リィンカーネーションダービー ‐新人トレーナーがんばる‐   作:烏賊メンコ

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第129話:新人トレーナー、クリスマスパーティーを楽しむ

 12月24日、クリスマスイブ当日。

 

 この日は放課後のトレーニングが終わればクリスマスパーティーを行うということで、俺はその事前準備に追われていた。

 

 事前に商店街に連絡をしてターキーやケーキは予約済みで、人参ハンバーグを作るための材料も注文してある。

 

 そのため普段以上に頑張って仕事を片付け、たづなさんに許可を取ってから空いた時間を利用して商店街に向かってターキーやケーキを受け取り、人参ハンバーグの材料を抱えて帰還……というのはさすがに物理的に手が足りないから、トレセン学園から借りた車を使っての買い出しである。

 

 あとは時間が許す限り調理室で人参ハンバーグの下ごしらえをして、お米を研いで炊飯器をセット。トレーニングが終わったら人参ハンバーグを焼いて仕上げ、パーティーを始める予定だ。

 

 それはそれとして、普段より軽いとはいえトレーニングもしっかりやる。ウララはクリスマスパーティーが楽しみで注意散漫になるかな、なんて心配したけど驚くぐらい真剣にトレーニングに励んでいた。

 

 クリスマスパーティーはクリスマスパーティー、トレーニングはトレーニングと、きちんと分けて考えているらしい。偉いぞウララ、と頭を撫でたらきょとんとしていた。でも褒められていることは伝わったのか、嬉しそうに尻尾がパタパタ揺れていたけども。

 

 気のせいか、クリスマスイブということもあってトレセン学園全体に浮足立った雰囲気が流れている気がする。今日ばかりはトレーニングもしないか、軽めにしてウマ娘を休ませるっていうトレーナーも多いようだ。

 

 ウマ娘達はウマ娘達で、それぞれでクリスマスパーティーをしたり、門限ギリギリまで外で遊ぶつもりなのか連れ立って外出したり、チームに所属していればうちと同じようにチームでクリスマスパーティーを行う予定だったりと、息抜きをする子達が多かった。

 

 もちろん中には今日も今日とてしっかりトレーニングを行う、なんてところもあるんだろうけど、トレーニングを行うウマ娘の集中力がしっかりともつかは……まあ、そのウマ娘次第だろう。

 

 ライスとキングは元々トレーニングに対して熱心で切り替えも上手だし、ウララはトレーニング後のクリスマスパーティーを楽しみにして真剣に走っている。まあ、しっかりと体を動かしてお腹を空かせてからの方が料理も美味しいからなぁ、なんてウララが考えていることを推察してみたりもするけど。

 

 ちなみにうちと同じことを考えたのか、クリスマスパーティーの準備のために調理室を使用するトレーナーやウマ娘が俺以外にもかなりいた。みんな考えることは一緒なんだろう。

 ただし、作っているのはケーキだったりターキーだったりで、クリスマスに人参ハンバーグを作っていたのはうちだけだったが。

 

 そんなわけで軽めながらもしっかりとトレーニングを行い、整理運動も済ませてウララ達が着替えている間に俺はある程度作成していた日報を仕上げて送信。あとは部室の戸締りをしつつ、ウララ達が着替え終わったら部室に鍵をかけて調理室へ向かう。

 

「ふんふんふーんふんふんふーん、ふんふんふーんふふーん」

 

 調理室に向かう間も、ウララは鼻歌を歌いながら上機嫌だ。ウマ耳も尻尾もご機嫌そうに動いており、ライスも似たような感じで、キングもすまし顔だけど尻尾がゆらゆらと揺れている。

 

 そして調理室に辿り着いてみると多くのトレーナーやウマ娘達が調理の真っ最中で、調理室はガヤガヤと明るい喧騒に満たされていた。

 

「ちょっとゴールドシップ! 七面鳥を買ってきてって言ったのにこれはなんなんですの!? これ七面鳥じゃないでしょう!?」

軍鶏(しゃも)

