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(こんな機嫌は良くない)
違和感に気づいたのはお酒を飲んでみんなが寝静まった深夜のこと。
いつも通り私は1時間ほどサリエーラ国で会議をして、悠々と転移して寝るつもりだった。
だが、寝るようと体を横にした瞬間、空間にわずかな歪みを感じた。
今までもこんな経験は数回あった。
だけどその時は毎回ポティマスのドローンやらなんやらがあって、それが原因だと思っていた。
でも今回はそんなロボは見つからない。
何より、いくら夜だといっても街中にロボを放つようなバカな真似をやつがするとは考えにくい。
白の様子を万里眼で確認する。
白は普段通り繭にこもって寝ていた。
となると、こんな微弱な乱れってことはエレテクトたちになにか異常があるのか?
『賢姫発動。
全エレテクトの情報開示を請求する』
うーん?
久しぶりに賢姫を使って蜘蛛たちを確認してみても、なにも変なことがない。
となると怪しいのはアリエルかソフィアだな。
アリエルはなにか悪いこと企んでるかもしれないし、ソフィアはなにかチップでも入れられてるかもしれない。
流石に確認しなければ。
『電脳。
電波の発信源を探知』
『うん、アリエルから。
えーとその先の電波は……、と。
これわからん。
この星の空間ではないところに発信されている。
無虚空間とか、神のいる空間とかかもしんねー。
とりあえずそういうたぐい』
『MA・ZI・KA。
えーと、あり得るのは私が好き放題やりすぎてDが動き始めたとか?
あとは……、サリエルの件でDと交渉してるとか?
少なくともろくな理由が思いつかないんだけど』
『とか言うと思って今解析してる。
えーと、どれどれ。
この人間の街にも、意外とちゃんとした食料があった。
それはそうだ。良くも悪くも人間だ、巧妙に生きようとはしてんだろう。
私は知ったこっちゃないが。
とな』
『よーし叩き起こそう!
この口調、アリエルとギュリだ!
ギュリには色々聞きたいこともあるし、先にコンタクト繋げといて悪いことはない!』
「おうら!」
寝ているアリエルの頭に向かって思いっきり手刀を喰らわせる。
ボゴンという音を立てる床と、めり込むアリエル。
危ない、電脳が咄嗟にバリアを張ってくれなきゃ床に穴が開くところだった。
「青、きゅ、急になにを……」
「ギュリを出して。
私に説明なく話していたのはまだいい。
だけど、狸寝入りされてるっていうのが結構不快。
通話つながってんでしょ、かわるよ」
「ちょ……」
『あー。ギュリエディストディエス。
テメーに話したいことあるんでこの宿に来い。
なあに、悪いことは言わねー。
いくつかお願いするだけだ。
あと来なかったら場所逆探知するから来いよなー』
ブチっ。
念話を叩き切る。
さて、この不快な気持ちをどう抑えるか。
ーーーーーーーーー
「えっと、青ちゃん……?」
バキバキに割れた床とそれにめり込む布団。
その上で、アリエルが困惑しながら私のことを見る。
残念ながら、残念ながらだね。
ちょっとだけ、がっかりしちゃったなー。
「ごめんね魔王。
私もちょっと落ち着いてなくてね。
私って、そんな信頼されない存在だったりするのかなー?」
にこりと笑って、アリエルの顔を真正面から見定める。
でも彼女、不安そうにしながらも心は安定しているね。
私、ちょっとだけ気に食わないなー。
「いや、そういうわけじゃなくてね?
もともと私とギュリエの今の連絡は青じゃなくて白ちゃんを警戒して始めたものであってね?
