転移オリ主はエンキの使者のようです   作:アノロン在住の銀騎士

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新しい小説を書くときは筆が止まらない。
執筆者あるあるだと思います。
そんな訳で第2話、どうぞドスエ。


第2話 ただの通りすがりののじゃロリVTuberなのじゃ

流水は控室でソワソワした。

時刻は17時。

ライブはすでに始まっており、ツヴァイウィングによる逆光のフリューゲルが聞こえてきていた。

 

「生フリューゲルはええのぅ。魂が若返るのじゃ」

 

と、御年18歳の流水がしみじみと言う。

中の人的に水樹奈々と高山みなみのデュエットである。

マーケティング的にも大正解である。

それに、翼さんと奏さんは美少女である。

そら大人気アイドルになるのじゃ、と流水は深く頷いた。

 

「見たいのぅ、ライブ。こっそり抜け出して……いや、フィーネにバレたら殺されかねんしの……」

 

ライブを見たい流水、しかしフィーネが怖くて行動に移せなかった。

 

「そもそも俺ライブのチケット持っとらんし。チケット持ってないのにライブ見るのはダメじゃろ」

 

常識的に考える流水。

だが待ってほしい。

真に常識的な人間は魂がのじゃロリになったりしない。

 

「フィーネに頼んでライブ見れる位置で待たせてもらえば良かった……」

 

流水は後悔した。

フィーネがネフシュタンの鎧奪取を断念した今、ツヴァイウィングのライブを純粋に楽しめるチャンスであったのだ。

はず、だったのだ。

 

爆発音が響く。

床が、天井が、控室が揺れる。

 

「なんじゃぁ〜!?」

 

思わず机の下に隠れる流水。

揺れが収まる。

遠くから悲鳴が聞こえる。

 

「ライブでなにかあった、のか……。まさかッ!」

 

流水の額に冷や汗が流れる。

 

「フィーネ、俺を信用したのはウソなのか……!」

 

居ても立っても居られず、控室を飛び出す流水。

向かう先はライブ会場。

近づく程に、悲鳴が大きくなる。

そして、ライブ会場にたどり着いた流水が見たのは……。

 

「キャアァァァ!」

「助けてくれぇ!」

「ママァァァ!」

「痛い、痛いよぉ!」

 

地獄絵図。

逃げ惑う人々。

極彩色の災厄ノイズが人々を灰にしていく。

母親を灰に変えられる子ども。

子どもを灰に変えられる母親。

逃げる人々に踏みつけられて骨を砕かれる者も。

地獄である。

その地獄に抗おうと、ツヴァイウィングの二人が装者となってノイズを倒している。

……が、それ以上にノイズが多い。

 

「……ッ、フィーネ!」

 

ノイズが出現していた。

ノイズを召喚出来るのは、フィーネと完全聖遺物ソロモンの杖のみ。

ソロモンの杖はアメリカにある。

ならば、この場にノイズがいるのは。

フィーネが呼び出したからに他ならない。

逃げる人々を助ける為に、手を鉄砲の形にして人差し指から高圧水流を出してノイズを撃破しながら進む流水。

高圧水流は異端技術で出している。

エンキの教えの賜物だ。

 

そうしてノイズを撃破していく流水。

翼と奏がいるので調律機能が働いており、流水の攻撃がノイズに当たるのだ。

 

しかし、流水は気付いた。

ノイズ以外に暴れている者たちが居る。

獣の如き膂力で骨から削り出した槍を振るう男。

男は人々を笑いながら突き殺していく。

流水はその男を知っていた。

エンキが見せてくれた映像、流水以外にこの世界に転生した者たちの中に混じっていた。

その映像では、天羽奏と戦っていた。

二課に仇なす者。

その男は更に、逃げる人々を追い立て、殺そうとする。

 

「止めいッ!」

 

男に向けて人差し指を向ける。

高圧水流射出。

逃げる観客に当たろうとした槍を弾く。

 

「あんだァ、テメェ?」

 

ギロリ、と獣の如き男が睨む。

 

「ただの通りすがりののじゃロリVTuberなのじゃ」

「狂人かよ……、いや」

 

ニヤリと嗤う男。

 

「オメェ、フィーネと話してた奴だな」

「……見とったのか」

「ああ」

 

ニヤニヤ嗤う男。

 

「お前には感謝してるぜ。お前がフィーネを説得するからよぉ、俺たちが代わりにノイズを呼び出して観客惨殺する事になったんだぜェ。ヒヒヒ」

「楽しそうじゃのぉ」

 

フィーネが関わっていない事を内心安堵しながら、男の品性に辟易していた。

殺しを楽しむ、その性癖を。

 

「ヒヒヒ当然だ。フラストレーション溜まってたからよぉ、思う存分、ハンティングを楽しめる」

 

