インフィニット・ストラトス ―成層圏を狙い撃つ男は異世界を狙い撃つ― 作:八神刹那
戦闘を終えたロックオンは廃墟と化した研究所に降り立ち、身にまとっていたデュナメスを解除する。
「さすがはソレスタルビーイングのガンダムマイスターだな」
ナギが声をかける。
「まさか、3対1で敵を追い返すなんて‥‥‥」
ラーナはロックオンの上げた戦果に驚いている。
「いや、勝てたのはGN粒子とハロのおかげだ」
「それでも、敵を退けたことは誇るべきです。あれはたぶん、欧州のどこかの国のIS小隊。それを退けたんですから」
「それよりもあんたらは大丈夫なのか?研究所破壊されちまったけど」
ロックオンが辺りの惨状を見渡す。これでは修復するのにかなりの時間を有してしまう。それに
「問題はこれからだな」
ナギが言った。
「どういう意味だ?」
「あなたの存在を軍関係者がしってしまったのよ。それはかなりやばいわ」
ラーナのいいたいことは理解できた。話を聞く限りだとISは女性にしか扱えないかなり特殊な兵器。しかも、世界パワーバランスを左右するほどの代物だ。それが男に使えたとなると
「世界中の軍隊が俺を狙うってことか」
「簡単に言えばね」
「どうする?俺はお前を縛る権利がない。お前の自由だ」
ロックオンの頭の中には以前のソレスタルビーイングのように1人で世界と戦うという選択肢があった。しかし、それは優秀な仲間がいたからであって自分一人ではなにもできなかったであろう。
「この世界で一人でやっていくのは厳しいな‥‥‥」
「だったらとっておきの場所があります」
ラーナが言った。
「とっておきの場所?」
「はい。あなたの素性を世界に知らす必要後があるけど、この世界で唯一って言って良いほど、どの国も干渉できない施設があるの」
「どの国も干渉できない施設?なんで、そんなのがあるんだよ」
ロックオンが聞く。そんな都合のいい施設があるとは考えにくい。何か裏があるはずだ。
「IS学園。ISの操縦者を育成するための学園。そこなら機密保護の関係でどの国からも干渉できない状態になっているの。とは言っても間接的に干渉されてしまうけどね」
ラーナの説明にロックオンの脳内に嫌な記憶が蘇る。
KPSA。反政府ゲリラ組織であったそれのほとんどの構成が幼い子供だった。そして、かつての仲間も自信が恨むあの男によってゲリラに仕立てられたのだ。
「‥‥‥子供に戦い方を教えているのか?この世界の連中は分かっているのか!?ISはスポーツじゃないぞ!」
ロックオンが声を荒げる。
「落ち着け。おまえの言いたいことは理解できるが、今はこれからのことを考えるべきだ」
ナギが落ち着けと言う。
ロックオンの言いたいことは理解できる。ISはスポーツとして、使用されているがその根本的なモノは宇宙開発であり、それが兵器として運用された。それを扱うためにまだ、幼い子供に戦い方を教えるのはソレスタルビーイングの観点からすれば戦争幇助になりかねない。
「あなたがなんで、そこまで怒るのかは聞かないけど。あなたに行ってほしいの。そこにあなたと同じように男でISを使える人物がいるから」
「どういうことだ?」
ロックオンの言葉にラーナは自分の端末を操作し、一人の少年を写した写真を見せる。
「織斑一夏。もし、彼がどこかのテロ組織や軍に捕まったらこの世界は最悪の方向に流されるわ」
「‥‥‥男でもISが使えるようになるかもしれないってことか」
「そうなったら最悪なのよ。それに彼は私の友人の弟なの。だから、助けてあげて」
ラーナが頭を下げた。ロックオンは考える。これからのことを。この世界は自分が思っていた以上に危険な世界である。それを変えるために今の自分にできることはーーーーーー
「わかった。行こう。そのIS学園とか言うところに」
そう力強く言った。
「ありがとう。じゃあ、これからが少し大変ね。細かいことは私がやるからロックオンはデュナメスの調整とかできる限りのデータを私に頂戴。そうすれば色々と手助けできるから」
「わかった。ラーナ。よろしく頼む」
そんな2人の姿を見たナギは
「さて、俺はそろそろ帰るか。ロックオン・ストラトス。後はよろしくな。それと、気をつけろよ。世界を渡った者はおまえだけじゃないかもしれないからな」
それだけ言うと事件の壁に穴を開けるようにして、その場から消えた。
「さあ!これから忙しくなるわよ!」
日本。IS学園。
入学式を明日に控えたこの時期に織斑千冬は画面に映る弟の姿を見て、ため息をついた。
「よくもあいつはこんな面倒事を‥‥‥」
そんなことを考えていると端末が鳴る。しかも、聞き慣れない音楽で。画面には正義の女神と映されている。
「‥‥‥ラーナ・リターナーか?」
呼びかけに応じると
『ええ。久しぶりね千冬』
懐かしい友人が映った。
「そうだな。それよりどうした?お前の研究所が襲撃されたという話があったが」
『その事も含めてのお願いがあるの。それよりもIS学園のシステムって少しヌルくない?簡単にハッキングできたし』
「なにをしたんだ?」
『新しい教師を紹介。っていうか、そこに行くようにしといたから。よろしね!』
ラーナはそう言うと通信を切った。千冬は眉をしかめながら学園内のネットワークアクセスし教員の名簿を見る。そこには
「これはーーーーーー!?」
名簿の覧にはこの学園で教師をできるはずのない人物の名が記されていた。