インフィニット・ストラトス ―成層圏を狙い撃つ男は異世界を狙い撃つ― 作:八神刹那
「ストラトス先生。なんか、すいません」
「気にすんなって。こういうことには慣れっこだ」
休み時間となり、ロックオンは一夏にISの基礎的なことについて教えることになった。
(性格は違うが刹那のことを思い出すな)
一夏のことを見ているとCB時代のことを思い出す。最もあのときはこんな和やかな雰囲気ではなかったが、
「休憩時間だと教えることが限られてるからな。教えるのは放課後。俺の業務が終わってからだ」
「わかりました。それより、職員室に戻んなくていいんですか?」
「あそこにはいたくないな。色々と視線がな」
男一人で女だらけの職員室にはいたくない。廊下からも視線──と言うよりもほぼ全クラスの生徒たちがロックオンたちを見に来ている。それは、ただ単に物珍しさがあるのだろうが、職員室の空気は違う。
(殺気よりもすごい気迫を感じるんだからな)
そう、教師たち(未婚、もしくは彼氏なし)の視線が獲物を見る猛禽類に見えるのだ。そんな空間にはいたくないと言うのが、正直なところだ。
「まあ、細かいことは気にするな。男同士だ。仲良く行こうぜ」
ロックオンはそういうがなぜだろう。この織斑一夏と言う少年からは刹那以上の危険なにかを感じてしまう。現に篠ノ之箒の視線が痛い。
(はあ、貧乏くじなのは変わらないのか?)
そう思っていると、
「ちょっとよろしくて?」
「ん?」
「へ?」
横から声をかけられた。こんな状況でよく声をかけられたな感心すると、
「まあ!? なんですの? そのお返事。この私に話しかけられたのならそれ相応の答え方があるではなくて?」
金髪碧眼の生徒がいた。確か、セシリア・オルコット。入試を首席で入学した生徒だ。
「だって、俺、君のこと知らないし」
「一夏。自己紹介の話を聞いていたのか? 彼女はセシリア・オルコット。イギリスの代表候補生だ」
ロックオンが言うと一夏は頭に?マークを浮かべている。まさか、なと思いながらも会話に耳を傾けていると、
「代表候補生ってなに?」
予想通りのことを言ってきた。それを聞いた全員がズザーッとこけてしまう。現に話しかけてきたセシリアは「あ、あ」と開いた口が閉じない様子だ。
「一夏。さすがにそれは知らないとまずいぞ。国家代表候補生。文字通り、その国のIS操縦者の代表になりうる候補生だ」
ロックオンの説明に一夏はなるほどと頷くが、一般常識レベルのことを知らないことを考えるとこれから先のことが不安になる。
「そう。ストラトス先生の言うようにエリートなのですわ!」
復活したセシリアがそう言うが、
「いや、オルコット。エリートとは言ってないぞ」
「全く、男でありながらISを扱えるということで少しは期待した私が間違っていましたわ。やはり男などと言うような俗物などに少しでも興味を持ったこと自体が大きな間違いだったのですわ。ストラトス先生はある程度の知識はあるようですが」
彼女がロックオンたちに向ける瞳には明らかに侮蔑が含まれている。ロックオンは気にせず話に耳を傾ける。
「俺になにかを期待されても困るんだが・・・」
ボソッと一夏が呟いた。
ロックオンは天使ナギとか言うやつに人為的にこの世界に来たのだが、一夏は偶然にISを起動させてしまい。強制的に学園に入学されたのだ。自分の意思とは関係なく。
「オルコット。それ以上は教師として黙ってられないぞ。相手の事情を考えずに物事を言うのは代表候補生として、あるまじき行為だと俺は思うが」
このまま、黙って聞くわけにはいかないと判断したロックオンが止めにはいる。
「・・・先生が言うなら、今のところはここまでにしておいてあげますわ。それでも私をがっかりさせないでください」
自分の席に戻っていくセシリア。ちょうど休み時間終了のチャイムがなる。
「一夏。あまり気にするなよ」
ロックオンはそう告げながら、クラスの一番後ろの定位置に戻る。
(この世界は俺が思っている以上に危険だな)
女尊男卑の世界と言うのはラーナの口から聞いてはいたがここまで露骨なものだとは思いもしなかった。もしかしたら、自分の世界以上に危険なバランスにあるのかもしない。その中心にあるのが──
(IS。ガンダムよりも世界の均衡を壊す存在かもしれないな)
ロックオンは再度、この世界の認識を改める必要があると思うのであった。
次の授業は織斑千冬が教鞭をとるらしい。そのためか、生徒たちの目がかなり真剣だ。