そう言いながら、男は槍を投擲。

目標は逃げる子ども。

流水は高圧水流で槍を弾く。

槍が男の手に戻る。

 

「ゲスが……ッ」

「ゲスで何が悪い。人間なんてみんな似たようなモンだろ。それと」

 

流水の背後に影。

 

「ここに居るのは、俺だけじゃないんだぜ?」

 

影による不意打ちを連続バク転で避ける流水。

 

「今のを躱すか」

 

影が感心するように言う。

影は忍び装束を着た老人。

背中に袋を背負い、両手にクナイを構えている。

忍者である。

 

「バラエティ豊かな襲撃者じゃな!」

「貴様ほどではない」

「まったくだ」

 

自称VTuberの流水に呆れる二人。

その二人と流水が三つ巴となる。

もっとも、流水以外は敵だが。

 

「俺は狗神」

 

獣の如き男が槍を構えながら名乗る。

 

「我はザントマン。転移者が相対したら名乗るが礼儀。お主も名を名乗れぃ!」

 

忍者がクナイを構えて直しながら名乗る。

 

「……俺は泉流水。VTuberとしての名は……」

 

二人に向けてエネルギーチャージ。

 

「野邪狐野干なのじゃ!」

 

流水は己のバーチャル美少女体の名を叫ぶ。

と、同時に魔力を収束したビームを放つ。

高圧水流よりも高威力!

だが狗神とザントマンはビームを躱す。

 

「不意打ちとはな、VTuber!」

「名乗ったからセーフじゃろ! 躱せない方が悪い」

「まったくよな!」

 

躱しながら狗神とザントマンが攻撃を仕掛ける。

狗神は槍を突き出す。狙いは心臓。

ザントマンはクナイを投擲。狙いは目。

息のあった攻撃。

そうそう躱す事は出来ない。

だが。

 

「ヌゥーン!」

 

流水は右手を突き出す。

と、同時に右手から魔法陣展開。

槍とクナイを防御。

魔法陣から発生した力場が、攻撃を弾いたのだ。

 

「器用なやつだ!」

「なら、これはどうだ?」

 

狗神が感心する。

ザントマンは、クナイを投擲した。

逃げ惑う人々に向けて。

 

「外道がッ!」

 

そのクナイを狙い高圧水流射出。

クナイは弾かれる。

が。

 

「隙有りだぜVTuber!」

 

狗神が接近し、槍を突く。

躱せない距離。

防御出来ない距離。

流水は覚悟を決めて、歯を食いしばる。

 

ガキィンと音がして、狗神の槍が弾かれた。

 

「お前はあたしの獲物だぜ、狗神!」

 

狗神の槍を弾いたのは天羽奏だ。

ガングニールを差し込んで弾いたのだ。

 

「……助かった、のじゃ!」

「のじゃ? まあいい。こっちはあたしが相手してやる。お前はノイズを!」

「わかった!」

 

ノイズを倒すために離れようとする流水。

しかしその流水にクナイ攻撃。

ザントマンだ。

 

「逃さんぞ、小僧」

「どけ、老いぼれ!」

 

流水はザントマンに向けて高圧水流連続射出!

その水流を全て躱すザントマン。

 

「わかりやすい攻撃だ。三流だな」

「果たしてそうかな?」

「……なに?」

 

後ろを見るザントマン。

ノイズの群れが灰となって消えるところであった。

 

「貴様など眼中にないのじゃぁ〜!」

 

流水の挑発行為だ。

中指を天高く突き出している。

 

「〜〜〜貴様ァ!」

 

青筋を浮かべたザントマン。

背負った袋を下ろす。

それを見た狗神は、奏との戦闘中にも関わらず慌てだす。

 

「おいザントマン! 止めろ! ここには俺もいるッ!」

「黙りや小僧! 我はキレた!!」

 

ザントマンはそう言うと、袋の中身をばら撒いた。

中身は砂だ。

キラキラとした砂。

その砂があたり一面に広がる。

 

「なん、だ?」

 

流水が怪訝そうにする。

狗神は奏との戦闘を中断し、目を瞑っている。奏から一方的に攻撃を食らっているにも関わらずだ。

見ると、ザントマンもだ。

敵二人が目を瞑っているのだ。

 

「……あ」

 

そして気づいた。

()()

とても、眠い。

ザントマンの砂は、眠気を誘発する聖遺物なのだ。

 

「そうか、ザントマン。どっかで聞いたことあると、おもった、ら」

 

眠気に耐えながら、流水は思い出す。

前世でプレイしたゲーム。

世界各国の神様や悪魔や精霊妖怪などを仲間にするゲーム。

その中に、ザントマンという夜魔がいる。

袋を背負ったドイツの妖精であり、袋の中の砂が目に入ると目を開けていられず遂には寝てしまう。

ザントマン、袋。

全てが目の前の忍者と一致する。

だが、もはや抵抗は出来ず。

流水はその場に倒れてしまう。

 

