リィンカーネーションダービー ‐新人トレーナーがんばる‐   作:烏賊メンコ

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第99話:新人トレーナー、呼び出しを受ける

「何故呼び出しを受けたか、わかっていますね?」

「はい」

 

 その日、俺は朝から理事長室に呼び出され、理事長とたづなさんを前にして姿勢を正していた。

 

 理事長は困惑した顔を、たづなさんは真剣な顔をしている。

 

「では、最初に確認します。チームキタルファに所属している新入生2人が退部を申請し、()()はそれを受理した……これに間違いはありませんね?」

「はい。ありません」

 

 そう、理事長室に呼び出された理由は簡単だ。三週間ほど前にチームキタルファに入部させた新入生2人が、昨日、退部を申し出たからだ。そして俺はそれを受け入れた。だからこそ、この場に呼び出された。

 

 淡々と頷く俺に、たづなさんは少しだけ眉を寄せながら口を開く。

 

「重ねて確認します……今まで一度も満たしたことがないチームの規定人数を満たすために新入生を2人入部させ、その後、追い出すために過度な厳しいトレーニングを課した……そういった事実はありませんね?」

「はい。ありません」

 

 その質問にもまた、俺は淡々と答える。すると、たづなさんは深々とため息を吐いた。

 

()()()()()()()……私も日々の報告書を読んでおおよその事情は察しています。ですが、理事長はトレーナーさん本人から話を聞きたいと考えて呼び出しました。説明をお願いします」

「はい」

 

 たづなさんに促され、俺は口を開く。この三週間で、何を行ったかを説明するために。

 

 

 

 

 

 トレセン学園に入学してくるレベルのウマ娘とはいえ、よっぽど突き抜けた才能の持ち主だったり、元々本格的にトレーニングを積んでいたりするような子でない限り、大体はどんぐりの背比べと言える。

 

 トレーナー指導のもと、メイクデビューまでに可能な限り鍛え、それ以降続いていく数々のレースに備えて更にどれだけ鍛えられるか。それがウマ娘としての一生を左右すると言っても過言ではないだろう。もちろん、怪我をしない範疇で、だ。

 

 そういうわけで俺は、チームに迎え入れた2人の新入生を早速鍛え始めたのである。

 

 当然ではあるけど、いきなりウララ達レベルのトレーニングをやるわけにもいかない。それをやれば数日ともたずに潰れるだろう。それにキングのレースが控えているし、まずは普段通り身体能力の確認から始めて、一週間ほどかけて新入生2人の()()()を探り当てた。

 

 あとは怪我をしないよう注意しつつ、それでいて一日前の自分を越えられるよう、少しずつ少しずつ、負荷を増やして鍛え始めたのだ。

 

 体が出来上がるまでは無茶はできない。そのためある程度完成していたキングを受け入れた直後のように、吐きそうになるほど追い込むこともない。

 

 それでも筋肉痛は日常茶飯事だし、疲労が蓄積しない程度に、それでいてトレーニング直後は足腰立たなくなるぐらいに走らせた。

 

 最初の数日は新入生も笑顔だった。全身の筋肉の確認は嫌がられたため代わりにライスにお願いしたけど、目視でしかチェックできないため安全マージンを大きめに取ったし、怪我をさせるなんてことはなかった。

 

 あとは普段の様子からきっちり限界ギリギリまで追い込んで、今は筋肉痛が酷いだろうけど体が出来上がるまでの辛抱だからと話をして、トレーニングの合間合間に声をかけてコミュニケーションも取った。チーム加入のお祝いに人参ハンバーグを振る舞ったりもした。

 

 短い期間ながらも育成してみた手応えから、メイクデビューまでに取り組んでいくトレーニングメニューも大まかにだが決めた。

 

 当面の目標がメイクデビューになる以上、そこに至るまでどれぐらい鍛える必要があるかを考え、これまでのメイクデビューでのタイムやレース映像から1着を獲るのに必要な運動能力を逆算し、おおよそのトレーニング量を割り出したのである。

