バチュルですが、なにか?   作:天廻シーカ

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仕事のお時間



105 女神、暗躍する

深夜。

みんなが寝静まった夜。

私はムクリと立ち上がり、周りの様子を確認する。

 

 

私以外は寝ているようだ。

ソフィアとメラゾフィスはうんうん唸っているし、アリエルはグースカ眠っている。

白も繭みたいなものに篭っているから多分寝てるんだろう。

起こしたらヤバそう。

 

 

今日はみんな初めてのことばっかりで疲れてるはずだし起きないはず。

だから、やりたい放題やらせてもらう。

 

「転移」

 

私は一瞬にして消え去った。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

よっと。

階段の下に降り立って、一応一礼。

一応サリエルはサリエル様だし敬わなければ。

 

 

そして、階段を一段ずつ登り始めた。

下を見るとまだ明かりがちらほら。

真夜中だけれど街の活気はいまだに残っているあたりさすが国一番の街だ。

 

 

ギィと重い扉を開ける。

中から溢れ出す、眩い光。

この時代背景であれば、少なくとも日常的には決して使われない量の光だ。

昼間連絡したのがちゃんと効いていた、良かった。

 

 

「こんばんは。

 ケレン領から参りました、女神です」

「どうぞ、こちらへ」

 

 

私は女性の修道士のような人に連れられ教会の中をそろそろと進む。

跪く人々の間を、赤いレッドカーペットを、ゆっくりと歩く。

そして教会の奥に置かれた玉座にストンと座った。

 

「みな、私の前へお立ちください。

 私の麗しい子供たちよ、私を見るのです。

 私もあなたを見たい」

 

うやうやしく歩いてくる人たちを眺めながら、精神安定を電脳に頼む。

こんな話し合いは精神を無理やり安定させなければやってけない。

少なくとも前世の私の精神じゃ無理だ。

 

 

並んだ人たちを見ながら、鑑定をかけていく。

お相手が弱すぎて不快感は感じさせるけどしょうがない。

覇気だということにしてもらおう。

 

 

「まずは、謝辞を述べさせていただく。

 こんな真夜中ですまない。

 最近は戦もありケレン領でも休息を取ることが出来なかった」

「いえ、こちらこそ。

 まず私たちにお姿を見せて下さったこと、至極光栄です。

 ですが……」

 

 

うんわかってる。

一部の人間、私が女神であることを信用してないよね。

とりあえず見せておこう。

 

 

「クイーンエレテクト、召喚」

アリエルを捕まえた地獄から適当に1匹召喚して、ミニサイズにして手のひらに出す。

それを大きくしていく。

ギリギリ教会を壊さない大きさまで。

 

 

「め、女神様……!?」

 

あ、やべ。

王様らしき人がガチビビりして腰を抜かしている。

他の人も逃げ惑い始めたし。

このままだと逆に魔王的な存在に思われるかも。

それだけはまずい。

 

 

『精神安定、治癒魔法』

 

 

念話を外部に向けて発射。

相手のスキルなしで念話をするのはだいぶ狂った技術なんだけど電脳に研究させることで出来るようになった。

一方的にしか出来ないし、念話じゃなくて実際は外道魔法使ってるけどね。

 

『戻りなさい』

 

蜘蛛を手に乗るサイズまで縮めてから、身体の隣に開いた無虚空間のホールへ放り込む。

まあ精神安定も施したし大丈夫でしょう!

 

 

「試したような真似をして大変申し訳ございません。

 対する罰は全てこの身に」

「いや、あなたは自身の体を大切にせよ。

 長く女神は現れなかったのだ、仕方ない」

「は!」

 

 

教皇さんが土下座のようにして謝っている。

こんな扱いは困るんだけれども。

それだけの権力は振るうけどさ。

 

 

「戦でたくさんの者が傷ついた。

 対処はしたが未然に防ぐべきだったな、すまない」

「いや、女神様がおっしゃることでは……」

 

 

 

それは教皇さんの考え。

他の思いを抱いている人もこの中にたくさんいる。

というか、有耶無耶になりかけだったけど完全には収められてなかったからな。

 

 

戦場に蜘蛛を送り込んで呉越同舟にしてかつこちらは攻撃を全く加えないというのを今日の昼やった。

でも言っちゃうと忙しすぎて今日まで忘れてたんよなぁ……。

一応精神安定持ちのやつにやらせたりとか大変ではあったけど。

 

