芸術家の英雄教室   作:那由多 ユラ

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第十四話 体育祭の自由慈悲と最終開始

001

 

 

 

『さぁ、そろそろ午後の部を始めるぜ! ……って、どーしたA組!?』

 

 午後の部が始まろうというとき、プレゼント・マイクが困惑の叫びをあげた。

 

 腹部の見えるほど丈の短いノースリーブのチアコスチュームに、膝上25センチのミニスカート。両手には黄色のポンポンを持って、1-Aの女子生徒と何故か黄彩が真ん中に立っていた。

 黄彩はツインテールを振るようにしてポンポンを乱雑に振っている。

 

『ねえねえ! ボクかわいっ? かわいっ?』

 

 実況を午後もするのかインカムを付けていて、その声はスピーカーから全体に流れる。

 

『……黄彩くん、その格好は基本的に女の子がする格好よ』

 

 基本的な女の子ですらしない格好をしているミッドナイトが冷静にツッコミを入れる。

 

「何故こうも峰田さんの策略にハマってしまうの私…」

 

 対極的に限りなく落ち込む八百万。麗日がその背を優しくさすってあげている。

 

『よくわからんが、アホだろあいつら』

 

「まぁ、本選まで時間空くし、張り詰めててもシンドイしさ、いいんじゃない!?」

 

『いえーい!』

 

「好きね、透ちゃん、黄彩ちゃん」

 

「ウチ、もうやだ帰りたい……」

 

 響香はポンポンを投げ捨てるほどには恥ずかしがっていて、いつもの黄彩のようなことを言っていた。

 

『きょーかも一緒に、ほら! ウフフッ』

 

「……黄彩、なんでそんなノリノリなの」

 

『いっぱい食べて寝たからね! 残るは性欲だけなんだよ!』

 

『黄彩くん、その発言をその格好で全国に流すのは色々と危ういわよ!』

 

『おっぱいの人も一緒にどーおっ!』

 

『その呼び方今だけはやめてくれないかしら!?』

 

 茶番を背に、プレゼント・マイクの一際大きな声がスタジアムに響き渡る。

 

『さァさァ、皆楽しく競えよレクリエーション! A組の女子たちも応援してくれるってよ! それが終われば最終種目。進出4チームからなる総勢16名からなるトーナメント形式! 一対一のガチバトルだ!』

 

 

 

002

 

 

 

『それじゃあ、くじ引きで組み合わせを決めちゃうわよ。組が決まったらレクリエーションを挟んで開始になります。レクに関して進出者16人は参加するもしないも個人の判断に任せるわ。温存したい人もいるだろうしね。んじゃ、1位チームから順に……』

 

「あの、スンマセン。俺ら辞退します」

 

 壇上でくじ引きの箱を持ったミッドナイトに待ったをかけたのは、B組の鱗と床田。周囲が騒ぐ中、二人は辞退の理由を告げる。彼等は騎馬戦時の記憶が無く、気付いた時には勝利を収めていたという。それでは己の実力でもないのに本戦に選出されるのは体育祭の趣旨と相反するのではないかと。

 

『そういう青臭い話はさぁ……』

 

 ミッドナイトの言葉と同時に、黄彩の持つカメラが二人を顔を映す。

 

『好み!! 鱗、床田の棄権を認めます! 他のチームから新たに二人選出する、んだけど……』

 

 確認の意味もあって騎馬戦の結果表をモニターに表示させるが、5位以下が全チーム0ポイントだった。

 どうしたものかとミッドナイトが悩んでいると、黄彩が挙手しながらミッドナイトの隣に立った。

 

『決められないなら、ボクはきょーかを推すんだよ!』

 

「え、ウチ!?」

 

 黄彩のカメラが観客席にいた響香の顔にズームする。

 

『黄彩くん、仲がいいからって、認められると思う?』

 

『ムゥ、おっぱいの人が好みで二人の棄権を許したんだから、ボクだって好みで推したっていいでしょ!』

 

『それなら私は黄彩くん、君を推すわ!』

 

『え、ボク!?』

 

(((誰だこの二人に仕事任せた奴!!)))

