芸術家の英雄教室   作:那由多 ユラ

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第四十六話 全寮制の全寮探索と部屋披露

 

001

 

 

 

 一つ二つ、悶着はあったけれども。

 相澤先導による寮の案内が始まった。

 

「学生寮は一棟、一クラス。右が女子、左が男子と別れてる。ただし一階は共同スペースだ。食堂や風呂、洗濯などはここで行う」

 

 説明を聞いているのかいないのか、生徒たちはそこいらを見て回る。

 

「おおー!」

 

「中庭もあんじゃん!」

 

「豪邸やないか〜」

 

「麗日君!?」

 

 騒いだり叫んだり、倒れたりしている中、一人は確実に聞いていたようだが、それも決して真面目なわけでは無く。

 

「聞き間違いかなぁ、風呂、洗濯が共同スペース!? 夢か!?」

 

 固唾をがぶ飲みしながら桃源郷を夢見たのは、言わずもがな峰田だった。

 

「基本男女別だ。お前いい加減にしとけよ」

 

「……はい」

 

 背を向けたままなのに、峰田は蛇に睨まれるカエルの気分を味わった。

 

「部屋は二階から、一フロア男女各四部屋の五階建て。一人一部屋、エアコン、トイレ、冷蔵庫、クローゼット付きの贅沢空間だ」

 

「我が家のクローゼットと同じくらいの広さですわね」

 

「むー、やっぱり狭いし、何より天井が低すぎるんだよ」

 

 ほとんどが実家暮らしであるのもあり、部屋の豪華さにはしゃいでいる中、作りから違う家に住む黄彩と八百万は少し不満げであった。

 

「そういえばアンタの部屋だけ屋根裏無くしたんだっけ」

 

「うにゃん。最低でも、三メートルは高さが欲しかったんだよねぇ」

 

 黄彩の実家の部屋は、それはそれは異様で異質なのだが、それはまたの機会だ。

 

「部屋割りはこちらで決めた通り。各自、事前に送ってもらった荷物が部屋に置いてあるから、とりあえず今日は部屋作ってろ。明日また、今後の動きを説明する。……以上、解散!」

 

 というわけで、それぞれ個性溢れる部屋作りが始まった。

 

 

 

002

 

 

 

 黄彩の部屋は、響香の部屋の隣となった。

 女子フロアであるはずの部屋だが、そもそも各階で男子フロアと繋がっている上、黄彩は女体化することもあり、どこからも異論は出なかった。むしろ部屋割りを決めたミッドナイトはこの二人をまず最初に並べたとか。……誰だこいつにやらせたのは、と思った教師が多かったのはもう語るまでもないだろう。

 

 隣の部屋からギターやドラムの鳴らされる音が聞こえてくる中、黄彩はひたすらパソコンとディスプレイを繋げ、数を集めすぎて触手のようになっているモニターアームに取り付けて行く。

 その部屋には机もベッドもなく、当然マウスもマウスパッドもキーボードも無く、あるのは中央の玉座と部屋の壁四面を、窓、ドアを避けて設置されたディスプレイとパソコンのみ。

 

「にゃ、あとはゴミだして、服をしまったら終わりかな」

 

 新品を用意したようで、機材の空き箱や梱包材、説明書、保証書なんかをまとめて圧縮し、一つの玉にして部屋から運ぶ。

 

「あ、黄彩。……やっぱりか」

 

 偶然、響香も段ボールを外に持ち出すようで、ドアから黄彩の部屋を覗いてため息をつく。

 

「うにゃん。あ、ゴミ貸して。まとめるから」

 

「あ、うん」

 

 響香の抱えた段ボールは、黄彩のゴミ玉に吸い込まれるように張り付き、より大きな玉になった。

 

 雪だるまを作るようにゴミを転がす黄彩に、部屋作りが終わり暇を持て余した響香は同行する。

 

「黄彩さ、自分の部屋で寝なよ」

 

「ベッドなんて持ってきてないよ。置く場所もないし」

 

「ウチの部屋のベッドがダブルになったせいで部屋圧迫してるんだけど?」

 

「うなー、それは仕方ないね。というかどうしようもないね」

 

 そもそも、ダブルベッドを持ち込んだ時点で響香も半ば諦めていたはずで、主にクラスメイトに揶揄われるのを防がんと言ってみただけだ。

 

「そういえば、ウチの荷物の中に黄彩のものが混ざってたんだけど」

 

「うん、混ぜた」

 

「堂々と言うな。異物混入」

 

「後の遺物かもしれないよ?」

 

「千年経てば大概のものは遺物じゃん。そうじゃ無くて、ウチの部屋には異物って言ってんだけど」

 

「慣れれば慣れるって。……ダメ?」

 

「いいよ、別に」

 

 

 

003

 

 

 

 そして夜。

 

「うあ〜、疲れた〜」

 

「お疲れ三奈」

 

 早くに部屋ができた響香が供用スペースで女子たちと喋りながら寛いでいると、部屋作りに手古摺っていた芦戸がやってきた。

 

「あれ、黄彩くんは?」

 

「疲れたから寝るって」

 

 三奈は「そういえば眠そうだったもんね」と言いながら、ソファに腰掛ける。

 

「ねぇねぇそれよりもさっ! ――、――――!」

 

 と、芦戸は悪戯を思いついたような顔をしながら提案する。

 

「いいねっ! 面白そう!」

 

