リィンカーネーションダービー ‐新人トレーナーがんばる‐   作:烏賊メンコ

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第73話:新人トレーナー、後輩と絡む

 ライスの秋の天皇賞勝利に伴う春秋天皇賞連覇、ウララのJBCスプリント勝利、それにキングのスプリンターズステークス1着からの菊花賞3着という結果で、俺はここ最近、大忙しである。

 

 その影響もあってトレセン学園から割り振られる仕事も減っている……んだが、よくよく考えるとURAとか出版社とかテレビ局とかからのインタビュー依頼って、これ、ある意味トレセン学園から割り振られる仕事と変わらないよね?

 

 うちのチームの利益にもなるけど、URAやトレセン学園の宣伝、あとはウマ娘やウマ娘が走るレースの宣伝につながるのだ。つまり、トレセン学園から割り振られる仕事が減ったと思っていたのは俺だけで、やっている業務内容が変わっただけ、というオチである。

 

 一体いつから仕事が減ったと錯覚していた――?

 

 むしろ慣れないインタビューばっかりで、仕事が増えた気すらする俺である。いや、肉体的な疲れは普段よりマシだけど、精神的な疲れが大きいのだ。

 

 そんな中でもウララ達のトレーニングは手を抜けない。キングがマイルチャンピオンシップに出る予定だし、ライスのジャパンカップも控えている。ウララは……年内にもう一戦挑めるか?

 

 12月前半のチャンピオンズカップか、年末の東京大賞典か。GⅢで短距離のカペラステークスもあるが、どうしたもんか……あとはオープン戦ばっかりなあたり、ダートは本当に芝よりレースが少なくて泣ける。

 

 芝はGⅠだけでもマイルチャンピオンシップ、ジャパンカップ、有馬記念。ジュニア級も含めれば阪神ジュベナイルフィリーズ、朝日杯フューチュリティステークス、ホープフルステークスと、今年もあと1ヶ月半と少ししかないのに数が多い。

 

 兎にも角にも、ウララのレースだ。カペラステークスでも良いけど、JBCスプリントで勝ったし、次はマイルのGⅠを狙わせてみるか?

 

 チャンピオンズカップがマイルのレースで1800メートル。東京大賞典は中距離のレースで2000メートルだ。

 ただ、マイル以上のレースになると、スマートファルコンと当たる可能性が一気に高くなる。短距離ならスマートファルコンが相手でも、ウララなら五分の勝負に持ち込めるんだが……マイルで勝率は二割から三割。中距離だと……十回に一回勝てるかどうかってところか。

 

 スマートファルコンとぶつからなければレースで勝てる可能性も上がるけど、距離が伸びれば伸びた分、ウララは一気に不利になる。それに、JBCスプリントの時にわざわざ声をかけてきたスマートファルコン……あの子はどうにもウララに執着している節がある。

 

 短距離のレースだけにウララを出し続ける、なんて方法もなくはないけど……。

 

(……それは逃げだよな)

 

 俺はライスやキングと一緒にトレーニングに励むウララを見ながら、そんなことを思う。

 

 GⅡやGⅢで全距離の重賞を勝たせようと思っていたキングは、自らGⅠに挑みたいと伝えてきた。目下のところはマイルチャンピオンシップが目標だが、勝てれば中距離や長距離のGⅠにも挑みたいと言ってくるだろう。

 そうやって自らの限界に挑戦するキングの姿を見て、ウララがどう思うか。

 

(それに、スマートファルコンとは1勝2敗で負け越してるしな……問題はチャンピオンズカップと東京大賞典、どっちに出すかだけど……)

 

 両方に出す、という選択肢もないではない。だが、スマートファルコンに勝ちたいがために手当たり次第にGⅠに出るというのも()()()()()気がする。

 

(スマートファルコンに聞けば答えてくれそうな気もするけどな……)

 

 チャンピオンズカップと東京大賞典、どっちに出る? なんて尋ねたら普通に答えてくれそうだ。あの子もいまいち読めないところがあるけど、ウララをライバル視しているところがあるのは間違いないだろう。

 

 今日予定していたインタビューが終わり、記者がウララ達の練習風景を撮影しているのを横目に見ながら俺はそんなことを考える。すると、若い男性と一人のウマ娘が俺に近付いてきた。若いといっても、俺と大差ないが。

 

「あの、先輩……少しお時間いいですか?」

「ん? おう、どうした?」

 

