リィンカーネーションダービー ‐新人トレーナーがんばる‐ 作:烏賊メンコ
『各ウマ娘、ゲートイン完了。スタートしました』
そんな実況の言葉と共に、大阪杯がスタートした。
『綺麗に揃ったスタートを切りました。真っ先に飛び出したのはやっぱりこのウマ娘。10番ツインターボが一気に前へと駆けていきます。続いて8番セイウンスカイがその背中を追います』
『今年シニア級になったセイウンスカイと、これまでシニア級で走っていたツインターボの新旧逃げウマ娘の対決ですね。ターボエンジンの燃料がどれぐらい積まれているかで勝敗が決まりそうです』
『続いて2番ナイスネイチャ、5番ビワハヤヒデ、6番キングヘイロー、4番ミニキャクタス、7番スペシャルウィークが先行します。1バ身離れて3番リボンマズルカ、11番マチカネタンホイザ。シンガリ付近には9番アンチェンジング、12番ナリタタイシン、1番オイシイパルフェ』
大阪杯の2000メートルはホームストレッチのほぼど真ん中からスタートする。そして200メートルと走らない内に急勾配の坂があり、内回りでコースを1周走って再度坂を駆け上がった先にゴールが待つ。
序盤はまだ良い。でも、1周してから100メートルほどの短さで2メートル弱の勾配がある坂道を駆け上がるのはウマ娘達にとって大きな負担だろう。
『各ウマ娘がホームストレッチの坂路を駆け上がっていきます。先頭は変わらず10番ツインターボ。今日もターボエンジンは絶好調か。坂路を抜けて第1コーナーへと突入していきます』
『いつ見ても良い逃げっぷりですねぇ……大阪杯の2000メートルなら
ツインターボは相変わらずの爆逃げだった。それについていこうとするセイウンスカイすら置き去りにして、どんどん先へと駆けていく。
『先頭の10番ツインターボが第1コーナーを抜けて第2コーナーへ。続いて3バ身離れて8番セイウンスカイが駆けていきます。その後ろは2バ身ほど離れて2番ナイスネイチャ、5番ビワハヤヒデ、6番キングヘイロー、7番スペシャルウィーク、4番ミニキャクタスが集団となって駆けていきます』
『先行組はお互いに牽制しながら走っていますね。スペシャルウィークとミニキャクタスの位置が変わったぐらいですか。それより後ろも……順位は変わりません』
キングは5番手と良い位置につけている。だがすぐ傍にビワハヤヒデとスペシャルウィークがいるため、一瞬たりとも油断はできないだろう。
『軽快に飛ばしているツインターボ、早くも第2コーナーを抜けて向こう正面へと差し掛かります。2番手のセイウンスカイとの間には既に4バ身、いや、5バ身近い差が開いています』
『セイウンスカイも遅くない……というより速い方だと思うんですけどね。つまりそれだけツインターボは全力で逃げているわけです。いえ、それがいつも通りの走りなんですが』
俺は向こう正面、先頭を駆けるツインターボを見る。後のことなど知らないと言わんばかりに一心不乱に逃げていくツインターボの姿に、俺は思わず苦笑してしまった。
(良い根性……いや、
レース中にもかかわらず、俺はそんなことを考えてしまった。
スタミナの配分を考えず、逃げられる限り逃げ続ける。それは言葉にすれば簡単だが、いざ実践するとなると非常に難しいだろう。
逃げウマ娘の大体は正確にラップタイムを刻みながら逃げ続けるものだが、ツインターボの場合スタートからゴールまで、あるいはスタートから力尽きるまでラップタイムなど知ったことかと言わんばかりに逃げていく。
余力を残さず、全身全霊でひたすら逃げていくその姿は真似できるものではない。ツインターボの場合、それ以外の走り方ができないのかもしれないが、どんなレース、どんな相手だろうと自身のスタイルを貫き通すその姿勢は見る者に不思議と感動を与える。
だからこそ、観客だけでなく実況や解説もどこかワクワクと期待感を持つのだろう。