「私も構いませんが、」

 

 もはやいつも通りの光景。葉隠が悪ノリし、一番止めるべき八百万に止める気は見られない。

 

「よっしゃいこー!」

 

 芦戸に先導される形で、女子五人は男子たちの元へと向かう。

 

 

 

 

「男子ー! 部屋できたー?」

 

「ああっ! 寛ぎ中」

 

 芦戸が声をかけると、抜けて陽気な上鳴が返事する。

 

「あのねっ、今女子で話してて、」

 

「提案なんだけど!」

 

「お部屋披露大会、しませんか!?」

 

 芦戸と葉隠の言葉に、男子三名が固まった。

 

「「「え……」」」

 

 峰田、常闇、緑谷である。

 

「えー!!? ダメダメダメッ!! ちょ、っま――」

 

 現実は小説よりも非情なり。一番近かった緑谷の部屋が公開された。

 

「「「おおー!」」」

 

「オールマイトだらけだぁ!」

 

「オタク部屋だ!」

 

 想定外の方向で、女子たちは大騒ぎ。

 

「あこがれなんで……、恥ずかしいっ」

 

 引かれなかったことに安堵しつつ、緑谷はウブに照れていた。

 

「ヤベェ、なんか始まりやがった」

 

「でもちょっと楽しいぞこれ」

 

 

 

 早々に撤収し、次は隣の常闇の部屋。

 あからさまに抵抗を見せた常闇だが、やはり非情なり。なすすべなく排除され公開された。

 

「「暗!?」」

 

「「コワー!?」」

 

「貴様ら……」

 

 女子たちの強引に見ておいて散々な言いように、常闇は肩を震わせる。

 

「剣だ、かっこいい……」

 

「男子ってこう言うの好きなんねっ」

 

「出ていけ!!」

 

 

 家主に追い出されるようにして出て、次は青山の部屋。

 

「「「「眩しい!!」」」」

 

 目に悪い部屋だった。

 

「思ってた通りだー」

 

「想定の範疇を出ないっ」

 

 前二人とは違い部屋をアピールしようとする青山をスルーし、葉隠、芦戸は次の部屋へと向かう。

 

「楽しくなってきたぞー! あと二階の人は……」

 

「……入れよぉ。すげぇの見せてやんよぉ」

 

「え、きも……」

 

 血走った目でドアから覗き見てくる峰田を、テンションがスンと下がった麗日は麗かでない冷めた目で見ながら言った。

 峰田は崩れ落ちた。

 

(((麗日超恐ぇ……)))

 

 内心を同じに、全員上の階へ向かった。

 

 

 三階一人目の犠牲者は、尾白。

 

「おおー、普通だ」

 

「普通だぁ! すごーい!」

 

「これが普通ということなんだねっ!

 

「言うことないならいいんだよ……」

 

 普通のベッドに、普通の机、普通の椅子、普通のタンス。普通としか言いようのない部屋っだった。

 

 

 三階二人目の犠牲者は、飯田。

 

「難しそうな本がズラーっと、さすが委員長!」

 

「おかしなものなんぞ無いぞ!」

 

「眼鏡クソあるぅ!!」

 

 本が多い以外普通の部屋に見えたが、麗日が目敏く、棚にズラッと並んだ同じ眼鏡の群れを発見した。

 

「何がおかしい! 激しい訓練での破損を想定してだな!」

 

 飯田は理由を説明するも、他に眼鏡をかけているものがいないおかげで誰にも理解されることはなかった。

 

 尚、眼鏡が自然と溜まり、群れをなすのは男女問わず眼鏡っ子あるあるだが、同じ眼鏡を複数持つのは流石に少数派だろう。

 

 

 飯田が無敵すぎて被害者と言いづらいが、まあ三階三人目の被害者は上鳴。

 

「「「チャラい!」」」

 

「手当たり次第って感じだな……」

 

 女子たちの誰よりも、見ただけで上鳴の趣味未満に手を出した物を理解した響香の言葉が上鳴の心を穿いた。

 

「ウェ〜、よくねぇ?」

 

 

 三階四人目の被害者、口田。

 

「「ウサギいるー! 可愛い!!」」

 

 動物のぬいぐるみや、草原のようなインテリアに混ざっていた、ペットのウサギに麗日と芦戸が飛びついた。

 

「ペットはズリぃよ。口田、あざといわー」

 

「……。」

 

「なんか、競い始めてる?」

 

 緑谷は何かに勘付いた。

 

 

「てゆーかよお、釈然としねぇ」

 

「ああ、奇遇だね。俺もしないんだ、釈然」

 

「そうだな」

 

「僕も☆」

 

 女子が散々言ったおかげで、男子の薄汚れた部分に火がついたらしい。

 

「男子だけが言われっぱなしってのは変だよなぁ。お部屋披露大会、つったよなぁ」

 

 中でも、見られることすらなかった峰田は目がマジだった。

 

「なら当然、女子の部屋も見て決めるべきじゃねぇのかぁ? 誰がクラス一のインテリアセンスの持ち主か、全員で決めるべきじゃねぇのかぁ!?」

 

 峰田の言葉が、発火し始めた男子たちの暗い炎にガソリンを撒いた。……全く興味のないものすら巻き込んで。

 

「いいじゃん!」

 

「え……」

 

 男子たちの想定外に芦戸は乗り気なものの、響香は固まった。

 

 

 

 

 

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