《ガールズ&パンツァー 》─銀の行く道は奇々怪々─ 作:如月 霊
鈴鹿総合に帰ってきてから二週間がたった日の夜、エリの姿は学園艦の艦橋にあり黄色のカバーがかけられた司令席に座っていた。
「観測班より艦橋!艦前方に低気圧あり、気圧965hPa、風速40!なお勢いを増して接近中!」
観測班からの報告が上がってきた。艦橋の外は雨風が吹き荒れ、波が荒れている。しかし、艦の大きさのせいで艦は全くと言って良いほど揺れていないがもしもがある。
「うん~…総員艦内配備、台風に備えろ。また、学園艦全体に外出禁止の緊急宣言を通達して」
「はい!」
通信班の生徒が内線を使い艦全体に外出禁止の緊急宣言を発令する。そして、その三十分後、学園艦のマストに雷が直撃し轟音が響いた。
「…な…なんだ今の…落雷か!」
「ダメージコントロール!艦内各部の被害知らせ!!」
でかいとは言え精密機器の塊である学園艦に雷が落ちたのだ。並大抵の雷なら問題無い、たださっきの雷は一味も二味も違う強さだ。エリは司令席の横に設置された受話器を掴みそう叫んだ。
『電気・油圧・レーダー、オール・グリーン!!各部問題なく稼働してます!!』
艦橋のスピーカーからそう報告が入った。
「由季奈!レーダーから目を放すなよ!──!?」
通信室の由季奈にそう指示をして受話器を置き、視線を前方の窓に戻すとエリは驚愕した。ついさっきまで降っていた雨が止み、霧が出ていた。
「なんだ?これは…!」
エリは司令席を放り出し、艦橋から飛び出し空を見上げる。
「やっぱり雨が…止んでる…?それにこの霧…」
…さっきまでの台風は一体…
『通信室より艦橋!!レーダーに不明艦!前方、距離5000!レーダーより…学園艦クラスと思われます!!』
そう考えている所にエリが飛び出した艦橋の中から通信室からの報告が聞こえ、再び艦橋に飛び込む。
「友好艦の周波数帯で問い掛けろ!!」
受話器を乱暴に掴み、そう伝える。友好艦に出会えたのか…エリや他の艦橋要員達が双眼鏡を使い前方を睨む。濃い霧に阻まれ良く見えはしないが大きい…学園だとは直ぐ分かった。そして、エリはそれを一目見ただけで何処の学園艦か分かった。
「取舵一杯!!最大船速!!」
そう回避指示を出す。
「理事長。あの学園艦は…」
航海科の生徒がエリに対して問いかけてきた。
「俺の目が正しいなら…『不明艦まで3000!』
あの学園艦は─────黒森峰だ…!」
学園艦の姿が3000まで接近し、漸く分かった。この学園艦は黒森峰女学園の学園艦だ。間違いない。2年間居たのだから間違えはしない。そこで、通信室から通信が入った。
『通信室より艦橋!理事長!不明艦より通信!『此方、黒森峰女学園ナリ。其方ハ何者ナルヤ』以上です!』
エリは受話器を掴み、通信室にそれに対する返信をさせる。
「此方艦橋。由季奈、黒森峰女学園への返信は『此方鈴鹿総合学園ナリ』と返してやれ」
そう言って受話器を置き司令席に座り直し、視線を艦の横を通過しようとしている黒森峰の学園艦に目をやる。
「…また会えたね、黒森峰…」
エリは誰にも聞かれない声でそう呟くのだった。