 

 メイクデビューまでの予測でしかないものの、向こう3ヶ月弱、トレーニングメニューに沿って取り組めばどれぐらい速くなるか、どれぐらいスタミナが付くかも話をした。そして立てたトレーニングメニューで足りない、あるいはきついようなら、都度修正もして負荷を増減すると。

 

 当面の目標はメイクデビューだが、芝の子は12月に行われるジュニア級のGⅠのどれかに挑ませるつもりだったし、ダートの子はレースの開催日程上、メイクデビューで勝てたらプレオープン戦やオープン戦を走らせつつ、クラシック級になったら開催される各GⅠに挑ませるつもりだった。

 

 チームリギルやチームスピカから強力なライバルが出てくるだろうけど、勝てるよう頑張ろう、と。

 

 俺は間違いなく張り切っていた。ウララ達の育成もこれまで以上に注力しつつも、新しくチームに加入した子達がこれから先、どんなウマ娘に育っていくかとワクワクしていた。

 

 チームメンバーが5人に増えててんてこ舞いになるかと思ったが、既にウララ達の育成ノウハウも揃っている。そのため予想したよりも俺にかかる負担が少ない状態で育成していたし、ウララなんかは初めての()()に大喜びだったのだが……。

 

 あとは簡単な話だ。

 

 肉体的な疲労はまだしも、精神的な疲労が回復しないままに将来の展望を()()()()()()()()()ことで、新入生の2人は己の身を守るために退部を申し出たのだ。

 

 怪我が治ったばかりのライスはともかく、ウララやキングは今でも毎日のように限界ギリギリまで走らせるし、筋肉痛になることも珍しくない。そんな先輩達の姿を見て、そして自分達がこれから進むのがどんな道かを知って、チームキタルファの育成方法ではやっていけないと判断したのだろう。

 

 うちのトレーニングは効率を重視する面が強いけど、効率を重視するってことは短時間でも徹底的に鍛えるってことである。自主トレーニングもできないぐらいにトレーニングで全力を吐き出させるのがうちのスタイルだ。

 

 まあ、なんだ……要は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という話である。

 

 思い返せば、一から育てたウララも最初の頃はここまで徹底的に鍛えていなかった。むしろどうやって育てれば良いのかと試行錯誤の連続で、それでいてウララを飽きさせないよう多様なトレーニングを考案して取り組ませたため、肉体的にも精神的にも追い込むようなことがなかったんだと思う。

 

 しかし今は違う。どうすればウマ娘を鍛えられるか、どうすれば追い込めるかをウララ達の育成を通して学んでいる。そのため新入生の身体能力に合わせつつも、最初から可能な限り鍛えようと意気込んだ結果、新入生の2人にはついていけないと思われてしまった。

 

 あとは……ウララ達と新入生2人に対しての扱いに差があると言われた。付き合いの長さが違うため差があるのは当然だけど、明らかに()()()()じゃない、と。

 

 新入生の様子がおかしいことに気付き、少しトレーニングを減らすか面談した方が良いな、と判断した時には遅かったのだ。

 

 俺は故障しないギリギリで、潰れることなく育てられると思った。しかし、新入生の2人はそうは思わなかった。

 

 限界を探っていた最初の一週間はともかく、その後はフラフラになるまで毎日走らせて()()()()。ろくに信頼関係を築いていない状態で、だ。

 

 ウララは一緒に二人三脚で進んできた。

 

 ライスは元々、自力で菊花賞に勝てるほど自分を追い込める子だった。

 

 キングはウララを通してお互い知り合いだったし、クラシック三冠に挑戦できるぐらい育っていた。

 

 それらがない状態で、最初から全力で取り組んだのが俺だ。新入生の2人はこうも思ったのだろう。入ったばかりでこの調子なら、これからもっと酷いことになるのではないか、と。

 

 そう思われたら、もう俺にできることはなかった。トレーニングメニューの改善を約束したり、ペースを落とすことを伝えたりしたものの、一度疑いを持たれたら簡単には信用されないのである。