そんな強いウマ娘が――いや、強いウマ娘達が今日のキングの相手なのだ。
『先頭は変わらずツインターボです。もうじき残り1000メートルを通過します。後続を置き去りにして独走状態。今日もターボエンジンは絶好調のようです』
『でも絶好調のエンジンがいきなりエンストしますからね。どこまでもつのか……』
まだ中盤ということもあり、実況も解説も先頭を走るツインターボに注目している。観客の視線もほとんどがツインターボを追っているようだ。
『先頭のツインターボ、1000メートルを通過しました。2番手のセイウンスカイとの距離は6バ身近く開いています』
『1000メートルの通過タイムは……58秒2とかなりのハイペースです。残り1000メートルもつのかが……ん?』
だが、残り1000メートルの時点で動いたウマ娘がいた。それは俺としても予想外の……というか多分、どんな形であれ事前に予想したのは
『おっと、ここで動いたのはシンガリを走っていた1番オイシイパルフェです。徐々にスピードを上げているように見えますが……』
『残り半分の時点で勝負をかけにきたのでしょうか? 1000メートルのロングスパートとなると、スタミナ自慢のウマ娘でもかなり厳しい……いえ、不可能だと思うのですが……』
遠目にもシンガリを走っていたオイシイパルフェが加速し始めているのを見て、俺は思わず隣のウララを見る。しかしウララは俺の視線に気付くとにぱっと笑い、首を傾げるだけだ。多分、さっき自分が言ったことを覚えてない。
(1000メートルのロングスパート? いや、いくらなんでも無理だろ……ライスでさえ1000メートルは無理だ)
まさか、ツインターボみたいに後先考えずに速度を上げたわけじゃないだろうな。たしかにこれまでのオイシイパルフェの戦績を見る限り、大体のレースで最後尾を走っている。
得意な戦法が追い込みなのに追い込まないウマ娘として一部コアなウマ娘ファンがいるが……早い段階で勝負を仕掛け、前に出るつもりだろうか。
GⅠレースに出てきている以上、オイシイパルフェも並のウマ娘ではない。もしかするとスタミナを徹底的に鍛え、1000メートルのロングスパートを実現させるというのか。
(そんなことが出来そうな追い込みウマ娘なんて、ゴルシちゃんぐらいしか知らないぞ……いや、ゴルシちゃんでさえ1000メートルは無理だ。ゴルシちゃんならやりかねない気もするけど……)
俺が知るウマ娘の中でも、1000メートルのロングスパートをかましそうな追い込みウマ娘はゴルシちゃんぐらいしか思い浮かばない。いやうん、本当、あの子でも無理だとは思うけど、やっちゃいそうな気もちょっとだけする。
『シンガリから一気にオイシイパルフェが上がっていきます。5人、6人、7人……向こう正面から第3コーナーへと向かいつつ、どんどん前方のウマ娘をかわしていきます』
『向こう正面の終盤から緩い下り坂になっていますし、加速するには打ってつけなのかもしれませんが……その代わり、コーナーを曲がり切れるかが問題ですよ』
加速して追い込みの位置から一気に先行しているウマ娘達のところまで上がっていくオイシイパルフェ。外から回り込むようにしてかわしていくが、かわされた方はギョッとした顔でオイシイパルフェを見ている。
『先頭のツインターボが第3コーナーの半ばを過ぎ、残り800の標識を通過しました。そしてまさかのロングスパート、後方から一気に上がってきたオイシイパルフェは現在3番手。セイウンスカイのすぐ後ろまでつけています』
向こう正面から第3コーナーに移ったことで、各ウマ娘の表情もしっかりと見えてくる。オイシイパルフェは……表情を見る限り、既に限界が近いだろう。大量の汗を流しながら、呼吸を乱しながら、それでも懸命に少しでも前に行こうと走り続けている。