 

 観客、視聴者の心情が一致したが、無慈悲にも二人は選出されてしまった。

 

 

 

 

 

『黄彩くんと耳郎さんが繰り上がって16名が揃ったわ! 全員にクジを引いてもらい、組み合わせはこうなりました!』

 

第一戦 緑谷VS心操

第二戦 瀬呂VS轟

第三戦 有製VS上鳴

第四戦 飯田VS発目

 

第五戦 芦戸VS青山

第六戦 常闇VS八百万

第七戦 耳郎VS切島

第八戦 麗日VS爆豪

 

「ウチ、マジで出るのか……」

 

『きょーか、頑張ってね!』

 

「一回負けてる分プレッシャー半端ないんだけど!? あと黄彩も出るんだからね?」

 

『ウフフ、大丈夫。ボクが全力でサポートするからね!』

 

『堂々と八百長宣言!? ダメよ黄彩くん!?』

 

 黄彩とミッドナイトが漫才をしているうちに、切島が響香に近寄った。

 

「おい耳郎。初っ端クラスメイトなのはやりづれぇけど、加減しねぇからな」

 

「ま、しゃーない。ウチも黄彩に期待されてるから、負けないよ」

 

 

 

003

 

 

 

『よーし、それじゃあトーナメントはひとまず置いといてイッツ束の間! 楽しく遊ぶぞレクリエーション!』

 

『イッエーイ!』

 

 レクリエーションが始まると、轟や爆豪たち数名は、スタジアムから姿を消した。試合で全力を出すため、各々、それぞれの方法で精神を研ぎ澄ませているのだろう。

 本戦に参加する者の中にはレクリエーションに参加するものもいるが、やはり体力を消耗しない種目を選んで参加している。

 

『ヘイガイズ! アァユゥレディ!? 色々やってきたが、結局これだぜ、ガチンコ勝負! 頼れるのは己のみ! 心技体に知恵知識! 総動員して駆け上がれ!』

 

 レクリエーションが終わり、ついに始まった最終種目に観客たちは歓声をあげる。

 早速、第一戦の選手である緑谷と心操がステージに上がると、スタジアムの熱気が更に膨れあがった。

 

 

 

『ルールは簡単! 相手を場外に落とすか行動不能にする。あとは「まいった」とか言わせても勝ちのガチンコだ! 怪我上等! こちとら我らがリカバリーガールが待機してっから、道徳倫理は一旦捨ておけ! だが、もちろん命に関わるようなのは駄目だぜ! アウト! ヒーローはヴィランを捕まえる為に拳を振るうのだ! さぁ、行くぜ!? レディィイ、スタートォ!!』

 

 

 第一線、緑谷と心操の試合は、所詮にあるまじき、派手さに欠ける試合だった。

 緑谷が開始早々に《洗脳》にかかり、どんな手段を取ったのか指を骨折することで洗脳を解き、個性由来のものではなく鍛え上げられた身体能力で心操を場外へと投げ飛ばした。

 

 派手でこそなかったが、黄彩のマイクが拾った二人の会話は痛烈に強烈であった。

 

『心操くん場外! 緑谷くん二回戦進出!』

 

『それじゃあ洗脳の人、見てるヒーローに一言どうぞ!』

 

 障害物競走の時にも見られた黄彩の取材に、心操は困惑しながらも答える。

 

『は? ……どれだけヴィラン向きの個性だって言われても、邪道外道だと言われても、俺はこの個性で、邪道の力でヒーローになってやる。王道ども、先で待ってろ』

 

『ふ〜ん。……ねぇ消しゴムの人、この人今からでもヒーロー科に入れられないの?』

 

『今すぐは無理だ。だが、入試で落としたのは失敗だったかもしれないってのも、先生達の総意だ。……今はこのくらいしか言えん』

 

『っ! ……そう言ってもらえただけでも、本戦に出れて良かったと思えます』

 

『おう、がんばれ』

 

『シヴィー!! 俺も応援してるぜ!』

 

 

 

 第二戦、瀬呂と轟の戦いは、轟の氷結の個性で会場ごと丸々凍らせる圧勝を収めた。

 

『ドンマイ、セロテープの人!』

 

『それもう瀬呂って呼んだ方が楽だよな?』

 

『ウフフ、それじゃあ一言!』

 

『……頼むからそのドンマイコールやめてください!!』

 

『あーあ、次はボクかぁ』

 

『黄彩くん、無理やり出させたのは謝るから、やる気出して?』

 

『観客全員殺せば体育祭も中止になるよねっ!』

 

『殺る気は出さないで!』

 

 

 第三戦、有製VS上鳴

 

 

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