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生きさせろ。
『この新聞は、女神降臨祭で配られた新聞です。
帝国新聞
先日、女神様はついに復活なさった。しかも、本日我々の前に降臨なさり、我々に語りかけなさるようだ。嗚呼、本当にこんな事が起こってよいのだろうか。我々が直に御方のことばを耳に入れる事ができるなど、決して起こり得なかったことだ。本当の真言を聞き入れることが出来るとは。裕福な者だけでなく、貧しい人、病を持った者、そしてこの街に住まぬ者皆平等に愛して下さるとは。女神様直々に、我々に慈愛の心を持って、啓示を現し示しなさるとは。
これは革命であり、我々に自信と確信と繁栄をもたらすものである。そして運命である。遥か昔から定められた、運命である。
これは奇跡である。神よ。御方よ。我々はあなたに着いてゆく。命を燃やし、魂を溶かし、あなたに全てを捧げる。
だから、ただ、あなたは。あなたの世界をただ、自由に生きてください。
女神教教皇 サリエーラ』
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私は、歓声の中で手を振る。
手を振る人々、舞う紙吹雪。快晴の空のもと私は笑顔を作る。
貴族の人たちは平民の人たちよりも高台にいて、座っている。
けれど私に笑顔で手を振ってくれているし大丈夫かな。
それ以上に泣いてる人多すぎて困る。
そんな信仰されてんのか、女神教。
だから、これを言うのは辛い。
「こんにちは。
まず最初に言いたい事があります。
わかっている人も多いでしょうが、私はあなたたちが信仰している神そのものではありません」
起こるざわめきと困惑する人々。
そりゃそうだ、女神女神言ってたんだから。
私の隣にいる教皇さんも僅かに顔を強張らせている。
彼は私が違うことを知ってるんだけれど、まあ状況が状況だからな。
「私の今の存在はちょうど女神サリエル様と神獣の中間に位置しています。
そのため、サリエル様は未だ解放されていません。
けれどあなたたちの貢物と私の力で身体が削られる苦痛からは解放されました。彼女が解放される日も近いでしょう」
「とすると、あなたは神獣様ということでよろしいでしょうか」
「はい、その通りです。
私はしがない獣ですが、力を蓄えることで女神様と近い事が出来るようになりました。いずれ女神を解放できるよう、尽力してまいります。そしてあなたたち皆も、今すぐに助けます」
ナイス教皇。
もう神獣って言っちゃった方が楽だもんね。
最初は女神様のつもりでやろうとしたけど。
ただ人々は戸惑っている。
女神様ではないものが女神様と偽ったこと、けれど助けると言っていること。
この狭間にはさまれて、困惑している。
だから私は押し通す。
「私は、ケレン領に現れた一匹の蜘蛛でした。
たくさんの人に支えられ成長してきました。
ですので、今回は。
今回は、この国そのものを支えさせてください。
誰一人、見捨てません。
誰一人、諦めさせません。
夢のような世界を作ります。
みんなが好きなものをお腹いっぱい食べれる世界を、今ここで」
いつの間にかマイクを持って身振り手振り語りかける私に、どよめきを隠さない人々。
まあここでは流石に歌わないけどね。
1週間前はアリエルの心を動かすために歌ったけど、その時は外道魔法の起点になる蜘蛛たちがいっぱいいた。
だけど流石に今回は蜘蛛より人間たちの方が圧倒的に多いから洗脳で夢を見せることはできない。
だから、私は現実を夢にする。
夢を実現する。
「まずは、この街から病を消し去ります。
『神聖魔法・夢の命』」
私が屈んで下へ手をかざすと、広場全体の地面が光を放ち始める。
一部の人たちはびびってるけどもう遅い。
実績で殴ってやる。
次の瞬間、巨大なエネルギーと共に広場全体から眩い光が天に昇った。
街の外にいる人から見れば神の降臨かとでも思うだろう。
でも、本当に降臨している。
この私が。
そしてそれは実績として現れる。
「え、足……!
足が、足が……。
右足が生えている……!
どういうことだ!?」
「熱、治ったかも」
「え……!?」
ざわざわという声が大きくなっていく。
足を失っていた貴族も、たまたま風邪でふらふらになっていた市民も、飢餓によって身体を壊した農民も。
皆が、変化に震え私を見上げる。
全ての人へ平等に寵愛を。
バカにならないMPが一発で吹っ飛ぶ。
気力も一瞬で吹っ飛ぶ。
でも、まだいける。
「皆さん両手で器を作ってください。
今から、ひとりひとりに我が眷族を送ります。
人を確実に助けるために生まれた蜘蛛たちです。
どうぞ受け取って下さい」
やばい。
ふらって一瞬なった。
MP切れだ。
『電脳、ゼルギズのエネルギーもMPに変換しろ!
瞬間的に使うMPが多すぎる!』
『あー、わかってる。
もう魔力のコックは開いたから数秒耐えろ。
とにかくぶっ倒れるな!』
やっばい。
酸欠みたいになってる。
頭が痛いし、意識が飛ぶ。
いや、これ、やば……い。
「大丈夫ですか?」
「や、やばいかも。
いや、大丈夫」
あぶな。
教皇さんが声をかけてくれなければこのまま完全に意識を失ってぶっ倒れていた。
今この瞬間かろうじて意識が戻ったし、なんか楽になったかもしれない。
エネルギーがまた供給されてきているのかな。
街の人たちの手には次々に蜘蛛が召喚させられていく。
私の体内から20万匹を召喚しなければ。
粘れ、私。
みんなに蜘蛛が行き渡るまで。
血は通っているはずなのに、体からどんどん抜けていくのを感じる。
冷たくなっていく。
まじでどうなってる私の身体。
『--ろ。血液酸欠に栄養不足、--にエネルギーをきょーーしてる。
ぶっ倒れそうになるのも当然だ。
もーーーない、無事ーーだ』
いややばい。
今まではこんな感じにプツプツと念話が阻害されることなかったのに。
こんなやばい現象起きるのか。
『終わりだ』
『え、あ、終わったの?』
『あー、よく耐えた。
だがテメー、今まで体感してきた数倍は無理してる。
なんなら腕数本失った時よりもな。
さっさと休まなきゃ死に至るぞ。
一応言っておくが冗談でもなんでもねぇ』
『待って。あと何分ここにいていい?』
『3分。それ以上は強制転移だ』
『わかった』
「その蜘蛛は、あなたのための蜘蛛。
そしてみんなの幸せのための蜘蛛。
みんながお腹いっぱいになれるための蜘蛛。
だから、誰かが誰かを傷つけることはもうやめて。
これ以上は私が許さない」
魔王覇気。
普段なら倒れる人もいると思うけど彼らにとってはあいにく回復されたばっかりで余裕綽々だ。
だからみんな意識を保つ。
いや、意識を保たざるを得なくて、苦痛に蝕まれる。
「というわけです。
今のはあくまで冗談、かつお願いですから、守っていただけると嬉しいです。
この蜘蛛の使い方については教皇さんに聞いてください。
今日は、ありがとうございました」
プロテクトエレテクトたちに市民への治癒魔法をかけてもらいながら、私はその間にいそいそと城の中へ戻る。
そして扉が閉まり切ってから即転移。
白の体の上に飛び乗って、すぐに寝転がった。
「どうだったの?」
「いや地獄。
エネルギー消費がやばかった。
だから今日は寝させて」
「オッケー」
規則的に揺れる、白の蜘蛛の体の背中で私は眠りに落ちていく。
この先がどうなるかはわからない。
けれど、もう起爆剤は投げ込んだ。
無理を叶える力技。