「なんでですの!? たしかにちょっと似てないこともないですけど!? パッケージにも軍鶏って書いてあるから間違いようがないでしょう!?」

 

 俺が使用する調理台の傍から、そんな声が聞こえてくる。メジロマックイーンがゴールドシップを注意しているようだが……。

 

「なんだよマックイーン、知らねーの? 軍鶏の丸焼きだって立派なクリスマス料理なんだぞ?」

「嘘おっしゃい! そうやってまた私を騙そうとして!」

「いや、嘘じゃねーって。なあ、アンちゃん」

 

 おっと、ゴルシちゃんが人参ハンバーグを焼こうとする俺に話を振ってきた。なんというキラーパス。いや、別にキラーパスじゃないか。

 

「ローストチキンにするのなら軍鶏でも大丈夫だと思うよ。味も七面鳥と比べて落ちるわけじゃないし……というか、好みによってわかれるけど軍鶏の方が美味しいって人もいるしねぇ」

「そ、そうだったんですね……私ったらついゴールドシップのことを疑ってしまって……いえ、やっぱり最初から七面鳥を買ってくればそれで良かったのでは?」

「うん、まあね……」

 

 それは否定できない。軍鶏でも問題ないと思うけど、クリスマスといったら七面鳥(ターキー)の方が合っているとは思う。というか今から焼き始めたらかなり時間がかかるんだけど……大丈夫かな? 大きさによっては1時間どころか2時間はかかるんだけど。

 

 俺は怒るメジロマックイーンとそれをからかうゴルシちゃんの声を聞きながら、残っていた料理を作り始める。

 

 用意していたハンバーグのタネをフライパンを複数駆使して同時に焼き、その間にサラダを作り、ご飯が炊けていることもしっかりとチェックする。

 

 ウララ達はその間に皿を用意したり、冷蔵庫に入れておいたケーキを切り分けたり、ターキーをオーブンで温めたりと手伝ってくれた。

 

 ちなみにケーキはどでかいイチゴのケーキである。クリスマスといったらこれだよね、ってなもんである。

 

 もちろんサンタクロースの砂糖菓子も3人分用意した。俺の分? 甘いものは嫌いじゃないけど、砂糖菓子までしっかり食べるのはきついのだ。ただでさえ人参ハンバーグにローストチキンもあるし……甘いものは別腹じゃないのである。

 

 調理室の隣には食事を取るためのスペースが用意されているため、料理が完成したら他の人達の邪魔にならないようそちらへ移動する。席は四人掛けで俺の隣にライス、ウララとキングが隣同士で座る。

 

 ウララ達は山盛りのご飯に三段重ねの巨大な人参ハンバーグ、奮発して購入したこれまたでかいローストチキン、そして食後には切り分けたもののでかいイチゴのケーキと……うーん、見ているだけでお腹いっぱいになりそう。

 

「ふわぁ……すっごいごーかだね!」

「うん、豪華だね……ライス、食べるのが楽しみ」

「量も丁度良いわね」

 

 ちょっと多いかな、と思ったけど丁度良い量らしい。これまでウララ達に食べさせてきた食事の量から計算して大丈夫だとは思ったけど、ウララ達の体のどこにこれだけの量の食べ物が入るんだろうな。ウマ娘と何年接しても解決しない謎である。

 

 これで準備完了。あとは食べるだけである。俺達以外にも他のトレーナーやウマ娘がそこかしこでクリスマスパーティーを始めていた。

 

「よーし、それじゃあパーティを始めようか。みんな、メリークリスマス」

「うんっ! メリークリスマス! トレーナー! ライスちゃん! キングちゃん!」

「メリークリスマス。お兄さま、ウララちゃん、キングちゃん」

「メリークリスマス。トレーナー、ウララさん、ライス先輩」

 

 そんな挨拶をパーティ始まりの合図として、クリスマスパーティが始まった。

 

「わーい! トレーナーのにんじんハンバーグだー!」

 

 そう叫んで人参ハンバーグを食べ始めるウララ。クリスマスなんだからターキーからで、なんて思ったけど自分が作った物を笑顔で真っ先に食べられては何も言えない。

 

