リィンカーネーションダービー ‐新人トレーナーがんばる‐   作:烏賊メンコ

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第120話:新人トレーナー、滑り落ちる

 ――ビワハヤヒデ、ウイニングチケット、セイウンスカイが屈腱炎を発症した。

 

 そんな情報が俺のもとに回ってきたのは、レース翌日ということで普段通り近所のコンビニでスポーツ新聞を買い漁り、コンビニ付近で明らかに待ち伏せていたと思しき記者から『次のキングヘイローの出走レースはジャパンカップですか!?』という質問にどうですかねー、と答えてダッシュで逃げ、トレセン学園の塀を乗り越えて出勤して部室で腰を落ち着けた直後である。

 

 俺はコーヒーメーカーで作ったコーヒーをズズズと飲み干し、頭を振ってから再度スマホの画面を見た。

 

『ビワハヤヒデとウイニングチケット、セイウンスカイが屈腱炎にかかったらしいぞ』

 

 届いたメッセージは当然ながら変わらない。性質の悪い冗談だ、なんて思えれば良かったものの、メッセージを送ってきた同期はこの手の冗談を言う奴じゃない。というか、俺も同期もこの手の冗談は大嫌いだ。

 

 つまり……事実なのか。いや、らしいぞって書き方だし、もしかすると確定情報じゃないのかも……あるいは炎症が酷いだけで屈腱炎ってほどじゃない可能性も……。

 

「ふぅ……」

 

 俺は椅子に深く腰掛け、ため息を吐く。そして昨日の記憶を探り、レース後にキングの状態をチェックした時のことを思い出した。

 

(キングは疲労こそあったけど炎症はなかった……レース直後だから足の関節が熱を持っていたけど、寮に帰ったキングから連絡はなし……)

 

 キングは自己管理もしっかりとしているし、仮に関節の熱が引かなければ俺に連絡を入れているだろう。つまり、キングは無事だということだ。

 

(明後日はウララのレースがあるんだけどな……うーん……)

 

 俺は椅子から立ち上がり、再度コーヒーを淹れた。しかしぱぱっと作った影響か、雑味が強い。あと味が濃い。でもまあ、意識をはっきりとさせるには丁度良い。

 

 明後日……水曜日にはウララのレースが行われる。11月前半恒例のJBCシリーズだ。

 

 出走するレースはウララの希望もあってJBCレディスクラシックである。距離は1800メートルのマイル走で、去年、スマートファルコンが1着を獲ったレースだ。

 

 JBCスプリントに出して2連覇を狙うのも手だったが、ウララがスマートファルコンと勝負をしたいと言うため、JBCレディスクラシックへの出走を決断した。

 

 スマートファルコンの方から何か言ってくるかな、と思ったものの、特にそれらしいことは言われなかった。以前のようにどのレースに出るか宣言することもなく、宣戦布告しに来ることもなかった。

 

 まあ、どのレースに出るか宣言するのはまだしも、個別に宣戦布告しに来ると下手すれば談合と取られかねないからそれはそれで困るが。

 

 同じチーム内での話なら良いが、ウララとスマートファルコンはライバル同士だ。公的な場で出走するレースを宣言するのなら良いけど、他所から揚げ足を取られかねないのは困る。

 

 ただ、スマートファルコンはウララに会う度に全身で『次のレースが楽しみだね』と言わんばかりに喜色溢れる雰囲気を発し、なおかつ満面の笑みを浮かべるのである。これは受けて立つ他あるまいよ、ということで去年スマートファルコンが勝ったJBCレディスクラシックに殴り込むことにしたのだ。

 

 スマートファルコンは帝王賞での敗北がどのように作用したのか、以前あった悲壮感はなくなっていた。それが影響したのか以前と比べれば開催頻度が減った路上ライブでも、足を止めて曲を聞き入る通行人がぐっと増えていた。

