芸術家の英雄教室   作:那由多 ユラ

71 / 87
第六十七話 集合体の退出会議と嵐前静寂

001

 

 

 

 ヒーロー達が作戦を決めていく中で、雄英生への説明は時間の無駄になると判断されて、ビック3とA組五人は追い出されるように部屋を出た。

 

「ケロ、響香ちゃんのインターン先のヒーロー、なんというかすごい人ね」

 

 サー・ナイトアイの部下が八人のためにテーブルと椅子を用意してくれたため、そこに座って近況なんかを話す。

 

「チームっつったら、あれだろ? 無個性なのに超強い傭兵部隊とかなんとかって都市伝説の! ぶっちゃけさ、アレってマジなのか?」

 

 切島が彩織について、響香に尋ねる。他の六人も、一際目立っていた彩織について気になるようで顔を揃って向ける。

 

「いやー、ウチもチームの全員と会ったわけじゃないけど、彩織さんとその恋人のカインって人はマジで強いよ。ビルを蹴りで壊したり、ヴィランをちぎって投げて山にしたり」

 

 響香はこの四日間、彩織とカインの殲滅ツアーに連れ回されていて、その時のことを思い返す。

 

「あのららって子が個性を使うのを嫌がってる感じがしたけど、もしかして個性とかのことが嫌いなんかな……」

 

 麗日が心配そうに言った。

 

「ウチとか黄彩は歓迎してくれたし、別にそんなことはない、……はず。あの子が嫌われてるとか、個性がマジでやばいってことがない限りは」

 

 八橋あられとも、楽羅來ららとも、響香は今日が初対面。聞いていた話では決して不仲ではないはずだが、奇人変人しかいないチームの人間とその関係者なため、どうしても謀りかねる。

 

「それより緑谷さ、アンタマジで大丈夫?」

 

 今回の作戦の第一目標である、壊理の救助、保護。緑谷と通形はその本人と直接出会っておきながらも助けられず、さらにはそれを怒鳴りつけられたりもした。気が滅入るのも仕方がなかった。

 

「…………」

 

 数分、誰も喋らずどん底の空気感になっていると、近くのエレベータが止まりドアが開いた。

 

 降りてきたのは、担任の相澤。

 

「……通夜でもしてんのか」

 

 呆れた表情で、皮肉まじりの言葉。

 

「ケロ、先生」

 

「ああ、学外ではイレイザー・ヘッドで通せ。……いやしかし、今日は君たちのインターン中止を提言するつもりだったんだがなぁ」

 

 表情、態度、ため息。何もかもが、口程にうんざりだと語っていた。

 

 生徒達は「今更なんで!?」と叫ぶ。

 

「ヴィラン連合が関わってくる可能性があると聞かされたろう。そうなれば話は変わってくる。……ただなぁ、緑谷」

 

 名指しされた緑谷は伏せていた顔をあげる。

 

「お前はまだ俺の信頼を取り戻せていないんだよ。ここで止めたところで、結局お前は飛び出してしまうと、俺は確信してしまった。――俺が見ておく。するなら正規の活躍をしよう、わかったか、問題児」

 

 緑谷は若干涙目になりながらも、力強く頷く。

 

 

 相澤は「そういえば、」と響香の方を見た。

 

「問題児といえば、耳郎。有製はどうしてる」

 

「黄彩? それなら、可思議さんの小説の絵描くのに、引き篭もってますけど」

 

「……まあ、戦場に出てこないならそれでいい。今回は大規模で根深い相手だ。流石に、人間国宝に相手させていいヴィランじゃないからな。……できればお前達学生も参加させたくはないんだ。それはビック3、お前達も変わらん。人助けもいいが、絶対死ぬんじゃねえぞ。親御さんに頭を下げるのはもう御免だ」

 

「「「「はい!!」」」」

 

 相澤らしい、どんな時でも生徒は生徒として見ているが故の鼓舞だった。

 

 

 

002

 

 

 

「……どうしてもダメかい」

 

「あったりまえだ。先輩はあんな小物相手に晒していい手札じゃねぇんだ」

 

 場所は、雄英高校の仮眠室。

 平和の象徴二人がテーブルを挟んで腰掛けている。

 

 オールマイトは黄彩の傑作、《生贄》を着てマッスルフォームになっていて、いつでも飛び出せる状態だ。

 対する裂那はいつもと同じ格好で、すぐに動き出す様子は見られない。

 

「心配はいらねぇよ。チームはオレの姉貴、メイド喫茶のメイド長を従えるほどの超人集団だぜ? オレらが出る幕じゃねぇんだよ」

 

「……参考までに聞きたいんだが、君のお姉さんはどれほどの実力者なんだい? 正直、メイド喫茶のメイド長と言われても想像がつかないんだが……」

 

「黄金の国で飲食店やるのは世界の危機に立ち向かうのと同義ってのは、いつか話したか?」

 

「ああ、いつか聞いたよ」

 

「なら話が早い。そこらの喫茶店のアルバイトがクリリンだとしたら、姉貴は魔人ブウだ」

 

「その理屈でいくと、私や君はどれくらいだ?」

 

「んあー、先輩は良くて、……男狼くらいか?」

 

