芸術家の英雄教室   作:那由多 ユラ

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第六十三話 千葉県の銀翼襲来と作家不在

001

 

 

 

 ビッグ3(スリー)との対面、戦いから二日がたった今日。放課後のホームルームの後、黄彩と響香は相澤に連れられて、会議室にいた。

 

「あの、それで先生、黄彩にお客さんって、なんなんですか?」

 

「『誰なんですか』と聞かないあたり、なんとなく察してるだろお前」

 

 響香が尋ねると、相澤は呆れた様子で言う。

 

「一昨日、有製に非公式だがインターンの依頼が来た。送り主の名前は、不可思議(ふかしぎ)可思議(かしぎ)

 

 ランチラッシュに作らせたフルーツサンド、フルーツ抜きを食べながら黄彩は相澤に尋ねる。

 

「……ねぇ、いんたーんって何? インターネットの亜種?」

 

「大事な話は聞かなきゃ大事になるからちゃんと聞け。……時間が限られてるから簡潔に説明するが、要は職場体験のすごい版だ」

 

「ふーん。……じゃあ、ボクが不可思議可思議のところに行けばいいの?」

 

「ねえ黄彩、その人、もしかして知り合い?」

 

「そうなのか?」

 

 響香が尋ね、相澤も聞くと、黄彩は「あれ、言ってなかったっけ?」と話す。

 

「えっと、黄金の国(ハートフルピースフル)、神刺裂那のことじゃなくて、神刺裂那の生まれた世界の方の黄金の国(ハートフルピースフル)の、言っちゃえば生みの親、みたいな人」

 

 と言っても、二人とも理解ができていないようなので、黄彩は続ける。

 

「ボクにだって作れるものと作れないものがあるからね。例えば世界をゼロから作るのは難しいから、一部を専門家の人に任せることにしたの。不可思議可思議は小説家だからね」

 

「えっとつまり、その人は世界を作れるような個性を持ってるってこと?」

 

「んーん、作ったのはボク。不可思議可思議には創成期から神刺裂那誕生の百年前までの世界観を小説で書いてもらったの。それを設計図にボクがシミュレーション仮説の応用で作って、それからなんやかんやで黄金の国が生まれたの」

 

「……あー、もうなんでもいいが、とりあえず顔見知りなんだな?」

 

「うにゃ、まあ会ったのは合宿の前だけどね」

 

 黄彩が暗に語っているのは、あったことはあるけどぶっちゃけあんまり覚えてない、ということだ。

 

「その不可思議可思議が、もうすぐここに来る。非公式とはいえ、()()()()()()でインターンの依頼だ。そう無依にも扱えない。しかし得体の知れない相手なのも事実。故のこの場だ」

 

「ヒーロー名義なのに、得体が知れない?」

 

 響香が尋ねれば、相澤は頷く。

 

「ヒーロー名《銀翼》、不可思議可思議はそのサイドキックという立ち位置になってる」

 

 

 

002

 

 

 

「おう! 連れてきてやったぞイレイザー!」

 

 予定から三十分程度遅れて、来客は現れた。

 

「諸事情に非常事態が重なり遅れました。銀翼こと、白神彩織です」

 

 と名乗ったのは、あと数センチで地面に付くんじゃ無いかというほどに長い銀髪の少女。水でも浴びたのか、髪が湿っている。

 

「予定より三十分も遅い上、不可思議可思議本人はいないのか?」

 

 合理主義者である相澤が睨みつけながら銀翼に尋ねると、さも申し訳なさそうに苦笑いしながら答える。

 

「あのバカは昨日、水風呂で執筆を始めるなんてバカをしまして。恥ずかしい話、盛大に風邪を引いたので、名義上雇い主である私が来た次第です。遅れたのは道中にヴィランに襲われ、全身に血を浴びたのでシャワーをお借りしていました」

 

 彼女をここまで案内してきたプレゼント・マイクの方を見れば、本当のことのようで首を縦に振りながら会議室を出ていく。

 

 プレゼント・マイクが扉を閉めたのを確認すると、銀翼は話し始めた。

 

「改めまして、私の名は白神(しらかみ)彩織(いおり)。《チーム》のリーダーをしています。担任のイレイザー・ヘッドに、芸術家のシトリング=ラフィ、その傑作材料のイヤホン=ジャックですね?」

 

「……え、ウチのことまで知ってんの?」

 

「チームの活動拠点である千葉ではオールマイト以上の有名人ですから」

 

「嘘でしょ!?」

 

「もちろん嘘です。お詫びに飴をあげましょう」

 

 銀翼は冗談めかして笑いながら、長い髪の中を漁り、ハッカ飴を取り出して響香に手渡す。

 

「おい。仲良くお喋りするためにここにきた訳じゃ無いだろう。さっさと本題に入れ」

 

 ただでさえ三十分も遅れている。相澤の機嫌はすこぶる悪かった。

 

「……失礼しました。あの愛おしきバカ、可思議がシトリング=ラフィを招こうとしているのは、……もちろん小説の挿絵を書いて欲しいという下心も多分にありますが、それ以外に、それ以上に、私たちがあなたに興味があるからです」

