芸術家の英雄教室   作:那由多 ユラ

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第六話 芸術家の取材拒絶と侵入記者

001

 

 

 

「教師としてのオールマイトはどんな感じで、す……か」

 

「邪魔。帰って」

 

 オールマイトが雄英高校の教師になったという話題は風よりも早く日本中に響き、大きな話題になった。

 早朝、雄英の正門の周囲には数多のマスコミが押しかけ、登校や出勤している教師や生徒達にカメラとマイクを向けてインタビューを求めている。

 

 そこに立ち会った登校中の黄彩はマスコミ達に顔を顰め、退去を命じた。すると黄彩に気がついた者から次々カメラやマイクを下げ、その場から逃げるように去っていく。

 手を繋いでいた響香が「黄彩、あの人たちに何したの」と呟くが、黄彩は答えなかった。

 

「有製、お前便利だな」

 

「あ、消しゴムの人。おはよー」

 

「プッ! お、おまイレイザー消しゴムの人って! ウケる!」

 

「ウケるな。……イレイザー、相澤、消太、先生。もうどれでもいいからまともな名前で呼んでくれ」

 

 マスコミの群れを見かねて、正門で対応していた相澤とプレゼントマイクは黄彩に関心を寄せる。

 

「マイクの人も、おはよー」

 

「おう、マイクの人だぜぃ!」

 

「お前もお前で気にいるな」

 

「なんかすいません、相澤先生。おはようございます」

 

「ああ、おはよう。あいつら戻ってくる前にさっさと入れ」

 

 響香と黄彩以外にも、さっきまでマスコミに捕まっていた生徒達が駆け込むようにして正門をくぐっていく。

 

 

 

002

 

 

 

 早朝から一波乱あったが、ともあれ朝のホームルームは予定通りに行われた。

 

「昨日の戦闘訓練お疲れ。ブイと成績見させてもらった。爆豪、お前もうガキみたいなマネするな。緑谷、個性の制御が出来ないから仕方ないじゃ通さねえぞ。俺は同じ事言うのが嫌いだ」

 

 相澤は朝のHRが始まると、爆豪の行動と緑谷の個性の制御に対して苦言を呈した。

 

「個性の制御さえ出来ればやれる事は多い。焦れよ、緑谷」

 

「は、はい!」

 

 相澤の言葉に爆豪は俯いて、緑谷は焦燥感に駆られながらも返事をする。

 他の生徒達にも小言を言いたい様子だったが、本人が一番理解出来てるだろう。そんな生徒は睨みつけるだけで済ませ、本題を切り出した。

 

「急で悪いが、今日は君らに学級委員長を決めてもらう」

 

「「「学校っぽいの来たー!!」」」

 

 また入学初日のように臨時テストでもやるのかと、身体を強張らせたクラスメイトがホッとしながら声を上げる。そして、すぐに皆が一斉に手を挙げて立候補し始めた。集団を導く学級委員長という役職はトップヒーローの素地を鍛える事が出来る為、ヒーロー科の生徒からは人気が高いのだ。

 

「黄彩は、……うん。やりたくないよな。知ってた」

 

「ん、ボク普通に忙しいし、授業サボる奴にはやって欲しくないでしょ」

 

 黄彩がそうならウチも……、と、響香が手をおろそうとすると――

 

「静粛にしたまえ!」

 

 飯田の声が轟いた。

 彼曰く、学級委員長とは多を牽引する責任重大な仕事であり、周囲からの信頼があってこそ務まる聖務だと。

 

「民主主義に則り、真のリーダーを皆で決めるというのならこれは投票で決めるべき議案!」

 

「お前も挙げてんじゃねーか! 何故発案した!?」

 

 選挙を提案しながらも堂々挙手していた飯田にツッコミが入る。

 相澤の「時間内に決まればなんでもいい」という発言もあり、学級委員長を決める投票が行われた。

 

 紆余曲折を省略して結果を見れば、緑谷が三票を獲得し委員長に、八百万が二票を獲得して副委員長になった。

 その紆余曲折に辞退したはずの黄彩が五票集めて委員長になりかけるという事態が起きたりしていたが、黄彩が拒否したことで無効票だ。

 

 ホームルームが終わればすぐに黄彩は教室を飛び出し、午前の普通教科の授業が始まった。

 

 

 

003

 

 

 

 授業が終わり、昼休み。

 美術室に石のベッドを作って寝ていた黄彩は響香に起こされ、学食に連れてこられていた。

 

「……ボクねボクね、食欲と睡眠欲と性欲を同時に満たせないのは人類の欠陥だと思うんだ。人間と同じ哺乳類であるクジラだかイルカだかは脳半分を眠らせることで、実質的に三つを同時に満たせるわけで――

 

「長い、要約」

 

「お腹空いたしムラムラするけど、今はそれ以上に眠い」

 

「ムラムラ言うな、女子いるとこで」

 

「ムグゥ……」

 

 なんだかんだ黄彩は初めての学食。食堂に勤務するランチラッシュにフルーツサンドのフルーツ抜きという注文をした黄彩はただのパンを食べていた。

 

「あれ、黄彩くんそれだけで大丈夫なの?」

 

「あ、酸の人。ボクは身体が小学生のままだからね。少なくても平気なの」

 

「ヘ〜。……あれ、それって若返り的なやつ?」

 

「戻してるわけだし、そう言えないこともないかな」

 

 黄彩の言葉を聞いて、周囲の女子達から「「おおー」」と声が上がる。

 

「若返りができる個性と聞いて!」

 

 突如として現れた、十八禁ヒーロー。ミッドナイト。年齢は相澤より一つ上である。

 

「その人の今より若い状態の全身を見てないと無理だし、麻酔も効かないから死ぬほど痛いよ、おっぱいの人」

 

