転移オリ主はエンキの使者のようです 作:アノロン在住の銀騎士
さっき考えました。
それでは拙作を、お楽しみくださいね───
はておかしい。自分はしけたワンルームの自室でブラボ栗本チャレンジをやっていたはず。
辺りを見渡す。
石造りの壁と床。
床からは青い結晶が並び立つ。
どこかの遺跡だろうか。
だけど、空気は美味しい。
天井を見る。
ドーム状の部屋にいる。
窓がある。
窓の外は夜。
星が煌めき、コバルトに光る星が見える。
悲しみがそこから始まって、愛しさがそこに帰りそうな星。
地球である。
地球が、窓の外から見えていた。
「は? ……え、は?」
流水は驚く。
地球の日本に居たはずなのに、気が付いたら日本を越えて地球の外にいたのだから。
「え、ここどこ? え? えぇ?」
流水は膝をつく。
異常事態に混乱したのだ。
その時。
声を掛けられた。
「キミは、何者だ?」
声がした方を振り向く。
青く透けた人影。
「アイエエエ、オバケ!」
流水は絶叫した。
「いや、俺はオバケじゃ……いや、オバケといえばオバケなのか……?」
青い影は自身の存在に悩んだ。
「いや、とにかく落ち着いてくれ。そうじゃないと話も出来ない」
「あ、アイエ。ふぅふぅ、はい。はいぃ……」
深呼吸する流水。
「あ、なんとか落ち着きました。空気が美味しいので」
「そうか。空気生成装置は常にクリーンに保ってるからな」
青い影は自慢げだ。
「それで、改めて。キミは何者だ? なぜ突然ここに現れた?」
「俺は……、泉流水といいます。なぜ突然ここに来たのかは……わかりません」
「わからない?」
「一瞬まばたきしたらここにいたのじゃぁ〜!」
混乱のあまりのじゃロリになる流水。
なお流水は真っ当な男性である。
「そ、そうか……」
青い影は引いた。
「うん。……じゃあここがどこかはわからないのだな?」
「わからないのじゃぁ〜! なんで地球が見えるんじゃぁ〜!」
「うん、落ち着いてくれ。その話し方はなんか、合わない」
流水は再び深呼吸した。
「はふうはふう。すいません混乱してまして」
「あぁ、うん。気持ちはわかる」
青い影は自己紹介する。
「俺は、この施設のオペレーションシステムだ」
「オペレーション、システム? プログラムなんです?」
「ああ、オリジナルエンキの遺志をトレスした、人工知能だ」
「オリジナル、エンキ。……エンキ?」
流水の脳内に、嫌な予感がよぎる。
「あのう、ここってなんの施設なんです?」
「ここは、観測ベース、マルドゥーク。ネットワークジャマー・バラルの発生装置だ」
「……もしかしてここ、月?」
「ああ、そうだ」
流水はその場に脱力し、寝転んだ。
「そっかぁ。月かぁ、バラルかぁ……」
「知っているのか?」
「知ってます……、知ってますぅ……」
流水は目を覆った。
エンキ。
マルドゥーク。
バラル。
月。
「……どこで、知った?」
青い影、エンキの遺志が訝しげに問う。
ここの存在を知る、前触れなく転移してきた男に。
男は、流水は答えた。
馬鹿げた答えを。
「アニメで」
◆
この世界は戦姫絶唱シンフォギアの世界であった。
どういう話かをざっくり伝えた。
「君の話は、その、信じられないが。だが、その知識。シェム・ハと統一言語の関係を知っていた君の話、信じるしかない」
場所をバラルの中枢、幾何学模様の球体の浮かぶ部屋に移して、エンキの遺志に知り得る知識を教えた流水。
「それに……フィーネの事も知っていた」
「やはり、恋しいですか」
エンキの遺志は静かに頷いた。
エンキとフィーネは想い合っていた。
エンキの遺志を継ぐ青い影もまた、フィーネを想っていたのだ。