 

てかちゃんと理解してもらってて良かった。

でなきゃ今の話で蜘蛛はなった奴として大騒ぎだったもん。

次からやり方変えよう。

 

 

 

ただもう今回に関しては取り返しのつかないことがたくさんある。

例えば、いくらか人は死んでいること。

私は蘇生なんてものはまだ出来ないし魂の保持も不可能。

だから、Dみたいに転生もさせられないし、完全なるエネルギーとなって終わり。

だからこれは私の罪だ。

 

 

「ごめんなさい。

 命を救うことが出来なかった方々。

 この中に遺族の方もいることでしょう。

 すみません。未来のために尽力させてください」

 

 

静寂のなか私は土下座をする。

この世界に土下座の文化はあるから意図は伝わっているはずだ。

確かに私は、上位存在だ。

 

けれどそれがなんだ。

人を守れなかっただけでそんなもんに対する信頼は吹き飛ぶ。

信用はあっても、信頼は死ぬ。

人の心は簡単に壊れる。

だから私は土下座する。

全て変わらない。

けれど、受け入れて欲しいから。

しょうがないから。

 

 

 

「あなたの気持ちはわかりました。

 ですが、あなたが謝っているのは過去のこと。

 ならば未来を変えていきましょう。

 こんなことがもう起こらぬように」

「貴様……!」

「うるさい。あなたこそだまりなさい。

 女神教に関しては私の方が優位なはずですが」

 

 

 

顔を上げると、教皇が王様を手で静止していた。

王様はぐぬぬという顔ですごい威圧感を放っている。

どうやら、私の気持ちを重んじて教皇さんは建設的なことを言ってくれてるようだ。

私も立場なんて関係ない喝が欲しかったのは事実あるし、これに関しては本当に教皇さんが正しかったと思う。

良くも悪くも一番宗教に真摯なのだ。

私が好きなタイプ。

 

 

「では、どうしたしましょう?

 あなたがすべきことは我々に謝ることではないはず」

「ーーありがとう。

 わかった、これからのことを考えよう」

 

 

土下座から玉座に座り直して、顎に手を当てて考える。

まず最初に止めたいのは真言教と女神教のいざこざ。

私が蜘蛛を大量に輪廻させまくってるからエネルギー的にはもうプラスになってんだよね。

だから、なんでまだ戦争なんて起きてるんだ?

黒龍ことギュリエディストディエスには星が回復してることは伝わってるけどなー。

まだ真言教の中心には伝わってないのか?

あー、私から伝えに行かなきゃかもな。

そんなことを高速思考で考えて、彼らに向き直る。

 

 

「一つだけまず言わせてくれ」

「はい。仰せのままに」

「私はあくまで女神教の女神でありこの国の政治に関わる気はない。

 だけど恵みは与えるつもりだし、どうせなら腐ったところは一から修正するつもりだ。

 だから王様、君を罰するつもりはないが共に国の矯正はする、いいね?」

「ーーわかりました」

 

 

王様みたいな人が僅かに顔を引き攣らせる。

まぁ思うところありますよねー。

中世の巨大国家で思うところない方がなんならビビるわ。

ビビってくれて良かったまである。

 

 

「あともう一つ」

「なんですか?」

「私は神だけど、単純に人より色々わかるというわけで完璧なわけではない。

 だから、私が間違ったときには進言して欲しいし、私が押し進めることに疑問があればどんどん言ってくれ」

「わかりました」

 

 

おお、教皇さんすごい物分かりいい有能さんだぞ!

大当たりだ!

やったね!

 

 

 

でもみんなとりあえずは納得しているみたいだ。

国王と教皇も一応別に存在しているし、うまいこと2人を操って暗躍していきたい。

サリエーラ国の中では私は全権を握った様なもんだし。

 

 

「じゃあ今日はここでひとまず終わりにさせていただく。

 明日も来るので今日の様に待っていてくれ。

 その時に、国の変革については話していく」

「「「わかりました」」」

「ありがとう。

 ではさらばだ」

 

 

 

 

私は転移でその空間から消え去って、そのまま布団に入る。

おー今万里眼で見てるとみんな緊張が解けてバッタリぶっ倒れとる。

明日からも会議なのに。

頑張れー、サリエーラ国人!





圧倒的時間外労働



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