000
二回戦第四試合、耳郎VS爆豪の開始前。控え室に響香と黄彩はいた。
「ウチ、切島相手には小細工が通じたから勝てたけど、爆豪相手はこのままじゃ勝てないと思うんだよね」
「ん……、そうだね。爆破の人、今のきょーかより強いもん」
真剣な表情で話す響香に、黄彩はジュースを飲みながら頷いた。
「だからさ、あのときみたいに、無理やり全盛期の力を出したりできないかな」
「…………できなくはないけど、やりたくはないよ」
「お願い」
響香の鬼気迫る表情に、黄彩は思わず顔をそらしながら頷いた。
「……若返りと比べて、成長と鍛錬の省略は負担が遥かに大きいって、いつか言ったよね」
「うん、覚えてる。だから、全盛期より先の肉体になってから、若返る形で全盛期を作るんだったよね」
「それが今までのプランだったけど、響香が望むなら、プランを逆転する」
「詳しく説明して」
あからさまに嫌そうな表情で、黄彩はジュースを飲み干してから口を開く。
「……今から響香を全盛期まで急成長させる。そこまでは前とおんなじ」
「うん。でもそれだと、10秒も持たなかったんだよね」
「だから、その全盛期の状態から、今の響香まで若返らせる。でもただ戻すんじゃ無くて、全盛期の形状を記憶させる。体も、脳も。形状記憶合金って、名前くらいは知ってるよね?」
「えっと、お湯に入れたら元の形になるあれ?」
「モノによるけど、まあそれ。……似たような細工で、響香の体温が40度まで上がると全盛期まで戻るように細工する」
「……ウチ、ターミネーターになるの?」
「いや、別に金属入れるわけじゃないよ。……で、やる? やめる? 成長する年齢分、最低十年は寿命が縮むし、成長と若返りの二回分負担がかかるから、……響香がやりたいって言わないと、ボクはやりたくないよ」
黄彩の言葉を反芻しながら、二度、深呼吸してから響香は黄彩の手をとった。
「黄彩も、寿命は削れてるんだよね。ウチよりも、ずっと」
「え? うん、そうだけど……、それがどうかした?」
「ウチ、黄彩に先に死んで欲しくないから、寿命はいいよ。気にしないで、思いっきりやって」
「……芸術家のボクが言うのはなんかあれだけど、正気?」
「超正気」
「……わかった。でもこれは約束して。ボクがいないと、一度全盛期になったら戻れないのは同じ。ボクのいないところでは絶対に全盛期にならないで」
「わかった。約束する。……あれ、サウナとかお風呂とかは?」
「ボクと一緒なら大丈夫、抑える。……ボクがいなかったら、水風呂」
「つまり、いつも通りね」
「いつだって響香は響香だよ」
001
準決勝第一試合、轟VS有製。
前の試合で破壊されたフィールドの修復に時間がかかるかららしく、黄彩は控え室でのんびりと寛いでいた。
「……寛ぎすぎだろ」
ベッドを自作してまで寛いでいた黄彩に、何か用があったのか部屋を間違えたのか対戦相手の轟が訪ねて来た。
「んー、……アァ 、氷の人」
「轟焦凍だ。話があってきた」
轟の言葉を聞くと黄彩は身を起こし、ベッドから足を出して地面につける形で腰掛けた。隣に座るよう促すが、轟は正面に立ち見下ろす。
「お前、前にオールマイトに勝ってたよな」
「えっと、オール……、ああ、すじ肉の人ね。うん、それがどうかした?」
「知ってるかもしれねぇが、俺はNo.2ヒーロー、エンデヴァーの息子だ」
「…………、だれ?」
キョトンと首を傾げた黄彩に頭を抱えたが、「そういえばこういうやつだった」と気を取り直す。
「ヒーローで一番強いのがオールマイト、お前の言うところのすじ肉の人で、その次に強いのが俺の父親、エンデヴァー、お前風に言うなら燃える人だ」
「……萌える人? 父親ってことは、男の娘? お母さんいい趣味してるね」
「男の子? いや、十人中十人が時代錯誤の頑固親父って言いそうな感じのおっさんだぞ。あと母さんの趣味じゃないのは確かだ」
「「んん??」」と二人揃って首を傾げた。天然と天然の組み合わせは危険である。
「……イケオジってやつ? お母さんはショタコン? まあいいや。それで、結局何が言いたいの?」
「俺は、左、炎の力は使わずに、右の力だけで、オールマイトに勝ったお前に勝ち、親父を完全否定して見せる」
