芸術家の英雄教室   作:那由多 ユラ

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芸術家達の戯言教室、八時間目。

001 響香ちゃん、カインくん

 

 

 

「目玉焼き作ってたら二回炎上した……。ウチ、才能ないのかな……」

 

「家庭科の授業でまな板ぶった斬った彩織とか、天井に茹で卵突き刺したオレでも出来てんだから心配いらねぇよ」

 

「……なんか、ちょっとした敗北感」

 

 

 

002 響香ちゃん

 

 

 

 被身子が彩織さんに『千葉の人って個性無しに手足が自在に伸びたり、テレポートしたり出来るのですか?』ってマジで訊いて、彩織さんは『そんな事できる方は滅多に居ませんよ』と即答してた。

 

「……私はあの『滅多に』は彩織さん渾身の冗談だと思ってる」

 

 

 

 

003 彩織ちゃん

 

 

 

 上着の袖を通さずに羽織るだけというスタイルがかわいくて可憐に思えたから最近ずっとそうしてたのですが、敵前で名乗りをあげて大剣を抜いた時から、七七七やりんごちゃんから『大佐』と呼ばれるようになりました。

 

 ……リーダーと大して変わりませんが、可愛くないので微妙にいやです。

 

 

 

004 魔術探偵八ツ星

 

 

 

「先生、さっき除霊の依頼をされた方からクレームが入ったのですが、何かされたんですか?」

 

「除霊? ……嗚呼、その壺を壊さないと死ぬしかないと何度も説明して、最終的に納得したはずなのに、壊したら報酬は払わない、詐欺だ、弁償しろってほざいてた奴の事か。俺の過ちをあえて挙げるなら、生かして帰した事くらいだな」

 

「では、同じ過ちは犯さないようにしないといけませんね」

 

「そうだな。せめて口を封しておくべきだった」

 

 

 

005 可思議ちゃん

 

 

 

 何年か前、チームのリーダーを誰がするかって会議になったんだけど、立候補を見ていくと『この中から死なない毒を選んで飲んでください』みたいな感じで、「もう誰でもいいよ」としか言えなかった。

 

 

 

006 響香ちゃん

 

 

 

 彩織さんはとにかく褒めて伸ばすというか、行きすぎて愛でて伸ばすって感じの指導をしてくれるんだけど、どんなに情けなくても何かしら褒めてくれるから、インターンが楽しくて仕方ない。叱らないって本当に大事だと思う。

 

 ちなみに、最初に個性抜きで戦うとなってウチが一人やっと気絶させた時の褒め言葉は『殴る時の三白眼が最高です』だった。

 

 

 

007 七七七ちゃん

 

 

 

 最近肩こりが酷くてな。そのことを電話でららに愚痴っていたのだが、『シャワーを浴びる前に日本酒を頭からかぶって洗い流してください。粗塩もあったらふりかけるといいでしょう。霊が原因なら、大体それで霊が剥がれ落ちて首回りが軽くなります』と、嫌なアドバイスをもらった。

 まさかと思いつつ、カインに酒を用意させてやってみたら、本当に軽くなりおった……。

 

 

 

008 ららちゃん

 

 

 

『頭から日本酒と塩かぶると憑いてる霊が落ちる』っていう話を聞き、先生に仕組みに聞いてみたら、この方法は『酒と塩で霊を祓う』って訳じゃなく、霊を日本酒と塩でパワーアップした守護霊で殴って落としてるんだそうです。めっちゃ物理ですし、浴場手前の脱衣室に酒瓶が置いてあるのはそういうことでしたか。

 

 

 

009 七七七ちゃん、彩織ちゃん

 

 

 

「……おいリーダーよ。うぬその服、前後逆に来ておらんか?」

 

「着るときにそんな気がしましたけど今そういうのは聞きたくないので、『常に創意工夫を忘れなくてすごいな』とか、『チャレンジ精神旺盛でかっこいい』とか、そういう方向でお願いします」

 

「そういうことは妾ではなくカインに求めるがよい。妾は言いふらして嘲笑うくらいしか出来んよ」

 

 

 

010 カインくん

 

 

 

