リィンカーネーションダービー ‐新人トレーナーがんばる‐ 作:烏賊メンコ
ウララの帝王賞が終わり、翌日になった。
俺は朝から部室でコーヒーを飲みながらコンビニで買ったスポーツ新聞片手にのんびりとしている……なんていつものルーティンはお預けの状態である。
ウララの帝王賞が終わって一段落したということで、朝から理事長室で人事面談が行われるのだ。
(今回は……まあ、評価が下がっていても仕方ないか)
ウララもキングもGⅠで勝つという好成績を残してくれた。だが、新入生がチームに2人入ったものの1ヶ月と経たない内に退部していなくなった、という明らかな減点ポイントがある。
一度呼び出されて話はしているけど、どんな風に評価されるのか割とドキドキだ。あれ? これって緊張してのドキドキか? 昨晩ウララの1着で興奮して寝付けなかったから体調悪いだけ?
そういやキングが宝塚記念で勝った時も興奮で寝付けなかったなぁ、なんて思いながら理事長室をノックする。そして名乗って中に通されて、理事長とたづなさんと目が合って……なんかギョッとした顔になった。
「これから人事面談なんですが……その、トレーナーさん? 体調が悪いなら明日以降でも良いんですよ?」
「いえ、体調は大丈夫です。ただ、昨日のウララのレースで興奮して寝付けなかっただけでして……」
「確認ッ! 本当に体調不良ではないのか!? たづな! 最近の勤務状況はどうなっている!?」
なんか本気で心配されてるんだけど。朝方確認した時は目の下にちょっと隈があるだけだったから、まあそういう日もあるよねって感じだったんだが……。
「最近の勤務状況は落ち着いたものなんですが……トレーナーさん、実はこっそり残業していませんよね? あるいは自宅に仕事を持ち帰っていませんよね? 怒りませんから素直に話してください」
やばい、全然信じてくれてない……でも昨日はウララのレースがあったから、仕事を持ち帰っていないって部分は疑っていないようだ。たづなさんも理事長も、純粋に心配しているだけっぽい。
「いえ、本当に寝付けなかっただけでして……うちのウララが勝ったこと、それとあの子の成長がそれだけ嬉しかったんですよ」
俺は苦笑しながら言う。これで毎日眠れず不眠症だ、なんて状態なら迷わず病院に行っているだろう。社会人は体が資本で、トレーナー業となると健康であることは最低限の義務みたいなもんだ。というか元気じゃなかったらウララの突撃を耐えきれないし……。
「それならいいのですが……休める時にきちんと休んでくださいね?」
「ええ、もちろんです。ウララ達に心配をかけたくないですからね」
それに、もう少しでトレセン学園も夏休みに突入する。そうなると去年と同様に夏の合宿を行う予定で、俺としてもしっかりと休める機会だったりするのだ。
ただまあ、夏休みに入るまでが大変なんだが。
(ウララの帝王賞も終わったし、インタビューの依頼がなぁ……)
ウララのレースが終わるまでは、と理由を付けて突っぱねていたが、さすがにその理由はもう使えない。あとは精々、評判が
ちなみにそういったインタビューの依頼は俺宛に直接来るわけじゃない。トレセン学園側を最初に通すから評判が悪いところは弾いてくれるし、評判が良くても過去に何か確執があったりすると断ってくれる。
だけどまあ、それだけで引き下がってくれたら苦労はない。トレセン学園周辺で待ち構えて突撃してくるぐらいなら可愛いもので、なんか最近、自宅が特定されたのか近所で張り込まれている気配があるし。
それもインタビューに答えていけば自然と落ち着くとは思うけど……ま、今は目の前の人事面談が最優先だ。
理事長とたづなさんもそう思ったのか、たづなさんが封筒を差し出してくる。中身を確認してみると、いつも通り人事考課表が入っていた。
「まずはトレーナー個人としての評価ですが……」
「満点ッ! 花丸っ!」
