リィンカーネーションダービー ‐新人トレーナーがんばる‐   作:烏賊メンコ

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第132話:新人トレーナー、ウララと東京大賞典に挑む その1

 キングが挑んだ有記念が終わった。

 

 キングは1着になり、これでGⅠ7勝とライスを超えてシンボリルドルフに並ぶGⅠでの勝利数を挙げたことになる。

 

 俺もウララもライスもこれには大喜びで、めでたいから翌日にはクリスマスパーティを超える宴会を行う……なんてわけにはいかなかった。

 

 有記念から2日後の12月29日。今年最後のGⅠレース、東京大賞典にウララが挑むからだ。

 

 俺も気を緩める暇がない……けど、有記念の翌朝だけは普段通り部室でのんびりコーヒーを飲みつつ、スポーツ新聞に目を通していく。

 

『キングヘイロー有記念で勝利!』

『『世代のキング』、GⅠ7勝目!』

『来年はシンボリルドルフ超えか!? あるいはドリームシリーズに進出か!?』

 

 今回ばかりはどこの新聞社もキングの記事が一面を占めている。シンボリルドルフ以来となるGⅠ7勝を挙げたキングに関する記事ばかりで、ゴールを通過するキングや観客席に向かって両腕を挙げてGⅠ7勝をアピールするキング、ウイニングライブで歌って踊るキングの写真等が掲載され、様々な煽り文句が躍っている。

 

 そのまま視線をずらして部室の一角を見ると、そこにはウララ達がレースで1着を獲ったことを示すトロフィーやメダル、盾などが飾られていた。

 

(……手狭になってきたな)

 

 最初はウララ達が勝った証だからと片っ端から飾っていたし、それぞれのグッズも飾ってある。しかし最初はスカスカで寂しかったその棚も、今や多種多様な品物が所狭しと並べられていた。

 

 もっと大きな棚を設置するべきか、どうするべきか。経費で購入できなかったとしても自腹で買ってしまえば良い。しかしまだ少しはスペースがあるし、急いで購入するものでもない、か……。

 

「ふぅ……」

 

 俺はコーヒーを一口飲んでため息を吐く。

 

 そうして思うのは来年以降のことだ。来年もウララやキングはシニア級として走れるのか、それともドリームシリーズに進めとURAから言われるのか。

 

 有記念を走り終えたキングは疲労と軽い炎症こそあれど、今後に支障をきたすような怪我はしていない。炎症も本当に軽くて、レースで走れば毎回関節が熱を持つがその範疇に収まっている程度の炎症だ。

 

 だから、来年も挑もうと思えばシニア級として挑めるだろう。そうすればシンボリルドルフのGⅠ7勝を超える記録を達成できる、とも思う。

 

(来年、か……)

 

 先のことを考え、俺は再度ため息を吐く。今は明日に迫ったウララの東京大賞典のことを考えるべきで、先のことなんて考える余裕はない。しかし最近、いや、ここ数ヶ月ほど、ふとした拍子に()()()()があったりで。

 

 俺は考えを振り払うようにして、机の引き出しから一通の封筒を取り出す。ウララが出走する東京大賞典の出走表だ。

 

 チャンピオンズカップの時と同様に、そこにはウララとスマートファルコン、スレーインやハートシーザーといった名前が並んでいる。

 

 開催場所は大井レース場で、出走人数はフルゲートの16人。トゥインクルシリーズにおける今年最後に開催されるGⅠレースということで、既に注目が集まっている。出走時刻は第10レースで15時40分の予定だ。

 

 最近はキングに注目が集まってばかりだったけど、ウララはチャンピオンズカップで勝った時点でGⅠ5勝を挙げている。去年のJBCスプリント、今年に入ってフェブラリーステークス、帝王賞、JBCレディスクラシック、チャンピオンズカップの5レースで勝利しているのだ。

 