「そんなっ……。というかおっぱいの人!?」

 

「うわ、オールマイト並に酷い呼び名」

 

「なんていうか黄彩くん、オールマイトと別の意味で無敵だよね」

 

「あんまり聞きたくないけど、その子あの人にどんな恐れ知らずな名前つけたの」

 

「「すじ肉の人」」

 

 響香と芦戸が同時に言って、ミッドナイトは「私の方が、幾らかマシ……?」と首を傾げながら、生徒に混ざって昼食をとり始めた。

 

「君たちの言うところの若返りができるのは、ママと響香くらいかな」

 

「「その話詳しく!!」」

 

「三奈にミッドナイト先生もやめて!?」

 

『セキュリティ3が突破されました。生徒の皆さんは速やかに屋外に避難して下さい』

 

「ん、なんか来た?」

 

 ワイワイと騒ぎながら食べていた頃、突如として校内放送で警報が鳴り響いた。皆々が立ち上がり騒ぎ出し、居合わせたミッドナイトが「落ち着きなさい!」と統制を取ろうとするが、生徒達には届かず、鳴り響く避難指示に従うように走り出す。

 

「ミッドナイト先生! どうしたらっ!」

 

「あーっ、えーと、黄彩くん! こういうの先生としてあんまり良くないんだけど、なんとか出来るよね!?」

 

「んー、出来なくはないけど、ボクがどうする必要もないみたいだよ。侵入したのはただのマスコミで、これからエンジンの人が頑張る」

 

 その場で唯一座ったまま食事を続ける黄彩が言うと、ミッドナイトや近くにいた生徒達は困惑する。

 

「ダイジョーブ!! ただのマスコミです! 何もパニックになる事はありません! 大丈夫!! ここは雄英!! 最高峰の人間に相応しい行動をとりましょう!!」

 

 人混みの中から飛び出した飯田が、出口の上に、非常口のピクトグラムのようなポーズで叫んでいた。

 

 さながら政治家のような叫びはすぐに全体に届き、騒ぎは鎮静化した。

 

「やるわね、彼」

 

「すっごー。あたし、あーゆうの出来そうにないなぁ」

 

「……うん、ウチも」

 

「プロヒーローでも得意不得意はあるわ。適材適所、役割分担はヒーローじゃなくても意識すべきよ」

 

「わー、おっぱいの人が先生してる」

 

「言ってくれるわね、芦戸さん。……授業のとき覚悟しなさい」

 

「ミッドナイト先生それはなんかズルくない!?」

 

 後日、ミッドナイトの授業で芦戸が延々指されるという珍事が起きたとかなんとか。

 

 

 

004

 

 

 

「で、黄彩くん。ここからじゃ外なんて見えないのに、どうして飯田とかマスコミとかわかったの?」

 

 騒ぎが落ち着き、報告のためにミッドナイトがここを離れると、黄彩達は昼食を再開した。

 ふと、芦戸が気になったことを黄彩に尋ねた。

 

「ボクの個性は三次元的に知覚できる空間が効果範囲だから、いつもできるだけ遠くまで見るようにしてるの」

 

「見るって、見えなくない? 方向的に、というか身長的に」

 

「目だけじゃ、まだ二次元だよ。耳と鼻と舌と肌も使ってやっと、三次元。がんばらなくても壁の向こう側くらいは簡単に見える」

 

「それもう個性なんじゃ……」

 

「……昨日峰田が女湯入り放題とか言ってたけど、もしかして入らなくても黄彩なら見える?」

 

「女湯である必要もないけどね。服の先だって見える。じゃないと裸婦像、作れないし」

 

「……響香ちゃん」

 

「……大丈夫。黄彩、峰田好みのエロいやつは描かないし作らないから」

 

「目に見えるものをわざわざ描く必要ないでしょ? 写真じゃあるまいし」

 

「黄彩くん、大丈夫? ちゃんと男の子?」

 

「酸の人は見られたいの? 見られたくないの?」

 

「見られたくないけど、見られてなにも反応されないのもなんか嫌!」

 

「……きょーか、解説」

 

「あ〜、……三奈、自分の裸婦像作って教室に飾って欲しいって」

 

「やめて!?!?」

 

「ちなみに、黄彩の部屋にはウチの裸婦像が置いてある(ウソだけど)」

 

「なんか負けた気が……、しないよ!? 大丈夫? 通報いる?」

 

「きょーかに見せたこと、あったっけ?」

 

「え……」

 

「え……、あるの?」

 

「ん、大事なきょーかの成長記録」

 

「アルバムのノリで裸婦像、さすが芸術家、でいいの?」

 

「パパは彫像家だから。ボクのと一緒にパパが作ってる」

 

「ウチ、黄彩のお父さんにまで見られてるの!?」

 

「大丈夫。範囲は狭いけど人くらい余裕だし、精度はボクとあんま変わらないから」

 

「完成度の心配はしてない!」

 

「えーと、……黄彩くんのお父さんがロリコンじゃなくてよかったね」

 

「……うん」

 

「ボクのパパ、子供は好きなはずだけど」

 

 食べ終えた黄彩がオレンジジュースを飲みながら言うと、二人の表情が固まる。

 

 

「ねえ、あれどっちなの? 無知? 天然?」

 

「……多分、天然。お母さんが、その、黄彩より黄彩っぽい感じだから」

 

「……楽しそうなお家だね!」

 

「きょーか、なんの話?」

 

「黄彩の性欲の話」

 

「ふーん。あ、そろそろ時間だけど、食べないの?」

 

「「あ……」」

 

 

 




 毎度誤字報告ありがとうございます!
 ……ほんと、誰なんでしょうね雄星くん。

 うちの子は有製黄彩くんですよっ!
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