いや、警戒っていうか、人をいっぱい殺したりするの、ギュリエ的にも私的にも良くないって思っているから……」
ふーん。
別にいいんだよ。
ただ、前世のこともあるし私の処遇について私の知らないところで話されるのはだいぶ不快でね。
だからって私が関与できない状態で私について話されるのももっと不快だけど。
「そう。
まあいいんだけど、私もギュリには色々聞きたいことあったからなー。
本当はもっと早く連絡先知りたかったんだよねー。
あと狸寝入りはマジでうざい。
起きてたでしょ」
私が言った途端、あからさまに目を背けるアリエル。
そうかそうか、狸寝入りはしていたのね。
手刀でぶん殴っといて良かったわ。
殴らなかったら今後悔してた。
「ただいまとう……」
時空の歪みを探知してコンマ数秒で繰り出された私の回し蹴りがギュリの頭にクリーンヒット!
同時に吹き飛ぶギュリ。
よし、今度は壁がベコってなったな!
修復費用もアリエルが払ってるし大丈夫でしょう!
「ア、アリエル。
どうなってる。
おい、青に何したんだ?
まだあれよりは人のことを考える存在だと思うんだが。
どうしてこんなにガチギレしている」
「私が隠れて連絡してたからね……。
あとギュリに連絡取りたかったからみたい」
「つまり、連絡先を知っていたのに教えなかったからと?」
「そういうことだと……」
おーおー、好き勝手言いなさる。
というか怒った理由は、信用されてないかなーって思ったから。
それももう落ち着いたからいいけど。
「床に倒れてるギュリくん、一応最初に聞きたいんだけどさ、地球の座標ってわかるの?」
「あ、ああ。
どこに何があるかなんてものはわからないが、座標はわかる。
行ったこともないがDから聞いた」
「助かる。今教えて」
「は?」
お?
とりあえず無言の圧力をかけてみる。
うーん、抵抗してるな。
じゃあ今度はMAエネルギーを直接ぶつけて……、あ、すぐにバテた。
キャパオーバーだったか?
「教えるから一度落ち着け。
全く、貴様はなんなんだ。
今教える」
「ありがとう。
いやアルセウス見てればどうせ私もやべー奴ってわかるでしょ。
Dよりも格的にあいつ上なんじゃないの?」
「そんな正論を言われるとこちらも口を出せん」
よし、電脳の方に座標は渡った。
これで地球への転移が可能になる。
少し準備は必要だけど、転移自体は明日にでも出来るようになるんじゃないかな……。
「アリエル、明後日とか地球帰ってもいい?」
「「は?」」
ハモったね。
あんたら地味に仲良いんじゃない?
ま、伊達に長く生きてないんだろう。
「待て、貴様。
そもそもお前は神ではない、いいな?
それでいて他の星に転移するということは自殺行為だぞ?
システムの補助なしで宇宙を踏破するなど……」
「アリエルくん、無理だと思う?」
「ごめん、正直今の青なら余裕な気がする……。
だって青、魔法使ってるように見せてるけどほぼ魔術でしょ。
使ってる素材とか技術は魔法由来だけど正直関係なさそう。
補助輪なしで走れるけど補助輪使ってるみたいな感じ?」
「うん。
というか空間の歪みを察知してギュリが反応する前に蹴り飛ばすなんてこと魔法じゃ絶対できないし。
それはギュリが一番わかってるでしょ」
ギュリエディストディエスは、私をじっと見つめてため息をついた。
どうやら彼もわかっていたらしい。
諦めた口調で、ただひとつ、彼は言う。
「どう言っても地球には行くつもりなんだな」
「もちろん。
私の夢、そして君たちの夢のためにも必要だ。
そして過去の私のためにも。
だから絶対止まる気はない」
『オレ様と青の二重人格とか、全部地球から巡り巡ってここまで来てんだよ。
過去を見つめないとすぐに限界が来るわ。
つーわけで地球には行く』
「ま、でも今日は朝まで縛られててね!
反省してほしいし!」
「「あ!?」」
先にギュリを縛って、その隙に逃げようとしたアリエルを捕まえてまた糸で縛る。
しょうがないじゃんこんな有益なこと隠してたんだから。
これくらいさせてよ。
全ての発生源へ、羽ばたけ私。
夢を知って終わらせろ。
最初にキレた時、アリエルとギュリの念話をハッキングして通話を奪っているので実はすごいことをしている。