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ポケモン世界の神であるアルセウスが登場しますが、「龍と邪神と最高神」と、アルセウス談話を見ていただければ大体の性格は掴めると思います。
「ギュリエ」
それは私の方を睨んだ。
わかっている。
この蜘蛛にとって、白がどんな存在であるかということは私でも知っている。
その上で私はアリエルを送り届けることを選んだ。
この報いとして私がどうなっても構わない。
私などいてもいなくても、この蜘蛛はサリエルの救出に動くのだから。
「君はその選択をした。
君は間違っていない、アリエルだって白に身内であるクイーンを殺されているのだから。
私だって殺したしね。
だからこれでパンパン。私の身内の白を殺そうとするアリエルと、白を守るためにアリエルを殺すことになった私。
ただそれだけの話。
だから君は、もう関与するな」
その少女の髪は黄色く輝き、体の表面には青い電気が走り始める。
髪がぶわりと広がるのも気に留めずアースエレテクトを召喚。
そしてそのアースエレテクトに触れ転移して消えていった。
とんだ化け物だ。
アリエルを転移で飛ばした瞬間に、どこへ飛んでいったかを把握していた。
そして次の瞬間には最も近くまで転移で飛べる蜘蛛を即座に判別して転移していった。
本当に私ができないようなことも、軽々とあたり前のようにやってのける。
アリエルが白を殺せるかどうかはわからないし、その結果に関わらずアリエルが青に殺されるかどうかもわからない。
ただ一つ言えるのは私が餞としてアリエルを送ったことには後悔していないことだ。
彼女自身の命が危ないということを考慮しなければ、の話だが。
お互いの正義のぶつかり合いに正解はなく、誰が間違っているということもない。
けれども、こんな世界では正義と正義がぶつかったとき必ずなにかが壊れてしまう。
私は、アリエルと青と白の戦いにおいてなにも失いたくない。
そのためには私が間を取り持たないければならない。
Dには関与はしないよう釘を刺されているが、そうするしかない。
そうしなければ誰かが死んでしまう。
もう誰も失いたくない。
いや、私が失わさせない。
『無事、アリエルを送り届けることに成功したみたいでよかったです。
お疲れ様でした。
ではあなたはそこでお見守りください』
は?
私の右手にはいつの間にか薄い板のような機械が握られていた。
そこから届く、耳元で囁くように小さいのにはっきりと響く声。
単調で落ち着いた穏やかな声のはずなのに、そこに優しさは感じられない。
なんだと?
見守るとは、動いてはならないということか?
『なにを当たり前のことを。
そこでお見守り、ですよ』
なるほど。
私が動かない方が面白いと思ったか、D。
面白いと思っただけで最終的な決定を下す、上位神の一柱が。
『ああそうだ、動くなってことだろ。
なあに安心しろ、あの蜘蛛はお前の想定を既にゆうに超えてる。
Dの思惑なんぞでどうこうなるもんじゃない。
まあ落ち着け知らんけど』
は。
これはDの声じゃない。
別の世界の創造主が語りかけてくる。
フランクな言葉なのに、汗が止まらない。
訳がわからない。
いや、私は理解した。
言葉の意味がわからないのではなく、脳が理解を拒んでいるのだ。
『急に黙り込んでどうしましたか?』
Dが不思議そうに声をかけてくる。
まさか私がアルセウスに声をかけられたのに気づいていないのか?
となると、Dごと時止めを行っていた?
私を安心させるがためだけに最高神が?
真意がわからない。
『はぁ。その様子だと最高神の彼が関与したみたいですね。
しかも私に気づかれないように。
ですが、今私があなたになにをされたか聞いてもまともな返答ができる精神状況ではないでしょう。
なので、彼のお言葉に歯向かわない上で私の言ったことには従ってくださいね。
では』
私は体に力を入れられなくなって地面にへたり込む。
もはや思考をする余裕さえも残っていない。
だからただ祈らせてくれ。
生き残れ。
そう願う私の周り、エルロー大迷宮の最深部にはポケモンという生き物たちがうごめき始めていた。
ーーーーーーーーーーーーーー
やばーい!!!
魔王が転移してくるのはないない!!
てかまじでやばい!
鑑定!
あれ!?転移がない。
じゃあ私をぶっ倒すために転移魔法を持ったわけではって!?