 人参ハンバーグは恒例の三段重ねに人参を丸々一本突き刺した一品だが、ものすごい勢いで端から削れていく。うーん、小柄なウララがキロ単位で作ったハンバーグを片っ端から食べていく姿はやっぱりいつ見ても度肝を抜かれるわ。

 

 ウララほどの勢いじゃないけど、ライスもどんどん人参ハンバーグを平らげていく。キングは上品なナイフさばきでハンバーグをカットすると、フォークでさして口元へと運んでいく。

 

 俺? 人参ハンバーグは一段だしサイズも自分の手の大きさより小さいぐらいだ。人参も一本丸々突き刺さってるなんてことはなく、切ってから茹でたものを皿の端に並べただけである。

 

 それに加えて商店街で買ってきたローストチキンがあるし、サラダも作ってるし、ご飯もある。食後のデザートにケーキもあるけど、ウララ達に大部分をあげて俺は本当に少しだけだ。

 

「おいしいよトレーナー! おかわりがほしいぐらいっ!」

「さすがにおかわりはないなぁ……なんなら俺の分を食べるか?」

 

 正直、ローストチキンとサラダとご飯だけでお腹いっぱいになりそうだ。普段ならもっと食べられるんだけど、目の前でウララ達3人が揃ってものすごい量の食事をしているのを見ると、それだけで満足感が出てくる。

 

(アレだな、歳を取ると自分が食べるより若い子がたくさん食べるのを見るだけで満足しちゃうっていう……いやうん、体は若いのよ? 若いんだけど……)

 

 ウララ達が美味しそうに料理を食べるだけで本当に満足だ。だってほら、ウララなんて頬にハンバーグのソースが付着しているぐらい夢中だし。 

 

「もう、ウララさんったら……ほら、頬にソースがついてるわよ」

 

 そう言って紙ナプキンでウララの頬を拭うキング。ウララは大人しく頬を拭われると、にぱっと笑みを浮かべる。

 

「ありがとー! キングちゃん!」

「お礼は良いから、もっとお行儀よく食べなさいな。淑女らしくなくてよ?」

「えへへ……おいしくて食べるのいそいじゃったー」

「――!」

 

 そんなウララとキングのやり取りを見て、何を閃いたのかライスはハンバーグをフォークで突き刺す。そして口元に持っていくと、僅かにズレて頬を汚した。

 

「あ、あー、汚れちゃったぁ……ライス、うっかり……」

 

 そう言ってチラチラと俺を見てくるライス。そんなライスの視線に俺は苦笑を浮かべてしまった。

 

「仕方ないなぁ……ほら、ライス」

 

 してほしいであろうことを察して、頬を紙ナプキンで拭ってあげる。するとライスは嬉しそうに微笑み、それを見ていたキングが真顔になっていた。

 

「ライス先輩……いえ、先輩がそれで良いのならかまわないのだけど……」

「にゃ、にゃに? ライス、わざとじゃないよ?」

「噛んでるじゃない……」

 

 ライスは気まずそうに視線を逸らすが……まあ、せっかくのクリスマスだ。キングもそれぐらいにしてあげなさい。

 

 でもそんなこと言うとライスを甘やかすなって俺が怒られるし、別のもので話題を逸らすとしよう。

 

 俺は椅子から立ち上がると、近くの棚にあらかじめ突っ込んでおいた紙袋を手に取る。そしてウララ達のもとに戻ると、紙袋に手を突っ込んだ。 

 

「じゃーん! クリスマスプレゼントォ~!」

 

 某猫型ロボットみたいな口調で言いながら取り出したのは、ラッピングされた包みだ。

 

 クリスマスといえばサンタクロースからのプレゼントだけど、さすがにウマ娘の寮に侵入して枕元に置くとか無理だからなぁ……カノープスの先輩ならやってのけそうな気がするのは多分、俺の気のせいだろう。

 

 寮長であるヒシアマゾンちゃんやフジキセキちゃんに協力してもらえば不可能じゃないと思うけど、いくらクリスマスプレゼントを届けるためとはいえ規則は規則である。大人しくクリスマスパーティーのタイミングで渡すことにした俺だった。

