バチュルですが、なにか?   作:天廻シーカ

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118 神

 

 

「は、はぁ。きつい。

 さすが地球、空気の臭いがキツすぎる。

 なんだよ車の排気ガス」

 

 

とりあえず嗅覚を最低レベルまで下げる。

こんなにおいの強い場所歩いてられるわけがない。

こんなにこっちの世界も汚れていたのか、楽園なんてないな。

 

 

周りからの視線を無視して私は歩く。

どうやらこっちの世界でも少しは目立つみたいだ。

しょうがない。

 

 

「まずは若葉姫色を見に行きたい。

 電脳、場所わかる?」

『ん。

 地図あるから頭に写しとく。

 あと元から近くに飛んでるから、すぐ着くはずだ』

「ありがとう」

 

 

そんな独り言を吐きながら、暗くなってまもない町を私は進む。

途中、塾帰りに談笑する学生とすれ違って気分が悪くなる。

全く難儀に育ったものだ。

 

 

「えーと、この家か?」

 

 

建っていたのは、新築って感じでも何もないただの一軒家。

だけど、周りに住宅があって、その陰に建つような立地だから正直陰気くさい。

てかこんなところに神住んでるとかテロでしかないだろ。

神は神らしくちゃんとしたとこ住めや。

 

 

うーむ。

来たのはいいけどどう入ろう。

白に入り方聞いときゃよかった。

とりあえずポチリとインターホンを押す。

下手に力技出来ないしね。

いかんせん神様の家だ、ふざけたら私が死ぬ。

 

 

『はーい』

 

 

そんな声がインターホンから聞こえた。

確かに、自分の脳内にある声だ。

蜘蛛の身体からも、念話からも、聞かなかった音。

それが確実に自分のことを突き刺す。

 

 

チッ。

俺は知った上でここに来ている。

だから引き下がる気はない。

こちとら元から狂ってる。

 

 

「いらっしゃい。

 君がこの家に来るのは初めてだったね、佐野蒼生。

 君の猛アプローチがやっと実を結んだんだ、喜んでくれると嬉しいな」

 

 

俺の前でドアを開けた彼女は、笑う。

はぁ。

確かにやっとここまで来たんだね。

 

 

「ありがとう。

 すごく嬉しいよ」

 

 

俺も、彼女に釣られて笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー、嫌だー。

 そんな戦い方するようなやつやっぱ嫌われるって!

 絶対いじめられてたのそれ原因、それマジ!」

「君がそれを言うんですね。

 鏡を見てください」

「そんなコンボ普通試すか、それ?」

 

 

やっぱこの人性格悪いわ。

家に入った蟻ですら外に逃すこの俺が性格悪いっていうんだぞ、相当だぞ。

容姿もあるけど絶対これ原因。

 

 

今のゲームは3つ目。

一つ目のゲームはポケモンのガチ対戦。

思いっきし暴力パで行ったのに陰キャネチネチ戦法で返り討ちにされた。

2つ目のゲームは銀河を駆ける戦士が主人公のゲームの一章分タイムアタック。

なんだかんだでこれが一番僅差だったけど、最後の最後でHPが無くなって敗北。

そして、今やっているのがいろんなキャラでの大乱闘。

その結果、めちゃくちゃ賢いコンボで完全に運ばれている。

全部のゲームやったことあるのに、何故だ。

 

 

「君、弱いですね。

 なんで私とゲームやろうなんて言ったんですか。

 別にゲームしなくても色々話したいことはあるんじゃないですか?」

「確かにあるよ。

 今はもうあなたへの興味も薄れたし。

 本当は白についてとか聞きたい」

「次の寄生先を見つけられたようでなによりです」

「そりゃどうも。

 あなたのおかげですぐ見つかった」

 

 

あ、また運ばれた負けた。

今までまともに攻撃も出来てないし勝てる希望もなさそうだ。

そう思いながら俺はまたキャラを選び、対戦画面へと進む。

 

 

「心の中では怒っていても、ぱっと見は優しく振る舞いますね。

 クラスメイトにも、蟻にも、そして蜘蛛にも。

 実はアルセウスがいなくてもあなたは蜘蛛に変えてあげるつもりだったんですよ?

