リィンカーネーションダービー ‐新人トレーナーがんばる‐ 作:烏賊メンコ
『秋晴れが清々しい東京レース場。これより第11レース芝2000メートルGⅠ、天皇賞秋が開催されます。バ場状態は良の発表となっております』
『今年も秋のシニア三冠の時期がやってきましたね。去年はあのライスシャワーが挑み、達成した偉業を再び成し遂げるウマ娘が誕生するのか……私、初戦からワクワクとしております』
『ライスシャワーと言えば今年のサマードリームトロフィーで3人同着で1着、去年までの記録として長距離GⅠ制覇、秋のシニア三冠達成、有馬記念2連覇、そしてなによりもシンボリルドルフに次ぐGⅠ6勝を挙げた名バです。今年もライスシャワーに続くウマ娘が誕生するのか、実況の身ながら期待に胸が膨らんでいます』
東京レース場にファンファーレが鳴り響き、実況と解説がそれぞれ言葉を発する……って、なんかすごい勢いでライスを褒め倒している。
ありがとう、でももっと褒めてくれてもいいのよ? 俺の隣で顔を真っ赤にして俯いてしまってるライスをもっと褒めてくれてもいいのよ? 相変わらず褒められるのに弱いから、公衆の面前で褒められるとどうにも恥ずかしいらしい。
照れたライスが真っ赤になってお赤飯になってる……いかん、たまにシンボリルドルフみたいな思考になっちゃうわ。
去年ライスが出たレースだけど、秋の天皇賞は2000メートル。スタート位置は観客席から見て右手側……というか、第1コーナーに接続された直線からのスタートとなる。
そのためウマ娘達は観客席からはよく見えない。ゲートの設置位置的に観客席に背中を向ける形になるのだ。
ただ、名前を呼ばれたらゲートインする前に振り返って、観客に手を振ったりするウマ娘が多い。そういったパフォーマンスを嫌う子もいるけど、大体のウマ娘はファンへ笑顔を向けるのだ。
奇数番号順にゲートインしていくが、それぞれ名前を呼ばれる度に観客席に笑顔で手を振ったり、頭を下げたり、拳を突き上げたりと、思い思いの仕草をしてからゲートインしていく。
『4枠7番、セイウンスカイ。7番人気です』
『黄金世代の一人にして去年の菊花賞で世界レコードを出したウマ娘ですね。この子の逃げ足は驚異的で……っと?』
解説の男性が不思議そうな声を出す。それもそのはず、セイウンスカイは観客席に向かって手を振っていたが、ふらっと体勢を崩し、隣にいたオイシイパルフェに抱き着くようにして接触したからだ。
『セイウンスカイ、隣のオイシイパルフェに接触しました。二人とも大丈夫でしょうか?』
『芝に足を取られたのでしょうか? 押し倒してしまったオイシイパルフェにセイウンスカイが謝っていますね』
慌てた様子でオイシイパルフェに向かって頭を下げるセイウンスカイ。そんなセイウンスカイの姿に観客達は温かく笑う者、訝しく思う者、大丈夫か心配する者と反応がわかれた。
(体当たりってほどの勢いじゃなかったが……大丈夫か?)
いきなり抱き着かれてバランスを崩したオイシイパルフェはセイウンスカイと一緒に芝の上に転がったが、すぐに起き上がって気にするなといわんばかりの笑顔でセイウンスカイの肩を叩いている。
そのため両者とも怪我はなかったのだろうが、セイウンスカイは左足で芝を何度か蹴りつけ、不思議そうに首を傾げている。
そしてゲートイン……と、思いきや。
『セイウンスカイ、何故かゲートに入りません。何か気になることがあるのでしょうか?』
『あまり見る光景ではありませんね』
セイウンスカイはゲートの前で止まり、何故か中に入ることなくその場で足踏みを始めた。オイシイパルフェが声をかけているが、セイウンスカイは首を傾げたままゲートに入ろうとしない。
(なんだ? 本当にどうしたんだ?)