轟はこれ以上困惑させまいと、言葉を選びながら黄彩に宣戦布告した。
「ウフフ、うん、わかったよ。ボクにはきょーかと喧嘩したい以外で頑張る理由がなかったんだけど、これじゃあ失礼ってやつだ」
「……そうなのか?」
一方、言葉を選ぶ気のない黄彩の言葉に轟は再度首を傾げた。
「ボク、ちょっと企んでることがあってさ。ボクが勝ったら、君の力を貸してよ」
「……? 別に、ある程度のことなら言ってくれれば手伝うぞ?」
「ウフフ、それじゃあ面白くないの。君が勝てばNo.1より強いって称号は君のものになる。ボクが勝ったら君の力を借りられる。……うん、やっとちょっとやる気出てきた」
ベッドから降り、「えいえいおー」と、やる気を感じられない鼓舞を見届け、轟は控室から出た。
「悪い、邪魔したな」
「ん、人との会話は創作意欲の刺激に好都合。気にしなくていいよ」
「……もしかして俺、敵に塩を送った感じになったか?」
「……ウフフ、図に乗るなよ。ボクだよ」
「……おう」
002
『準決勝第一試合! 轟焦凍!! ヴァーサス! 有製黄彩!!』
『お前、ネタ切れか?』
笑いながら楽しげに現れた黄彩に釣られるように、轟も表情を緩ませた。
「ウフフ、負けないよん」
「こっちのセリフだ」
『両者気合十分! スタートォ!!』
プレゼント・マイクの合図とともに、轟は氷山のごとく巨大な氷で黄彩を氷漬けにした。
『あ、あ〜、A組有製、無事かぁ!!?』
「ウフフ、ボクだよ? 作品No.74《
氷山が一瞬で消え、無事な黄彩が現れると同時に雪が降り出した。
「……やっぱ、簡単には勝てねぇか」
「今度はボクから行くよっ! 作品No.74
降り注ぐ雪が圧縮され、円錐状になって轟に向かって発射される。
「厄介な!!」
身を守るように氷の壁を作ると、氷柱は衝突して砕け散る。
「ウフフ、教えてあげるけど、ボクには電気とか氷とか炎とか光とか、放出するような技は大体効かないよ。難しいのは音とか振動くらいかな」
「マジでオールマイト並みのチートだな!!」
「変に接戦させる理由もないし、勝つね。――模倣《
――模倣。
作品では無く、模倣。黄彩をして自分流に出来ない、他人の真似事の技。
右腕だけが巨大化し、拳を握る。
「これで殴られたら、超痛いよ!!」
「負けてたまるっ、なぁ!?」
巨大な腕を凍らせて止めようとしたが、足りないと言わんばかりに、氷ごと轟を殴り飛ばした。
『轟くん場外! 決勝進出、有製くん!!』
黄彩は右腕の変形を解くと、氷に残った巨大な拳の型をボーっと眺めた。
『えっと、黄彩くん? どうかした?』
「んー、いや、なんでもないんだよ。……えっと、氷の人。ととときくんだっけ? 大丈夫?」
「……ああ。別に怪我はしてねぇ」
とは言うが、かなり落ち込んだ様子で、黄彩の呼び間違えにも、伸ばされた手にも気がついていない。
「……さっき聞いた以上の細かい事情は知らないけど、左の炎も使ったら?」
「緑谷にも同じようなことを言われたさ」
「なら、どうして? ……ボクの個性、図画工作はパパも、ジジも、そのパパもおんなじ個性だけど、これをパパの力だとも、ボクがジジの代わりだとも思ってないよ」
「……お前の家も、うちと似たようなところあんだな」
「知らないよ。君の家族にあったことなんてないし。……ボクはボクだよ。パパの後継者になんてならないし、ママの後継者にだってならない。パパとママの作品でもない。どれだけ体が別物になろうとも、幾つの技を盗もうとも、ボクはボクだ。ボクの力だ。……君は誰で、君の力は誰のものか、選ぶのは君なんだよ?」
氷に囲まれたまま、下を向いて俯いたままの轟から黄彩は離れ、ミッドナイトからマイクを奪い取った。
『あ、っちょ、黄彩くん!?』
『きょーか! ちゃんと喧嘩しようねっ!』
轟は去っていく黄彩の背を見届けた後、個性の炎で氷を溶かしてから去っていった。
『緑谷
なんて、そんなネタを思いついたのでそのうち書くかもしれません。出久と出夢、名前的に違和感ないね。
ワンフォーオールの
髪型も母親と近い気がするし。
「ワンフォーオール、フルカウル、
……みたいな。問題は人識ポジを誰にするかよね。できれば女の子がいいなぁ。