 そんなウララが東京大賞典に出るとあって、注目を集めるのは……まあ、仕方ないだろう。キングの影に隠れていたというか、芝と比べて不人気なダート戦線だから注目度が低くてそこまで騒がれていなかった。

 

 それがここにきて、良い話題があるじゃないかといわんばかりに注目を浴びている。今日は12月28日のため、世間は既に年末年始ムードに入りつつあった。そのためお茶の間を賑わせる話題として打ってつけなのだろう。

 

 トレセン学園も仕事納めをする時期で、生徒達は既に冬休みに入っていた。それは世間も同様で、大体の職種の人が仕事納めをして年末年始の休暇へと突入しているだろう。

 

 そのため今日ももう少ししたらウララ達が来て、軽い調整メニューだがトレーニングを行う予定である。

 

 先日のキングと同様に、軽い調整メニューだというのに走りたがるウララをなだめるのに苦労しそうだなぁ、なんて思ったり。

 

 あとは面倒事として、キングにテレビに出てほしい、インタビューを受けてほしい、特番を組ませてほしい、なんて話が回ってきていたりする。そんな話が出るのは良いことではあるけど、ウララのレースが明日に迫っている状態なのだ。せめてタイミングを考えてほしいものである。

 

 年末ということでトレセン学園の仕事もほとんどなく、今日はウララ達が軽い調整メニューということで時間も多い。空いた時間に済ませてしまおう、なんて考えていたら部室の外からウララ達の声が聞こえてきた。

 

 今日もウララ達は元気いっぱいだなぁ、なんて思った俺だったが、どうにもウララの声が小さい気がする。普段はライスやキングより大きな声で喋り、元気いっぱいフルチャージといった感じなんだが。

 

「おはよー、トレーナー」

 

 そうして部室に姿を見せたウララを見て、俺は小さく目を見開く。

 

 口調は普段通りどこか幼げで、しかし俺を見る眼差しが大人びて見えたのだ。それに加えてなんというか……これまでにない落ち着きを感じる。それでいて限界ギリギリまで膨らんだ風船のように、張り詰めた空気も漂っている。

 

 明日のレースに対して緊張しているって感じでもない。武者震いもしていないし、体調が悪そうというわけでもない。

 

「……ウララ?」

「ん? なーにー?」

 

 俺が声をかけると、ほにゃっと笑顔になってウララが首を傾げる。その笑顔を見た俺は困惑しつつも右手を伸ばし、ウララの頭をくしゃくしゃと撫でた。

 

「わぁ……なになに?」

 

 ウララはくすぐったそうにウマ耳を動かし、尻尾を左右に揺らす。笑顔は笑顔だが、やっぱりどことなく張り詰めたものを感じた。

 

「ウララさん、昨晩からこうなのよ」

 

 キングが俺の傍に寄ってきてそんなことを耳打ちする。昨晩から……ということは多分、キングの走りに影響されたんだろう。レース直後はキングの勝利を見て大喜びでぴょんぴょんと跳ねていたが、どうやらウララの中にある競争心に火が点いたようだ。

 

(ウララがなぁ……)

 

 昔と比べれば、レースへの取り組みも変わったウララ。それでも()()()()()()()になるのは、当日ぐらいのものだったが。

 

 だが、レースが行われるのは明日だ。今から気を張り続けても疲れるだけである。そう判断した俺はウララの頭を更に強く撫でた。するとウララはわきゃーと楽しそうな声をあげ、尻尾を更に強く振り始める。

 

「ウララ、レースを意識するのはいいけど、意識しすぎちゃ駄目だ。それじゃあ今から疲れちゃうぞ?」

「んっ……そう、見える?」

 

 心地良さそうに目を細めていたウララが、上目遣いで見上げながらそう尋ねてきた。そのため俺が苦笑しながら頷くと、ウララは困ったように眉を寄せる。

 

「昨日のキングちゃんのレースを見てね、わたしもやるぞーって気持ちがわいてきたんだー。走りたくてうずうずする……みたいな?」

 