 

「わぁ~! クリスマスプレゼント!? なになに~!」

 

 ウララは大はしゃぎで包みを受け取る。ライスもビックリした様子で包みを受け取り、キングは苦笑しながら包みを受け取った。

 

「わわわ、な、なんだろ? お兄さま、開けてみてもいい?」

「おう、構わないぞ」

「これで何万円、何十万円ってするものが出てきたら怒るわよ?」

「どうして……」

 

 ライスも喜んでくれているけど、キングからは小さく微笑みながらツッコミが飛んでくる。どうして……どうして……。

 

「私達の年齢を考えてちょうだい。いくらクリスマスプレゼントと言っても、高い物を贈るのはよくないわ」

「え? あの、キングちゃん? ライスもなの?」

「頬にハンバーグをつけていたライス先輩がどうしたの?」

「墓穴を掘っちゃった!?」

 

 ライスとキングが言葉を交わし合う。でも二人とも笑顔で楽しそうだ。

 

「二人とも楽しそうだなぁ……ま、大丈夫だ。さすがにそんなに高い物じゃないさ」

「そう……プレゼントの値段を尋ねるのも無粋だものね」

 

 そう言いつつ、キングも包みを開け始める。ただ、一生懸命隠そうとしているけど、ウマ耳がピクピクと動いているし尻尾も揺れていた。

 

 期待しているところ悪いけど、本当に高い物でもないし、気に入るかもわからない代物をチョイスしてしまったんだが……やばい、もっとクリスマスっぽいプレゼントを選ぶべきだったかな?

 

「これは……耳カバー?」

 

 中身を確認したキングがそんな声を漏らす。

 

 消えものってわけじゃないけど、ハンカチみたいに消耗品の耳カバーを贈ることにした俺である。蹄鉄も良いかなって思ったけど、蹄鉄の質が怪我なんかにもつながるためさすがに選べなかった。

 

 ウララとキングは常に耳カバーを付けているから、丁度良いと思ったのだ。ライスに関しては普段つけていないけど、他のウマ娘と比べてもウマ耳が大きいし、虫なんかが入ると大変なため良い機会だと思ってプレゼントすることにしたのだ。

 

 使わないなら使わないで捨てれば良いし、あるいは手を加えて小物入れみたいにしてもいいしな。

 

 ウララには桜色のものを。

 

 ライスには濃い青色のものを。

 

 キングには緑色のものを。

 

 それぞれの勝負服や好きなものの色に合わせて選んでみたのである。値段は……うん、大丈夫、何十万円とかしていないからセーフ。

 

 一応ウマ娘向けの贈答用品ってことで、3組入っているものを買ってみた。擦り切れたら新しいのに替えれば良いし、複数あると洗濯もしやすいし。

 

 俺がそんな説明をすると、ウララ達はそれぞれ嬉しそうに笑ってくれる。ただ、キングだけは耳カバーの材質や手触りをチェックして、小さくため息を吐いていたが。いかん、お値段がバレる……でも口元が嬉しそうに緩んでるからセーフ? だな!

 

「えっと……実はライスもね、いつもお世話になっているからお兄さまにクリスマスプレゼントを用意してて……」

 

 そう言ってカバンから取り出してきた紙袋を渡してくるライス。一体なんだろうか、なんて思って中身を確認すると、濃い青色のマフラーだった。しかも手編みである。

 

「おお……すごいな」

 

 長さは……1メートル半ぐらいかな? これからの寒い時期にピッタリだ。

 

「……私も用意したわ。受け取ってちょうだい」

 

 ライスに続いて、キングも何やら包みを差し出してくる。こちらはかなり小さい包みだけど……ペンか何かかな?