おお、理事長が両腕を使って頭の上で輪っかを作ってくれる。外見が外見だけに、なんとも可愛らしい仕草だ。
「キングヘイローさんが春のシニア三冠に挑んで大阪杯で2着、天皇賞春で1着、宝塚記念で1着……それによって全距離でのGⅠを制しましたね。そしてハルウララさんが昨日の帝王賞で1着……JBCスプリント、フェブラリーステークスでの勝利を含めると、トゥインクルシリーズで開催しているダートのGⅠで全距離を制したことになります。よって満点です」
たづなさんがにっこりと微笑みながらそう話す。ああ、そういえばウララもダートのGⅠを全距離制覇したことになるのか……長距離のダートレースまで挑もうにも、トゥインクルシリーズに長距離のGⅠはない。最長で2100メートルのオープン戦があるぐらいだ。
「続いてチームとしての評価ですが……こちらは加点と減点を含めて90点となります」
理由はおわかりですね? と尋ねてくるたづなさんに俺は頷いた。新入生が1ヶ月もたずに辞めました、なんて外聞が悪すぎるし仕方ないわなぁ。
「トレセン学園の上層部でも色々と意見が出たんですが、さすがに満点にするのは他のトレーナーへ示しがつかないと判断しました」
「うちのチームを辞めた子に関しては後輩に苦労をかけていますからね。当然だと思います」
トレセン学園の上層部としても、所属しているトレーナー全体のバランスを取る必要があるだろう。俺としてもあの2人が辞めてしまったことに関しては対応が悪かったと思っているため、当然のこととして受け止める。
ちなみに新入生2人は6月後半に行われたメイクデビューに出走し、両方とも1着を獲っていた。後輩達との関係も良好らしく、これからもどんどん成長していくだろう。
余談だが後輩達に2人の資料を渡したら、中身を確認するなり真顔になって『先輩って頭いいですけど頭おかしいですよね』って同時に言われたから、お前達も同類だぞって笑顔で答えておいた。
俺がそんなことを思い出していると、たづなさんが頬に手を当てながらため息を吐く。
「トレーナーさんはゴネたりしませんねぇ……こちらとしては助かりますけど、賃上げ要求とか部費を上げてほしいとか、そういう要望はありませんか?」
「え? いえ……特にないですねぇ」
たづなさんの言葉に俺は首を傾げる。
チームを設立していないトレーナーだと割り当てられる育成費とかも低くなるし、トレセン学園の施設の利用申請をしても優先度が下がったりするけど、うちのチームは今のところ何の問題もない。
というか、適切な用途なら経費で落としてくれるし、夏の合宿みたいに諸々の費用含めたら100万以上かかるようなことをやっても経費で済むし……賃上げ要求? 基本給もボーナスも3年目の
(要望……要望……うーん……何かあったっけ……)
そういえば部室でウララ達が着替えるスペース、もうちょっとしっかりした
でも部室の広さにも限りがあるし、もっとこじんまりしてるけどしっかり壁やら扉やらを設けるべきか……さすがに部室をどうこうするっていうのなら商店街じゃなくてたづなさんに工事業者を紹介してもらうとか……。
俺が部室から出ていればいいんだけど、毎日トレーニング前とトレーニング後に5分から10分近く出るのは時間と手間がなぁ……。
「部室の内装工事って」
「経費で落ちますけど、何かしますか? 業者もすぐに手配できますよ」
何か言い切るより先に食いつかれた。その反応の速さが怖いですよたづなさん。
「うちの子達が使っているロッカーを囲うようにして壁と扉を設置したいな、なんて思っていまして……前々から思っていたんですが、しっかりとした更衣室がないなぁ、と」
「疑問ッ! そういった要望は早い段階でウマ娘側から出ると思うのだが、出なかったのかっ!?」
もう人事面談って空気じゃなくなったからたづなさんに軽く話を振っていたら、理事長も食いついてきた。
「ウララとライスからは出なかったんですよね。キングも最初の内は色々と言ってくれてたんですけど、いつの間にか誰も気にしなくなってて……」