 やっぱりというべきか、昨日のキングの走りが影響しているらしい。そうやって気合十分なのは嬉しいけど、明日まで取っておいてほしいとも思った。

 

 まあ、ウララもこれで10戦以上レースに出ているベテランである。レース前日に気を張り過ぎて疲れ果てた、なんてことは起きないだろう。

 

(本当に……ウララがなぁ……)

 

 どうやればレースに勝ちたいと思ってくれるのかと頭を悩ませていたのが、遥か昔のことに思える。実際には出会ってまだ3年も経っていないわけだが、今のウララを見ていると変わったなぁ、なんて感想が出てくる。

 

「よーし……それなら今日も気合いを入れてトレーニングするか!」

「うんっ! よーし、がんばるぞー!」

「でも明日がレースだからほどほどに、だからな!」

「うんっ! ほどほどに全力だよー!」

 

 ほどほどなのか、全力なのか、その中間なのか。ウララらしい物言いに笑みを浮かべた俺は、無言で頭を差し出しながらすすすと近付いてくるライスの頭をひと撫でしてからトレーニングの準備に取り掛かるのだった。

 

 

 

 

 

 そして、東京大賞典の当日。

 

 去年は東京大賞典を回避したため、ウララも初めて出走するレースとなる。今日も今日とて朝から元気いっぱい、やる気満々といった様子のウララを午前中軽く走らせて調子をチェックし、昼食を取らせたらトレセン学園から借りた車で現地へ向かう。

 

 さすがに有記念ほどの人出はないだろう。そもそも大井レース場は有記念が開催される中山レース場より狭いし、開催されるレースもダートのみ。

 

 最近の人気ぶりから相応の人出はあるだろうけど、中京レース場で行われたチャンピオンズカップよりも人出は落ち着くはずである……なんて思っていた時期が俺にもありました。

 

 普段は平日に行われる大井レース場でのダートレース。今日も平日といえば平日だけど、12月29日は世間様も年末年始の時期で休みって人が多い。

 

 学生のみならず、社会人の中にも年末年始の長期休暇に入っているって人が多いのだ。つまり、まあ、なんだ……。

 

「ふわぁ……人がいっぱいだねー」

 

 今日は本人の希望もあって助手席へと座ったウララが、道を歩く人々を見てそんな声を漏らす。うーん、本当に多いぞこれは……さすがに有記念ほどじゃないけど、チャンピオンズカップの時の人出を軽く超えてるんじゃないか?

 

 この分だと大井レース場はとっくに入場制限がかかっているだろうに、歩道を歩く人々は笑顔で大井レース場を目指して歩いている。いや、大井レース場というより、その近隣にある公園を目指しているのかな? たしか市民グラウンドだったか公園だったかがあったはずだ。そこなら多くの人々が集合できるだろう。

 

 俺は飛び出しに注意しながら車を運転すると、関係者用の駐車場に車を進ませる。すると、一台の車とそんな車の前に立つ一人のウマ娘が視界に映った。

 

 ニコニコと笑顔を浮かべるスマートファルコンである。その後ろには担当トレーナーの姿もあり、明らかにこちらを待ち受けているように見えた。

 

 このまま駐車場から出ていったらどうするんだろうか、なんてことを考えながら停車する。駐車場のラインに合わせて綺麗に止めて降りると、待っていたと言わんばかりにスマートファルコンが近付いてきた。

 

「こんにちは、ウララちゃん」

 

 そして感じる、圧迫するような気迫。()()と違い、仮面のような笑顔とは異なる闘争心剥き出しの笑顔でウララを見詰めている。

 

「こんにちは、ファル子ちゃん」

 

 それに応えるウララは普段通りの笑顔……じゃ、ないな。ウララもスマートファルコン同様に、闘争心が表に滲み出るような笑顔を浮かべていた。

 

 スマートファルコンほど露骨ではない。しかし、明らかにスマートファルコンを意識して闘争心を滾らせている。

 

