高校体育祭には多くの屋台が立ち並ぶ。

 黄彩と響香、梅雨の三人で見て回りながら何を食べようかと話していると、焼きそばを食べながら爆笑している男が三人の前に立ちはだかった。

 

 右頬に三枚の歯車のような刺青に、プラスチックのように無機質な肌と瞳の、青髪の男。

 

「響香ちゃん、彼は、知り合いかしら?」

 

「まあ、……うん。ウチらと同じ小学校で、自称黄彩の親友」

 

「自称?」

 

「黄彩は全く認知してなかったから。……そして、」

 

 響香が言い淀んでいると、男は懐から携帯端末を出した。

 

「探したんだぜ黄彩! レウスの逆鱗が落ちねえんだ! 手伝え!」

 

「……ああ、きみスポーツの人。うん、また今度ね」

 

 ゲームで遊ぶ約束をしている光景を見て、梅雨は「自称? 仲良しに見えるけど」と言うが、響香は首を横に降る。

 

「響香も一緒か! 手伝え! っと、きみ誰? 黄彩の友達か? そうだな? 俺は巻解(まきとき)使駆(しく)ってんだ! 一緒にやろうぜ!!」

 

 使駆は梅雨にもう一台端末を出し、渡しながら怒濤の勢いで話しかけるが、響香に引き剥がされる。

 

「……なんでこんなところにいるの、……殺人鬼」

 

「ケロッ!? 冗談、よね? ここにはヒーローが沢山いるのよ」

 

「オイオイ響香! そいつぁ酷い言い方ってもんだぜぇ!! まるでヴィランじゃねえか! おれぁヒーローじゃねぇが悪の敵! 殺すべきを轢き殺す執行車! ――今日はマジで遊びに来ただけなんだ。殺すつもりなんてない」

 

 急激にテンションが下がったかと思えば、右頬の歯車が回転し、静かな駆動音が地に響く。

 

「……巻解、こいつの個性は《ミニ四駆》、制御放棄の超スピード。走り出したらスイッチが切れるまで真っ直ぐ走り続ける」

 

「……まるで緑谷ちゃんと飯田ちゃんの掛け算ね」

 

 響香と梅雨は臨戦態勢を取るが、しかし使駆は個性のスイッチを切り、「ギャハハハハ!!」と笑い、黄彩と共にたこ焼き屋に並ぶ。

 

「言ったろぅ!? パンピーぶっ殺しに来たわけじゃねぇんだよっ! ギャハハハハハハ!!」 

 

「たこ焼き、四つ」

 

「あいよ。一つ五百円で、二千円でさぁ」

 

「ん……、きょーか、お金」

 

「あー、ハイハイ」

 

 響香は黄彩に呼ばれ、財布を出しながらたこ焼き屋の方へ歩く。

 

「……響香ちゃん、大丈夫なのかしら?」

 

「まあ、ヴィラン以外は襲わないってところだけは、信用できる」

 

「お、悪りぃな! おごって貰っちまって!」

 

「け、ケロ……」

 

 

 そのまま流れで四人で屋台を廻り、満足したのか使駆はこの場から去っていった。

 

「ケロ。響香ちゃん、いろいろ奢って貰ってしまったわ」

 

「え? ああ、この財布黄彩のだから」

 

「あら、そうなの? なら有製ちゃん、ごめんなさい」

 

「ん、気にしなくていいよ。えっと、シユちゃん」

 

「ツユちゃん、よ。ケロ、器用な間違え方ね」

 

「アハハハッ、黄彩なりの照れ隠しだよ。ね?」

 

「きょーか、ボクだって恥ずかしいんだよ……」

 

「大丈夫、かわいいわ」

 

「うん、ボク、だからね……」

 

 梅雨の言葉に照れつつも、黄彩はふらつきながら答える。

 

「黄彩、もしかして眠い?」

 

「うん、抱っこ……」

 

「ハイハイ。梅雨ちゃん、そろそろ戻ろっか」

 

「ケロ、そうね」

 

 黄彩に身を預けられた響香は軽々抱き上げ、梅雨に微笑みかけた。

 

「ボクね……、頑張ったんだよ……」

 

「まだ時間はあるし、寝かせてあげましょ」

 

「黄彩、午後も実況の仕事あるの?」

 

「飛び回ったりはしないから、うん。……ちょっと休めばへーき」

 

 

 




キャラ紹介
巻解(まきとき) 使駆(しく) 男 十六歳
個性:ミニ四駆
 響香、黄彩と同じ小学校に通っていたが、侵入したロリコンヴィラン集団を一人残らず轢き殺すという事件が起き、事実上の小学校中退。
 以降も数年に一度程度に黄彩達の前に現れるが、黄彩の記憶にはあまり残らない。

 家族に見限られ、ヒーローにも忌み嫌われ、妥協案としてヴィランを襲い、所持金を奪うことでなんとか生活している。

 個性《ミニ四駆》は発動型と勘違いされるが、実は異形型に分類される。樹脂のような質感の肉体はコンクリートの塊に衝突しても壊れず、衣服で隠れている球体関節も速さに耐えるためのもの。頬の刺青は個性のオン、オフを表している。
 ある程度のスピード、馬力の調整はできるようになったが、方向転換を行うには一度スイッチを切る必要がある。


 実は専用規格のアイテムを用意すれば身体の一部にすることもできるが、縁が全くないので本人も気がついていない。


モチーフになっている他作品キャラは《匂宮出夢》《零崎人識》
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