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「お、帰還早いね。
浮かばない顔してるけど、何があったの?」
「とんでもない精神破壊を食らった、と思う。
記憶も全くねぇし青とオレ様の意識を無理矢理合成しやがったかもしれねぇ。
一応音声を頭の中で録音しといてよかったわ」
「青がそれやられるとは、相手は相当とんでもなかったんだね。
あと人族何人か仕留めてきたよ。
路地裏におびき寄せて捕まえたあまり良くない人たち。
空納に入れてあるけど」
「あー、ちゃんと解剖してーから無虚空間で処理する。
入ってこい」
電脳が無虚空間への入り口を開いてアリエルの手を引き入っていった。
確かに人間の解剖はこの世界ではやったことがない。
システムの構造的に見たことない器官を見つけられるかも。
「青、でもあっちに行くとして、どうするの?
正直戻ったところでいいことはないでしょ?」
ああ、ソフィアに言われた通りいい記憶はない。
だから行かなきゃいけない。
ろくな経験しかしてないからその嫌な気持ちを溶解させないといけない。
どうせ最後には行かなきゃいけないんだ。
全てを終わらせるときに。
「で、明日この街から出るってことでOK?
メラゾフィス、アリエルはそう言ってた?」
「はい。アリエル様はそう言っていました。
白様も外で待たせていますし」
確かにねー。
なんも騒ぎ起きてないから大丈夫だとは思うけど、結構待たせてしまった。
でも白も今の間に卵とかいろんな場所に産めたんじゃないかな。
あの、魔王にやられた時に使った卵復活のための。
あれがあるかぎり白は不滅だし産んでるはず。
よし、暗くなったし寝よう。
ーーーーーーーーーーーー
「お、やっと、てどういうこと?
この状況」
「おーおー、好き勝手やったね。
そのワンピースとか服は似合ってるけどこっちの状況はどういう感じにしたの?」
私たちが白のところに帰ってくると、彼女は服を作っていた。
今まで来ていた服に加えてワンピースとかパペットタラテクトの服まである。
どうやら、裁縫に目覚めたみたい。
「裁縫」
いや、それは知ってる。
まあ暇していなかったんならよかった。
少し不安だったからね。
変に病んでないかとか。
私だったら病むし。
「じゃあ、青も白も。
また行こうか。
ソフィアとメラゾフィス君は特訓込みね」
「おー!」
『最悪……』
私たちは、再び歩き出す。
その数日後。
私はまだ地球には帰れていない。
前回は無理やり帰ったけれど、あの後は1日のうちどこかしらに女神教の仕事が詰まっていて帰れなかった。
この世界よりも地球の方が時間の流れが遅いらしくて、下手に居座るととんでもない時間過ぎてしまうかもだし。
『ギュリ。
真言教はどうなってる?
聖国とかどうなってるの?』
『だいぶ壊滅的な被害を受け始めている。
末端はもう破滅寸前。
一部の国ももう求心力は壊滅的だ。
貴様、それで本当に平気なのか?』
『うん。
これで人が一定数死ねば純粋なMAエネルギーもだいぶ補給される。
サリエルは絶対許容しないと思うけどね。
ただ、先に死んでしまえばそんな許容なんてのはもう通じない』
『そうか』
歩きながら念話で話す。
もう私の念話の範囲はこの星全土に及んでいる。
ばら撒いた蜘蛛たちの一部がうまく電波塔として機能しているみたいだ。
『だけど、まだ10日前後だよ?