 というか、この前見に行ったら観客が集まり過ぎて警察官にお説教をされていたほどである。500人近い人々が足を止めていたせいで通行人の迷惑になっていたとのことだ。迷惑をかけた通行人に慌てた様子で頭を下げるスマートファルコンの姿を見た俺は、次にレースでぶつかる時はこれまで以上の難敵になるだろうな、なんて思った。

 

 スマートファルコンが路上ライブを開けば法被を着たファンが大盛り上がりだし、通行人も足を止めて見入っているし、スマートファルコンのトレーナーは最前列でキレッキレのサイリウムダンスを披露していたほどだ。

 

 以前と比べたら自然で綺麗な笑顔を浮かべるスマートファルコンは、ウマドルとしてたしかな輝きを放っていた。()()()()()次はどうなるかわからないな、なんて思う。

 

 しかしそうやって良い方向へ進んだと思える子もいれば、ビワハヤヒデ達のように故障する子もいるわけで……ままならんなぁ。

 

 そんなことを考えていると、スマホが振動して新規にメッセージが届いたことを告げてくる。それに何事かと思えば、チームを持っていない後輩の一人からメッセージが飛んできていた。

 

『先輩、今テレビですごいことを発表してますよ』

 

 そんなメッセージに俺は眉を寄せる。しかし今は仕事に手を付ける気にもなれず、部室のテレビを点けた。すると、見知ったウマ娘が画面に出てきて思わず俺は前のめりになってしまう。

 

 そこには、海外のレースに挑んだエルコンドルパサーの姿があったのだ。

 

 海外へ渡ったエルコンドルパサーだが、その戦績は大したものと言えるだろう。

 

 5月後半にフランスのGⅠのイスパーン賞に挑んで2着、続いて7月前半にGⅠのサンクルー大賞に挑んで1着、9月前半にGⅡのフォワ賞に挑んで1着。そして多分、世界的にも最も有名なレースである凱旋門賞に挑んで2着だ。

 

 凱旋門賞は10月前半に行われ、エルコンドルパサーはほんの僅かに届かなかったもののクビ差で2着になり、前世の俺でも聞き覚えがあるような世界的GⅠレースでウイニングライブを踊ったのである。

 

 ライスやキングが挑んだらどうなるかな、なんて思うようなレースだ。そしてそんな世界的に有名なレースでエルコンドルパサーを破り、1着に輝いたのがブロワイエというウマ娘である。

 

 癖のある金髪に碧眼のウマ娘で、エルコンドルパサーと比べて一回り近く体格に恵まれた子だ。勝負服は王子様か、と思わせるような華美なもので、その上でマントまで羽織っている。

 

 ――そんな子が今、テレビに映っていた。

 

『11月末に日本で行われるジャパンカップへの出走を表明されましたが、自信のほどはいかがですか?』

 

 経歴を流した後に()()エルコンドルパサーに勝ったウマ娘、という体で紹介を挟み、記者がブロワイエにインタビューをしていた。そして記者の質問に俺は目を見開く。

 

(今年は海外勢が来るのか……マジかよ)

 

 去年というか、ここ数年は海外のウマ娘がジャパンカップに来ることはなくなっていた。そのため今年もそうかな、なんて思っていたのだが、どうやら違うらしい。

 

『自信がなければ挑みませんし、現地で走るのが今から楽しみですよ。なんでも、今の日本にはキングと呼ばれるウマ娘がいるらしいですからね……そんな彼女に勝つのが楽しみです』

 

 マイクを向けられたブロワイエは不敵に微笑みながらそう告げる。後輩がすごいことと言ったのはこのことだろう。テレビ欄を確認してみると、『ブロワイエがジャパンカップに参戦! 直撃インタビュー!』という文字が書かれていた。

 

 ブロワイエがジャパンカップへの参戦を発表したのは昨日らしいが、昨日はキングのレースがあったからさすがにチェックしていなかった。教えてくれた後輩には今度飯を奢ろう。

 

 しかしまあ、なんだ……さすがにフランス語はわからんから字幕に表示された言葉をそのまま見ることしかできないけど、キングとの対決を楽しみにしてジャパンカップに出てくるんだろうか? それともリップサービス? 外国人って大仰に言ったりするから、翻訳している人がそれっぽいこと書いちゃえってノリで書いてないか?