 

 キングに断ってから中身を確認すると、出てきたのは洒落た万年筆だった。

 

「このキングのトレーナーですもの。相応に質の良いものを使うべきだわ」

 

 そう言って胸を張るキング……でも俺の反応が気になるのかチラチラと見てくる。

 

「ライスもキングも、ありがとう。早速使わせてもらうよ」

 

 まさか二人がプレゼントを用意してくれているとは思わなかった。そのため不意打ちで、とても嬉しい。

 

 そして俺はそのままの流れでウララを見た。もしかして、ウララも何かくれるのかな、なんて……。

 

「ふぁにー?」

 

 人参ハンバーグもご飯もローストチキンもサラダも食べ終え、イチゴのケーキを頬張るウララの姿がそこにあったのだった。

 

 

 

 

 

 そして、クリスマスパーティを終えて片付けも済ませた俺は、その足で部室へと向かう。戸締りはしているけど鞄とかは部室に置きっぱなしだったのだ

 

 ライスとキングからは思わぬプレゼントがあったし、楽しいクリスマスパーティだった。周りも他のチームやトレーナー達の楽しそうな声が広がっていたしな。

 

 そうやって今しがた行われていたクリスマスパーティを思い出していると、足音が背後から近付いてくる。それは聞き慣れた足音で、俺は振り返りながら口を開いた。

 

「ウララ? どうしたんだ?」

「わわっ! うしろから近付いたのによくわかったね! すごいねトレーナー!」

「そりゃあ長い付き合いだからなぁ」

 

 ウララもだけど、ライスやキングの足音もわかる。それぐらいには濃い付き合いをしているつもりだ。

 

 ウララも部室に何か置いていたのかな、なんて思いながら歩き出す。すると何を思ったのか、ウララに服の袖を掴まれた。

 

「ウララ?」

 

 周囲に人気はない。もうじき寮は門限の時間だし、トレーナーも各自帰宅している時間帯だからだ。

 

 俺が怪訝そうに声をかけると、ウララは俺の袖から手を放した。その代わりに俺をじっと見上げてくる。

 

 んー……なんだろうか? ちょっとウララの様子が普段と違うし、目的がわからない。

 

 そんな感じで疑問に思っていると、ウララが俺を見上げたままで口を開く。

 

「トレーナー、わたしもね、今はないけどクリスマスプレゼントがあるの」

 

 今はないけどクリスマスプレゼントがある……何かのとんちかな? いや、ウララに限ってそんなことはないか。つまり、今から用意するってことかな?

 

 俺は、そう思っていた。

 

「今度のレースでね、ファル子ちゃんに勝って、スレーインちゃんに勝って、ほかのみんなにも勝って……トレーナーに1着をプレゼントするからね」

 

 だが、そんなウララの言葉に俺は目を見開く。

 

「ウララ、それは……」

 

 ウララの気持ちは嬉しいけど、()()()()()だろう。

 

 ウララ自身のため、レースを楽しみつつも、勝ちたいライバルに勝つために頑張るのなら良い。だが、俺のためになんて思わなくて良いんだ。

 

 俺はそう言おうとした。しかしそれよりも先に、ウララが首を横に振る。

 

「トレーナーの言いたいこともね、たぶんね、わかってるんだー。でも、わたしはトレーナーのために勝ちたい。わたしのトレーナーはこんなにすごいんだって。わたしを一からここまで育ててくれたんだって……」

 

 自分の胸に手を当てながら話すウララ。その姿は、先ほどまでクリスマスパーティではしゃいでいた時と比べてずいぶんと大人びて見えた。

 

「――だから、あとちょっとだけ待っててほしいな」

 

 そう言って、ウララが微笑む。

 

 その笑顔を見た俺は、つい最近、ウララは変わらないな、なんて考えた自分自身がどれだけ節穴だったのかと頭を抱えたくなった。

 

 ウララはきちんと成長している。ウマ娘としても、女の子としても、日々の経験の積み重ねでゆっくりとだが確実に成長しているのだ。

 

 そんなことは考えなくていい、無茶はするな、自分のために走ってくれ……そんな言葉が脳裏を過ぎったけど、ウララの真っすぐな瞳を見て俺は苦笑を浮かべた。

 

「怪我だけはしないこと。いいな?」

「うんっ!」

 

 俺の言葉を聞いて、ウララは満面の笑みを浮かべて頷くのだった。

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