 声をかけてきたのは今年度になってトレセン学園に配属された新人のトレーナーである。トレーナー養成校出身のため、そっちの意味でも俺の後輩に当たる子だ。同じトレーナー養成校出身なのに、当時は勉強と試験対策で忙しすぎてまったく関わりがなかったが。

 

「今、俺が育てている子なんですが……ちょっとアドバイスが欲しくてですね」

「アドバイス? おお、いいぞ」

 

 どうやらアドバイスを求めて声をかけてきたらしい。同期連中とは意見交換するし、育てているウマ娘自慢もよくするし、なんなら煽り合ったりもするが、アドバイスをどうっていうのはあまりない。お互いに育成方針があるからその辺りは当然だろう。

 

 ただ、今年度入ってきた新人達にアドバイスを求められるのは割とよくあることだったりする。もちろん、相手も一年目とはいえ同じトレーナーである以上、アドバイス以上のことはしないが。

 

「うちの子、メイクデビューで勝ったんですけどその後オープン戦で2回負けてまして……これからの育成について、少し方向性に悩んでるんですよね」

「この子は……ああ、コスモス賞と野路菊ステークスに出てたっけ?」

 

 コスモス賞は8月前半に行われるオープン戦で、芝の1800メートル。野路菊ステークスは9月前半に行われるオープン戦で、こちらも芝の1800メートルだ。どちらもジュニア級限定のレースである。

 

「……わたしのこと、知ってるんですか?」

 

 俺が後輩君と話していると、ウマ娘が驚いたように尋ねてくる。ジュニア級だからか、まだまだ幼いし線が細いように見えるなぁ。

 

 育成が始まって半年ぐらいだから、実際に線が細いのか。夏の合宿で見かけたチームリギルのナリタブライアンほど鍛え上げられている雰囲気はないが、トップチームと比べるのはさすがに酷だろう。

 

「知ってるかって……もちろん知ってるよ。可愛い後輩が育ててる子だしな。コスモス賞で3着、野路菊ステークスは5着だったよね?」

「え、ええ……」

「ちょっと待って、しっかり思い出すから……たしか戦法は……そうだ、先行だったな。ああ、思い出した。レース映像を何回か見たわ。ふーむ……」

 

 俺はウマ娘の足を見ながら、周囲をぐるぐると回る。上は体操服、下は短パン姿のため上半身の筋肉はしっかりと見れないけど……ううん……。

 

「メイクデビューでマイルに出して勝ったから、オープン戦もマイルに出してる感じか?」

「そうなんです。今のところマイルが一番適性があると思ってるんですけど」

「だなぁ。筋肉の付き方的に、一番向いてそうなのがマイルだわ。んー……でも、向いてそうってだけで、もうちょいスタミナを付けた方がいいかもな。野路菊ステークスでも最後に失速してたし、あと一押しできるスタミナがあった方がいいと思うんだけど」

「あー、スタミナですか。メイクデビューまでに十分スタミナをつけたんで、スピードを鍛えてたんですよね」

 

 俺は後輩君と言葉を交わしつつ、ウマ娘を観察していく。

 

「スピードも大事だけど、スタミナは常にトレーニングで鍛えていくぐらいが丁度いいぞ? 多くて困ることはないしな。あと、スタミナを鍛えると自然と強くなるし」

 

 うちのウララみたいにね……いや、うちのウララはスタミナを鍛えないとダートの短距離ですら完走できるか危うかったけど。

 

「それと、俺ならもう少し左足を意識させるかな。利き足は右だろ? ほら、右腕と左腕……人間でも利き腕とそうじゃない方で筋力やら器用さが変わるし、足も当然そうだから、左右で上手いことバランスを取らないと故障が怖くてなぁ……」

「なるほど……たしかにそうですね。俺も意識してるつもりですけど、偏ってます?」

「ちょいと右に偏ってるな。今のところは問題もないだろうけど、歪みが酷くなると悪影響が出るぞ」

 

 人間でも体の筋力のバランスが偏ると、どこかしらに悪影響が出たりする。姿勢が悪くて少しずつ足腰を傷めたり、それで片方を庇ったらもう片方を傷めたりと、バランスは大事だ。

 それが人間とは比べ物にならない身体能力を持つウマ娘だと、ちょっとのバランスの崩れが大きな怪我につながることもある。

 

 それを思えば、俺が育成を引き継ぐ前のライスは本当にギリギリだったかもしれん。いやうん、普通にギリギリだったわ。

 