 ()()を見たスマートファルコンは嬉しそうに、それはもう、心底嬉しそうに笑う。

 

「あはっ……ファル子、嬉しいなぁ。ウララちゃんの顔を見たらわかるよ。今日は今までとは違うんだって、ウララちゃんも本気で、全身全霊でぶつかってきてくれるんだって伝わってくる……すごく――嬉しい」

 

 笑顔を浮かべているスマートファルコンの口元が大きく、緩やかに弧を描く。その笑顔を見て俺は良い笑顔だな、なんて感じたけどおかしなことだろうか。スマートファルコンも全力でウララに向かってくると確信が持てる笑顔だ。

 

 そんなスマートファルコンの笑顔を前にしても、ウララが気圧されることはない。ただただ真っすぐにスマートファルコンを見詰め、一度だけ目を瞑り、目を開いた時には()()()()()()()に戻っていた。

 

「うん……わたしもね、今日のレースがすごく、すっごく楽しみだったんだー! ファル子ちゃん、スレーインちゃん、シーザーちゃん、デイジーちゃん、他のみんなとも一緒に走るのが楽しみっ!」

「ファル子は、ウララちゃんだけを見てるよ? ……あと、スレーインちゃんもかな」

「そこで抜かしてたら張り倒してたわよ」

 

 コツコツ、と足音を立てながら近付いてきたのはスレーインだった。ウララとスマートファルコンの会話に割り込むようにして登場したスレーインに、さすがのスマートファルコンも視線を向ける。

 

「チャンピオンズカップでは先にゴールされちゃったしね。ファル子、今日は二人から逃げ切らせてもらうからっ☆」

 

 そう言って何やら膝をすり合わせるような形で片足立ちになり、横に倒した右手のピースサインを目の横に当てるスマートファルコン。ついでにばちこーんとウインクを飛ばすと、スレーインがウインクを拒否するように腕組みをする。

 

「今日はわたしが二人まとめて抜かせてもらうわ。あんた達二人が出ているGⅠで勝ってこそ、初めて胸を張れるってものよ」

 

 ウララとスマートファルコン相手に勝利を誓うスレーイン。今のスマートファルコンが相手でも気圧された様子も見せないのは、彼女も立派なGⅠウマ娘に成長したという証なのではないか。

 

「今日のウララはスーパーウララなんだよっ! ばびゅーんって走るからね!」

 

 ――そして勝つからね。

 

 言外にそんな言葉が続いた気がして、スマートファルコンは笑い、スレーインも口の端を吊り上げる。

 

「よし」

 

 そんな3人のやり取りを見て、スマートファルコンのトレーナーが満足そうに呟いたのが聞こえた。本当に今のやり取りを見て『よし』と言えますか? うん、言えるわな。

 

 俺はお互いに健闘を誓う3人を見て、スマートファルコンのトレーナーに倣うようにして『よし』と頷くのだった。

 

 

 

 

 

 そして、大井レース場へ入場するとウララを控室へと送り、パドックへと足を進める。

 

 やはりというべきか人が多い。どうやら朝一で入場制限がかかるほど人が押し寄せていたらしく、ダートレースの過去最大の動員数を超えてしまいそうだ。

 

 というか、チャンピオンズカップの約50万人の時点で超えていたらしい。今回はそれを上回るかどうか……休日みたいなもんだし、上回るかもな。

 

 年末年始ってことで帰省している人も多いだろうけど、東京の近隣に帰省した人達がせっかくだからと見に来ていてもおかしくはない。もちろん、多忙な時期だからと家でテレビを見ながら応援するって人も多そうだけど。

 

 そんなわけで人混みを掻き分けてパドックの最前列に陣取った俺は、ライスやキングと一緒にパドックでのお披露目が始まるのを待つ。

 

 レース数が少ないダートのGⅠということもあって、今日出走するウマ娘もフルゲートの16人だ。ウララがシニア級の今の時期に至るまで、何度もレースでぶつかってきたウマ娘が多い。