(あれは……もたんぞ。どう見ても途中でスタミナが尽きる……いや、
オイシイパルフェが何を思って無茶なロングスパートを仕掛けたのかはわからない。レースに出ている他のウマ娘だけでなく、観客含めてこの場の全員の度肝を抜いたといっても良いかもしれないが、その速度はロングスパートという点を差し引いても優れているわけではない。
だがそれでも、他に勝ち目がないと言わんばかりに必死に走るその姿には目を惹かれるものがある。
ロングスパートをかけてもトップスピードで劣るから早々に勝負をしかける。オイシイパルフェがやっているのは言葉にすればそれだけだが、あの子は案外ツインターボと同類のウマ娘なのかもしれん。
ただ、オイシイパルフェにとって誤算があるとすれば。
(勝算があって、最後に
第4コーナーへと突入し、残り600の標識を通過した。オイシイパルフェがロングスパートをかけて既に400メートル走っているが、その表情には激しい焦りの色が浮かんでいる。
いくら2000メートルとはいえ、トレーニングと違って実際にライバルが傍を走るGⅠレースで、よりにもよって先頭を走る
ライスでさえ、どんなに調子が良い時でもロングスパートは600メートルちょっとが限界だ。無理をすれば残り800メートルの地点からでもいけるかもしれないけど、やれば故障しかねない博打である。
オイシイパルフェはGⅠレースに何度も出ているウマ娘だけど、ライスほどのスタミナはない。いや、スタミナで絶好調のライスを超える現役ウマ娘なんて、一人もいないのだ。
『ツインターボが逃げていく! 第4コーナー、残り600の標識はとっくに過ぎた! もうじき残り400の標識を通過します! それでも先頭はツインターボ! あっ! そして今、後方から駆け上がってきたオイシイパルフェが2番手へと上がった!』
『まさかのロングスパートですからね……ツインターボはいつも通りとして、オイシイパルフェの走りには驚かされます。でもまあ――レースは過程ではなく結果が全てですけどね』
解説の男性の言葉を肯定するように、ツインターボが残り400メートルの標識を通過した瞬間、後続のウマ娘達が動き始めた。
『ここで動いたのは8番セイウンスカイ! 2番手に上がったオイシイパルフェを追うように加速を始めた! さらにその後ろ! 上がってきたのは2番ナイスネイチャ5番ビワハヤヒデ6番キングヘイロー7番スペシャルウィークゥッ!』
『ナイスネイチャは違いますが、黄金世代が一気に動き出しました。いやぁ、ここが勝負時だと判断したんでしょうね。さすがは黄金世代、そしてさすがはナイスネイチャです。あのTMRとバチバチにやり合ってきたのは伊達じゃないですねぇ』
その解説の言葉と、ナイスネイチャの走り。それが火をつけたのか、俺の右隣にいたライスから熱気のようなものが立ち昇った気がした。小さな手をぎゅっと握り締め、キングではなくナイスネイチャをじっと見つめている。
『黄金世代とナイスネイチャに少々遅れて反応したのは3番リボンマズルカと9番アンチェンジング! それに11番マチカネタンホイザも加速し始めている! 4番ミニキャクタスと12番ナリタタイシンはどうだ!? まだ足を溜めるのか!?』
徐々に徐々に、ウマ娘達がホームストレッチに近付いてくる。第4コーナーの向こう側から、ツインターボを先頭にして駆け込んでくる。
『変わらず先頭のツインターボが残り400の標識を通過! 残すは約350メートルの最終直線だ! 後続も上がってきているが2番手のオイシイパルフェとの距離は約6バ身から7バ身!』
『これは……今日は
ツインターボは額から大粒の汗を流しつつ、ツインテールにしているグラデーションがかかったような青髪を後方へ流しつつ、先頭で駆けてくる。表情を見る限り、限界が近い。しかし最後までもつかもしれないという怖さがあった。