「でも、その辺りをどうするかは二人でしっかり話し合って決めないとな。俺は故障を防ぐことを優先するけど、ウマ娘によっては体の頑丈さも差異があるし……頑丈ならそこまで気にしなくていいぞ。逆に頑丈じゃないのなら、故障を防ぐためにもバランスを取った方が良いと思う」

「バランスですか……うーん、見ればある程度わかるんですが、それ以上となると難しいですね」

「ん? なら触って確認すればいいじゃないか」

「え?」

「え?」

 

 俺は後輩君と視線を合わせたまま、首を傾げる。

 

「トレーナー養成校でも触診は習ったろ?」

「習い……ましたけど……相手はウマ娘ですよ?」

「んん? ウマ娘相手に役立てるために習ったのに、使わない理由はないだろ?」

 

 俺なんか目で確認する以上に触診を頼りにしているぐらいだ。見て確認するだけでもある程度はわかるけど、触診の方がより正確にわかる。ただ、さすがに医療用の機械には勝てないため、ライスの育成を引き受けた直後は病院に直行したが。

 

 俺の言葉を聞いた後輩君は、気まずそうに視線を逸らした。後輩君が育てているウマ娘の方も、どことなく気まずそうに視線を逸らしている。

 

「そ、そういう先輩は触診とか、本当にやるんですか?」

「やるよ? 毎日のようにやる」

 

 ウララもライスもキングも、みんな協力的だ。育成の上でも非常に助かっているし、故障を防ぐためにも重要なのだ。

 

「マジっすか……」

「マジだよ」

 

 んー? 後輩君とウマ娘はお互いに横目で視線を交わし合うと、どこか照れ臭そうにしている。それを見た俺は後輩君の首に腕を回すと、引きずるようにしてウマ娘から距離を取った。

 

「なんだよなんだよ。初心なネンネじゃあるまいし、触診で何を照れてるんだよお前さん」

「うぶな……ネンネ? すいません、先輩。それってどういう意味なんですか?」

「……マジか、これ死語か。通じないのか……ザギンでシースーとかマブいチャンネーとかチョベリグとか通じねえのか?」

「いや、先輩なんですかそれ。日本語なんですか?」

 

 おかしいな……コイツ俺と年齢ほとんど変わんないはずなんだけど……いやうん、前世含めたら倍以上違うから仕方ない……のか? そんな馬鹿な……。

 

「へーい、そこのマブいチャンネー!」

「あらぁ? あたしのことかしら? マブいだなんて……もうっ! 照れるじゃない!」

 

 俺は偶々通りがかったマルゼンスキーに声をかける。うん……通じるじゃないか。

 

「バイビー、マルゼンスキー」

「バイビー、キタルファのトレーナー君」

 

 やっぱり通じるじゃないか……! 

 

「先輩、死語の話はどうでもいいっす。触診の話っす」

「お前敬語が崩れてきたね。別に構わんけど……せっかく習ったのに使わないのは勿体ないって。な?」

「いやでも、()()()()()()のにわざわざ触って確認する必要、なくないですか? あと……ほら、ウマ娘も年頃の女の子ですし、恥ずかしがりません?」

 

 いや、俺は恥ずかしくないですよ? なんて言い張る後輩君。本当かお前……あと、俺も見ればわかるけど、()()()()()()()()()()()って話だ。

 

 あくまで俺の予想だけど、東条さんとかスピカの先輩ぐらいになると見ただけでかなりの精度でウマ娘の実力を測れると思う。

 

 ウマ娘も生き物である以上、日によって調子が変わるし、発揮できる力も増減するだろう。だからウマ娘の実力を見ただけで測れるというのは非常に強みだ。しかしその辺は経験が物を言うため、俺含め若手のトレーナーでは先輩方には到底敵わない部分である。こればかりはどうしようもない。

 

 俺の場合は過去のレース映像を漁りまくって調子の良し悪しや実力を測っているものの、元々持っている()()()はそこまで正確じゃない。

 

 たとえば、ロールプレイングゲームのようにウマ娘にステータスがあるとして、俺が見ただけでわかるのは10単位。東条さんやスピカの先輩はそれが2や3の単位で正確に測れる……そんな感じだ。

 

 過去のレース映像から精度を高めれば互角……って言えたらいいなぁ。

 

 で、触診の場合触って確認するため、1単位でわかる。そんな感じである。熟練工が指先の感覚を頼りに1000分の1ミリ単位で物を加工するようなものだ。いやうん、そんな芸当は俺にはできないけど。

 

