しばらく投稿しておらず申し訳ありません。
これからは少しずつ投稿していこうと思います。
今までのあらすじ
バチュルとして生まれた青、白と一緒に強くなる
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白、魔王に深淵魔法で攻撃されてその場から消滅
↓
青は魔王に怒ったものの色々精神性を理解して落ち着く。
暴食を発動して周囲の蜘蛛を消滅させても再び大量に上から落ちてくる。
だけどジリ貧のように見えて実はこちらが有利みたいだ。
レベルアップで増加した体力を盾に再び暴食の発動のために口を閉じ始める。
うん、時間的に問題なく間に合う。
レベルアップは匹数的に毎回できそうだし、私を縛ってる根本の原因である怠慢も経験値ボーナスで獲得できそう。
ボーナス的にもう一度レベルアップすればいけるかな?
HPの減りも早いけどHP超速回復も合わせてあと数分は耐えられるから行けそうだ。
くー、それでもほぼ動けないのが精神的に辛い。
よし気を紛らわせるためにこれからのことについてなにか考えよう!
えっと、えっーと?
私は青にどうしてほしい?
まず望むのはとりあえず私のことは殺さないでほしい。
最愛の存在であるだろう白を殺そうとした手前、ここは無理かもしれないけど。
次に望むのは私の意志を受け継いでほしいということ。
なかなか最悪のものであるし、こんな意志を受け継いでほしいなんて思ってる私も相当嫌な存在だろう。
こんな不可能な意志は一種の呪いだ。
だけど、奴なら受け入れてしまうという、そんな確信がある。
そして最後に。
私が殺されるとしてもあいつに私のことを食ってもらうことはできるだろうか。
彼女は生物でありながら大量の兵器を体外に露出させながら戦っていた。
それを踏まえると体内のどこかに外部の物質、金属などを吸収する機能があるのだろう。
そこで私を食ってもらう。
私はこんな性格をしているけど強さだけは一級品だ。
食ってもらって、さらに上手くいけばギュリエと同じような存在にまで辿り着けるかもしれない。
そして、私の意志のために動いてくれ。
ギュリエには今までたくさんの迷惑をかけた。
こんな怪物が生まれると知っていれば私もまたもう少しちゃんとできたんだろうか。
わからない。
まあ、もう思い残すことはほとんどない。
だから青。
この世にはDやアルセウスというよくわからない神がいるらしい。
だけど、女神様やギュリエのような必死に生きてる神もいる。
しかもその下に何も知らない愚かな民衆や私がいる。
地元最強でお前の祖母である私が言ってやる。
世界に不満があるなら!
この星のもの全部ぶっ壊して混沌を作ってやれ!
2回目の暴食が発動する。
また何万匹もの蜘蛛が死んで、大量に手に入る経験値。
『熟練度が一定に達しました。スキル「怠慢LV1」を獲得しました』
瞬間、再び力を入れていた口がガチンという音と共に一気に閉じる。
再び消滅する生体反応。
どうやら3回目の暴食が発動したみたいだ。
うん、耐性を得たからもう動ける。
青。
呪いを受けとって。
私は彼女のいる下層の巨大ドームへと跳ぶ。
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下層には巨大な半球のドームがある。
もともとマグマ溜まりだったのか、岩壁一面に黒い結晶がついている。
そんな美しい場所で終えるのなら悔いはない。
着いた。
確かな足取りでそのドームの入り口へと歩く。
暗いけど暗視があれば結晶だって見えるはずだ。
人よりも少し大きいくらいの穴を通り、ドームに入る。
地面には人ほどの体長のエレテクトたちがひしめいていて足の踏み場はほとんどない。
青はその中心にポツンと佇んでいた。
そして入り口近くに、一箇所だけ不自然にその群れに穴が空いている。
どういうことだ?
私は跳ねそこに着地してそのまま青の方へ跳ぼうとする。
瞬間、地面に足がくっついてツンのめりながら、何とか体勢を整え青の方を見た。
同時に巨大な音がドームの中に響き始め、天井からの光で青がライトアップされる。
『みんな、来てくれてありがとう!』
大声を響かせている彼女。
私にはこのパフォーマンスの真意がわからない。
でも、そんな私の疑問には答えずさらに言葉を紡ぐ。
『みんな、今まで生きてきた!
