【挿絵表示】
カスタムキャストの都合で、服装の金色は再現できていませんが、まぁそこは、黄金の国になり切れていない頃の物ということで、ここはひとつ。
では本編どうぞ。
第四十話 抹消者の家庭訪問と母親襲来
001
響香が目を覚ましてからさらに数日が経ち、雄英生徒達は外出自粛を強いられた上での夏休みを満喫していた。
そんなある日のこと。雄英教師陣は、全寮制を実施するための家庭訪問を執行することになった。
とまぁそんなわけで、耳郎家にオールマイトと相澤が訪ねていた。
「……外出は極力控えるよう言ったはずだぞ。特にお前は」
教師二人は響香にリビングに招かれると、そこでは膝の上に黄彩をのせた響香の母親と、異様なまでに顔を怒らせた父親と思わしき男性がいた。……ちなみに髪色と顔の輪郭は母親、三白眼は父親譲りのようだ。
「うにゃ、家庭訪問が一回で済むからお得でしょ? パパもママもまだしばらくいないし、どうせ家隣だし」
言ってる事は概ね普通だ。親ぐるみの仲なら、留守の間預けるのも違和感はない。が、それは黄彩でない場合だ。
「やっちまった事を分かってて言ってるのか」
「分かってもらってるからここに居るの。全寮制でも転校でも、ボクはきょーかについて行くだけだから、気にしないで始めなよ」
その場の全員が、何のことを話しているのか理解していた。雄英入学前の、黄彩の中学校で起きた殺人事件の事だ。
「……なぁ、黄彩くん。おじさん、もうこの顔やめていいかな。もうどう頑張っても白ける気しかしねぇんだけど」
そんな事どうでもいいと言わんばかりに、怒った顔をひくつかせながら響香の父、響徳が黄彩に謎なことを言って、黄彩は首を横に振る。
「ダーメ。罰ゲームだもの。あ、それとも、このテーブルの天板、お父さんの顔だけを使った近代アートみたいにしてみる?」
どうやら、初めから怒った顔つきになっていたのは何かしらの罰ゲームだったらしい。
「ごめんなさいね、この人ったら、久しぶりの休みだーって言いながら黄彩くんとゲームしてて」
「……いえ」
「ほらあなた、どんどんやりにくくなるわよ」
一見真面目そうな響香の母親、美香だったが、今は口が三日月の形に歪めながら笑っていた。
「あ〜ったよ」
ガリガリと頭をかきながら、響徳は怒った顔を作り直す。
「う〜ん、ロックじゃないよねぇ。大事に至らなかったとはいえ、一人娘と家族同然の黄彩君が被害にあったあとで、しれっと全寮制にしますって」
顔を引きつらせながら相澤はその言葉を聞き届けた。隣に座ったオールマイトに小声で「相澤くん、ちゃんと乗ってあげて」と言われ、表情を引き締める。
黄彩と美香があからさまにワクワクした表情をしている光景から目を逸らし、頭を下げながら口を開く。
「お父さんのおっしゃる事はごもっともです。しかし、我々も知らず知らずのうちに芽生えていた慢心、怠惰を見直し、やれることを考えています。どうか今一度、任せていただけないでしょうか。必ず二人を、立派なヒーローに育てて見せますので」
罰ゲームで仕方なく言った響徳とは違い、セリフの決まっている役者のような名演技だった。
「はいカットー。先生、ただの罰ゲームなんですから、そこまでマジになんなくていいっすよ」
狙いすましたかのようなタイミングで、響香がお茶を運んでやってきた。
「えー、これからが面白いところなのにー。『響香をお前なんかにやれるかー!』って」
「そうねぇ」
「なんでウチ、先生と結婚するみたいになってんの?」
「マジ助かったぜ響香!!」
黄彩と美香は不満げだったが、響徳は泣いて喜びながら抱きつこうとして、響香に振り払われていた。
「先生、うちの子達の事、よろしくお願いしますね」
「はい」
相澤の土下座せんとばかりに頭を下げて放たれたその短い返事には、きっと色々な思いが混ざり合っていた。
「ただいま〜。美香ちゃーん、あたしー。響徳くんもいるの〜?」
そんな時、誰も予想だにしていなかった乱入者が君臨した。
というか、母だった。
002
インターホンもノックもなく、玄関を抜けてやってきたのは、白髪蒼眼の、まるで人形のような美少女だった。
「あ、ママ」
「黄彩と響香ちゃんも久しぶり!」
黄彩に似たツインテールを靡かせながら、響香に抱きついた美少女を、黄彩はママと呼んだ。つまりは、そういう事だ。
「お初にお目に掛かります、私は黄彩君と、響香さんの、」
「うふふふ。分かっているわ、あたし。相澤消太くん、二人の担任の先生なのでしょう?