突如私の方へ飛んでくる魔王のパンチ。
わたしは未来視と思考加速の力で避けまくる。
クイーンをこっちだって吸収してるんだ。
簡単に負けるなんてのは私が許さない。
避けることしかできないけどな!
よーし!
私もやってやる!
ヤケクソだけどどうだ!
「転移!」
パリーンという音と共に結界に激突し地面に落ちる。
くそ、青から聞いた結界スキル、大魔王がやっぱり発動してるか。
こりゃ逃げることもできない。
でも魔王はそんなわたしの隙を逃さず連続パンチ。
必死に回避しながら作戦を考える。
青は共生で生きてるってわかるけど、今どんな状況かはわからないから援軍も望めない。
てかここに来たやつはみんな魔王に殺されるからできればそのまま来ないでくれ。
「くっ、くらえ!暗黒魔法!?」
私が苦し紛れに出そうとした暗黒魔法は、魔法陣が構成される前に破壊される。
まじか!この結界転移だけじゃなくて魔法も阻害してんの!?
これは本格的にヤバい!!
しかも魔王も殺意やばいし!
無言でぶん殴ってくるし!
私のこと本当に殺そうとしてるな!?
あれ?
まさかだけど、相当焦ってる?
えーと、わたくしが精神汚染したとき体担当地雷踏みましたか?
それかまだ完全には削りきれてないけど、今なら治る見込みがあるとか?
どうなんだ、頼む、教えてくれ体担当。
そんなことを考えた瞬間お腹に響く強い痛み。
そのまま弾き飛ばされて、わたしは兵隊さんたちをドミノ倒しのように薙ぎ倒していく。
テロリンテロリン。
吹っ飛ばされた衝撃で兵士を弾き殺したことで2レベルも上がった。
いや待て。
あれ?いくら人がまばらにいたとはいえ、わたしが暗黒界であげたレベルも2だったよな?
つまり、わたしが吹っ飛ばされて殺した兵士の数と、わたしが暗黒界で吹っ飛ばした兵の数が同じってこと!?
わたし何キロ吹っ飛ばされた!?
やばいやばい!
ぐはぁ!
わたしが体勢を整える前に再び蹴り飛ばされる。
サッカーボールの気持ちってこんなんなのか!?
吹っ飛ばされながらわたしは考える。
どうやらこれ殴られて飛ばされ続けた方がいいな。
レベルアップもするから死ぬことはないし、深淵魔法でもないから死ぬわけでもない。
人間たち?
しょうがない、もともとはサリエーラ王国の人たちは味方のつもりだったけどもうどうしようもない。
わたしの経験値となって頑張ってくれ。
いつかこの星の助けになる。
起き上がった先でまた蹴られそうになるけど今度は回避。
人が多くいる方向にダッシュして、再び蹴られる。
また上がるレベル。
キッツい。
これ繰り返すのも相当きついぞ!
レベル上げる方法としてはいいけど魔王倒す方法では全くないわけだし!
魔王の倒し方思いつかないし。
5分くらいこんなことを繰り返してたけど、いよいよ平原の端まで追い詰められた。
体が脱皮のしすぎでヒリヒリする。
ただそれ以上にヒリヒリじゃなくて死ぬことになる。
だって目の前には、万全の状態の魔王がいるんですもの!
だけど、そんな緊迫した空気の中そこには似つかわしくない子供の声が響いた。
「ば、化け物!覚悟はいいな!
僕が相手だ!」
なんだこの子?
なんでこの戦場に子供がいるの?
鑑定!
『ユリウス・ザガン・アナレイト
称号「勇者」』
え、な、え、なんで勇者がここにいるの?
しかもなんで子供?
どゆこと?
ここ、宗教戦争の現場だぞ?
わたしはこの瞬間、勇者に注意を向けすぎていた。
あと、魔法が結界内で使えないということもあって油断していた。
魔王に対する警戒を緩めすぎた。
探知が術式を感知して危険信号を発する。
その術式の名は深淵魔法。
目を離した隙に放たれていたそれは、渦巻きながら私の体に向かってドリルのように空中を進み続ける。
マズイ。
速すぎて、相殺が間に合わない。
あ、まず、し……。
わたしの意識は、巨大な爆発音と共に刈り取られた。
止まれない止まらない。