辛いことがあってもなにがあっても、生きてこれたのは素晴らしい!
だからこそ、今日は笑おう!』
『君は頑張った!』
青はなにか金属の棒を持って叫ぶ。
どうやらあの棒が音を吸収して増幅させてるみたいだ。
それで壁から音を出している、のか?
『私もみんなに会えてこの思いを伝えられることが嬉しい!
だから最初に伝えるよ!
ステージチェンジ!』
その声と共に私の意識は遠くなる。
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あれ?
目を擦って床に座る。
気を失ったはずなのに周りにはなにも変化はないし、蜘蛛たちがいるだけだ。
「よお」
いや違うわ、よくわからない固まりかけの溶岩で出来た男が隣であぐらかいてる。
そのくせちゃんと顔は美形で身長も高いし、どうやらギュリエの鎧みたいに溶岩がまとわりついているって感じだ。
目の上に掲げた二本指がなんかチャラ男感あって嫌だけど。
「よく来たな!
思ったより友好的で我驚いた!」
「今どういう状況?
てか、あんた誰」
そいつは顎に手を当てて考えるふりをする。
なーんで少しイラッとくるんだー?
「うーむ、あのカタツムリだ。
青に抱き抱えられてたカタツムリ」
「あ、さっきのやつ?
待て、それまだ1時間経ってないよなあれから」
「いや経ってないが。
あーそうか、この世界の性質で我はこの姿になってるのよ」
「は?この世界?」
周りを見渡してみても、気を失う前からなにも変化がない。
全然そんな印象ないぞ。
強いて言うなら、隣にこいつがいるだけ。
『ここはドリームワールド!
私の世界で、私の好きなものが生み出せる世界!
みんなもさあ想像して創造しよう!』
「って声が聞こえるけどこれただの幻夢な?
お前の外道耐性低いこと利用して仮想の世界生み出してんだ。
ちなみに、周りの蜘蛛たちも協力してるが同時に幻夢は見てる」
そうなのか。
なんか青の扱いが悪いのはともかくとして、なんだかすごい世界だ。
魔王である私でさえこんなに驚いているのだから。
全く幻想を見ていると思えないのだから。
何か違いがないのか周りをじっと見ていると隣から肩を叩かれる。
見ると、そのカタツムリの人が笑っていた。
「ここでは全部忘れろ。自分の地位とか、自分の姿とか。
我だって想像だけでこんな体を手に入れている。
なにより、この世界では幻夢だったものが真になる」
額に手を当ててため息を吐く元カタツムリ。
確かにコイツは、元々カタツムリだったはずなのに今では全く人間と見た目の差がない。
人間でもマグマの鎧を着ればこう見える奴だっていると思う。
そもそもそんなもの着れるやつはいないはずだけど。
「じゃああんたが私の肩に触れられたのはどうして?
幻夢だけじゃ無理でしょ」
『あくまでこの世界が幻夢中心に回っているだけであって幻夢だけというわけではない。
そこは青による外道魔法で辻褄あわせされている。
いくら微調整といってもやばいことやってるとはわかるがな。
ほら』
急に指を向けられデコピンされる。
私は思わず振り払うけど、やっぱり間違いなく手に触れた感覚がある。
まじか。
『こうやって触れられるということを疑わなければ、本当に触れることができる。
逆に言ってしまえば無理だろうと思えば難しいわけだが。
粗探ししなければこの世界のものは実体として存在してるのと同義だ。
もとの我がただのカタツムリでしかないと言うことを考えるとすごいだろう?』
いやそれはそうだけど。
そうなるとこいつの本体はどこにいるんだ。
存在しないものが存在するように思われるのなら、存在するものはどうなってしまう?
そんなことを聞いたら、またため息をつかれる。
うーん。
なんでイケメン高身長なのにここまでウザいんだ?