 それだけ気持ち悪い人だった」

「思いっきり悪口を言うな。

 気持ち悪いが、感情としての気持ち悪いなら嫌だけどそんな感じするし」

「もちろんそれも含んでますよ」

「うわー」

 

 

確かに俺は常識に逸脱した行動ばかりしていた。

もちろんクラスにいる高嶺の花、若葉姫色にも。

だから、Dであった彼女も明確に俺を認識しているのだろう。

 

 

「誰にでも過剰に付き合おうとした。

 深く、深く、依存したがった。

 そんなあなたは、他の生物まで慈しみ、何かを求めた。

 そうでしょう?

 佐野蒼生、もとい九重蒼生。

 この世界において国内トップの資産を持つ九重グループの御曹司であり、同時に愛だけは与えられずに育った人間。

 人間は単純ですね」

「ああ、極めて単純だ。

 こんな強い欲望の理由すらわかってる。

 ほんと簡単な存在だよ」

 

ほんと、人間は愚かだ。

 

 

 

 

 

「私が買い物に行っている間に邂逅するとか。

 本当に困ったものだな」

 

 

え?

俺は、地面に突っ伏していた。

それはDも然り。

二人とも腹ばいにされていた。

 

 

おかしい、立てない。

呼吸が苦しい。

今、何Gの重力がかかってる。

それでいてなんで家具は壊れない。

 

 

いつ現れた。

いつ、いつ。

俺は、目の前に立ち、見定めてくるパーカー姿の男を睨む。

そうだ、こいつの目、なにかに似てると思ったらポティマスだ。

このゴミを見定めるかのような目は。

く、そ。

 

 

「落ち着け。

 今のお前は青だろう。

 佐野蒼生は死んだ。

 自我を取り戻せ」

 

 

知るか。

拘束してるのはあんただろう。

私だって抜けられるなら抜けたい。

勝手にすんな。

 

 

『チッ、重力操作する。

 オレ様の力込みでギリギリ通常の行動はできるはず。

 馬鹿げた真似しやがる』

 

 

フラフラになりながら、電脳の補助込みで膝をガクガクにして私は立ち上がる。

その隣にはいつの間にか完全に立ち上がっているD。

どうやら、私の復帰よりも先に安定したようだ。

 

 

「たく、お前は碌でもない。

 人の過去を掘り返して何になる」

「楽しいじゃないですか。

 青という人格が一瞬で塗りつぶされた。

 あなただって、ポケモンを増やすという目標がなければやっていたはずですよ」

「目標あるから諦めろ。

 仮定は現実じゃない。

 というか、電脳まで一度消滅させたのか。

 さすが上位神」

 

 

えっと?

なんか色々されてたみたい。

でもよくわからないからまあいいか。

考えるのは苦手だ。

 

 

「私は知ったこっちゃないが、青。

 今すぐこの部屋から逃げろ。

 今の精神状態で貴様のしこりを解消するのは無理だ。

 せめて次はワレがいる時に来い。

 なんならこの場所には来ないで自力で解決しろ。

 悪化するだけだぞ」

 

 

え、そうなのか。

ただ確かにそうかもしれない。

今は全然スッキリしてるしなんかしこりはあった気がするけど今はスッキリしている。

なら、この世界にいても意味はない。

 

 

うーん、じゃあ帰るか。

 

 

「とりあえず今日はありがとう、D。

 色々遊べて楽しかったよ」

「そうですね、青。

 また遊びましょう」

 

 

 

 

 

 

ん、あれ。

なんか宿屋に帰ってきてる。

ソフィアがびっくりしてるし、どゆこと?

んーなんで全部聞かずに帰ってきてんだろうか。

地球で何かに遮られた?






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