「それではこの時間は実践で使用する各種装備の特性について、説明する」
この時間は基礎的なISについて学ぶことになっており、ロックオンは一番後ろから副担任でもある山田真耶とともに授業に耳を傾ける。
「ああ、その前に再来週行われるクラス対抗戦に出る代表者を決めないとな」
代表者? 自分には関係ないなとロックオンは窓の外の景色を眺めることにする。なぜだが、結末が見えている気がする。
「ちなみに自薦他薦は問わない。誰かいるか? それと推薦されたものに拒否権はない」
「はい! 織斑くんを推薦します!」
「私も織斑くんを!」
一斉に一夏を推薦する女子生徒たち。
(まあ、こうなるわな)
ヴェーダで確率を計算する以前の問題だとロックオンは苦笑いしてしまう。
「お、俺ぇ!?」
即答で誰かが一夏を推薦した。
「静かにしろ織斑。推薦されたものに拒否権はない。どうする? 他にいないのか? いないならこのまま──」
「はい! ストラトス先生を推薦します!」
一夏がロックオンを巻き込んだ。
「俺を巻き込むなよ」
ため息をついてしまうロックオン。ロックオンは確かに生徒としてもクラスにいるが本質は教師だ。こういったことに参加するのは立場上まずい。
「そうだな。面白そうだから、このままでいいか。他にいないか?」
千冬が鬼だと思った瞬間だった。
「おいおい。ミス織斑。俺が代表になるのはまずいだろ。慎んで辞退させて──」
「さっきも言いましたが他薦された者に拒否権はありませんよ。それにいい機会です。あなたの──」
千冬がなにかをいいかけたとき、
「納得がいきませんわ!」
一人の生徒が立ちあがった。もちろん、セシリア・オルコットである。
「そのような選出、認められるはず筈もありませんわ! 男がクラス代表などと、恥じさらしも良いところですわ!!」
やはりと言うべきであろうか。ロックオンは再び、ため息をついた。
「クラス代表は実力ある者が就くべき役職でありそれに相応しいのはこの私、イギリス代表候補生であるセシリア・オルコットですわ! たどでさえ、後進的な国いるのが屈辱で」
セシリアの話を聞いていると、ロックオンは疑問に思ってしまう。なぜ、彼女はあそこまで、男性を毛嫌いしているのだろうか。もしかしたら、自分のように何か複雑な事情があるのかもしれない。詳しく、調べる必要があると思っていると、
「イギリスだってたいした自慢はないだろ。何年まずい料理世界一の覇者だ」
一夏が言い返した。
「あ、あなた! 私の祖国を侮辱しますの!?」
「先に侮辱したのはそっちだろ」
「男性が私を侮辱するなど! 決闘ですわ! 織斑一夏!」
「じょうとうだ! ハンデぐらいつけてやる!」
「ハンデ!? ジョークがお得意のようですね。男が女に勝てたのは昔の──」
「そこまでだ二人とも!」
このままではらちが明かないと判断したロックオンが仲裁に入る。
「一夏もオルコットもその変にしておけ。先にはじめたのはオルコットの方かもしれないが」
「邪魔をしないでください! たかが男性が女性を侮辱するなど! 許されることではありません!」
そこまで言われればさすがのロックオンも黙っているわけにはいかない。
「お前は何を勘違いしている。ISを動かせる女性が偉いと思ったら大間違いだ」
「何を根拠に!」
「ISがどんな存在なのかも理解せずに乗ると言うのは危険だということだ」
それはソレスタルビーイングが武力介入を始める前からロックオンが思っていたことだ。
「今の世界は平和かもしれない。だが、それはISがよ抑止力なってあるからだ。そんな兵器に乗っているやつがだけが偉いと思っているなら、ISに乗る資格はない!」
この世界は確かに平和だ。IS同士の戦争はない。だが、それは各国が所有しているISが抑止力になっているからだ。そして、各国は優れた兵器を作るためにやっけになっている。それはロックオンの世界の三大国家の体制に酷似している。そして、それは、いつ戦争が始まっておかしくないと言うことだ。
「同じ出身だから最低限の礼儀だけはと思っていましたが・・・! 私がISにのるしかくはない!? 教師でも許せませんわ! ロックオン・ストラトス先生! あなたに正式に決闘を申し入れます!」
そんなセシリアのことを見ているとロックオンは昔の自分と重ねてしまう。なぜ、そこまで、男性を憎んでいるのかと。
ロックオンも黙っているのを見て、OKだと思ったのか、千冬が、
「そうだな。その決闘。3日後にアリーナをとっておく」
そう言って、話をしめた。