すべて燃えた。
そして燃やされていて、燃やして生く。
灰になってゆく。
パクリ。
数分かけて周囲に転がっていた弾と火薬を食べ切って、やっと私は気づく。
ああやばい。
まだここでの戦争は終わってないんだ。
私は正面入り口の扉を力で鍵ごとぶち破り外へ飛び出す。
あのクズエルフが、自分の目的を達成できなかっただけで諦めるはずがない。
ヤケクソで最悪火を放たれててもおかしくない。
少なくともソフィア誘拐のカモフラージュのための子供は攫うだろうし。
てかその子供たちはどこにやってるんだ。
跳ねるとすでに街の各所で火の手が上がっているのが見えた。
予想通りだけどやりやがった。
あいにく今日は風が強い。
あのクズ野郎のことだから、火を放つことも考慮してたのだろう。
私は盛大な舌打ちをして叫んだ。
「アリエル、この屋敷に避難民をやるから見てて!
白、攻めてきた兵士とエルフを殲滅して!」
「青はどうするの!?」
「私は鎮火と人命救助に回る!」
私は白の言葉に答え、宙に舞う。
ーーーーーーーーーーーーーーー
二人とも勝手に行ってしまった。
ああ、なんで私に屋敷にいることを頼んだ?
私一番人が嫌いだしこの街にもいなかったんだけど。
なにより、身近な2人が避難所にいた方が安心するんじゃないか?
あの時みたいに。
いや違うか。
白が私より魔法上手いから連れて行ったのか。
弱い人間どもに私が魔法下手に撃ったら死ぬかもだし。
「私たちは何をすべきでしょう」
ああ、私の足元に寝せていた奴起きたのか。
青に投げられた衝撃で気絶してたもんね。
それでも赤ちゃんを手放さなかったことには尊敬しかないけど。
「とりあえず2階で休んどいて。
これからこの街の人を一時的にこの屋敷に避難させるみたい。
あと私たち一応敵じゃないから警戒しなくていいよ。
白と青も一緒にいたの見たでしょ」
「ーーはい、わかりました。
ですが、この街の人口を考えるとおそらく屋敷の一階だけでは到底収まりません。庭がありますのでそこも使っていただければ嬉しいのですが……」
「わかったわかった。あとで2人に伝えておくよ。
でも、ともかくアンタたちは休んでて。念の為パペットも1体預けておくからさ」
私はパペットタラテクトを召喚し、階段にある瓦礫などを退かさせる。
ついでに威圧して奴らを上に向かわせる。
青に頼まれてるのになにか事故でもあったらあわせる顔がない。
たく、困ったものだ。
そろそろ避難民の人たちが到着してしまう。
散々助けられてはきたのに私はどう接すればいいのかわからない。
私も皮肉なやつだ。
助けられることばかりに慣れて、助けることは全く出来てなかったとは。
私は避難者を受け入れるため屋敷の正門を開けに歩き出す。
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やばい。
鎮火のためになにも考えずに飛び出したはいいけど、火の発生源が多い。
どうやら思ったよりもエルフに侵入されているみたいだ。
しかも火を放ってる奴らの中には人間も混じってる。
おそらくポティマスに雇われた傭兵のような者たちなのだろう。
どうせ全部終わってもお金が払われることは無いのに。
払われる前に焼け死ぬのだから。
火元に水魔法を放ちながら、同時に逃げてきた人たちにも水をぶっかけてびしょ濡れにする。
今日が暖かい日でよかった。
逃げてきた人たちにも水をかけておけば、マッチで火をつけることも出来ないから内部からのテロも防げるし街の人の火への耐性も強まるし一石二鳥。
持ってる紙とかはダメになるかもだけど今は緊急事態だから勘弁してくれ。
電脳に白の叡智と繋いでもらってマーキング。
このマーキングによって、エルフと人間の裏切り者がいる場所が示される。
残念ながらどんなに逃げても、群衆に紛れても白に殺される運命だ。
私から何も言うことはない。
「落ち着いてください!
ここから領主様のお屋敷に避難してください!
鎮火はされています!落ち着いて、足元をよく見て避難してください!」
「女神さまはどうするの!?」
「私にはまだ助ける人がいます!
君たちにもまた会える!さあ、歩くんだ!」
子供たちの声に応え私は再び跳ねる。
ポティマス。
この街の人は誰一人殺させない。
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はい、ザシュッと。
私は叡智でマーキングされたエルフや人間どもを仕留めていく。
いくら私でも人間の裏切り者の肉はまずいから食わないし、子供達の餌にする。
エルフの肉はまだうまそうだから後で食べよ。
どうやら避難してる人たちの話を聞いていると、わたしと青は2人で一つの神として崇められているらしい。
青の方は人々に幸せを与え、わたしの方は悪人を地獄に落とすみたいな。
そんなひとつの神様の陽と隠が分かれたみたいな感じで。
別にいいんだけどね。
わたしの方だけなんかちやほやされてない。
女神様お助けくださいとは聞くけど、蜘蛛様お助けくださいは聞かないし。
でも蜘蛛様不届き者に天誅を!というのは聞いたな。
まー、静かに殺しまくっててしかもビッグなアラクネになってるからなー。
ワンチャン地獄のガチギレ仏様モードに見られてるのかも。
いつも静かなやつだけどキレたら終わりみたいなね。
おおレベルアップした。エルフといっても人間と同じで経験値いっぱいくれるところはいいね。
うーむ、だけど街が広いからだいぶたくさん潜ってるぽいなー。
市民さんのところにも潜ってるし、後で狩りにいかなきゃ。
1人でも逃したら被害でかいはずだしなんとかしないと。
あー、やば。細かい炎が多い。
もう少し効率よく殺していこう。
TASさんみたいにね。
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ねえ。
どうしてこんなことになったの?
お父さん。お母さん。
私がなんとかできなかったのだろうか。
この力で。
この、吸血鬼の力で。
疲れた。
目も開けたくない。
もういいや。
もう、夢を見よう。
命は燃える。