「クッソ……。ジジイ! 見境なしかよ!」

「うるさい。だが、我の砂のお陰で、天羽奏は無力化出来ただろう」

 

ザントマンが指をさす。

その先には膝をつく奏。

ガングニールを腿に刺し、眠けに耐える。

 

「早く殺せ。お前の獲物だろう?」

「チッ……。後で覚えとけ」

 

狗神が奏に歩み寄る。

槍をくるくる回す。

 

「こんな終わりで申し訳ないがよ、ここでお前を殺さないと上が煩いんだわ」

「……グ、ぅ」

 

奏は抵抗しようとする。

が、手に力が入らず、アームドギアを落とす。

 

「戦士もこうなりゃカタ無しだな。死ぬ前にテメェをブチ犯したかったが、こっちもまだまだノルマがあるんでね」

 

槍を掲げる狗神。

そのまま振り下ろす。

 

「死ねや天羽ッ!」

 

刃が奏の首を斬り落とす。

その、直前。

高圧水流が狗神の腕を貫く。

 

「グァッ!?」

 

槍を離す狗神。

槍は遠心力で飛んでいき、ノイズに当たる。

 

「馬鹿な、テメェ寝たんじゃねぇのか!?」

 

高圧水流の主は流水である。

流水は起き上がりながら、高圧水流を放ったのだ。

 

「ザントマンの砂は目に入ると眠くなる、だったな」

 

流水は涙を流していた。

滂沱の涙。

 

「だから、涙で砂を洗い流した」

「そんなこと……! いや、テメェ水を操れるのか」

 

腕を抑えながら、狗神が看破する。

狗神の指摘は一部正解である。

流水はエンキから魔術めいた異端技術を教わっていた。

その内の一つが、水の操作である。

水は根源的なものだ。

錬金術の四大元素、陰陽道の五行にも入っている。

そして、神話において。

エンキは淡水を司る神性である。

オリジナルエンキもまた、水の操作に長けていたのだ。

 

「奏さん、しっかりするのじゃぁ〜!」

 

流水は奏の目の中を洗い流す。

ザントマンの砂が涙と共に流れていく。

 

「助かった、ありがとう」

「さっき助けてもらったから、おあいこおあいこ」

 

そう言いながら、奏の太腿にも触れる。

セクハラである。

 

「キャッ!」

「こっちも治してやるのじゃぁ〜」

 

奏の可愛らしい悲鳴を無視して異端技術を発動する流水。

緑色の魔法陣が展開され、太腿の刺し傷が治る。

これもエンキから教えてもらった異端技術だ。

エンキは水だけでなく、繁殖と豊饒もまた司る。

繁殖と豊饒、すなわち命の繁栄。

細胞を増殖させ、怪我を治癒する異端技術だ。

 

「あ、ありがとう」

「ええんやで」

「でもいきなり太腿触るのは止めろ」

「ごめんなさい」

 

マジトーンで怒られた流水は、流石に真面目に謝った。

 

「クソッ!」

 

狗神が悔しがる。

形勢逆転されたからである。

さてこのままボコボコにして二課に引き渡そう。

流水はそう考えていたのだが。

 

「きゃあああああ!!」

 

悲鳴!

ノイズと戦い続けた風鳴翼の出した声!

と、同時に翼が吹き飛ばされてくる。

 

「翼ッ!?」

 

奏が駆け寄る。

翼のアームドギアは折られ、全身に傷。

特に右肩を大きく切り裂かれている。

 

「かな、で。あいつ、強いよ。にげ、て」

 

そう告げると翼は気絶した。

 

「翼ッ! しっかりしろ!」

「落ち着いて奏さん! 気絶しただけだよ!」

 

流水はそう声をかけながら翼の傷を治そうとする。

が、その流水に向けて攻撃が放たれる。

形のない圧力。

咄嗟に治療を中断し、魔法陣で防御。

会場の奥から人影が現れる。

それは、色素の薄い髪の少女。

各所にリボンの付いた黒いワンピースを着ている。

そして一番の特徴は。

両腕に夥しく犇めく、無数の眼がついている事。

 

「弱いね」

 

ポツリ、そう少女は言った。

 

「風鳴翼も、狗神も、ザントマンも」

「テメェ……」

「狗神、邪魔だから下がって。ザントマンも」

「……チッ」

「……わかった」

 

不服そうに、少女の後ろに下がる狗神とザントマン。

少女は、こちらを光のない目で見る。

流水を見る。

 

「はじめまして。私は百々目鬼。あなたは?」

 

百々目鬼、少女はそう名乗った。

 