 

 ただ、クラシック級からも出走する子が何人かいる。東京大賞典はクラシック級とシニア級の両方が出られるレースのため出走を決意したんだろう。

 

『3枠5番、ハルウララ』

 

 名前が読み上げられ、ウララがパドックに姿を見せる。可愛らしい勝負服に身を包んだウララの登場にパドックにいたファン達は一斉に歓声を上げた。しかし、中には困惑したような声を漏らす人もいる。

 

「今日のハルウララ……なんというか、貫禄があるな……」

「そりゃあGⅠ5勝してるんだし、貫禄も出るだろ……相変わらず可愛いし、可愛くて貫禄があるとか反則じゃね?」

「良い仕上がりだなぁ……良いトモだ……」

 

 ウララの雰囲気が普段と違うことをファンも感じ取っているのだろう。ざわめきが広がりつつある。

 

 そんな周囲の喧騒を聞きながら、俺は観客席に向かって笑顔で手を振るウララを見つめた。

 

(ウララ……)

 

 仕上がりは万全で、調子も最高で、気合いも十分だ。あとはレースで走り、スマートファルコンをはじめとしたライバル達と勝敗を決めるだけである。

 

『3枠6番、スマートファルコン』

 

 続いて出てきたのはスマートファルコンだ。ウララとは隣同士の出走番号になったため、内枠外枠の有利不利はないと考えて良いだろう。

 

「最近のスマートファルコン、変わったよな……」

「わかる。良い笑顔を浮かべるようになったよなぁ、ファル子」

「たまに怖い笑顔を浮かべるけどな」

「わかる。だがそれがいい」

 

 出てきたスマートファルコンを見て、ウマ娘ファンが言葉を交わす。しかし交わされる言葉はその多くが好意的なもので、スマートファルコンは満面の笑みを浮かべながらポーズを取った。

 

「スマートファルコンでーすっ! ファル子って呼んでねー☆」

「ファル子おおおおおおおおおおぉぉっ!」

「ファ・ル・子! ファ・ル・子!」

「今日も応援してるよファル子おおおぉっ!」

「ありがとー!」

 

 うーん、一際気合いが入ったファンがいるなぁ。あのノリ、路上ライブに来ていたファンかな? ピンク色の法被を着てるし。

 

 しかし……今日のスマートファルコンはウララに負けず劣らず仕上がりが良さそうだし、調子も良さそうだ。気合いも乗っているし、これまで見た中で最高の状態かもしれん。

 

 チャンピオンズカップでウララに負けたのが良い方向に作用したんだろうか……今のスマートファルコンは以前と比べても怖い。

 

『6枠11番、スレーイン』

 

 今日のスレーインは11番だけど、追い込みを得意とする彼女にとっては有利とも不利とも言えないだろう。追い込みをかけるまでにどんな位置につけるかの方が重要なはずだ。

 

 パドックに姿を見せたスレーインは気合いが入った面持ちでファンに視線を向ける。今日こそはウララもスマートファルコンもまとめてぶち抜く、と言わんばかりの表情だ。

 

 この子もチャンピオンズカップに出たというのに、仕上がりも調子も良さそうである。

 

 そうして、パドックでのお披露目が終わる。各ウマ娘はそれぞれコースに向かって移動を始めるが、ウララはコースに向かわず俺の方へと駆けてきた。そして柵越しに俺と向き合うと、普段と違う、大人びた笑みを浮かべる。

 

「ファル子ちゃんとは3勝3敗……けっちゃくをつけてくるからっ! だから見ててね、トレーナー!」

「ああ……スタートからゴールまで、そしてウララが勝つところを見てるからな」

「うんっ! それじゃあいってくるね!」

 

 そう言って、笑みを深めたウララが駆けていく。それをライスやキングと一緒に見送った俺は、観客席へと向かう。

 

 そして東京大賞典が――俺にとって今年最後のレースの幕が上がった。


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