俺は思わず身を乗り出して目を細めるが、スタート位置は俺がいる場所から300メートル以上離れている。さすがに何が起きているのか詳細にはわからない。
『セイウンスカイ、少し時間がかかりましたが今、ゲートインです』
『ゲートに入りたがらないウマ娘はたまにいますが、今のはゲートを嫌がった感じじゃなかったですよね』
解説の男性が不思議そうな声を出す。俺も不思議に思うが、ゲートに入るとセイウンスカイは大人しくしている。
『5枠9番、スペシャルウィーク。5番人気です』
『黄金世代の一人ですね。パドックでの様子を見ましたが、今日は非常に調子が良さそうですよ。期待が持てるのではないでしょうか』
続いてスペシャルウィークがゲートインする。こちらはスムーズで、名前を呼ばれると観客達に笑顔で手を振っていた。
ただ、ゲートに入るとその雰囲気が一変する。遠目にもわかるほど気合いが充実しているのが伝わってくるのだ。
『6枠11番、ウイニングチケット。8番人気です』
『この子も黄金世代の一人ですね。仕上がりと調子が良さそうです。好走に期待しましょう』
セイウンスカイのゲートインに時間がかかったからか、実況と解説が普段と比べて早口になっている気がする。そんなことを考えていると、キングの番が回ってきた。
『8枠15番、キングヘイロー。1番人気です』
『黄金世代の一人……いえ、『世代のキング』と言うべきでしょうか。先月のスプリンターズステークスで勝ってGⅠ5勝、全距離でのGⅠ制覇を達成したウマ娘です。本日のレースでは大本命と言えるでしょうね』
実況と解説が紹介すると、観客席からは爆発するような歓声が上がる。その歓声の大きさはウララとライスが一瞬ビクッとその場で跳ねるほどだ。
当然キングにも届いているだろうが……キングは落ち着いた笑みを浮かべながら悠然と手を振り、気合いが入った顔付きでゲートへ入っていく。
『2枠2番、ビワハヤヒデ。2番人気です』
『キングヘイローが大本命ならこちらは対抗バと言えるでしょう。春のシニア三冠では大阪杯で1着、春の天皇賞で4着、宝塚記念で2着と好成績を残しています』
そんな紹介に、観客席からは再び大きな声援が飛んだ。ビワハヤヒデはそんな観客達に向かって手を振ると、髪をなびかせながらゲートインする。
『3枠4番、ハッピーミーク。3番人気です』
『黄金世代の一人にして、短距離およびマイルのGⅠで勝利しているウマ娘です。噂ではこの子も全距離でのGⅠ制覇を狙っているなんて話も聞きますが、それを達成できる実力の持ち主と言えるでしょう。今日のレースにも期待したいと思います』
ミークは観客席に向かってぺこりと頭を下げる。その仕草と雰囲気に、主に女性の観客から『かわいいー!』なんて声援が飛ぶ。ただ、一部の観客からは『今日も靴がフランスパンに見える』なんて声が上がっているが……それはきっと目の錯覚ですよ?
『5枠8番、マチカネタンホイザ。9番人気です』
『シニア級のベテランウマ娘の一人です。今日はどんな走りを見せてくれるのか楽しみですね』
マチカネタンホイザは普段通り、むん、という声が聞こえてきそうな様子で胸の前で両こぶしを構えてからゲートに入る。あれって何かのルーティンワークなのかな?
『6枠10番、ナイスネイチャ。4番人気です』
『春のシニア三冠では3着、3着、4着と好走が続いています。今日のこの天皇賞秋ではどんな走りを見せてくれるのか……好走に期待しましょう』
ナイスネイチャは苦笑を浮かべながらヒラヒラと手を振ると、慣れた様子でゲートに入っていく。GⅠでの勝利はないが、GⅠでの出走数は今回の出走しているウマ娘の中でもトップクラスだ。トップはオイシイパルフェである。
『8枠14番、オグリキャップ。6番人気です』
『黄金世代の一人ですね。繫靭帯炎で長期療養をしていたという話だったのですが、復帰戦の毎日王冠ではグラスワンダーと競い合ってクビ差で2着でした。復調したと見て間違いないでしょう。今日のレースでも好走が期待されます』
遠目に見えるオグリキャップは目立ったパフォーマンスはしない。それでも観客席に向かって小さく頭を下げてからゲートに入る。
……そういえばグラスワンダーは出てきてないんだよな。毎日王冠では良い走りをしていたんだけど、調子が落ちたんだろうか?