キングは……上がってきている。スタミナは十分。前方につけた状態で足を溜めていたため、残り最後の直線で一気に加速できる。
『続々とウマ娘達が最終直線に入ってくるっ! ここで上がってきたのは黄金世代の4人! そしてそれに負けじと走るのがナイスネイチャ! ツインターボは逃げ! オイシイパルフェも必死にロングスパートを維持して』
『あ』
解説の男性が思わず、といった様子で声を漏らした。観客席からも同時に、複数の短い声が上がる。
『の、残り200メートル! 坂を目前にしてとうとう限界が来たかっ!? ターボエンジン逆噴射ぁっ! そしてそれに釣られるようにオイシイパルフェも一気に速度が落ちているっ! パルフェエンジンも逆噴射かっ!?』
『ツインターボはいつものことですが、オイシイパルフェもさすがに1000メートルのロングスパートは無理があったようですね……しかし観客からはオイシイパルフェを応援する声が飛んでいますよ』
解説の男性の言う通り、観客席からは『俺のパルフェちゃんが!?』という悲鳴や『まだだ! まだいける!』という声援が上がっている。
だが、その声援を糧にしても、オイシイパルフェはここから伸びることは不可能だろう。最後の坂路に差し掛かった瞬間、今にも倒れそうなほど一気に減速してしまった。
そしてツインターボもまた、見慣れた逆噴射をかます――が、減速しながら、走るフォームを崩しながらも懸命に坂路を駆け上がっていく。
そんな二人の姿に、観客席からは大歓声が飛ぶ。スタミナが尽きても諦めず、一番最初にゴールを通過するんだと言わんばかりに前へと進んで行く。
『しかしきたっ! きました黄金世代! そしてシニア級を引っ張ってきたのは自分だと言わんばかりにナイスネイチャも競り合っている!』
『足を溜めていましたねぇ……坂路に差し掛かって減速するどころか、一気に加速していますよ』
ツインターボが走るとあって、最後にまとめてぶち抜くのはキング含めて黄金世代全員が考えていたのだろう。そして更に、ツインターボと同じチームであるナイスネイチャはどこでツインターボが力尽きるか大体のところを予想していたに違いない。
(となると、だ)
後続に控えていたマチカネタンホイザもグン、とスピードを増して突っ込んでくる。しかし少々遠い。その後ろではナリタタイシンも加速してシンガリからまとめて追い抜こうとしているが、並の加速では追い抜くどころか引き離されるだろう。
更に、リボンマズルカも差しの位置から加速しているし、シンガリ付近にいたアンチェンジングもナリタタイシンと一緒に前方へと上がってきている。
フルゲート16人のところを、12人で走っている影響か。普段なら意図せず進路を塞がれたり、迂回したりしなければならないところをほとんど気にせず、各ウマ娘がそれぞれ加速して先頭に躍り出ようとしている。
先頭を駆けていたツインターボは逆噴射をして、意表を突いたオイシイパルフェもスタミナが尽きた。キングの足なら余裕で抜き去り、
『オイシイパルフェをかわし、必死に逃げていたツインターボを黄金世代達がかわす! その隣にはナイスネイチャ! ナイスネイチャだ! 負けじと加速して先頭に出ようとしている!』
『ツインターボとセイウンスカイが逃げウマ娘の新旧対決なら、ナイスネイチャとセイウンスカイ以外の黄金世代は先行ウマ娘の新旧対決です! あと僅かな距離しか残っていませんがどちらが勝つのか!?』
坂路を登り切り、残り100メートル。
キングが、ビワハヤヒデが、スペシャルウィークが、セイウンスカイが、ナイスネイチャが。
横一線に並んで駆けていく。
残り僅かな直線。坂路を駆け上がったことで僅かとはいえ減速したため、ここからは加速力とスピードが物を言う。
「いっけええええええええぇぇっ! キングウウウウウウウウゥゥ! 抜け出せええええええええぇぇっ!」