「うちの子達は全然だなぁ。それが必要なことだって理解してくれてるし、実際にそれで強くなってるし」

「GⅠウマ娘になるのに必要なこと……いや、俺は騙されないっすよ。担当しているトレーナーが相手だから、本当は嫌だって言い出せないだけですって」

「嫌だって思われた時点で……いや、思われる前に察すれば大丈夫だって。雰囲気で感じ取れ。あとうちの子達は……っとぉ?」

 

 後輩君と話していると、背後から聞き慣れた足音が駆け寄ってきた。そのため俺が前傾姿勢を取ると、ウララがぴょんと背中に飛び乗ってくる。気分は某横スクロールアクションゲームで配管工にマグマに突き落とされる恐竜だ。でっていう。

 

「トレーナー! 芝のコースを5周走ってきたよー! 次は何をすればいいの?」

「お兄さま、今度は何をすれば……誰、ですか?」

「他所のトレーナーね。何をしているの?」

 

 飛び乗ってきたウララだけでなく、ライスは見慣れない後輩君を警戒したのか俺の服の裾を掴みながら背中に隠れ、キングは俺の隣に立って疑問をぶつけてくる。

 

「うお……ライスシャワーにキングヘイローにハルウララ……すげぇ……やっぱりGⅠウマ娘は違うなぁ……」

 

 後輩君は気圧されたように一歩下がった。見れば、後輩君のウマ娘は五歩ぐらい後ろに下がっている。

 

 後輩君は呆然とした様子だったが、やがて正気に返ったのか顔の前でパタパタと手を振る。

 

「いやいや……先輩、担当しているウマ娘との距離が近くないっすか? 担当のウマ娘をおんぶしてる人、初めて見たんですけど」

「んな馬鹿な。他にもいるって」

「本当ですって。そんなにベタベタ引っ付いてたら、なんて言われる……か……」

 

 ん? 後輩君の視線が俺の後ろに……おや?

 

「トレーナー! ターボね、ジャパンカップで今度こそテイオーに勝ちたい!」

「そのためには、もっとスタミナをつけないといけませんね」

 

 振り向いた先にいたのは、チームカノープスの先輩とツインターボだ。ツインターボは甘えるように先輩の背中にぶら下がっており、先輩はそんなツインターボを物ともせずに平然と歩いている。すごい体幹してますわ。

 

 あと、やっぱりウマ娘をおんぶしているトレーナーが俺以外にもいるじゃないか……!

 

「いるじゃんか」

「いました……ねえ……あれ? もしかしてそれが普通なのか? 俺が間違っていた……?」

 

 後輩君は愕然とした顔付きでブツブツと呟く。それを見た俺は、ウララを背負い直しながら一つ頷いた。

 

「で、参考にするのは良いけど、相手の性格によっては信頼関係が破綻するかもしれんから注意しろよ」

「ええっ!? ちょ、それなら俺はどうすればいいんすか!?」

 

 ここまで話しておいて、と訴える後輩君。でもなぁ、こればっかりはトレーナーとウマ娘の相性次第だし、お互いの性格とかもあるしなぁ。

 

 ウララは無邪気に背中に飛び乗ってくるし、ライスも無邪気……うん、無邪気に背中に登ろうとするけど、キングはそうじゃない。

 

 ウララとライスは頭を撫でたりおんぶをしたり、俺の腕にぶら下がってきたり抱き着いてきたりと直接触れ合うことが多いけど、キングはどちらかというと精神的な触れ合いの方が多かったりする。その辺りは性格に因るのだろう。

 

 だから、俺に言えることは一つだけだ。

 

「少しずつ、お互いのことを知って信頼し合えばいいんじゃないか? そうすれば自然と付き合い方もわかるだろ。うちとかさっき通ったチームカノープスみたいな関係もありだし、チームリギルみたいな関係もありだし、チームスピカみたいな関係もありだし」

「先輩、俺、チームリギルとかチームスピカとかチームカノープスの先輩方とは業務以外で喋ったことないっす」

「……とにかく自分達に合った関係を目指せってことだよ」

 

 そういえば俺も一年目の今の時期はその三人とはしっかり話したことなかったわ。そんなことを思いつつ、話を締めくくる。

 

「で、お互いのことをしっかりと理解して、言いたいことも言い合って、どんな風に指導したい、どんな風に走りたい、どんなレースに出たい、なんてこともしっかりと話し合って……そうしている内に強くなっていくもんじゃないのか?」

「あっ! わたしもねー! トレーナーとそうやって頑張ってきたよー! トレーナーといっしょだと、ウッララーな気持ちになるのっ!」

 

 背中で俺の言葉を聞いていたウララが、そう言って笑顔で俺の左肩に顎を乗せてくる。髪がサラサラでくすぐったいな……って、ウララのウマ耳が俺の側頭部をペシペシ叩いてるわ。ところでウッララーな気持ちってどんな気持ち? ニュアンスは伝わるけども。

 

 ……あれ? 最初は後輩君のウマ娘の育成方針に関して相談を受けていたはずなのに、なんでこんな話をしてるんだっけ?

