001
八百万を連れ出し、発信器を辿って神野区へと来ていた緑谷達はオールフォーワンとオールマイト、黄金の少女の三人の戦闘に目を奪われながらも、誤解をしていた。
平和の象徴を名乗る神刺裂那と、オールマイト。オールマイトを最強の矛とするなら、神刺裂那は最強の盾なのだと、戦いにすらなっていない話し合いを見ながら、そう思っていた。
しかしそれは、誤解であった。
オールマイトの伝説の一つに、片手で天候を変えたという逸話がある。
ならば彼女は、口先一つで戦争を終わらせて見せた。
「今掛け合わせられる最高最適の個性達で『僕を』殴る! ……は」
神刺裂那の体質。緑谷達で言うところの個性。
――言論侵略。
無差別の絶対防御も、強力な助っ人の呼び出しも、その力の前には一歩劣る。
口から出た言葉は侵略され、精神を蝕み、脳を唸らせ、肉体は口に動かされる。
筋骨バネ化、瞬発力、増殖、肥大化、操骨etc......、と、オールマイトか裂那を確実に殺すべく個性の込められた右腕が、脳のリミッターも無意識の自制も知らぬ口に従い、己の肉体を打ち抜いた。
『『私たちの平和が、まずはお前を終わらせる』』
裂那とオールマイトの口から、一言一句違えること無く言葉が放たれると同時に、オールマイトが右腕を、裂那が左手を構えた。
「ふふ、子供は見てはいけませんわ」
「「「っな!?」」」
緑谷達の視線を遮るように、さっきまで裂那達から一歩引いたところにいたはずの
「離しやがれクソが!!」
「ここにいてはテレビのカメラに映ってしまいますわ。警察のお世話になりたくないのなら、オレ様と一緒に中継越しに観ましょう」
「待ってください!」
「待ちませんわ。――名無し猫」
何かを訴えるように待ったをかけた緑谷を無視するように、名無しの女は魔法を発動する。
いわゆる、テレポートという奴だ。
成すすべなく、問答も容赦も躊躇いもなく、その場にいた雄英生と転生の魔女は街中の人混みの中に人知れず出現した。
ビルの大きいディスプレイには、オールフォーワンをオールマイトと黄金の少女とオールフォーワンが攻撃しているという、一方的な戦いが映されていた。
「人身御供、ですわ。悪は平和が喰らい、平和は正義が喰らい、正義は人類が喰らい、人類は悪が喰らう。終わらない食物連鎖に従い、彼らは食材の一角へと成り上がったのです」
授業をする教師のような言い方で、名無しの女は語る。
002
後日譚。
オールフォーワンは無事捕縛され、オールマイトはリカバリーガール監修のもと療養、神刺裂那は行方を眩ませた。……が、すぐに発見されることになる。
「よう、はじめましてショタ親父。可愛い面しやがってぶっ殺すぞ」
「うにゃ……、ん、まぁ、よろしくね。
「
「……ねぇ、ここ病院なんだけど」
響香も無事目を覚まし、明日には退院の身だ。見舞いに来た黄彩が病室についてすぐ、神刺裂那が響香の病室に現れ、黄彩に喧嘩を売っていた。
「おうおう、お前がオレの外見の遺伝子モチーフだな? ……確かによく見りゃ似てるな」
「顔近い。離れて」
裂那と響香が顔を合わせて見れば、なるほど似ている。目と髪の色が違うし、髪型も似ているようで差異はあるが、目や口元など、パーツや輪郭、体付きはよく似ていた。
「別に血の繋がりがあるってわけでもねぇが、オレはお前と一方的な親戚関係みたいなのにある。ま、仲良くしてくれると嬉しいぜ」
裂那はシニカルに笑いながらそう言い残し、病院の窓から飛び降りて行った。
「……ここ、三階なんだけど」
「ん、丈夫に作ったから大丈夫」
黄彩の作品だというのはすぐに理解していたが、それでも少女が飛び降りる光景にツッコミを入れないわけにはいかなかった。