しかも私が伝えたのは真言教の堕落とかについてじゃなくて女神教におけるただの自己防衛の許可。
それでそんなになるか』
『まあなるだろうな。
人間も馬鹿じゃないんだ、元々真言教の運営方法に不満を持っている者も元々多かった。
それに絶対的な安全や食糧の安定供給が確約された女神教。
その上で女神教の唯一の欠点がなくなった。
そりゃこうなる』
女神教を信仰している国では、私が根幹からテコ入れすることによって経済や産業が大きく発展している。
というのも、大量に配った蜘蛛が卵を産むから食糧難とか解決するし、糸を出すから真言教に売り出すことも出来る。
食べるのは有機物全般だからゴミ処理も出来る。
だから医療班を送り込んだのもあるけど疫病とかも一瞬でなくなったしね。
『貴様は真言教を潰したいのか?』
『うん。
もう役目が終わったものを残しておくのは厄ネタだ。
ダスティンには悪いけど念の為、ね』
『そういえばダスティンが貴様との面会を望んでいたが。
いつか行く気はないか?』
『先に言って。
今行く』
「ごめん、私は転移できるから先に行って。
ダスティンと話してくる」
「え?」
魔王の声を背に受けて、私は転移する。
あいつとは一度話しておきたかった。
ーーーーーーーーー
私は聖国における報告書を眺める。
どうやら、女神に打たれた一手によって世論が逆転したようだ。
これはまずい、おそらく取り返しがつかない。
「こんにちは、ダスティン。
あなたについては黒龍とアリエルから話を受けている。
今までありがとうね」
「……」
声が聞こえ顔を上げると、目の前に少女が立っていた。
驚き、思わず声を失う。
いつ現れた、この少女は。
「お褒めいただきありがとうございます。
ですが、この部屋に入るのならば許可を頂ければより幸いでした。
ケレン領の女神、で正しいでしょうか」
「はい、あっています。
少しこれからのことについて話しましょう。
4000年の歴史をもとに」
やはり、身長などは異なっていてもケレン領の女神であっているか。
だが状況は極めてまずい。
今までありがとう、4000年の歴史をもとに。
まるで私の心の中を見透かされているようだ。
「4000年という数字がなぜ出てきたかわかりませんが、そうしましょう。
まず一番最初に聞かせていただきたいのですが、あなたが式典で言った女神サリエル様というのは、今はどのような状態なのでしょうか」
「ああ、彼女は今拘束状態にあるだけ。
昔はエネルギー体を削られていたけど、今現在は私が蜘蛛で輪廻を回しまくっているからノーダメージ。
人族の被害ゼロでもエネルギー供給はプラスに回るから戦争とかもいらないね」
「お待ちください。エネルギーというのは、どういうことでしょうか?」
今どういう状況なんだ。
確かに、過去よりもここ数ヶ月で生まれた子供の方が圧倒的に生命力が強いとは聞く。
けれど星全体のエネルギー供給がプラスに回るなどあり得ない。
この4000年、そんなことは一度も起きなかったのだから。
エネルギーについてまず話し出すという時点で彼女は禁忌を見ているのだろう。
その上でおそらく私の正体についても知っている。
だが、黒龍が全てを話すのならそれ相応の信頼が必要だ。
その根拠はなんだ?
「MAエネルギー。
世界を構成するエネルギーだよ。
クソエルフがいたせいで減ってたけど、私が輪廻を回すことで回復してんの。
まだエルフは殺してないから物量で相殺してるだけだけどね」
呆れたように言う女神。
なんだか、私も本心を隠すのがバカらしくなってきた。
今までの習慣がそんな簡単に治るわけでもないが。
「真言教の実質的な存在意義であった戦争の発生によるエネルギーの補給。
それがもう必要無くなった真言教に存在価値はないんだ。
この星を維持してくれたことはありがたいけど」
「……」
そう、なのか。
もう世界は回復し始めているのか。
この4000年は報われたということか。
「ですが、真言教はいります。
私が教皇だからというわけではありません。
まだ根本的な原因を潰していない」
「そう。
なら別に残ってもらって構わない。
ただ、私は女神教の運営に尽力する。
頑張って生き残ってね」
とんでもないことを言う。
あなたが運営に尽力すれば即壊滅するのだが。
今も真言教の末端の国ではクーデターが起きかねない状況なのだ。
こちらが戦力を出したところでそんな国が多すぎるし人が死にすぎる。
そうか。
この方の最終目標はサリエルを救出すること。
決して人族を守ることではない。
今まで人族を殺す報告がないのも懐柔させるため。
そんな方が求心力を蓄えてしまったのはとてもまずい。
だが、もう手遅れだ。
「ここまできたら、真言教を女神教の宗派にしてもいいと思うけど。
宗派の総本山ということにすれば聖国も生き残れると思うし。
ただその場合サリエーラ国の属国になるからきついか?
うーん、私には難しい」
はて、どうするか。
ただこの方は黒龍とは違って口が軽いようだ。
しかも人は殺さない主義ときている。
それなら、今のうちにせめてこれは聞いておこう。
「あなたは、何を目指しているのですか?」
「ん?
ああ、それね。
恒久的な世界の平和と4000年前の状況へ後戻りさせること。
具体的に言えば、人間がとりあえず星への決定権持っている状況かな」
それは私も望んでいることだ。
今はMAエネルギーの減少によって自由に生きられない人が多すぎる。
病気や飢餓などももちろんあるからな。
「そういや、システムって知ってる?
私の最終目標の中にはシステムの完全破壊もあるんだ。
だって、システムってことは管理者がいるじゃん。
で、管理者は別次元の存在だからさらにその上がいるわけで。
神々のしがらみに巻き込まれるの正直嫌でしょ」
ならば、今この世界にも管理者がいるということになる。
黒龍?
それともサリエル様?
それとも、それとは違う方がいるのか?
さらにその上もいるとなると、皆目検討がつかない。
だがそれを無くしたいとなると人族の被害もとんでもないことになりそうだ。
「とりあえず私が話したいことはこれで以上ね。
また暇になった時来るかも。
じゃあ!
あと戦争はやめろ」
はぁ。
女神様が消えた場所を見て、私はため息をつく。
これからの真言教のため尽力しよう。
疾風のような変化にしがみつくために。
少しでも生き残らせるために。
4000年の歴史の変化。