 ケータイとかの親の連絡先の名前って お父さんお母さんとか、父・母とか、フルネームで入れてるもんだよな。

 彩織はママって入れてるんだが、昔、羽織さんの呼び方を忘れて「ママ」「お母さん」「お袋」「お母様」とかって、片っ端から試してたんだ。そんで羽織さんからは「ママ」が好評で、彩織ももう呼び方を忘れないために「ママ」を採用してるらしい。

 

 羽織さんと電話で話してる彩織と遭遇した響香が、一人でに動く人形見たような目で見てた。

 

 

 

011 七七七ちゃん、ららちゃん

 

 

 

「ファブリーズで除霊が出来るという話と、線香でカビの繁殖が防止できるという話を聞いたのだが、どちらも本当だとしたら幽霊の正体が菌類の可能性が結構あるのではないかと思うのだが……」

 

「線香の香りのファブリーズが欲しいですね」

 

「そういうことでは、ないのではないか?」

 

 

 

012 魔術探偵八ツ星

 

 

 

「あの心霊スポットはヤバい。霊感のある無しに関わらず気軽に行かない方がいい」

 

「え? 先生がそんなに言うほどですか?」

 

「嗚呼、熊が出るんだ」

 

 

 

013 彩織ちゃん、カインくん

 

 

 

「人形とかに話しかけると魂が宿ってしゃべるようになるって話を、ウサギのぬいぐるみに話しかけてる壊理を見て思い出しました」

 

「おいやめろ。ただのホラーじゃねぇか」

 

「確かに日本人形やこけしなら怖いですが、ぬいぐるみなら喋っても可愛いじゃないですか」

 

「あ〜、なんか下品な事ばっかり言うおっさんテディベアが主人公の映画なかったか? あんなになったらどうすんだよ」

 

「……その時は私たちで性教育しましょう」

 

「それはどっちのだ? 壊理か? ぬいぐるみか?」

 

 

 

014 七七七ちゃん

 

 

 

 最近の子どもの中には、魚は切り身の状態で泳いでると本気で思っている子もいるというニュースを見たことあるが、そこらの六歳児よりよっぽど世間知らずな壊理は、魚を陸棲生物だと思っておったし、りんごは竹輪を木に成る果実だと思っておったし、カインは魚の切り身を牛豚の部位だと思っておった。

 

 だから、泳いでると思ってるだけまだマシなのではないか?

 

 

 

015 壊理、生まれて初めて食べた雪見だいふくに衝撃を受け、全ての記憶が書き換えられる。

 

 

 

カイン

「昼飯、なんか食べたいものあるか?」

 

「ゆきみだいふく!」

 

彩織

「私と雪見だいふく、どっちが好きですか?」

 

「ゆきみだいふく!」

 

七七七

「……うぬの名は?」

 

「ゆきみだいふく!」

 

 

 

016 響香ちゃん

 

 

 

 今朝、彩織さんは「さっき行きました」という豪快な嘘でパトロールをさぼろうとした。

 

 

 

017 彩織ちゃん

 

 

 

「響香、カインからメールが来ました。『今日の夕飯は発砲祭』だそうです。今晩の千葉は荒れますよ」

 

 

 

017 彩織ちゃん

 

 

 

 単位の勉強をしているとかで七七七が壊理に「イッポン、ニホン、サンボン……」と順番に数えていました。

 

「ナナホン、ハチホン、キューポン」

 

「九が違うの」

 

「クーポン?」

 

「違う」

 

「ココノポン?」

 

「……リーダーが引き取った理由がわかったわい」

 

 

 この会話の流れを定期的に思い出して萌えています。

 

 

 

018 響香ちゃん

 

 

 

 インターン中に複数の万引き犯を捕まえた。学校で流行ってるのか、『死んで詫びます』とか言うのがいたらしいんだけど、そのたびに彩織さんは、

「それは生きてる価値のある人間が言うことです」

「貴方の死が、なぜ詫びになるのですか?」

「貴方は何回、生き返りましたか?」

 って言って心をへし折ってから警察に渡す。

 

 ……皮肉がキツすぎませんか、彩織さん。

 

 

 

019 七七七ちゃん

 