生徒達よりもずっと幼げな、母親を名乗る女性に困惑しつつも挨拶した相澤はつい耳郎家両親の方を見たが、同情するような目を向けられていて、事実なのだと察する。
「ママ、帰ってくるのは秋って言ってなかった?」
響徳と美香の間に挟まるように座った蒼に黄彩が尋ねる。
「うふふ、子供達がピンチになったら駆けつけてこその母親でしょう? 私は足が遅いから、駆けつけたのは使駆くんなんだけどね」
当然のことのように言われたそのセリフに飛びつくように、相澤は尋ねる。
「あの場に、合宿所にあのヴィラン殺しを呼び出したのはあなただったのですか!?」
「ええ、あたしよ。二人を助けてあげてー、殺しちゃダメよー、って、あたし言ったの。だからほら、みんな助かったでしょ?」
響香はいつか、「黄彩の母親は黄彩よりも黄彩っぽい」と語ったが、まさしくその通り。よく似通っていて、より濃くなっている。いや、黄彩が薄まったと言ったほうが正確だろう。
「お心遣いは感謝しますが、あれはヴィランですので、「違うわ」、あ、あの、」
「違うわ。使駆くんは殺人鬼であって、
黄彩は全てが材料にして作品としか見えないと語るが、なら蒼は全てが人形で世界は人形劇だと語るだろう。
「確かに
話が通じない。相澤はまるで人形と話しているような感覚を味わいながらも、引くわけにはいかなかった。
「だとしても、彼も犯罪者です。我々ヒーローが捕らえねばならない相手です。どうか、彼、巻解使駆に関する情報をお聞かせください」
蒼は相変わらず美香の膝の上にいる黄彩を見上げながら言う。
「使駆くんについて知ってることなんてあんまりないわよ、あたし。でもそうね、どこか避暑地でかき氷でも食べてるんじゃないかしら。きっとお友達と一緒ね」
「避暑地、ですか? 確かに今は夏ですが」
「言ってたらかき氷が食べたくなってきたわ、あたし。お腹も空いたし、もう行くわね、あたし」
蒼は「バイバーイ、またねー、あたしだったよー」と、そう言いながら、有無を言わせる暇も与えずに玄関から出ていってしまった。
「……黄彩くん、彼女が君の、その、お母さんなのかい?」
思わずといった様子で、ずっと黙っていたオールマイトが尋ねると、黄彩は首を縦に振りながら答えた。
「うにゃん、そうだよ。なんか変?」
「いや、ものすごく納得したよ」
003
長野県、軽井沢。避暑地として有名な地の、とあるカフェでのこと。
「うひゃっ、ちょっと崩れちゃいました」
「うわやべ、俺もめっちゃこぼれた」
轢殺専門の殺人鬼と、刺殺専門の殺人鬼が、ナイフではなくスプーンを握り、いまだかつて無い苦戦を強いられていた。
「とろけるような甘さ、血の気のひく冷たさ、たまらないのです」
「確かにうめぇが、すぐ壊れちまうのは戴けねぇな」
天然氷を使って作られた山盛りの氷に抹茶とあずきがかけられたかき氷に悪戦苦闘しながらも、夏の苦しさを忘れさせる味わいに殺人鬼二人は舌鼓を打つ。
「夏はすぐ悪くなっちゃうので、あまり殺る気が出ず暇なので、だから誘ってくださりありがとうございます、使駆くん」
「こういうとこ、野郎一人だとなんか入りにくくてな。被身子が来てくれて助かったぜ」
殺人鬼二人も、居合わせた観光客達も、数日前の騒動なんて忘れたと言わんばかりに、かき氷に苦戦しながらも満喫していた。
「これ食い終わったら次ケーキ食べに行こうぜ。午後には売り切れちまうくらいには人気らしい」
「なんか、デートみたいですねこれ」
「ギャハハッ、んなわけねぇだろ。殺人鬼と殺人鬼がバッティングしただけの衝突事故だ」
「それ、私だけ死にますよね」
「ギャハハハ、比喩だよ。バカか?」
「使駆くんは通常攻撃が衝突事故じゃないですか」
「そりゃそうだっ! ウケる! ギャハハハハハハ!」
「使駆くん、お店では静かに」
「おう」
そこに血の香りなんて、欠片も残ってはいなかった。
キャラ紹介
転生の魔女 女 約二百歳
個性:転生
黄金の国で生まれた、特異な体質を持って生まれた魔女。
死ぬと、世界から完全に忘れられた、彼女が言うところの『死んだ魔法』を一つ持ち帰ってくることが出来る。
お嬢様のような高貴な口調は、亡き師である天聖の魔女の影響。一人称の『オレ様』は天然物。
普段は裂那ではなく、魔法遣いと呼ばれる、魔の魔法使いとペアを組んで悪と戦ったり、格上であるはずの魔法少女と殺しあったりしている。
魔女、魔法使いは魔法少女と比べ、魔力や身体能力は遥かに劣るものの、しかし転生の魔女は別格。
はるか昔に終わった戦争で失われた、対魔導士用の魔法を多数扱うことで、並の魔法少女になら辛勝を収める程度には強い。
他者への実力認識が雑な魔法少女達は、最強格の太陽を含め、自身を殺しうる存在として転生の魔女を恐れているが、その実、口調が高貴なだけで魔法少女との戦闘は極力避けるようにしている。
名を名乗らず、
同一人物だと証明できるまで、転生の魔女は生前の名を名乗る事はない。