うーん……そうだったよな。キングもチームに加わったばかりの頃はウララにはしたないって怒ってたし、俺も部室から出ていたんだけど……いつの間にか気にしなくなっていた。
「ぎ、疑問ッ! 本当にウマ娘側から何も言われなかったのかっ!? ……本当に?」
「ええ、本当です」
「か、確認ッ! 実は君は男性ではなく女性である……なんてことはない? 本当に男性?」
「男ですよ。というかその質問、それなりに長く生きてきて初めてされましたよ……えっ? もしかして俺って女性っぽいですか?」
思わず素で尋ねる俺。
俺は俺じゃなくてわたしだった……? いや、自分でも何言ってるかわからんけど、『あなたは男性ですか?』って質問されたら大抵の男性は困惑すると思う。
身長もそれなりにあるし体もそれなりに鍛えてるし、声も低いし喉仏もある。髭も生えるし肩幅も広いし、客観的に見て女性だと疑う要素はないと思うんだけど……やだ、口調とか変えた方がいいのかしら。
いやいや、さすがに俺が男であることは疑いようもないだろう。つまり、理事長としては俺が男なのにウララ達が同じ部屋の中で平然と着替えている点から、平然としているイコール俺がウララ達と同性であるって考えた……のか? さすがに無理がない?
「どのような材質でどのような配置にするか、図面にして申請書と一緒に窓口に提出してくださいね? すぐに業者が取りかかってくれますから」
理事長の困惑を流すようにたづなさんがそう言う。その返答に了解と返事を返し、俺は理事長室を後にするのだった。
さて、そんなこんなでお仕事である。普段ならパソコンとにらめっこしてあーじゃないこーじゃないと資料を作成したり情報をまとめたりするが、今日のお仕事は記者の相手だ。つまりはインタビューである。
とりあえずウマ娘抜き、トレーナー単独でインタビューしたいって記者の相手を日中に、ウララ達込みでインタビューしたいって記者は放課後に相手をする。
これまで何度かインタビューを受けたことがある記者には、お待たせして申し訳ないと謝罪してからだ。
インタビューを依頼してきたのは向こうさんだけど、ウマ娘のレースはいわば客商売である。URAやトレセン学園からも色々言われるし、記者さんとの付き合いもそれなりにこなさなければならない。
時のウマ娘を記事にすれば飛ぶように売れるし、テレビに出せば視聴率も稼げる。だから記者側も基本的に低姿勢というか礼儀を弁えているし、こちらも礼儀を守れば問題はない。
「素――――っ晴らしいですっ! ハルウララさん! ライスシャワーさん! キングヘイローさん! チームキタルファのメンバーのトレーニングを見られるだけで私は――っ!」
うん……問題はないんだ。ただまあ、お互い礼儀を守っていても中にはぶっ飛んだ人もいるわけで……。
とりあえず仲が良い記者……というか、スマホに連絡先が入ってて何かあったら連絡取れるような人のインタビューを受けたけど、乙名史さんは相変わらずだった。
他にもライスが去年の有馬記念で骨折した際、大丈夫なのか心配のメッセージを送ってくれた記者もいるけど、乙名史さんを見て苦笑している。
「乙名史さん、美人なんですけどねぇ……」
「あの人の記事はディープなウマ娘ファンにもウケが良いんですけど、アレさえなければねぇ……」
しみじみと呟く記者さん達の姿に、今にも白目を剥いて気絶しそうな様子の乙名史さんがどんな扱いをされているのかよくわかる。なお、今日はテレビの生放送もないし、退場した際の交代人員は同行していない。つまりストッパー不在ってことだ。
「ところでトレーナーさん、おたくのウマ娘達の今後のレーススケジュールはどんな感じなんです?」
「それを話したらすぐに記事にしちゃうでしょう? まあ、ライスがサマードリームトロフィーに出るってことはお答えしておきますよ」