「確かに俺は、オリジナルエンキとは違う。だが、この俺の心の内にあるフィーネへの想いは本物だ」
「……フィーネは貴方の為にこの遺跡を壊そうとしていますよ」
その言葉に黙り込むエンキ。
「どうしました?」
「……止めたい、のだが。俺には彼女に想いを伝える手段がないのだ」
ネットワークジャマー・バラル。
人類とアヌンナキ、人類同士を繋ぐ統一言語を阻む呪い。
改造執刀医シェム・ハを封じる為に施されたものであり、止めることは出来ないのだ。
ここを離れる事が出来ない。
人類への愛ゆえに想い人に愛を伝えられないとは。
「……ならば俺が伝えに行きますよ」
「君がか? いいのか?」
流水は頷く。
「代わりに衣食住を保証してほしいのじゃ〜!」
またのじゃロリ口調になる流水。
重ねていうが流水は立派な男性である。
「……ま、まあそれぐらいなら」
「やったぜ」
「だが、どうやって地球まで行く?」
「え、テレポートとかそういうのは……」
「無いぞ」
「え?」
「……無い」
流水はこう考えていた。
アヌンナキのなんかスゴイ遺跡ならテレポート装置とかあるじゃろ、と。
だが、無かった。
「その……、セキュリティの観念から直接乗り込まないとここにはたどり着けないんだ」
「そっかぁ」
流水とエンキの遺志は溜息をついた。
「まあ、君を地球に送る方法はなにか考えよう。アヌンナキの遺したデータベースにテレポート技術があるかもしれない」
「その間、どうしましょ」
「……魔術とか興味あるか」
「あります!!」
流水は激しく頷いた。
「そうか、まあ地球では魔術ではなく異端技術と呼ばれてるのだがな。まあ自己防衛が出来る程度に教えてやろう」
「あざまーすだゼ(ミラアルク感)」
そんな訳で。
手遊び程度に魔術もとい異端技術を教えてもらえる事になった。
そして一ヶ月が過ぎて。
「ウオオーッ! 異端技術ビーム!」
流水はビームを出せるようになっていた。
「うん立派なビームだ。これなら君も俺直属の特殊部隊に入れるぞ」
エンキの遺志は深く頷いた。
月での一ヶ月は流水にとって新鮮であった。
異端技術という、まさしく魔術のような理。
それを存分に試せる環境。
エンキの遺志の教え方が上手かったのもあるのかもしれない。
流水はメキメキ異端技術を学んで実践出来るようになっていった。
というか他にやること無かった。
「うん、これなら流水に言伝を頼んでも問題なさそうだ」
「という事は……!」
「ああ、テレポート技術を確立した!」
この一ヶ月。
エンキも流水と遊んでいた訳ではない。
オペレーションシステムである事を利用して、24時間フルに使いアヌンナキのデータベースを漁って使えそうな技術をピックアップしたのだ。
「やりますねぇ!」
「だが一つ問題がある」
エンキの遺志は深刻そうな表情。
「どうしました?」
「流水は、突然ここに現れた、と言っていたな」
「そうですね、原因不明ですけれど」
「ああ、俺も気になったから調べてみたんだ」
エンキの遺志が右手の手のひらを出す。
その上に、地球の縮小ホログラム出現。
世界中に光る点がある。
その数は100を有に越えている。
特に多いのは、日本だ。
「これは?」
「過去二十年で、突如人がこの世界に現れた地点だ。君と同じように、な」
「なんと!」
流水以外にも転移してきた者はいたのだ。
それも、数え切れぬほど。
「そして、これを見てくれ」
ホログラム地球が消えて、代わりに映像データ出現。
そこには、骨から削り出したような槍を振り回す獣の如き男。
映像が切り替わる。
光り輝く剣を振るう少女。