なんて考えているうちに、東京レース場から音が引いていく。それは発走が始まる合図であり、観客達がこれから始まるレースへの興奮を必死に押し殺している証でもある。
今日は天気もよく、秋晴れと言っていい気候だ。日差しはあるが暑くはなく、これからレースを走るキング達にとっても丁度良い気温と言えるだろう。
東京レース場の緊張が高まる。そして徐々に引いていた音が一瞬、完全に消え失せた。
『各ウマ娘、ゲートイン完了……スタートしました』
そしてバタン、という音と共にゲートが開いて秋の天皇賞が始まった。
『各ウマ娘、揃って綺麗なスタート。真っ先に飛び出していったのは1番ハイタイムスーン。続いて7番セイウンスカイが前へと駆けていきます。それに続いて2番ビワハヤヒデ、4番ハッピーミーク、5番ミニキャクタス、9番スペシャルウィーク、15番キングヘイロー、11番ウイニングチケット、14番オグリキャップの順』
『出遅れもなく、揃った良いスタートですね』
『続いて3番フリルドピーチ、10番ナイスネイチャ、8番マチカネタンホイザ、12番マジャールロンド。シンガリ付近に13番アンチェンジング、6番オイシイパルフェ』
秋の天皇賞2000メートルは、スタートからコースをぐるっと1周回ってホームストレッチを駆け抜ければゴールが待っている。長距離と比べれば短く、短距離と比べれば長い。それでもスタートで出遅れると位置取りに困るため、全員集中していたのだろう。
『第2コーナーを抜けて向こう正面へとウマ娘達が駆けていきます。先頭は変わらず1番ハイタイムスーン。その1バ身後方に7番セイウンスカイ。先行集団はそこから更に1バ身後方』
『まだレースは始まったばかりですからね……各ウマ娘、他のライバルの出方を窺っているようです』
スタート直後から向こう正面の半ばまでは下り坂が続き、急勾配かつ100メートルにも満たない短い坂を駆け上ると再び下り坂になる。人間からすると100メートルの坂は十分長いんだけど、ウマ娘からすると10秒どころか数秒で駆け抜ける短さだ。
そしてホームストレッチに来れば再び登り坂があるが、京都レース場の名物、淀の坂なんかと比べると負担はかなり小さい。
(負担は少ない……そのはずなんだけどな……)
向こう正面を駆けるウマ娘達を見ながら、俺はそんなことを内心で呟く。
スタートこそ綺麗に切ったセイウンスカイだが、先頭に立たずに2番手の位置で駆けているのが気にかかった。先頭で逃げるハイタイムスーンが1枠1番と好位置でのスタートだったにせよ、内ラチは荒れているため有利不利でいえばトントンだろう。
もちろんハイタイムスーンの逃げ足が良いってのもあるけど、セイウンスカイが捉え切れないほどではない。つまり何か考えがあって2番手の位置に控えている、と見るべきだろう。
『残り1000を通過して向こう正面を抜けた各ウマ娘が第3コーナーへと突入していきます。先頭は変わらずハイタイムスーン』
『1000メートルの通過タイムは59秒1とまずまずのペース。そろそろ各ウマ娘の動きが気になるところです』
キングがじわじわとペースを上げて前へと駆けていく。それを見ながら俺は眉を寄せた。
(スペシャルウィークも同時に動いたか……それにオグリキャップも前に上がってきているな)
キングがスペシャルウィークをかわそうとした瞬間、スペシャルウィークも加速を始めた。その動き方から、キングを相当意識しているんだろうなと察せられる。
あとはオグリキャップだが……あの子本当に繫靭帯炎だったの? なんて疑うほどに良い動きだ。繫靭帯炎を発症していたってことはトレーニングも禁止で長期療養していたはずだというのに、ここ最近復帰したとは思えないほど動きにキレがある。