「いやだなぁ、シニア級を卒業したけどレースを引退していない以上、ドリームシリーズに出るのは確定じゃないですか」
何でもない世間話を装いつつ今後のレーススケジュールを尋ねてくるあたり、それなりに面識があっても記者なんだよなぁ。
あと、俺としては答えても良いけど、たづなさんからは答えるなって指示が出てたりする。今年の春のシニア三冠、有力ウマ娘以外の出走回避が多すぎたためそのあたりを危惧しているらしい。
このままだと強いウマ娘が出てくると聞いたらレースを避けるトレーナーやウマ娘が増えて、実力に合わないレースに出るからだ。
重賞に出てもおかしくない実力があるのに、勝ち目がないからオープン戦に出る……それはトレーナーやウマ娘の判断だからトレセン学園上層部としても文句が言い難いようだが、その結果オープン戦が常にフルゲートどころか抽選でウマ娘が溢れ、ここ最近ずっとレースに出走できていない、なんてウマ娘も多いらしい。
ウマ娘の出走申請とかはトレーナーが行うことだから、重賞に出たいって訴えても勝てないから駄目って理由でオープン戦に出すトレーナーもいるとか。最近は割とその傾向が強まっているらしく、たづなさんも警戒しているようだ。
その影響でオープン戦に出られないから試しにGⅠに出走登録をしてみたら、有力ウマ娘以外出走申請をしてなくて抽選すらなしに出走登録ができてしまった、なんてこともあるようだ。ちなみにさすがにぶっちぎりでシンガリを走るのは無理とのことで、そのパターンだと棄権したらしい。そこまでいくと挑戦じゃなくて無謀だから、とのことだ。
GⅡやGⅢでも似た状態らしく、調整がてら有力ウマ娘が出ようとすると棄権する、あるいは最初から2着狙いで走る、なんて子もいるようだ。
(いや……それは普通にアカンのでは?)
話を聞いてそう思ったが、俺がウララ達を育てているからこそ言えることかもしれない。トレーナーの中には生活のためにトレーナー業をやってるって人もいるし、ウマ娘の中にも自分では強いウマ娘に勝てない、なんて思ってしまう子もいる。
そうである以上、何も言えないんだけど……なんか最近、同期や後輩達のところに移籍を希望するウマ娘が増えているらしい。
クレイちゃんことクレイジーインラブを育てている後輩君のところにも、クラシック級のウマ娘から熱烈なラブコールもとい移籍願いが出ているようだ。どうしましょうって相談を受けたから、それは担当ウマ娘としっかり相談することだよって返しておいた。ついてきていたクレイジーインラブの目が怖かったわけじゃない。本当だ。
強いウマ娘が出るとわかったら回避するウマ娘もいるけど、
で、相性が良さそうな子の移籍を受け入れて、担当ウマ娘の数が5人を超えたからチームを設立するって同期も増えていたりする。その影響で同期の半分はチーム持ちになった。移籍を望むのは上を目指す、ある程度育成が進んでいる子だから、受け入れる側としても相性さえ良ければ問題が少ないのが大きい。
あとは後輩にもチームを設立した子が出ている。大丈夫か心配して話を聞きに行ったら、トレーナー生活1年目でチームを設立した人よりは準備期間があったんで大丈夫だと思いますって返された。優秀な後輩を持って嬉しいものである。
なお、チームキタルファには移籍願いが出ていない。噂ではどうにもやばいところだと思われているようだ。
人体改造でもしてるんじゃないかって噂されてますよ、なんて後輩が教えてくれたけど、ウマ娘の体をレースに適した勝てる体になるよう徹底的に鍛え上げていくんだからある意味人体改造じゃね? って返したら真顔になってそうですねって反応だった。
「しかし、何度かインタビューさせてもらってますけど相変わらず圧巻ですなぁ」
「そうですよねぇ……俺はもう慣れちゃいましたけど、最初はビックリしましたよ」
記者さんの視線の先には、どでかいタイヤを曳いて走るウララ達の姿があった。足腰の強化用のトレーニング機材である。