映像が切り替わる。
炎の鞭を振り回す妙齢の女性。
「これは?」
「つい先日、フィーネの居る特異災害対策機動部二課、という組織で撮られた映像データだ」
「二課にハッキングしたんか」
「バレてないからセーフだ。そしてな、この映像に映る者たちは皆、この世界に突如現れた者たちだ」
「なんじゃとぉ!?」
「彼らは聖遺物を用いて好き放題やっているようだ」
骨の槍を振るう男が、シンフォギアを纏う天羽奏と戦闘状態になる。
槍と槍がぶつかり合い火花を散らす。
映像が切り替わる。
光り輝く剣を持つ少女が、シンフォギアを纏う風鳴翼と戦闘状態になる。
翼の影縫いを地面を爆発させる事で回避する少女。
映像が切り替わる。
炎の鞭を振り回す妙齢の女性が、風鳴弦十郎と戦闘状態になる。
鞭と拳がぶつかり合う。
映像が切り替わる。
「転移してきた者は、二課と敵対してるんですね」
「ああ。……だから、二課に潜伏しているフィーネも君の事も信用しないかもしれない。いや、そもそも地球のニホンは現在危険地帯だ。毎日このような戦闘が起こっている」
エンキの遺志は危惧していた。
流水が他の転移者に目をつけられるのではないかと。
地球で殺されてしまうのではないかと。
孤独に過ごしてきた5000年の中で現れた友人を亡くしてしまうのではないかと。
だが、流水の意思は変わらなかった。
「大丈夫ですって。エンキから教えてもらった異端技術もあるし。フィーネを説得した後は匿ってもらうし」
「……そうか。わかった」
エンキは指を鳴らす。
映像データは消えて、代わりに青いペンダントが現れる。
青色の、細長い結晶体。
「これが、テレポートクリスタル。座標はここと、ニホンのリディアン音楽院近くのビルの屋上を設定している」
「ありがとうございます」
「何度でも使えるから、いざとなったら帰ってくるんだ、いいね」
「はいッ!」
流水はテレポートクリスタルを受け取った。
「では行ってきますッ! 吉報お待ち下さいっ!」
流水の姿が消えた。
テレポートしたのだ。
それを見届けたエンキの遺志。
一人、呟いた。
「……頼んだぞ、流水」
◆
東京、日本。
リディアン音楽院近くの廃墟の屋上。
流水がテレポートしてくる。
「空気がおいしくない! 地球なのじゃ!」
空気の美味しさで判断していた。
そしてまた、のじゃロリになっていた。
流水は零細のじゃロリVTuberであった。
だからついついのじゃロリが出てしまうのだった。
魂がのじゃロリの形をしていた。
「おっといかん。急がなくては」
流水はフィーネ、櫻井了子の元に向う。
現在2041年1月6日15時。
裏でネフシュタンの鎧の起動実験が行われる、ツヴァイウィングのライブが行われる日であった。
「ギリッギリじゃないか! 間に合うかこれ!?」
流水は走る。
ライブ会場に。
そこにいるであろう、櫻井了子に会うために。
ライブ会場にたどり着いたのは、16時である。
ライブの開始時間は17時。
ギリギリで間に合った。
問題はフィーネが、会ってくれるかどうかであるが。
そこについて、流水には考えがあった。
ライブ会場の受付で、流水はこうアナウンスしてくれるように頼んだのだ。
「櫻井了子さま。櫻井了子さま。エンキさまがお待ちです。一階受付窓口までお越しください。繰り返します。櫻井了子さま───」
とまあ、エンキの名を借りたのである。
それから5分。
白衣を着た女性が現れる。
ブラウンの髪を巻き上げ、瞳は金色。
櫻井了子、もといフィーネである。
「はじめまして。貴方がエンキの名を騙って私を呼び出したの?」
わあ額に青筋浮かんでる!