 

 そしてトレーナーとウマ娘が担当を決める最初の期日、4月の末日が迫っていた。残り一週間もないが、新入生の2人はうちのチームに留まることよりも、別の担当トレーナーやチームを探すことを選択したのだ。

 

 トレーニングを通して一緒に過ごしていく内に自然と信頼関係も培われるだろうなんて考え、ものの見事に初手から間違えた俺は、こうして理事長とたづなさんに呼び出されて事情の説明をしているわけである。

 

 

 

 

 

 理事長やたづなさんとの面談を終えた俺は、理事長室を後にする。そして自販機でホットのコーヒーを買うと、目についた近くのベンチに腰を下ろして大きなため息を吐いた。カコンッ、と音を立てながら缶コーヒーのプルタブを開け、中身をぐいと飲む。

 

「ふぅ……」

 

 やってしまった、という後悔。調子に乗ると落とし穴にはまるから慎重に、なんて考えていたら既に落とし穴の中だった、みたいな気分だ。

 

 だが、落ち込んでばかりもいられない。キングの春の天皇賞が控えているし、そして何よりも、退部した新入生2人について手を回す必要がある。

 

(あの2人の距離適性と得意な戦法から考えると……引き受けてくれそうな子は……)

 

 退部した2人の育成に向いてそうな後輩の顔を思い浮かべ、ひとまず担当を検討するだけでも頼んでみようと思う。3週間ほどの付き合いだったが、担当トレーナーが見つかったなら調べたデータやトレーニング内容をまとめた資料を渡す必要もある。

 

 だけど、今はちょっと、座ったベンチから立ち上がる気になれない。両肩や背中に、ずしりと重たい何かが乗っかってしまったような気分だ。

 

 話を聞いた理事長とたづなさんは、別段、俺を責めるようなことはなかった。新入生を受け入れてから毎日業務日報を提出していたし、どんなトレーニングをしていたかも報告している。

 

 事情を説明したところ、チームキタルファの育成方針に合わなかったのだろう、とも言ってくれた。

 

 だけどまあ、責められなかったからそれでいい、とは思えないわけで。

 

 失敗した原因は単純だ。最初から飛ばし過ぎた、これに尽きる。

 

 俺から見て限界を超えないという判断も、それを実際に伝えられたウマ娘にとってはまだ信頼関係が築けていないトレーナーからの言葉なのだ。

 

 徹底的に鍛えてGⅠを目指す、なんて一言でまとめられる目標も、そこに至る過程がいばらの道で。目標を達成できると信じてくれるほどの信頼関係がない状態で、毎日フラフラになるぐらいまで追い込めばどうなるか。

 

 その結果が、これである。

 

(この失敗は、必ず次に活かさないとな……次に……次、か……) 

 

 この経験を活かす機会があるとすれば、それは新しいチームメンバーを迎えた時だろう。担当を決める期間ギリギリまで新しい子を探すか、それともライスやキングのように途中加入する子を受け入れるか、来年度に活かすか。

 

 新入生の性格やスタイルに合った育成を施せなかったことは痛恨の極みだ。ただ、俺の育成スタイルに合った子を探す方がウマ娘も育ちやすいのでは、なんて考えてしまう自分もいる。

 

「先輩達も、こんな風にあれこれやりながらやってきたんだよな……」

「おう、そうだな。色んな問題にぶつかりながらやってきたよ」

 

 だから、ため息混じりに吐き出した言葉に返事があったことに俺は心底驚いた。

 

 飛び跳ねるようにして視線を向けてみると、そこにはチームスピカの先輩が苦笑しながら立っていた。

 

「隣、いいか?」

「……ええ」

 

 先輩は俺の隣に腰を下ろすと、懐から棒付きキャンディーを取り出して咥える。そして俺にも差し出してきたため礼を言って受け取ると、俺も棒付きキャンディーを咥えた。甘くて脳がじんわりとする。

 