 

 

 昔流行ってたカードゲームの『人造人間5号』の、【このカードは相手プレイヤーに直接攻撃できる】の直接攻撃の意味がわからなくて、いきなりぶん殴ってきたカインを妾は絶対に許さぬ。

 

 

 

020 カインくん

 

 

 

『指きりげんまん嘘ついたら家事全般任す』の語呂の良さが最高に最高。

 

 

 

021 彩織ちゃん、響香ちゃん

 

 

 

「国語のテストで『( )業( )得』という問題を『(授)業(誰)得』って書いて呼び出しくらうような阿呆が私の姉です」

 

「なんでチームにいないんすか?」

 

 

 

022 壊理ちゃん

 

 

 

 ペットショップの鳥さんのところで、りんごお姉ちゃんがインコに「僕うずら!」って教えてる。

 

 

 

023 カインくん、七七七ちゃん

 

 

 

「『うっせえな! てめぇ、死ね!!』って敬語で何て言うんだ?」

 

「大変賑やかな様子でいらっしゃいますところ誠に恐縮でございますが、御逝去あそばしていただければ幸甚に存じます、かのぅ」

 

 

 

024 彩織ちゃん

 

 

 

 背の高い男性は頭を撫でられ慣れてないから、撫でると懐かれるという話を聞き、さっそくカインで試してみました。

 そしたら何も言わずに私を抱きしめて撫で返して来たので、さすが人類最賢ですね。

 

 

 

025 カインくん

 

 

 

 最近、俺のエロ本がいつの間にかなくなってる。いや、別に隠してるわけでもなく彩織も読むからいいんだが、しばらく暇だしちょっとした悪戯を思いついた。

 部屋の床に無造作に置いたエロ本の中に「アレをするのは結構だけど声抑えろ。聞こえてるぞ」ってメモを挟んでおいたんだ。

 

 で、まぁ風呂から上がったら見事になくなってて、その翌朝。

 朝飯食ってる時に七七七が俺をチラチラ見てた。

 

 ……よりにもよってなんでお前かよ。

 なんとなく響香かりんごあたりだと思ってたスマン。

 

 

 

026 カインくん

 

 

 

 俺の部屋の机に七七七の文字で『すまなかった』と書かれた手紙と、シュークリームとコーヒーが置いてあった。一口食べたら、中のクリームは抜き取られ白米が入っていた。驚いてコーヒーを飲むと、コーヒー風味のめんつゆと醤油の味がした。

 

 オーキードーキー、テメェがその気ならこっちも山葵十割の抹茶アイスを食わせてやろうじゃねぇか。

 

 

 

027 響香ちゃん

 

 

 

 被身子が朝から午後の紅茶を飲んで、お昼に朝マックを食べ始めたあたりで壊理ちゃんの首が折れそうなくらい傾いてる。

 

 お願いだからランチパックを夕飯に食うな。そろそろ壊理ちゃんの首がもげる。

 

 

 

028 壊理ちゃん、七七七ちゃん

 

 

 

「ななみお姉ちゃん、神様っているの?」

 

「うむ、そうだな。壊理も何かを願い、祈ったりするであろう?」

 

「うん」

 

「それを無視するのが神という存在よ」

 

「ふぇっ……」

 

「っだ、だから妾達がいるのだ。だから、神に祈るより先に妾達を頼ってよいのだぞ?」

 

「……うん、ありがとう。お姉ちゃん」

 

 

 

029 彩織ちゃん

 

 

 

 先日から、カインと七七七が陰ながら陰湿な喧嘩をしていたのですが、ついに隠す気配がなくなり、カインが「何度言ったらわかるんだ、テメェの脳は蟹味噌か?」って料理人らしい罵倒をしたのですが、七七七は「カインよ、蟹味噌は蟹の内臓だから脳みそではないぞ」と返していました。

 

 その日の七七七の食事は三食カニパンでしたよ。

 

 

 

030 彩織ちゃん

 

 

 

 所詮この世には、やっていい事と、やってはいけないがやると面白い事しかないんですよ。ならやりたいことをやりたいだけやって死ぬまで笑うのが私たちです。

 

 

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