週刊っ!英雄追跡譚・蒼穹新聞   作:エスカルゴ・スカーレット

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4週目:紅魔館と父上②

「────という訳でっ、次は、パチュリーさんと小悪魔さんにインタビューに来ましたっ!よろしくお願い致します!」

 

「あなたがインタビューに来る事は、事前にレミィから聞いていたわ。故に焦る必要も無し。小悪魔、お茶の準備」

 

「はーいっ!」

 

 パチュリーは読んでいた本をパタンと閉じ、すぐ目の前に下ろす。小悪魔が紅茶を用意するとすぐにそれを手に取りゆっくり喉を潤す。

 今すぐには話し掛けられなさそうと悟った穹も、彼女に倣って紅茶に口を付ける。これまでの人生で飲んだ事が無い、不思議な味だった。普通の茶葉で淹れた紅茶や日本茶とは、何かが違う。

 

「……濃い、ですね」

 

「アッサムティー。深くて甘くて、落ち着くのよ。どう?落ち着いた?」

 

「はい、お陰様で。ありがとうございます」

 

「ずっと高いテンションで話し掛けられちゃ、私の身が持たないからね……」

 

「あッ……申し訳──」

 

「大丈夫。それより本題に入りましょう?あなたは私に何をインタビューしたいのかしら」

 

「ズバリ、父上についてです。小悪魔さんも一緒に答えて下さると嬉しいです」

 

「はわっ、私もですかっ!?面白そうですね!ね、パチュリー様っ!」

 

「アッサムティー、あなたの分も準備しなさい」

 

「……すみません、静かにします……」

 

「よろしい。ほら、隣に座りなさい」

 

「はーいっ!」

 

「「……」」

 

 小悪魔はいつも元気だ。穹は、2人のやりとりを微笑ましい光景だなと目を細めていた。ポンコツな司書と気難しい図書館の主というキャラ付けで一つ短編小説でも書けそうだ。

 

「では早速ですが……パチュリーさんは父上に魔法を教えているそうですね?父上は『魔力が少ない』、

『俺にもっと魔力があれば』……と、魔力の少なさをよく嘆いておられます。パチュリーさんとしては、その問題についてどうお考えでしょうか?」

 

「ふむ……確かに彼は、それをよく嘆いているわね。もう耳にタコができるくらいに聞いたセリフだわ。そうねぇ……何というか……魔力の消費を抑える術は可能な限り教えたし、彼もそれを習得した。だから彼の魔法の消費魔力は本当に最小限なのよ。もう、これ以上の節約は不可能な程にね。となると……まぁ言わなくてもわかると思うけれど、それについては

『仕方ない』……の一言に尽きるわ」

 

「『仕方ない』……ですか」

 

「仕方ないのよ。抑えられる、削れる所はもう全て抑えたし、削りに削ったの。だから以前より使える魔法も増えたし回数も増えたけれど、総量が少ないという根本的な問題は、解決の仕様がない。もう、諦めるしかない段階に踏み込んでいるわ」

 

「そう、なんですか……」

 

「それでも、彼は執念が物凄いからねぇ……。自らの魔力の、キャパシティを増やす魔法を開発したわ。キャパシティを増やすなんて私も思い付かなかったやり方よ。ただ一時的だし、増やした分のキャパを埋める為にまた別の魔法も使わないといけないから最近は別のやり方を模索しているみたいだけれど」

 

「あ、それは聞いた事があります。魔法は……私には使えませんが、やはり学が必要なのですよね。凄い学習意欲の持ち主なのですね、父上は」

 

「探究心……好奇心の塊だからね」

 

「成程……。小悪魔さんは父上と魔法について、どう見ますか?」

 

「エスカルゴさんの考案する魔法は基本的に単純で分かりやすい、真似しやすい内容、術式なんです。なので、私やここあ達も彼と同じ魔法を使えます。魔力の少なさはどうにもならないかもしれません……ですがそんな中で生み出される魔法は、ある意味、かなり洗練されています。そんな彼なら『どうにもならない事』でも、いつかはどうにかしてくれる!そう思ってますっ♪」

 

「いいですね……!」

 

「それにエスカルゴさんはエッチな方向でも幾つか魔法を考案されていまして!」

 

「……んん?」

 

「精神面に作用するタイプ、それと肉体に作用するタイプの2種類があるんですが、特に凄いのは後者なんですよね!意識は平常のまま、身体だけをただ発情させる事ができる!これが本当に効くんです!朝から夜まで、ベッドに篭っちゃいそうな程っ!」

 

「はわわわ……」

 

「ただ前者も捨て難いのです!ま、言ってしまえば普通の魅了とあまり変わりはないのですけどもね、メロメロになっちゃう度合いが倍増なんですよね!何でしたっけ、『大魔術「絶対服従の淫術」』って名前でしたっけ!いやぁもう本当にこれは大魔術と呼んで差し支えないです、元々メロメロなのに更にメロメロになっちゃうぅ〜♡ きゃー♡」