「マニアック!! あれだね? 亀仙人が月を壊したから人間に戻れなくなった彼だね!?」

 

「喧嘩に限れば、オレでせいぜいナムくらいだな」

 

「……えっと、誰だっけ?」

 

「賞金で水買うために天下一武道会に出場した奴だよ。ほら、天空×(ペケ)字拳の」

 

「ごめん、説明されてもピンとこない。さては君相当のファンだな?」

 

「ドラゴンボールはヒーローの義務教育だろうが。先輩テメェ、学生時代何してやがった」

 

「ドラゴンボールを熟読してた人はいなかったと思うぞ!?」

 

「チッ、これだからこの世界のヒーローは。授業にドラゴンボールの科目を増やしたほうがいいんじゃねぇのか?」

 

「相澤君が全力で止めに来るだろうな……」

 

「ああいう脳筋インフレな環境こそ、この世界に欠けてる大事なもんだ。そのうちヒーロー全員がミスターサタンになっちまうぞ」

 

「そう言われると、現状が危うく聞こえてくるよ」

 

 

 

003

 

 

 

 壊理の居場所が完全に明らかになるまでの数日、響香はチームの元で暮らすことになった。

 

「んま、とりあえずおかえりさん。手ぇ洗って飯食え飯!」

 

 会議の後、あられとららはそのまま何処かへと捜査に向かい、彩織と響香は二人で帰ってきた。

 

 他のメンバーは先に夕飯を終えたようで、二人分の焼き魚に白米、煮物、味噌汁が盆に乗せられて出された。

 

「いただきます。……相変わらず、キャラと料理が噛み合ってない」

 

「カインって、モンハンの生焼け肉とかが似合いそうなキャラしてますよね」

 

「彩織はともかく響香、お前まで言うようになったか」

 

 カインは怒っているような口ぶりだが、自分のキャラも理解してるが故にそう強くは言わない。

 

「別に料理は女子がするもの、とは言わないっすけど、なんでカインさんが作ってるんですか」

 

「……いいだろ、別に。うまい飯が食えてハッピー、それでいいじゃねぇか」

 

「フフッ、単にカインの趣味ですよ。料理ではなく家事全般が。料理に掃除に洗濯と、基本的にカインが自発的にやってるんです」

 

「んなわけあるか、消極的だっつの。彩織は料理以外大してできねぇし、他の奴らなんか手伝いすらままならねぇじゃねぇか」

 

「おかげで毎日幸せですよ、カイン」

 

「っせぇ! 黙って食いやがれってんだ」

 

 カインは拗ねた様子で台所に向かい、皿洗いを始めた。

 

「ほら、可愛いでしょう? あれ、私の彼氏なんですよ」

 

「彩織さん、結構うざいキャラしてますよね」

 

「フフ、響香にだって、可愛らしい彼がいるでしょう? どうぞ、存分に惚気てくれていいのですよ?」

 

「いや、別にウチと黄彩、付き合ってるわけじゃないし」

 

「おや。でも別に、告白して了承を得てようやっと恋仲になるというわけでもないでしょう? こんな辺境の地まで一緒に来ているのですから、それはもう付き合ってるも同然だとは思いませんか? カイン」

 

「んなっ!?」

 

「おー、そうだな。とっとと結婚して浮気してぐちゃぐちゃになれ」

 

「仮にも恋人のいる人の言葉じゃない」

 

「はっ、そういうことは恋人作ってから言いやがれ」

 

「カインには美女と美少女に限り浮気を許していますよ」

 

「死にたいなら素直にそういえよな彩織。今ならなるだけ痛ましく殺してやるよ」

 

「おやおや、この私の寛容さに泣いて喜ぶところではありませんか? 彼女である私がハーレムを作って構わないと言っているのですよ?」

 

「望んでねぇことを許されてもウゼェだけだ」

 

「……なんかもう、いろいろすごいっすね二人とも」

 

 恋仲と一言に言ってもいろんな形があるんだなと、響香は魚の骨を退かしながら感心していた。

 

 

 




キャラ紹介
樹生リンゴ 11歳 女。
無個性

 樹生とは、千葉県を中心に地球で起きたあらゆる事象を記録し続ける家系。

 千葉である理由は、千葉を英訳するとサウザンドリーフになるから、というかなり適当な理由。

 裏社会では《禁忌》の異名で恐れられていて、その由来は、樹生の姉弟の近親相姦という禁忌で生まれ、親兄弟、親戚の全てを殺し尽くしたという禁忌を生き、その血肉を食らったという禁忌を食らったというもの。全て実話で、今生存している樹生はりんごのみ。

 食べるものに困って関東を彷徨っていたときに、彩織とカインの地元である埼玉県、川越市で遭遇、なんやかんやあったのち友好を紡ぐ。


 渡我被身子や巻解使駆と同じく、禁忌の名に恥じぬ程度には殺人鬼の気があり、武器には包丁のような大きなナイフの二刀流を好んで使う。
 使駆が轢殺、被身子が刺殺なら、りんごは惨殺。一度殺し始めれば人も動物も植物も建造物も地面も、何もかも見境なく殺戮し尽くす。

 同じ年少組である七七七と共にいることが多く、よく七七七を振り回している。

 最近はオンラインゲームに熱中している。

 
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。