「黄彩、……こっち来て」
「うにゃん?」
クラスメイトの誰か、あるいは家族かが持ってきたであろう、花瓶に生けられた花を見ながら、響香は黄彩を手招く。
「うむぎゅ」
何も疑わずに近寄った黄彩は響香に捕まり、ベッドに引き込まれた。子供のように小柄な身体はすんなりと収まり、抱き枕かぬいぐるみのように抱きしめられる。
「ん〜、きょーか?」
「無事で良かった」
なんのことか、黄彩は幾つもの候補が浮かぶがその全てに安堵しているのだとすぐに気づく。
「ニュース見たよ。ネットは今も大炎上、作品の値段は暴落、遺族からの抗議。ウチは寝てて何にもできなかったけど、おつかれさま」
「ん……、うん。ボク、頑張ったよ」
もう何ヶ月も触れ合っていないような気がする。そんなことお思いながら、二人は抱きしめ合う。
「ウチ、もっと強くなるよ。黄彩の前に立って守れるくらい」
「ん、応援してる」
「……そこは冗談でも、『ボクもきょーかを守れるようになる』くらいは言って欲しいかな」
「ウフフ、いいよ。きょーかがボクにそうあって欲しいなら、ボクは英雄にだってなれるよ」
この後は間もなく診察の時間となり、黄彩は帰宅した。
003
――警視庁。
世間が慌ただしい中、神野でも事件に関する報告会議が行われていた。
「捕らえられた脳無は、これまでと同様、人間的な反応がなく、新たな情報は得られそうにありません。製造工場も破壊し尽くされており、製造方法も追って調査を進めるしかありません」
スクリーンの前に立った男が語ると、聞いていた一人が発言する。
「バーからも連中の個人情報はあがってねぇんだろう?」
尋ねられた男は静かに頷いた。
「大元は捕らえたものの、死柄木を始めとした実行犯は丸々取り逃した。……とびきり甘く採点したとして、痛み分けか」
「馬鹿野郎。取り逃したままなのはアンチヴィランもだ。神野にヒーローが集まってるのを見計らって動き出した小物のヴィランのほとんどが、奴によって殺害された。……一市民としては、警察とヒーローだけじゃ手の届かなかった民衆を守った英雄として讃えたいところだが、警察としちゃ職務放棄もいいところだ。ヴィラン回収係どころか、このまま行けば死体回収係になっちまうぞ」
「唯一の救いは、ヒーロー殺しの時と違い、影響を受けるものがほぼ皆無というところですね。カリスマ性が欠けているというか、人望がないというか」
市民としての感情と警察としての感情が入り混じり、その場の全員が黙りこくった。
「……えー、次の議題です。これは現在同時刻、全国放送で明かされるのですが、今回の一件で、オールマイトは無茶が祟り、かなりの弱体化。実質の引退となります」
「それも、一人に一国の平和をまかせきった我々の怠慢のツケか」
「えっと、続きます。オールマイトの引退と共に、事件の際オールマイトと共闘していた、通称《黄金の少女》こと、シトリング・ラフィの作品、《
「平和の象徴って、別に職業でも何でもないと思うが……」
スクリーンの前で語っていた男がリモコンを操作し、スクリーンにテレビ放送を映す。
そこでは、先ほど引退を宣言し、痩せ細った身体を世間に見せたオールマイトと、雄英の制服を金色に染めた服装の少女が対面していた。他の人間なんて無粋だと言わんばかりに、司会も進行役もそこには居ない。
『一人の人間に平和の象徴を担わせるなんて、荷が重すぎる。政治家でもないオレが言うのも変だが、ヒーロー社会は変わらなきゃならねぇ』
『……と、言うと?』