「昨日、今年度加入させた新入生のウマ娘2人が退部したんだって? 噂になってたぞ」

「マジっすか……噂になるの早過ぎません?」

 

 なんともストレートに言われたため、俺も素で反応する。もごもごと棒付きキャンディーを口の中で動かしながら、思わず苦笑してしまった。

 

「お前さん、なんだかんだで話題になってるからなぁ。退部した子達にはなんて言われたんだ?」

「うちのチームの育成方針とトレーニングについていけない、だそうです」

「おう……そいつはまた、ずいぶんと()()()()()だな」

 

 そう言って苦笑するスピカの先輩に、俺は怪訝そうな目を向ける。この人が他人の傷口に塩を塗り込みに来るタイプじゃないとは思っているけど、妙な反応だった。

 

「実はな、俺も昔、似たようなことがあって担当してた子が退部したんだ。俺の育成方針についていけないって言われてなぁ」

 

 ゴールドシップ以外、全員辞めちまった、なんて先輩は苦笑しながら言う。

 

「うちのチームはウマ娘の自主性を尊重してるし、自由にやらせてる部分が大きい。でもその自由にやらせるのが駄目だったみたいでな……解散ギリギリまでウマ娘が減ったことがあったんだ」

「先輩でもそんなことが……」

「あった。お前さんが俺をどういう風に見てるかは聞かないが、トレーナーやってると割とよく聞く話だな。おハナさんは……きっちりしてるからそういった話は聞かないけど、チームは基本的に5人以上のウマ娘を同時に育てるわけだし、どうしてもそういった問題は出てくる」

 

 そう言われると、同時に10人近く育てている東条さんが本当にトレーナーとして()()()()()()()ってのが理解できる。

 

「お前さんの場合、ライスシャワーの育成を引き受けて有記念で勝って、いきなりチーム作る羽目になったもんな。トレーナーやってると普通は経験することを飛ばしてるし、逆に普通は経験できないことを色々経験してるし……ちぐはぐだな」

「ちぐはぐですか」

「ああ、ちぐはぐだ。ま、俺も他人のことを偉そうに言えないけどさ」

 

 そう言って笑う先輩だけど、こうして後輩トレーナーの俺を気遣って話をしにきてくれるぐらいにはトレーナーとして、人間として()()()()()()のだろう。

 

 ……本当に、頭が上がらない。

 

「それでも先輩としちゃあ、たまにはこうして後輩に先輩風吹かせるのもいいかなって思ってな」

 

 先輩は照れ臭そうに笑うと、ベンチから立ち上がる。

 

「ま、こういうことは珍しくないって話だ。で、それを()()()()()()()()()()()やっていくしかないってのが俺個人としての意見だ」

「……なるほど……参考になります」

「だといいけどな。そんじゃ、邪魔したな」

 

 軽く手を振り去っていく先輩。その背中を見送った俺は、棒付きキャンディーを舐めながら遠くを見るように目を細めた。

 

 トレーナーをやっているとよくあることだから気にしないようにしよう――なんて割り切ることはできない。ただ、さっきまで重くなっていた両肩が、少しだけ軽くなったような気がした。

 

 

 

 

 

 その後、とりあえず久しぶりにトレーナーの共用スペースに顔を出した俺は、『新入生が退部したって本当か?』なんて心配してくれる同期に頷き、逆に心配ではなく俺を発奮させるためか煽ってくる同期にラリアットをかまし、目当ての後輩を見つけ出すと退部した新入生2人に関して話を振った。

 

「えっ!? 先輩が目を付けたウマ娘、俺がスカウトして良いんですか!? しかも育成し始めた頃の部分だけとはいえ先輩の育成ノウハウ付きで!?」

 

 すると、何とも予想外の言葉が飛んでくる。相性が良さそうだからって理由で頼み込んだ後輩は、こっちが困惑するほどに好感触だった。

 

 一応、相性が良さそうな後輩の中でも育成しているウマ娘の数が少ない奴を2人選んで、退部した2人を一人ずつ引き受けてもらおうと考えていたんだけど……。

 