 

 妖艶に微笑む銀翼に、黄彩以上に響香が顔を赤くさせた。

 しかしその直後の言動に、スッと熱は覚める。

 

「まぁ、ぶっちゃけ好奇心ですね。私たちは全員無個性なのに個性的なバカが集まってますから、貴方のような奇人に興味を持つのは当然でしょう? 身の安全は銀翼、不可思議可思議、人類最賢、メイド喫茶のメイド長、名探偵の名の下に保証しますから、どうか一度だけでも、来てもらいたいのです」

 

 色々と無視できない名前が上がってきた。中でもいろんな意味で浮いているのは、やはりメイド喫茶のメイド長だろう。

 

 相澤としては相手が真っ当なヒーローなら任せるつもりだったが、黄彩は首を横に振った。

 

「やだ。きょーかと一緒にいられなくなるのはやだ」

 

 過去、一週間の職場体験の間会えなかっただけで黄彩は相当参っていた。それこそ、出会い頭に抱きつくどころか張り付くほどに。

 

「でしたらイヤホン=ジャックもご一緒に来てください。名目上インターンという形をとってますし、多少特殊ですが時間相応以上の経験はできるでしょう。チーム一同、とまではいきませんが暇人たちで歓迎しますよ」

 

「うにゃ、それならまあ。きょーか、いい?」

 

「そりゃ、願ってもないチャンスだし嬉しいけど、先生、いいんですか?」

 

 話がいい方向に進んできているが、しかし相澤はその橋をしっかりと叩くタイプの人間だ。

 

「そもそも、インターンを実施するのかさえもまだ決まっていない。今年は異例だからな。……仮に実施するとなったら改めて窓口ができるから、そこから二人を指名する、という形であれば可能だ」

 

「つまり、治安を良くすれば実施できる確率は上がるということですね。これは上がるというものです。――私の名前は白神彩織! 九の因果を身に宿し、九の使命を執行します!」

 

 さっきまでの妖艶としたものではなく、顔から光を放ちそうなほどに明るい笑みを浮かべ、銀髪をまるで翼のようにたなびかせながら、銀翼は会議室から飛び出て行った。

 

「お、おいイレイザー、どうした何があったんだ?」

 

 外で待っていたらしいプレゼント・マイクが顔を覗かせて尋ねる。

 

「ヒーロー活動しに行った。悪いやつでは無いと判断するが、一応追いかけて校門まで案内してこい」

 

「いやいや、もうどこ行ったかわかんねぇくらい飛んでったんだが?」

 

「暇なやつ全員駆り出せ! 客人が迷子とか笑えねぇぞ!」

 

 

 

003

 

 

 

 後日譚。

 本当に後日、雄英高校周辺のヴィランがかなりの数減少し、そしてインターンは実施されることとなった。

 

 黄彩と響香には銀翼、白神彩織からの指名が来て、銀翼の属する慈善団体、チームの本拠地のある千葉へと向かうことになった。

 

 




キャラ紹介
銀翼――白神(しらかみ)彩織(いおり) 18歳
無個性

 埼玉県、川越市出身。
 顔面刺青の彼氏がいて、そのヤカラも同じ組織の一員にして一因。

《チーム》とは彩織と、他八人、合わせて九人の組織であり、ヒーロー免許を取得しているのは彩織のみ。
 元々は無個性で学校でハブられている者達が自然に集まった集団だが、気がつけば拠点を千葉県に移しており、千葉の治安を担うほどの強大な組織になっている。
 メンバーの異名はそれぞれ、《銀翼》《神の落書き》《人類最賢》《禁忌》《名探偵》《美少女》《売らない現代文豪》《永久欠番》《メイド喫茶のメイド長》

 他にも異名を持つものはいるが、チームのメンバーとして名乗るのは概ねこれら。
 彩織の場合、他にも接触絶死(アンタッチ・ブル)、人間寸前の銀翼天使、などがある。

 チームは基本的に世界の裏側、いわゆるアンダーグラウンドで活動していたが、彩織がヒーロー免許を取得してからは表でも正式に活動を始める。

 彩織は普通科の高校を卒業すると同時にヒーロー免許を取得した。
 ヒーロー科に進学しなかったのは、無個性であるが故に進路指導から認められなかったから。
 しかし戦闘能力は異名に恥じぬもので、海のないはずの川越ではよく血の海がよく見られたという。

 チームの全員がこうも強いわけではなく、人類最賢、名探偵、美少女なんかは戦闘能力は一般人と大差ない程度。
 不可思議可思議は黄彩と同レベルで、50m走を走りきれるかどうかという程度。


 余談だが、白神彩織は那由多ユラの休載中の小説からの流用キャラ。というかチームのキャラはみんなそうで、他にも神刺裂那、華々花々、転生の魔女、煌綺太陽、などなど、今作はそういうキャラは多い。

 さらに余談だが、キャラの流用は手抜きであると同時に、登場キャラの完成度の向上にも繋がるため、小説書きとしては一石二鳥どころでは無いほどお得な手法。……だという免罪符を掲げながら書いてます。
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