 

 俺が首を傾げていると、後輩君もいまいち腑に落ちない様子で首を傾げていた。

 

「なるほど……なるほど? 信頼関係が重要って話っすね?」

「まあ、そんな感じだよ。養成校でも習ったろ? それに俺達トレーナーはこの子達の人生を背負っているわけだし、できることはなんでもやらないと」

 

 トレーナーが担当ウマ娘の育成方針に関して『本当にこれでいいのか?』とか『他にもっと良いトレーニング方法があるんじゃないか?』なんて考える分には問題ないだろう。より良い結果を求めて思索するのはある意味当然のことだ。

 

 だが、逆にウマ娘から常に疑問を持たれるようではまずいと思う。『このトレーナーについていって大丈夫だろうか?』なんて思われたら、俺なら本気でへこむ。『こうした方がいいんじゃない?』とか『こっちの方が良くない?』みたいな話なら、受け入れて一緒に検討していくんだが。

 

 そうやって後輩君と話していると、ある程度は納得できたのか俺達に向かって一礼し、ウマ娘と一緒に歩き去っていく。

 

「トレーナー、どうだったの?」

「うーん……参考になったけど、実行できるかはまた別問題って感じかなぁ……さんの……通り……愛……」

 

 遠ざかっていく後輩君達を見送る。距離が開いていくため徐々に言葉が途切れ途切れになっていくが、まあ、さっきより半歩ぐらい距離が近いようにも見える。

 

 俺は頭を振って意識を切り替えると、ウララ達に次のトレーニングの指示を出す……と、遠目に見知った顔を見つけた。

 

(ん? あれは……たづなさん?)

 

 練習用コースの端に、たづなさんの姿があった。ただし既に背中を向けており、首を傾げながら立ち去っていく。誰かに何か用事があったのだろうか? でも、たづなさんの周囲に人影はないしなぁ……。

 

「お兄さま、どうしたの?」

「ん……いや、なんでもない。それじゃあ次のトレーニングだ。三人併走で坂路10本! 行ってこい!」

 

 俺はウララ達にそんな指示を出すと、目の前のトレーニングに集中するのだった。

 

 

 

 

 

 そして、忙しかった……いやさ、忙しすぎたインタビューも一段落し、11月の後半へと差し掛かる。

 

 キングが出走を希望したマイルチャンピオンシップは目前に迫っており、無事に出走が叶って送られてきた出走表を確認した俺は、思わず眉を寄せてしまう。

 

(これは……マジか。まずいことになるかもしれんな……)

 

 マイルチャンピオンシップに出走するウマ娘の名前を確認した俺は、そんなことを考えてしまう。

 

 まずいことになる、なんて考えたが、それは出走するキングがまずいことになるわけではない。むしろ逆で、()()()()()()()()追い風かもしれない。

 

 警戒していた有力ウマ娘の内、マイルチャンピオンシップに出走するのは二人。タイキシャトルとミークだけで、他の有力ウマ娘の名前はなかった。

 

 つまり、だ。

 

(ジャパンカップ狙いの子ばっかりってことか……たしかにマイルが得意な子は少なかったけど、エルコンドルパサーもマイルチャンピオンシップを回避するとは……)

 

 ジャパンカップはクラシック級とシニア級の有力ウマ娘達がぶつかり合うことになるかもしれない。俺は出走表を見ながら、そんなことを考えるのだった。

 

 

 




Q.ところでこのトレーナー、何歳なの?
A.生まれ変わって現在21歳。中学卒業(15歳)→トレーナー養成校(4年制という独自設定で卒業時19歳)→トレセン学園(1年目で20歳。2年目で21歳)という経歴。
トレーナー養成校は現実のJRAの騎手過程(3年)+その他の知識(1年)の計4年でトレーナーライセンスの合格を狙うというイメージ。なお、この設定は今決めた模様。
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