 

(故障するウマ娘もいれば、こうして海を渡って挑みに来るウマ娘もいる、か……)

 

 そう考えた俺は、テレビを消して椅子から立ち上がる。ビワハヤヒデ達が本当に屈腱炎になってしまったのか、確認しようと思ったのだ。

 

 

 

 

 

 そして俺が足を向けたのは、最近は立ち寄ることが減ったトレーナー用の共用スペースである。ビワハヤヒデ達の故障が本当なら、何かしらの噂話でもしているだろうと思ったのだが――。

 

「お願いします! オグリキャップの繫靭帯炎を治した方法を教えてください!」

「繫靭帯炎と屈腱炎じゃ治し方が違うってのはわかってる! でも参考にできることがあるかもしれないんだ! だから頼むよっ!」

「あの子はここで終わるようなウマ娘じゃないんです! だからどうかっ!」

 

 何やら緊迫感のこもった声が聞こえてきた。そのため俺が眉を寄せていると、丁度共用スペースにいた同期の一人が口元に人差し指を立てているのが見えた。

 

「何が起きてるんだ?」

 

 俺は同期の傍に歩み寄ると、小声で尋ねる。大体は察しがつくけど、この場にいた同期に聞いた方が確実だと思ったのだ。というか、俺にビワハヤヒデ達の故障を教えてきたのは、こうして朝から騒いでいるのを聞いたかららしい。

 

「ビワハヤヒデ達のトレーナーがオグリキャップのトレーナーに繫靭帯炎の治療法を開示するよう頼み込んでるんだよ。おっと、そこから先に顔を出すなよ? 気持ちはわかるけど、3人で囲んで土下座しているところが見えちゃうぞ」

「そいつはなんとも……」

 

 土下座っていうのはされた側の性格によっては脅迫に近いと思うんだが。先輩方もそれだけ必死ってことか。

 

「ですからっ! オグリのやつはたらふく飯を食わせて温泉に浸からせていたら勝手に治っただけですって!」

 

 その返答に、おや? と思う。オグリキャップの担当トレーナーは六平さんだったはずだけど、声が違う。サブトレーナーかな? 六平さんは中央でもベテラン中のベテランだし、いくら先輩方でも聞きに行けなかったのかもしれない。あるいは、サブトレーナーの方が聞き出しやすいと思ったのか?

 

「治療ノウハウが貴重なのは理解していますっ! ですがどうかっ! ハヤヒデのためにどうかっ!」

「ですからっ! それ以上のことなんて俺は何もしてないんですって!」

 

 尋ねる方も必死だが、答える方も必死だ。オグリキャップはたくさんご飯を食べ続けて、温泉に浸からせたら自然と治っていたと繰り返し訴えている。

 

「今の話、どう思う?」

「いや、ないだろ……食事をしっかり取らせて温泉に浸からせるだけで繫靭帯炎が治るのなら、引退するウマ娘が3割は減るわ」

 

 俺が同期に尋ねると、同期は首を横に振りながらそう言った。そうだよなぁ……それだけで治るのなら、トレーナーもウマ娘も、ウマ娘専門の医師も長年苦労していない。

 

 長期間療養に努めて安静にしていても、トレーニングを再開すればすぐに再発するから繫靭帯炎や屈腱炎は厄介なのだ。しかしオグリキャップの毎日王冠や秋の天皇賞での走りを見れば、再発していないのは明白である。つまり、何かしらの手段を用いて繫靭帯炎を治したのだ。

 

(先輩達の声も演技とは思えないし、ビワハヤヒデ達の故障は確定……か……)

 

 オグリキャップのサブトレーナーと思しき男性の発言も、繫靭帯炎を治せる情報の貴重さを思えば仕方ない。情報を開示するかどうかはトレーナー次第だが、仮に教えるとしても誰が聞き耳を立てているかわからない状態で教えるトレーナーはいないだろう。