待てよ? あのタイヤって曳いて走るより両手で押しながら進むともっと効果があるんじゃ……あ、駄目だ。前が見えないから他所のウマ娘を轢いちゃうわ。
「見てくださいあのトモの発達! それに足回りだけでなく上半身も適切に筋肉をつけていますよ! そのバランスと来たらもうっ! もうっ!」
何やら大盛り上がりの乙名史さんから俺も他の記者さんも目を逸らし、インタビューに答えたりウララ達の練習風景を眺めたりする。明日のインタビューはトレセン学園側がギリギリ許可を出すぐらいの記者だからちょっと憂鬱だなぁ、なんて……。
「素晴らしくて私はもうっ! ……ふぅ……ところでトレーナーさん、ここだけの話なんですが」
そっと目を逸らしていたら、急に落ち着いた乙名史さんが俺の傍に寄ってきて声を潜める。この人ウマ娘に勝るとも劣らないほどの美人だし、なんだかんだで仕事もできるんだけど、お近づきになりたいかと問われると答えに窮するな。
でも乙名史さんが真剣な顔をしてるし、何かあったのかと耳を傾ける。
「知り合いの記者からの連絡なんですが、性質の悪いゴシップ記者が嗅ぎ回っているそうです」
「ゴシップ記者、ですか」
「はい。あることないこと言い触らすタイプの記者ですね。それと、もうじき夏の合宿の時期ですよね? いくつかの出版社やテレビ局が、毎年トレセン学園が利用している合宿地に押しかけて突撃インタビューをしようとしている、なんて
「……なるほど、噂話」
どこかの出版社の内情の暴露じゃなくて噂話かー。噂話なら風に乗って聞こえることもあるよね、うん。
「チームキタルファは新進気鋭……というか現状だとトップクラスのチームですからね。十分注意してください」
「ありがとうございます。理事長秘書の駿川さんにも相談してみますね」
キリッとした顔で注意を促してくれる乙名史さん。さっきまでの奇声と変顔がなければキュンときそうなんだけど。
「ちなみに、そんな面倒事を回避する……というのはさすがに無理ですけど、何かあった時の保険って欲しくないですか?」
「え? そんなのあるんですか?」
乙名史さんが何やらすごいことを言い出した。そのため詳細を聞いてみると、乙名史さんはにっこりと微笑む。
「簡単なことです。トレーナーさんが信頼できる記者を複数同行させるんですよ。ゴシップ記事を飛ばされても、複数の出版社が
「それってつまり……」
俺は乙名史さんが何を考えてそんなことを言い出したのかを察し、苦笑を浮かべる。
「チームキタルファの夏の合宿の密着取材……雑誌が飛ぶように売れそうですよね」
密着取材といっても四六時中べったりくっ付くわけじゃないですよ、と乙名史さんは言う。
月刊トゥインクルは発行部数も多い大手だけど、売れそうなネタは率先して食いつくスタイルらしい……いや、乙名史さんの場合、そういう建前でウララ達のトレーニング風景を追っかけたいだけの気がするけど。
キングが全距離のGⅠを制覇し、ウララはトゥインクルシリーズで走れるダートのGⅠで全距離を制覇した。そしてライスが夏のサマードリームトロフィーに出るとなると……乙名史さんの言う通り、面倒事が外から大挙してやってきそうだ。
(他の合宿先は……でも練習設備は去年のところが一番揃ってるんだよな……)
最悪、合宿は行わずにトレセン学園に残るって手もある。しかしその場合は合宿扱いにならないから仕事も普段通り割り振られるし、普段と違う環境でのトレーニングがウララ達を大きく成長させるのは去年体験した。
他のライバル達が合宿を開いて強くなっていく、なんて思うと、自分達だけトレセン学園に残るのは正直厳しい。
「……受けるかは別ですけど、きちんとトレセン学園に申し込んでくださいね?」
しばらく悩んだ俺は、そう答えることしかできなかった。ウマ娘の育成だけに集中したいのに、世間のしがらみが増えていく……。
そんな俺の返答に乙名史さんは満面の笑みを浮かべて頷き、話を聞いていた他の記者も満面の笑みを浮かべていた。