生きろ。
どうしてこうなったんだか。
メラゾフィスに抱かれながら考えているけど、一向にわからない。
女神こと青にすっごい私は嫌われているし。
『あー、テメー。
いろいろ気になってるようだからオレ様が教えてやろうか?』
この声は電脳だ。
人の心に勝手に侵入してきて。
この人も性格は良くない。
服はくれたけど。
『なに?』
『お前は異世界で前世と同じ生活をし過ぎたんだよ。
コッチは毎日恐竜に食われかけて腕千切ってたのに。
まー、理解はできるがな』
……。
で、でも。
今のまま暮らしていれば問題なく生きていけただろう。私が吸血鬼であっても、なんとかなったはずだ。
『お前を過度に傷つけ、無駄に傷つける青にはオレ様が釘を刺しておく。
そこらへんは心配するな』
『は。
なんであなたに。
なんで、あなたが勝手にいろいろ決めてるんですか!』
私が間違っているのだろう。
彼の言葉通り、幸せな生活を異世界でしてはいけなかったのだろう。
けれど、けれど。
否定しなければ、私が消えたくなってしまう。
『あなたたちが、来なければ……。
こんなことは起きなかったんじゃないの……か』
『……チッ。
それに関して完全否定は出来ねーよ。
だが同時に、それを罪にするならテメーも同罪だ。
世界唯一の真祖の吸血鬼・ソフィア。
テメーは世界最高のご馳走だ』
『……っ』
何もいえない。
コイツの言葉通り私は弱い。
それでいて、吸血鬼。
だから狙われることに否定は出来ない。
でも。
『街が栄えなければ……!』
『エルフが襲って来なかったのか?
アイツらはどっちにしろ来たと思うがな。
テメーだけを狙いに、屋敷だけを襲って』
『……』
完敗だ。
何も言い返せない。
どちらにしろ、私の親は死ぬ運命だったのか?
私のせいで。
私が産まれてしまったせいで。
『ハァ……。
めんどくせぇ。
心、切り替えていけよ』
『は、はぁ?』
な、何を言っているんだ?
めんどくさい?
この私の、両親を失った悲しみを?
私が生きていることを後悔しているのを?
馬鹿にしてるのか?
あのモヤシ野郎。
ふざけるな。
怒りではらわたが煮え繰り返りそうだ。
本当に馬鹿にしてるのか?
だけどソイツは私の怒りに構わず話し始めた。
勝手に。けれど丁寧に。
『じゃあ罪じゃねぇ、只の真実を教えてやる。
耳かっぽじって聞いておけ。
テメーのせいで失われた命は300。
対して、テメーのおかげで救われた命は20000だ。
で、それでも懺悔するのか?
視野狭窄吸血鬼サマ』
『は?』
どういうこと?
私のおかげで救われた命が20000?
何をでたらめ言っているんだ、コイツ。
なにを。
『なにか質問は?』
『その20000っていうのはなに?
まさかだけど、私が吸血鬼という資源として利用されることで作れるエネルギー?』
『いや違うに決まって……、現在進行系でゼルギズを無虚空間の中で熱エネルギー源として使ってるから否定し辛ぇ……。
とりまそんなんじゃねぇ、安心しろ』
え、本当に使われている人がいるみたいだ。
とんでもない。
てか本当にエネルギーになりうるの?
怖い。
『お前が救ってきた20000という功績の命は、この街に青を住まわせたことで生まれたもんだ。
もちろんテメーがいなくても青は他の街に住み込んだだろーが、街はここまでデカくならねえ。
結果的に、この街に住み込んだことで合計20000の命が生まれ、救われたんだ』
『な……』
いや、それでも気になることはある。
青は私のことを嫌っている。
事実私はアイツに内臓から痛めつけられた。
だから、私がいなくても青はこの街に住み込んだんじゃないのか。
『私がいるのと青がいるのに関係はあるの?』
『あるが。
一応言うがお前青に特別視されてるしな。
基本人の名前覚えないやつが、お前の名前覚えてやがったんだぞ。
異世界人として気にかけてたんだよ』
『でも私さっき内臓やられたんだよ』
『地球で生まれ落ちたクラスメートとして、嫌ってるからだろ』
『えっ』
『住み着いた件については、そもそも街が近かったから住み着いたのもあるし、領主が優しかったから住み着いたのもあるかもな。
だが。
確実にテメーも理由の一つだ。』
そうなのか。
こんな暮らしをしてた私を、毎日腕千切って生きてきた人が許して仲間と見ているのか。
ああ。
ああ、何が正しいのかわからない。
私が悪かったのか?
『ま、アイツは過去引きずってるがテメーには引きずってもらいたかねぇよ。
これからのことを考えろ。
もうなにも失わせたくないなら、強くなれ。
白くれーにはな』
白……か。
私にとってはアイツの方が怖いかもしれない。
化け物感は青よりあるし。
蜘蛛が普通に歩いてるこの街で言うことではないと思うけど。
身体生えてるから普通の蜘蛛より怖い。
てか、青も一応蜘蛛なのか。
化け物しかいない。
困った、私も吸血鬼という化け物だ。
強さは比較にならないが。
『でも、あんなに強い化け物に……』
『成れるだろ、若いんだし。
てか今の白よりフツーに強くなるんじゃね、頑張れば』
『ほんとに?』
『ああ、オレ様の計算だとなるぞ』
『そう……』
電脳の計算だと、大丈夫らしい。
本当に大丈夫なのかな。
だけど、電脳がまた言ってるみたいに、ポジティブにならなきゃ。
電脳の計算なら大丈夫なんだから。
ーーん!?
待って!?
『てか、あんた実際はなんなの!?
さっきからフツーに話してたけど!
存在として!』
『うお、ビックリした!』
いやおかしい。
今まで話してきたことから考えると青と電脳は違う存在だ。
てなると、この人はどこから出てきた?
怖すぎる。
『じゃあご丁寧にもう一度言っといてやる。
オレ様は電脳、青の別人格だ』
『別人格?』
『二重人格っていう理解でいい。
てかそんなもんだ』
その割には意識がすごいはっきりしてたり、計算凄かったり、一緒にいたりしてるけど。
私にはわからない話なのだろうか。
『強くなれば、いずれわかる。
あ、あとオレ様と青は普通に仲良いからな。
心配すんなよ』
それは見るだけでわかるからいい。
でもまた強くなればか。
なにをするにも周りの人は、弱いから、強いからと言う。
この世界だと強くならないとなにもわからない。
なんか悔しいし、ズルい。
『とりま勝手に強くなれ』
『言われなくても』
強さが、自由が、知識が。
悔しい、ズルい、妬ましい。
嫉妬する。
だから、強くならなきゃ。
私が世界を知るために。
満足して生きるために。
強くなれ。