 

「これは一体何の騒ぎですか?」

 

 騒ぎを聞いて駆け付けたと思しきたづなさんの声を聞きながら、俺は肩を落として部室へと帰るのだった。

 

 

 

 

 

 そしてその日の放課後。

 

 普段通りトレーニングに取りかかる……その段階になって、俺はウララ達に声をかけた。

 

「キング、体の調子はどうだ?」

「さすがに疲労が抜けていないけど、問題はないわ。今日は体調のこともあるし、ウララさんに合わせて軽めのメニューかしら?」

「そうだな……ウララも明後日レースだし、キングも軽めのメニューにしておこう。ウララ、体調は大丈夫か?」

「うんっ! 元気いっぱいだよー!」

 

 キングは普段通りの様子で答え、ウララは元気いっぱいに答える。ライスはそんな二人の様子に笑顔を浮かべているが、俺としては色々と気になることがあった。

 

「すまないが、トレーニング前に少しチェックをさせてもらえるか?」

 

 そう言いつつ、俺はソファーの背もたれを倒してベッドにする。するとそんな俺の行動にキングが目を細めた。

 

「スカイさん達の件で、かしら?」

「ああ……まずはキング、足を触らせてくれ」

「……毎回思うけど、他に言い方はないの?」

 

 そう言いつつも、いそいそと靴と靴下を脱ぐキング。そしてソファーベッドに乗ると、うつ伏せの状態になる、俺はそんなキングに痛みがあったらすぐに言ってくれと一声かけてから、キングの足にそっと触れていく。

 

(関節が少し熱を持ってるけど、これまでのレース後と大差ない……むしろキングもしっかりケアをしているから、昔と比べると炎症が軽いぐらいか……)

 

 足首や膝がどれだけ熱を持っているかを確認しながら、俺は慎重にチェックを進めていく。

 

(太もも、ふくらはぎの筋肉も少し張ってるぐらいで許容範囲……バランスも崩れてないし、炎症も起こしてない……)

 

 そのまま俺は腕を動かし、腰回りや上半身の筋肉も確認していく。整体というほどではないけど、時折指圧するようにしながら筋肉の付き具合や凝りを把握していく。

 

 人の体というのは不思議なもので、どこか一ヶ所の筋肉や関節が僅かにズレているだけで全身に悪影響を及ぼすのだ。

 

 最初の内は自覚症状があるほど悪影響が出ることは少ない。しかしたとえば、デスクワーク中心の生活を送っている内に姿勢が悪くなって、その結果腰だけでなく肩や足に痛みが出るなんてこともある。

 

 ウマ娘の場合足を酷使するが、筋肉や骨格のバランスが崩れるとそれがあちらこちらで悪さをする。育成を担当し始めたばかりのライスがそのパターンで、ライスの場合放っておけば大きな怪我につながりかねなかった。

 

「……うん……特に問題はないな……良かった」

 

 一通りチェックした俺は、ほっと安堵の息を吐く。大丈夫だとは思っていても、いざチェックするとなると心臓に悪い。

 

 目視でわかる範囲には限りがあるし、触診の方が正確だ。それ以上に病院でレントゲンを撮る方が正確なんだけど、さすがに毎日レントゲン検査をするのは時間的にも厳しい。

 

 俺はチェックした内容をノートに記録していく。その間にキングはゆっくりと体を起こし、ほう、と熱が感じられる息を吐いた。

 

「……普段と違って、ずいぶん熱心に確認していたわね。そんなに気になったのかしら?」

「ああ……悪いな、キング。どうにも落ち着かなくてつい、な……」

 

 部室の掛け時計へ視線を向けると、予想以上に時間が経っていた。トレーニング前だというのに思ったよりも時間を使ってしまったようだ。

 

「別に構わないわ。あなたがそれで落ち着くのならいくらでも、と言いたいところだけど……あなたの方こそ大丈夫なの?」

 