だからこそ俺は叫ぶ。キングに横一線の状態から抜け出せと、勝てと、柵を叩きながら檄を飛ばす。
「あとちょっと! あとちょっとだよキングちゃあああああああんっ!」
「い、いけっ! がんばれっ! キングちゃん!」
ウララもライスも必死に声を張り上げる。しかしそうやって応援するのは俺達だけじゃない。
観客が、各ウマ娘の担当トレーナーが、チームメイトが、それぞれ声を張り上げて1着になれと声援で背中を押す。
『横一線に並んでゴールに突っ込んでくる! ナイスネイチャビワハヤヒデキングヘイロースペシャルウィークセイウンスカイが一歩も譲らず突っ込んでくる! その後方からはナリタタイシン! ナリタタイシンも上がってきた! 更にアンチェンジングとリボンマズルカも突っ込んでくる!』
キングを見詰める俺の視界の端に、ナリタタイシンの姿が映った。これまでのレースとは比較にならない切れ味ある加速。それによって一気に距離を詰めてくる。
だが、足りない。仕掛ける位置が少しばかり遅かった。
――そしてそれは、キングも同様だった。
『ほぼ横並びで5人が駆けて――ビワハヤヒデだ! ビワハヤヒデが僅かに抜け出してゴール! ビワハヤヒデがライバルをねじ伏せたぁっ! 2着は横並びで判別できませんっ!』
最後の最後。ほんの僅かな加速力の差が明暗を分けた。競った状態で、最も加速力のあるビワハヤヒデが抜け出してゴールを切っていた。
(キングは……)
俺が今いる位置からゴールまでは角度があるため、正確なところはわからない。しかし、終盤で抜け出したビワハヤヒデとは対照的に、僅かに遅れたウマ娘もいた。
着順掲示板は……まだ点灯しない。まだ走っているウマ娘がいる。
力尽きたツインターボの背中を追う形でオイシイパルフェが走り、そして今、ツインターボをかわしてゴールへと到達したところだ。
そうしてウマ娘全員がゴールへ到達し、数十秒としない内に着順掲示板が点灯する。
『着順が確定いたしました。1着5番、ビワハヤヒデ。勝ち時計は2分1秒1。2着6番、クビ差でキングヘイロー。3着2番、ハナ差でナイスネイチャ。4着7番、ハナ差でスペシャルウィーク。5着8番、クビ差でセイウンスカイ』
『最後の競り合いは去年の大阪杯を彷彿とさせるものでしたが、ビワハヤヒデに軍配が上がりました。ビワハヤヒデ、初のGⅠ勝利です。そして春のシニア三冠、一つ目の冠をかぶりました』
5着のセイウンスカイのすぐ後ろに、ナリタタイシンやリボンマズルカ、アンチェンジングやマチカネタンホイザ、ミニキャクタスなどが1バ身以内の場所にいた。
そのため、ほんの僅か、何かが違えば上位は入れ替わっていただろう。俺は叩いていた柵を力いっぱい握り締め、大きく息を吸い込んでから吐き出す。
(去年に続いて、今年も大阪杯で負けたか……いや、キングは精一杯走ったし、ビワハヤヒデも強かった……)
俺は歯を噛み締めながら視線を上げ、ゴール先を見る。
そこでは喜ぶというより、どこか呆然とした様子のビワハヤヒデがいた。そんなビワハヤヒデのもとにキングやスペシャルウィーク、セイウンスカイが歩み寄り、悔しそうにしながらもそれぞれビワハヤヒデを祝福しているのが見える。
そうやってビワハヤヒデとキングが並ぶ姿を見て、俺は額に手を当てた。
(体格の差が加速力の差につながった……か? 中距離の中じゃ一番距離が短い大阪杯でキングを勝たせたかったが……)
仕掛ける位置がビワハヤヒデと同じで、最後に僅かな差が出た。あと少し早い段階で仕掛ける余裕があれば、ビワハヤヒデをかわせていたかもしれない。
(
ライスが離脱しているとはいえ、キングを勝たせてやれるトレーニングメニューを組めなかった。いや、あるいはビワハヤヒデがこちらの予想を上回る成長をしていたのか、負けたくない
俺はビワハヤヒデの背中を叩いているキングを眺めながら、強く拳を握り締めるのだった。