(やっぱり繫靭帯炎ってのはブラフだったかもな……繫靭帯炎を治した方法が曖昧なのもそれが理由かもしれん)
そうなると毎日王冠に出したのもGⅠ前の復帰戦――と見せかけて今回こそが
『残り800の標識を通過して先頭のハイタイムスーンが第4コーナーへと突入していきます。後続のセイウンスカイに対して約2バ身のリード。先行集団には4バ身、更にその後ろの集団に7バ身、シンガリまでは10バ身ほどと快調に飛ばしていきます』
『しかし問題はここからですよ。じわじわと上がってきている子が複数いますからねぇ』
『9番スペシャルウィーク、15番キングヘイロー、14番オグリキャップが競り合うようにして前に上がってきます。3番手の2番ビワハヤヒデのすぐ後ろに迫っています。先頭のハイタイムスーンとは約5バ身差』
第3コーナーから第4コーナーにかけては緩いカーブだが、
今回のレースの場合、最終直線は約500メートル。残り300メートルの地点までは登り坂になるが、そこから先はほぼ平地だ。
しかし残りの距離的に、そろそろキング達以外にもウマ娘が動くだろうと俺は判断した。特に、最近は毎回GⅠレースで思わぬ走りを見せるオイシイパルフェが怖い。今回はツインターボが出ていないが、その分どんな走りを見せるのか……ん?
『第4コーナーを抜けて最後の直線へ! 先頭は変わらずハイタイムスーン! しかし上がってきたぞGⅠ5勝ウマ娘! 『世代のキング』が一気に加速する! だが負けじと加速したスペシャルウィークが横に並んだ! 更にその後ろ! オグリキャップも上がってきている!』
『……加速した子もいますけど、ズルズルと下がっている子がいますね』
『これはどうしたことか!? シンガリのオイシイパルフェ、一気に減速! 今日はパルフェエンジンに燃料を積み忘れたか!? そして2番手のセイウンスカイ、6番手ビワハヤヒデも足が伸びない! まだ足を溜めるつもりか!?』
最終直線で残り500メートルを切った段階で、キングが勝負を仕掛けた。そしてそれに応じたスペシャルウィークとオグリキャップが加速したが、ビワハヤヒデは動かない。むしろ焦った様子で懸命に体を動かしているように見えるが……。
そしてセイウンスカイも表情は必死だが、足が伸びていない。オイシイパルフェに関しては……以前は追い込みウマ娘なのに追い込めず沈んでいたから、調子が悪いのか元に戻っただけなのかわからん。もしかするとここから一気に伸びてくるかもしれないけど。
『キングヘイローにスペシャルウィーク、オグリキャップがビワハヤヒデをかわして3番手争い! いや、そのままセイウンスカイもかわして2番手争いになった! 先頭のハイタイムスーンまで残り1バ身と少し! このまま追いつくのか!? それともハイタイムスーンが逃げ切るのかって捕まった! 捕まってしまったぞハイタイムスーン!』
残り300メートルに至るまで存在する坂道を利用し、キングが一気に先頭へと躍り出る。減速したビワハヤヒデ、セイウンスカイ、先頭にいたハイタイムスーンをかわして先頭だ。しかし、その隣にはスペシャルウィークがいる。すぐ後ろにはオグリキャップもいる。
「いけええええええええええええぇぇっ! そのまま勝てえええええええええぇぇぇっ!」
俺から見て左から右へと駆けていくキングヘイロー。長い髪をなびかせて駆けるその姿は堂々としたもので、観客達からも大きな声援が飛ぶ。
「キングちゃんがんばってえええええええぇぇっ! じーわん6しょうめええええええええぇぇっ!」
「頑張れキングちゃん! がんばれっ! がんばれっ!」