 そう言って心配そうな表情を向けてくるキング。その問いかけに俺が眉を寄せていると、何やら肩に重みが……って、椅子に座った俺の背中に何故かウララが抱き着き、俺の右肩に顎を乗せている。

 

「ウララ? どうしたんだ?」

「んー……トレーナー、だいじょぶかなって。なんかね、辛そうだなーって」

 

 思わぬ言葉を投げかけると共に、甘えるように……いや、むしろ俺を甘やかすように? ウララがウマ耳で俺の頭をくすぐってくる。

 

 そんなウララの行動に俺は驚くが……同時に、胸の中が温かくなるのを感じた。

 

「大丈夫だよ、ウララ。ただまあ、なんていえば良いのかね……ままならんなぁって、思ってなぁ……」

 

 そう言いつつ右手を上げてウララの頭をポンポンと叩く。それだけで伝わったのかはわからない。ただ、ウララが心配に思うぐらい暗い顔をしていたんだろうな、と自省した。

 

 そんなことを思いながら振り返ると、そこには何やら両腕を広げてじりじりと俺に向かって近付いてくるライスの姿があった。そして俺と目が合うと、にっこり微笑んで両腕を更に大きく広げる。

 

「いいよ、お兄さま」

「なにが?」

 

 え? なにがいいの?

 

「ライスもお兄さまを甘やかし……う、ううん、慰めてあげたいなって!」

 

 そう言ってくれるライス。どうやらライスも俺のことを気遣ってくれているらしい。相変わらず優しい子だ……でもうん、ウララセラピーで心が温まったんだよなぁ……。

 

「そうか……うん、ライスも良い子だなぁ!」

「わわわっ!? 思ってたのと全然違うよお兄さまっ!?」

 

 腕を広げていたため両脇に手を突っ込み、そのまま高い高いをする俺。うんうん、その気持ちだけで嬉しいぞ。そうやってライスを高い高いしていると、ウララがわたしもわたしもーとせがんできたため交代で高い高いをする。

 

 ふふふ、勢いつけて持ち上げてるけど腕だけじゃなく全身の筋肉がきついわ。

 

「おばかねぇ……」

 

 そしてキングが呆れたように、それでいて温かいツッコミを入れてくれたのだった。

 

 

 

 

 

 そうしてウララ達に癒された俺だったが、今はまだトレーニング前だ。そのためほどほどにしてトレーニングを始めようと思ったものの、ウララが不思議そうに首を傾げる。

 

「ねえねえトレーナー、今度のレースのしゅっそーひょう? はまだ来てないの?」

「ん? ああ、すまん……来てるんだけど、さっき取ってきたばっかりでな。トレーニング前に確認しようと思ってたんだ」

 

 朝からごたついてたし、仕事もいまいち集中できなくて時間がかかってしまった。そのため放課後になる直前になってようやく出走表を受け取ることができたのだ。

 

 俺は仕事用の椅子に座り、机に置いていた出走表を手に取る。そして手早く開封すると、中に目を通し……って、なにやら部室の扉が激しくノックされた。

 

 一体誰よ、と思っているとキングが扉を開けて……スマートファルコンとスレーイン? え? なんで?

 

「ちょっとウララちゃんのトレーナーさん!? なんでウララちゃんがJBCスプリントに出てないんですか!? ファル子の得意な距離で負けたから、今度はこっちがウララちゃんの得意な距離で勝とうと思ったのになんで!?」

「アンタ達……なんでJBCクラシックに出てないわけ? 今度こそ勝とうと思ってきっちり仕上げてきたんだけど?」

 

 部室に駆け込んできたスマートファルコンとスレーインにそう言われ、俺は開封したばかりの出走表に目を落とす。

 

 ウララが出走するJBCレディスクラシックにはウララの名前はあっても、スマートファルコンとスレーインの名前はなかった。

 

 それを二度見して確認した俺は、思わず椅子から滑り落ちたのだった。


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