『聞くべきではないこともこの世には存在するってことを覚えとけ。
格が違うものはこの世に存在する。
趣味が悪いようだが我には説明しかねる。
ただ一つだけ言っておく、夢は壊すな。特にあいつのはな。
ほら、はじまるぞ。
ステージを見ろ』
これも幻夢かなんなのか、不思議な力で行われている。
正直もうなんかわからない。
『じゃあ一曲目いくよ!私は最強!』
突如青の姿がライトアップされるとともに壁から響き出す巨大な音。
予見ガン無視で私が驚かされたのも考慮すると、持ってるスキルも容赦無く貫通するのか。
全くふざけたバケモンだ。
『ああ見えて、あいつは頼ろうとする時には全然頼る。
それどころかだいぶ依存する。
今回あいつが歌うって決めた曲も黒龍から聞いたモンだしな』
でもこんなポップな歌ギュリエが聴くはずないんだけど。
いや聴くのか?聴かないと思うけど。
そう考えると黒龍から聞いたってのは建前で、実際は転生前からも聴いていた歌なんだろうか。
『あー、でもこんな娯楽よく思いつくモンだな。
少なくともこの世界にはないだろうし転生前か?』
「え、そういえばあんたって純正のここ生まれここ育ち?」
『そうだが?』
え、こいつもこんな知能ありながら転生とか全く経験してなかったの?
そしたらめちゃくちゃ感情持ってるじゃんこのモンスター。
青っていう狂った特異存在がいなければ十分コイツも異常の類だぞ?
へんなことなければ十分世界の行方を左右してるし、人族だって殲滅できるだろう。
「あっ、いや……」
『なんだ?』
「凄いなって……」
『まあな』
でも、そんな思考も他所にするような爆裂する音。
叫ばれる強大な歌。
これでもかというほどに頭に叩き込まれていく。
耳をつんざくような声。
異世界ではこんなものが流行っているのか?
わからない。
わからないけど、なんかすごい。
私は最強、か。
そんなものでもないだろう。
私だって最強であるはずなのにあのクズを殺すことができないし、女神様を救うことすらできない。
青だって最強になったはずなのに白を殺されかけただけで意識を失うし、精神面ではとっくに破壊されている。
私たちは最強なんかじゃない。
確かに最強として生きていて、繕ってるかもしれないけど私たちは最強じゃない。
だから誰かに寄生して、頼って生きるんだ。
一人ぼっちは嫌いだ。
飽き飽きだ。
だけどもう誰もいない。
長く生きていたら、いつの間にか一人ぼっちになっていた。
周りのみんなはとっくのとうに消えていた。
私は置いていかれたのかもしれない。
だけれど可笑しいのは私でアンカーも私だ。
悪党はいるけど、何も変えれない私も悪党。
愛が間違えではないはず。
愛すことと愛されることで人は救われる。
だからただ、虚しくて寂しい。
『最後に、新時代!』
この世の中はそう簡単には変わらない。
変わらないけれど、私と彼女は新時代を求めている。
だから彼女は全てを混沌に沈めようとしている。
自身の持つ力全てを使って、破壊し尽くそうとしている。
やっぱり、考えれば考えるほど面白い。
最低だけど世界の破滅なんて最高に面白いじゃないか。
ああ、生きたい。
私は生きたい。
最低だけど、最低なりに私は生きたい。
今の今まで死んでもいいかなって思っていたのに、たった今になって泥を啜ってでも生きたいと思う。
だけど私は生きられるかはわからない。
青からも許されてるかわからないのに。
隣のやつがため息ついてるけど、それは無視。
私が彼らに犯した罪はとても重いのだから。
これが最後の鎮魂歌であったとしても文句は言えない。
『殺すやつ相手に茶番やる余裕うちにゃないわ』
文句は言え、ない。
ーーーーーーーーー
『みんな、じゃあねー!』
全て歌い切ったのか、舞台は暗転して青は姿を消す。
本当にすごかった。
てか凄すぎてなにもわからなかった。
でも、それでも、私にとって最低だったライトの光が嫌いじゃなくなるまでには変えられた。
ほんととんでもない。
『やあアリエル。
えっーと、あなたはなにをしたい?
サリエルの解放は最終目標としてもまずは今日の予定立てようよ』
「は!?」
明るくなった瞬間目の前に現れる青い目の少女。
台のようなものに乗りながら少し屈んで私に目線を合わせて、少女は一言言う。
私が怯んでることなんて無視して。
『世界を一度、一緒に壊そ?』
手を伸ばす、私と同じような幼い少女。
けれど彼女に秘められた力は世界を軽く破滅出来るもの。
ただそんな強さなんて、今の私にはどうでもいい。
「ありがとう。
ーー望むところだ」
伸ばされた同志の手を私は握る。
環境は違っても、育ち方は収束する