「俺としては助かるんだけど……本当に大丈夫か?」

 

 資料だけ受け取って、引き受けたウマ娘の育成を放置するような性格じゃないと俺は思っている。しかしあまりにも反応が良すぎて、少し疑う気持ちも湧いてしまった。

 

「先輩には世話になってますし、先輩のチームには合わなくても俺の育成方針には合いそうだって判断したから声をかけたんすよね? それなら引き受けるかどうかは別にしても、顔を合わせて話を聞くぐらい全然平気っす」

「俺もいいですよ。今年は新入生を2人スカウトしようとして1人しか来てくれませんでしたし、ダート走る子ならうちの子が出る芝のレースとかぶらないですし……なによりあのハルウララを育てた先輩のダートの育成ノウハウ、美味しいですし」

 

 うーん……後輩が強かで頼もしい……せっかくだし、引き受けてくれたら渡す資料は予定より多めにしとこう。一度はチームに受け入れた子達だ。可能な限り怪我せず、少しでも強くなってほしい。

 

 そうやって俺が考えていると、後輩2人は声を潜める。

 

「というか先輩、大丈夫っすか? 担当してた子から退部届受け取って窓口に提出したの、昨日っすよね? なんか朝一で先輩が今年度チームに加入させたウマ娘2人に逃げられたって噂になってたんすけど……どこからか拡散されてません?」

「それな。俺も先輩……ああ、先輩の更に上の世代の人達から話を聞きましたよ。なんか、めっちゃ嬉しそうに話してましたけど」

 

 心配そうにそう話す後輩に、俺は苦笑しながら頷く。

 

「知らんのか? 俺はごく一部の先輩を除いて、上の先輩達に思いっきり嫌われてるぞ」

「知ってるっす」

「知ってます」

「あ、そっか……」

 

 そっか、後輩達もそりゃ知ってるか。今でもこっち見ながら何かひそひそ話してるもんな……なんて考えてると、後輩はあっけらかんと笑った。

 

「そりゃ先輩、昨年度GⅠ荒らしまくったし嫌われてもしゃーねーっすよ」

「最初はハルウララのダート路線だけだったんでしょ? ライスシャワーの担当にもなって、チーム作ったら更にキングヘイローまで入って芝でも暴れてるんだからそりゃ嫌われますって」

「お前ら、言葉はストレートにぶつければ良いってもんじゃないからな? さすがに俺も傷つくからな?」

 

 本当、この後輩達を指導してる奴誰だよ。

 

「え? 先輩ってそれぐらいで傷つくようなメンタルしてないっすよね?」

「またまた御冗談を」

 

 本当、この後輩達を指導してる奴誰だよっ!

 

「はぁ……まったく……お前らと話してたらなんか元気出たわ……んじゃ、とりあえず顔を合わせるだけでもしてやってくれ。それで、本当に俺が作った資料を渡すだけで良いのか?」

 

 さすがに金を渡すと大問題だし、何かできることがあればいいんだが……なんて、思っていたら。

 

「大丈夫っす。だって、少しとはいえ先輩の育成ノウハウが手に入るのなら、()()()()()()()()()()()()()()には良い参考になるでしょ?」

「そうですよ。しかも()()()()()()()()()()を引き継いで育てることができるのなら、先輩の手の内が大体わかるでしょうし」

 

 そんなことを笑いながら言われた。どうやら俺が今後トレーナーを続けていけば育てるであろう将来の担当ウマ娘を倒すために、今の内から情報を集めるつもりらしい。

 

 なんとも強かで頼もしい後輩達だ……でも対策が本気過ぎないだろうか? 今からでも別の人にお願いした方が良いんだろうか?

 

 ただまあ、後輩のスカウトを受けてくれるなら、うちのチームを抜けたあの子達もきっと強くなってくれるだろう。そう思えた。

 

「それじゃあ……話をして相性が良さそうだったら、あの2人のことをよろしくお願いします」

 

 そう言って、2人の後輩に向かって俺は深々と頭を下げるのだった。


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