流水は内心ビクビクしていた。
「ええ。こうしないと貴女を呼び出すなんて出来ないと思いまして」
平気な風を装い、握手を求める流水。
その手を力強く握るフィーネ。
メキメキと音がした。
「それで、私になんの用かしら?」
「エンキの遺志を伝えに来ました」
「エンキの……遺志?」
「ええ、エンキの名を騙ったとはいえ、俺はエンキと無関係ではありません。エンキの使者なんです」
「……」
続きを話せと目で示すフィーネ。
「エンキは自らの遺志をトレスして、バラルの呪詛の発生装置のオペレーションシステムにしました」
「……」
「エンキが地球上の統一言語を封じたのには、理由があります」
「……」
「月を破壊する、そんな計画は止めていただきたい」
「……」
だんまりだったフィーネが口を開く。
「それが真だという証拠は?」
「ありません。……が」
流水はテレポートクリスタルを出す。
「これは、バラルの中枢、エンキの遺志のいる場所に通じています」
「……これはッ」
テレポートクリスタルを一目見たフィーネが慄く。
そこに使われた技術は、確かにアヌンナキのものだと。
「貴女が望むなら、俺はいつでも貴女を月に招き入れます。俺が説明するより、エンキの遺志から直接話を聞いた方がいいでしょう」
流水は言葉を続けた。
「ただ、一つだけ言わせてください。エンキは最期の最期まで、人類を、貴女を愛していたのです」
「……」
「だから、バラルを敷き続けているのです」
フィーネは目を閉じる。
そして、深く息をついた。
「わかったわ。今日のライブが終わったら、連れて行ってちょうだい」
「……! わかりました!」
「ライブが終わるまでは、どこか控室を使わせてもらいましょう」
ライブが終わるまで、すなわち今日のライブで事は起こさないということ。
ネフシュタンの鎧を奪うために行動しないということだ。
流水は間に合ったのだ。
「ありがとうございます。信じてくれて」
「……嘘だったら、承知しないから」
フィーネはそう言って、流水に控室を案内する。
「ここで待っててちょうだい。そうね……、夜七時には迎えに来れるわ」
「わかりました。待ってますからね!」
「そっちこそ、逃げないでちょうだいよ」
そう言って、フィーネは仕事に戻った。
流水は深く溜息を吐く。
「プレッシャーやばぁ。死ぬかと思ったよ……」
◆
「フィーネに転移者が接触」
「誰だ?」
「データなし。だけど、フィーネは予定を変更して、ネフシュタンの鎧を奪わないみたい」
「なんだと?」
「それではシナリオはどうなる?」
「大きな変更を強いられる」
「どうする?」
「我らで起こすしかあるまい、惨劇を」
「……致し方なし、か」
「全てはシナリオ通りにするため」
「仕方ないな」
「仕方ないから、私達で殺そう」
「一万人と、天羽奏を」
○泉 流水
いずみ るみ。この作品の主人公。韻を踏んでる名前なので、作者的にいい名前をつけたとほくそ笑んでいる。
零細のじゃロリVTuber『野邪狐 野干(のじゃきつね やかん)』の中の人。声を作らないオス声美少女としてコアな人気がある。儲けは少ないがやってて楽しい。魂がのじゃロリになりつつある。
○ブラボ
Bloodborne。フロムの送り出す獣をハントするゲーム。獣だけじゃなくて血に酔った狩人とか宇宙から来たナメクジも狩る。
一番の特徴は『仕掛け武器』と呼ばれる武器たち。変形前はノコギリで、変形後はナタになるなど個性的な武器を扱って獣を狩るのだ。変形させる度にガションガションして脳汁がドパドパ出る。
難しいけど楽しいよ。みんなもおいでよヤーナムの街!
○栗本チャレンジ
ある偉大なる上位者(ホラ吹き)栗本の軌跡を辿る巡礼。
Bloodborne開始時から最初のボス撃破までの時間を計測するRTAの一種。
一番の特徴は上記の仕掛け武器を貰わずに、素手で倒すこと。
上位者栗本が武器貰わないまま最初のボスに突撃して勝ったから、それを皆コケにしてゲフンゲフン、それに倣ってチャレンジするようになった。
ニコニコに詳しいやり方動画が挙げられてるけど、そんなん見るより最初に普通にプレイした方が百万倍楽しい。