『一人がみんなの為に、みんなが一人の為に。そんな時代は終わった。ヒーロー殺しステインが掲げたようなクソカッケー動機なんざいらねぇ。動機を求める暇がヴィランの湧く隙だ。金のため、美味い飯の為、モテる為。どんな理由であれ、それで人が救えりゃそれでいい。全人類が平和を求めろ。オレら平和の象徴はその旗印だ』
黄金の国、神刺裂那の言葉が会議室に通り、その場の全員の目の色が変わる。
『私はもうあまり戦える身ではないが、それでも前に立ち続けろと、君は私にそう言うのだな』
『おう。車椅子に乗ってでも前に立ち続けろ。
『……嗚呼、わかったよ。可愛い後輩の頼みだ。――ヒーロー諸君! 未来のヒーローを目指すみんな! こんな
なんとも情けない、しかし力強い平和の象徴の言葉だ。
防音性の高い会議室にまで、外の騒ぎが聞こえてくる。
「我々警察も、負けてはいられんぞ。オールマイトが築き上げた平和という城を、易々と崩すわけにはいかん」
その日、日本の日中気温は常時、天気予報のそれを遥かに上回っていたという。
「最後に、どこからか情報が漏れたシトリング・ラフィ、雄星黄彩の事件のことですが……」
「拘束具を刑務所ごと引きちぎり、死んでも何故か生き返ってくるような奴、捕らえる方法が無い。イレイザー・ヘッドのような人材はただでさえ希少なんだ。多少強引でも正当防衛に出来るうちはヒーローの監視と教育に任せる」
熱意が物理的にも上がった警察をしても、黄彩の逮捕、収容は半ば諦められていた。
「いいか、なんとしても、彼をヴィランにしてしまう決定打を与えるなよ。オールマイトの引退とは訳が違う。その時が人類の危機だ」
作品紹介
傑作No.22《
神刺裂那という金髪金眼の少女。曰く、顔つきは響香に似ている。
黄金の国とは裂那の故郷であり、裂那を完成させる為に黄彩が作り出したシュミレーション上の世界。構造を簡略化させる為に天動説を採用したり、不都合な部分を魔力という不思議エネルギーで解決している為、不思議がいっぱい。
ヒーローではなく《魔導士》という者達が存在しており、ヴィランではなく《悪》という総称が存在している。
魔導士の一例として、《核融合の魔法少女、煌綺太陽》や、《転生の魔女、■■■=■■■■》などが挙げられる。
と、三種類いて、強さは文字数と言葉のパワーに比例する。(要はパワーワードは強い)核融合の魔法少女で最強クラス。
神刺裂那は魔導士ではないが、他にも特異体質持ちと呼ばれる存在がいて、裂那の場合黄金の国、言論侵略。ヒロアカ世界での個性とおおよそ変わらないが、一人一つとは限らず、(例:轟焦凍、神刺裂那)その全ての大元を辿るとオールマイト、プレゼントマイク、ミッドナイトの三人の遺伝子へと繋がる。やってることは全人類無自覚の個性婚と言っていい。
神刺裂那は姉が一人、妹が一人の三人姉妹の次女で、姉は《メイド喫茶のメイド長》《次元規模の方向音痴》《兎算》《月の兎》《最新の偉人》などと様々な異名をつけられ、放浪者、旅人、宇宙飛行士、宇宙人、大泥棒、名探偵、トレジャーハンター、海賊、詐欺師、魔法使い、博士、そしてメイド長、と、誰よりも人生を経験しているが、黄彩の意図したことではなく偶然の産物。神刺裂那が文化遺産なら、その姉は自然遺産。
実力は裂那を遥かに上回るがよく行方不明になり、黄金の国を完全に管理している黄彩ですら見失うこともある。制御は本人にも不可能。
妹は謎。(ぶっちゃけ居るって設定だけずっと残ってるけどまだ名前すら決めてない)
裂那には親友と呼べるものが一人いるのだが、それは後日。(裂那ちゃんもその子も他作品で出したキャラだからユラさんの過去作読んだことある人はわかるかもだけど、言っちゃダメよ)
黄金の国とは一人の少女を指すと同時に、それは国にして世界でもある。