「泉流水。VTuberとしての名は野邪狐野干なのじゃ」

「VTuberなのか……」

 

流水の自己紹介に、突っ込む奏。

 

「まあ、昔の話なのじゃぁ〜」

「……泉、流水」

 

流水の名を呟く百々目鬼。

 

「貴方は、強いかな?」

「さぁ? お嬢さんは?」

「私は強いよ。狗神も、ザントマンもわたしには勝てないし」

「そうか、見逃して♡」

 

流水の懇願を百々目鬼は拒否した。

 

「だめ。天羽奏と観客一万人を殺さないとだから」

「なんで奏さんと一万人殺さないといけないのじゃ?」

「貴方がフィーネを止めたから」

 

と、百々目鬼。

 

「貴方がフィーネを止めなければ、私たちはこんな事をしなくて済んだ」

「殺さなきゃいいんじゃ?」

「だめ。ちゃんと殺さないと、シナリオ通りにならない」

「シナリオ?」

「うん、戦姫絶唱シンフォギアのシナリオ」

 

なんでもないように、百々目鬼は言う。

 

「この世界はアニメの世界なんでしょ? じゃあシナリオ通りにやらないと」

「……この世界は現実だよ?」

 

正気に戻りながら、流水が言う。

しかし、百々目鬼はその言葉を否定した。

 

「ううん。私見たことあるよ、シンフォギア。だからこの世界はアニメの世界なの。ちゃんと、シナリオ通りにやらないと運命が滅茶苦茶になっちゃう」

「そんなこと、ないでしょ。平行世界とかもあるし」

 

シンフォギアのソシャゲーであるXDUには、平行世界を行き来する聖遺物ギャラルホルンが登場する。

シンフォギアの世界は、平行世界が存在するのだ。

だから、この世界をアニメのシナリオ通りに進める必要はない、のだが。

 

「ううん。この世界は基幹世界なんだって」

「基幹世界?」

「うん、大元の世界。あらゆる平行世界の元。その世界が、ちゃんとシナリオ通りに進まないと大変な事になるって、お姉様が言ってた」

「お姉様?」

 

そのお姉様について流水が聞こうとするが。

 

「百々目鬼、それ以上は言ってはならんぞ」

「ん、わかってる」

 

ザントマンが止める。

どうやらお姉様は、彼らにとっての秘中の秘に当たるらしい。

 

「だからね。天羽奏に死んでもらいたいの。観客はもう一万人殺したし」

 

百々目鬼の口から、衝撃的な言葉が紡がれる。

 

「うそ、だろ……ッ」

 

奏の眼が見開かれる。

 

「嘘じゃないよ。ノイズを避難路にも出したから」

 

事も無げに百々目鬼が言う。

小学生か中学生くらいの少女が、大量殺戮をしたと言う。

 

「……きみ」

 

思わず、流水は口を開いていた。

 

「そんなに殺して、平気なの?」

 

その言葉に百々目鬼は答えた。

 

「うん。みんなを守る為の、必要な犠牲なんだって」

 

今日の朝食を答えるように、なんでもないように言う百々目鬼。

 

「……許せねぇ」

 

奏がアームドギアを握る。

 

「許せねぇ! 絶対許さないッ!」

 

そのまま槍を構えて突撃する奏。

 

「ちょうどいいね」

 

百々目鬼が右手のひらを奏に向ける。

手のひらには黒い瞳。

それが、奏を見る。

 

「死んで、天羽奏」

 

百々目鬼がそう言うと、奏は。

ガングニールのシンフォギアは。

弾け飛んだ。

 

 

 




○ツヴァイウィングのライブ
マーケティング的にも大正解。

○ノイズ
先史文明の残した災厄。
ギルガメッシュくんは蔵の管理はちゃんとしよう!

○狗神
骨から削り出したような槍を操る獣の如き男。
獣のごとく粗野であり、残酷。
人殺しを狩りとして楽しむ転移者の一人。

○ザントマン
大きな袋を背負った忍者の老人。転移者の一人。
当初、このキャラクターを出す予定は無かったが、なんか出てきた。やはり忍者か……!
ドイツの妖精ザントマンがモチーフ。

○転移者が相対したら名乗るが礼儀
ニンジャスレイヤーにおけるアイサツ。
創作者的にはキャラクターの名前を即座に読者に認識させることの出来る便利な設定。

○百々目鬼
両腕に夥しく犇めく無数の眼を持つ少女。
転移者の一人。
油断ならぬ実力者であり、狗神やザントマンを弱者呼ばわり出来る。
実際彼女は組織内でかなりの地位に立つ。
わかりやすく言うなら部長クラスの偉さ。
狗神は派遣社員でザントマンが主任クラスである事を考えると、どれほどの偉さかわかるでしょ?
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