ウララとライスも必死に叫んでいる。そして俺達の声が聞こえたのかキングは口元を吊り上げて笑みを浮かべ、これまで以上に強く地面を蹴りつけて更に加速する。
それを見たオグリキャップも二段階目の加速を見せた。スペシャルウィークはそんなキングとオグリキャップに置いていかれ――ない。
『残り200を通過してキングヘイローとスペシャルウィークとオグリキャップの先頭争いが加速する! すさまじい勢いで伸びてきたと思えば更に加速して伸びた! すごいウマ娘達だ!』
スペシャルウィークも更に加速し、キングよりも先にゴールするべく必死に駆ける。芝を蹴りつけ、芝と土塊を後方に吹き飛ばしながら3人のウマ娘達が鎬を削るようにして駆けていく。
4番手以降は……加速しているが届きそうにない。それを横目で確認した俺は、キングの走りを見届ける。
『キングヘイローか!? スペシャルウィークか!? オグリキャップか!? 3人横並びのままゴールへ向かう! あと50メートルもなっ、あっ、わ、僅かに抜け出してきたのはキングヘイロー! キングヘイローが僅かに前に出たか!? いや、スペシャルウィークも前に出てきた! そのままもつれあうようにしてゴール!』
『体勢は……キングヘイローが有利でしょうか?』
解説の男性が自信なさげに呟く。俺がいる場所から見るとゴール付近は角度を付けて見ることになるため、俺も自信がない。
(オグリキャップは3着……でもキングとスペシャルウィークのどっちが勝ったかは……)
この間のサマードリームトロフィーでの3人同着が頭を過ぎる。3人同着と比べれば2人が同着するのは比較的よくあることだ。あるいは、なんて思っている俺だったが、後続のウマ娘達がゴールを通過すると大して時間をかけずに着順掲示板が点灯する。
『着順が確定いたしました。1着15番、キングヘイロー。勝ち時計は1分58秒4。2着はハナ差で9番、スペシャルウィーク。3着は2分の1バ身差で14番、オグリキャップ。4着は1バ身差で10番、ナイスネイチャ。5着はクビ差で4番、ハッピーミーク』
――キングが勝った。
そう認識した瞬間、俺はほう、と安堵の息を吐く。そして全身から力が抜けかけたが、ギリギリのところで足に力を込めて堪えた。
『キングヘイロー、これでGⅠ6勝目です! そして春秋天皇賞制覇達成! チームキタルファ、2年連続で春秋天皇賞を制覇しました!』
そして、実況の男性の叫び声を聞いて俺はぐっと拳を握り締める。
ライスに続いて、キングも春と秋の天皇賞で勝利した。これでキングは全距離でのGⅠ制覇を達成しただけでなく、偉業が積み重なったわけだ。更に言えば、GⅠ6勝でシンボリルドルフに次ぎ、なおかつライスに並んだ。
俺が視線をゴール先へと向けて見ると、さすがに最後の競り合いで消耗したのか肩で息をするキングの姿があった。しかし無様は晒すまい、と言わんばかりに胸を張るキングに俺は目を細める。
(秋のシニア三冠、一つ目の勝利か……シンボリルドルフの記録に挑むとは言ったが、キングならあっさりと超えてくれるかもしれんな)
そう思わせるだけの実力を、安定して発揮できるキング。その立ち姿に観客達が拍手や声援を送るのを見ながら、俺は僅かに視線を逸らす。
(でも、次はどうなるか……)
2着になったスペシャルウィークの顔に、悔しさと同時に凄まじいまでの熱量を感じた俺はそう思うのだった。
そして翌朝。
普段通り朝から部室でスポーツ新聞を読もうと思っていた俺は、同期から回ってきたメッセージを見て目を見開く。
『ビワハヤヒデとウイニングチケット、セイウンスカイが屈腱炎にかかったらしいぞ』
その一報に、俺は思わず部室の天井を見上げたのだった。