 

「あ、あのー……」

 

「しかもこれの凄いところは性交を通して自分にも返ってきちゃう所なんですよねっ!私やここあ達はパチュリー様から魔力を頂いたり彼とセックスして魔力を摂取して活動していますからね、その魔法を掛けられたら彼の魔力が私の中にも流れてくるワケじゃないですか?でもでも、キスとかキスとかキスとかで魔力に冒されている私の体液を流すと、微かではあるのですけども、彼も自身の魔法に冒されるらしいんですよねっ!でもでもっ、彼自身はそれに気付いてないのが可愛くって可愛くって♡♡」

 

「落ち着け小悪魔っ!」

 

「はぐぅっ!?」

 

 パチュリーは、先程まで読んでいた本で小悪魔の頭を思い切り叩く。小悪魔は反動でテーブルに頭をゴツンとぶつけてしまうが、てへへ、と照れただけというダメージの無さ。穹は思わずメモをとる手を止めてしまった。

 

「ええ〜っと……纏めると……父上は『魔力が少なく長年悩んでいるが独自の魔法を開発したりする事でカバーしている』、そして『遊びにも使っている』という……。そういう事ですね」

 

「はいっ!」

 

「そうね」

 

「ふむ……これはかなり気になっていたので、色々と腑に落ちました。ありがとうございます」

 

 その後も、穹は凡そ30分近く色々と父親についてインタビューをした。用意していた質問も尽きて、その場で思い付いた質問も尽き、問答を終えた。

 それから穹は門の外へ向かって、最後に美鈴への質問を始める。フランドールにインタビューをするというのは事前に断られていたので、今回ばかりは仕方がない、と穹も諦めていた。

 

「さて美鈴さん!最後はあなたですっ!」

 

「おっ、遂に私の出番ですか!何でも答えますよ!ささ、どんな質問でもどーぞっ!」

 

「では早速!ズバリ、父上の格闘センスはどうなんでしょうか!?」

 

「ズバリ答えます!イマイチ!!」

 

「イマイチですか!?」

 

「我流との事ですから強くは言えませんけどね……!ですがほんの少しずつ成長されてるとは思います。まだまだ私には遠く及ばないですがねっ!」

 

「は、はぁ〜……父上、強いと思ってたのですが……そ、そうなんですね……」

 

「単純な喧嘩でしたらそこそこ強いとは思います。ですが格闘技とは相性が悪いのですよね。格闘技、

 即ち効率的に喧嘩する方法……みたいなものですし、仕方ないのです。とはいえね、私以外にでしたら、あのやり方でも勝てると思いますよ?」

 

「美鈴さんの格闘技は、それ程までに……。父上をも圧倒できる程に、洗練されているのですね……いずれ生で見てみたいです……!」

 

「エスカルゴさんの了承さえ頂けたなら、いつでも私達の対決、見せてあげますよ♪」

 

「本当ですかっ!?」

 

「ええ!門番という職業柄、花壇の整備以外は殆ど暇……ゲフンゲフン、時間がそこそこあるので!」

 

「あは、ははは……。そ、それでは後日、私の方から父上にその旨を伝えておきますので、もしも了承を得られた場合は宜しくお願い致します」

 

「……何なら、今から穹ちゃんと試合(しあ)ってみても全然構いませんよ?」

 

「ひっ!?いッ、いえいえいえいえ、私はあくまでインタビューに来ただけですからご勘弁をぉ!!」

 

「あははは、冗談ですって♪」

 

「そ……そう、ですよね……あはは……は……」

 

 しかし穹は、彼女が誘う際に血管が浮き出る程に拳を強く握っていたのを見逃さなかった。きっと、アレは本心だ。

 断ってしまって申し訳ないな、と少し申し訳なく思ってはいたが、穹としても、父を倒す手練と戦うなど、例え手加減されていたとしても絶対無理だと判断したのである。

 

「それじゃ……私はこれで失礼します……!」

 

「あれ、もうお終いですか?エスカルゴさんと私の関係とか色々聞かれると思っていたんですが……」

 

「美鈴さんといえば格闘技!……というイメージが、私の中でずっとグルグルと渦巻いてまして」

 

「あらら……そうなんですねぇ。新聞、楽しみにしてますよ!勿論、エスカルゴさんには秘密にしてますから、安心して下さい!」

 

「ありがとうございますっ!では失礼します!」

 

「はーい!」

 

 こうして元気よく飛び出した穹だったが、すぐに紅魔館に蜻蛉返りする事になる。

 それは、初インタビューの異常な興奮のあまり、当主のレミリアに、長年気になっていたあの疑問をぶつけるのをすっかり忘れていたからである。

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